Trux - Untitled (Office Recordings:OFFICE 13)
Trux - Untitled
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ディープな音響美学に定評のあるBaaz主宰のOffice Recordings、そのレーベルが今特にプッシュしているのが不明瞭ながらも情緒的なアンビエンスを奏でるTruxで、2016年に『Trux』(過去レビュー)で同レーベルからデビューして以降、今に至るまで蜜月の関係を築き上げている。霧に覆われたような不鮮明な音像と同様にそのアーティストの存在もミステリアスなままで今も尚Truxとは誰ぞや?という状態だが、例えば2nd EPである2018年発表の本作もアンタイトルとわざわざ付けている通りで、ミステリアスな存在感を敢えて敢えて演出する事で音楽性に惹き付けられるのだろう。基本的にアブストラクトな作風に大きな変化はないが、本作では特に吹雪に覆われたようなヒスノイズ混じりのドローンが一貫して鳴っており、それが特に不明瞭な世界観を強くしている。サーっ鳴り続ける柔らかなノイズの音像の中に不規則なリズムが鳴る"Just A Moment"、朧気ながらもほんのり暖かいパッドが浮かび上がってくると心地好いアンビエンスを発しながらも、抽象性の高い景色に行き先が全く読めない。"Leash"もチリチリしたノイズと幽玄なドローンがダビーな音響で鳴る事で奥深い空間演出にかっており、柔らかなノイズが吹き荒れながらも激しさよりは壮大で大らかなアンビエントに包まれる。特に印象的だったのは"Gold"で、ぼんやりとした不鮮明なシンセとゆっくりとしながらも牧歌的なブレイク・ビーツ風なリズムが合わさったこの曲は、90年代のアーティフィシャル・インテリジェンスのテクノかBoards Of Canadaを思わせるノスタルジーが蘇ってくる。しかし、そこから一転強く重いキックと切れのあるハイハットに目が覚める"Pulse"、ミステリアスなパッドの上を情緒的なシンセが舞い躍動感のあるブレイク・ビーツに揺さぶられる力強いダンストラックだ。またリミックスも2曲収録されており、ずぶずぶ深い音響とミステリアスな雰囲気を残しつつ4つ打ちに接近し心地好い浮遊感を生む"Pulse (Lowtec Remix)"、原曲からがらりと様相を変えてドローンが晴れつつメロディアスでのどかなダウンテンポ寄りへと作り変えた"Just A Moment (O$VMV$M Version)"と、これらも面白い作風ではあるがやはりTruxの原曲が強い印象を植え付ける。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Satin Jackets - Diamonds Are Forever (Pole Jam Vinyl:PJV007)
Satin Jackets  - Diamonds Are Forever
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まだまだ熱いニューディスコ界隈で近年頭角を現したのが、ベルリンのプロデューサーであり制作を担当するTim BernhardtとDJ側を担当するDennis HurwitzからなるSatin Jacketsで、2010年頃から積極的に配信において多くの曲をリリースしていたようだ。その人気を決定付けたのは2016年の初アルバムである『Panorama Pacifico』(過去レビュー)で、ゴージャスなシンセ・ポップな音や蜜をぶちまけたような甘ったるいボーカル、そしてレトロ・フューチャーな世界観は、ニューロマンティックの現代版と呼んでも過言はないだろう。そんな彼等の過去の作品は今や入手が出来ない物もあったのだが、2018年に本人らによってそんな作品を纏めたのが本作。かなり初期の曲を中心に集められているのでこれこそSatin Jacketsと呼べる音楽性、そして初期ベストと呼べる位に魅力的な曲が揃っており、アナログでは4曲ながらもどれもフロアでのキラートラックと成り得る可能性を秘めている。ぼんやりとしたシンセの持続音から始まる"Latin Jackets"、ダビーで爽快なパーカッションやポップなメロディーも加わりそしてズンズンとした安定感のある4つ打ちが入ってくれば、モダンで快楽的なニューディスコへと入っていくこの曲からして、Satin Jacketsらしいシンセの魅力が感じられる上に豊かなバレアリック性もある。よりディスコ的な生っぽいリズムやギターカッティングらしい音、そしてしっかりと底辺を支えるベースラインがファンキーさを生む"Got To Be Love"は、もう少し古典的なディスコの雰囲気を纏っていて、そしてゴージャスなシンセストリングスや華麗なピアノのコードも加わってくると、ディスコの人間臭さとハッピーな空気が溢れ出す。歌モノのニューディスコとして秀逸なのが"Hollywood"で、切ないギターカッティングや物哀しいピアノのコードでシンセバリバリなサウンドは懐かしさ満載で、そこに甘過ぎてメロウなエフェクトを掛けた歌が更に郷愁を誘うニューロマンティックそのもので、コテコテ濃密な甘さに胸が締め付けられる。"Olivia"も同様に女性を起用した歌モノで、こちらは美しくしなやかに伸びる光沢感のあるシンセやズンズンと安定感あるディスコなリズムによって、雄大にスケール感大きく展開するバレアリックにも寄り添った曲で素晴らしい。尚、配信ではリミックス含め3曲追加となっているが、このリミックスも完全にSatin Jackets色に染まったゴージャスなシンセを打ち出した懐メロ系で、お薦めである。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Jon Dixon - Sampa EP (4evr 4wrd:4EVR-003)
Jon Dixon - Sampa EP
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デトロイト・テクノ/ハウスの大きな原動力であるUnderground Resistanceがかつて程の勢いを失っているのはやはり頭領であるMike Banksの動きが少ない事が原因であろうが、そんな状況において新生代が決して生まれていないわけでもなく、URのライブ・バンド形態であるTimelineの現在のキーボード奏者であるJon Dixonは比較的活発に活動を行っている。2018年にはPlanet Eから『Erudition: A Tribute to Marcus Belgrave』(過去レビュー)もリリースし更に注目を集めていたが、その前の2016年からは自身でも4evr 4wrdを主宰し、積極的に自身を推し進めている。Dixonの説明に依ればレーベルの方向性は電子音楽とジャズにヒップ・ホップ、その他のスタイルの融合だそうで、このEPでも単にハウスの一言で括れない多様な要素が体験出来る。"Paulista Avenue"は既に著名なDJの御用達だそうで、EP名が特に意識されるラテン・パーカッションが連打な激しいサンバ風で、旋律やコード展開は用いずに切れ味鋭いハイハットや金属的なベルの響きも加えて、ただひたすら爽快に駆け抜けるDJツール性の強いテクノだ。一転"Five 15"はムーディーなシンセのリフが夜中のしっとり官能を思わせるディープ・ハウスだが、これも大きな展開を繰り広げるのではなくミニマルなスタイルで、途中から渋いサクソフォンのソロや妖艶なキーボードが加わってくると一気にフリーなジャズ・セッション風に変化する。女性のスキャットを起用した"Our Love Goes Over"は現在形のデトロイト・ハウスといった趣きか、エモーショナルなシンセのコード展開に艷やかなエレピを添えて湿っぽくも希望を感じさせるジャジーなハウスで、ただ他の曲と同様にミニマルな構成でフロアでの機能性を意識しているようだ。そして幻想的なシンセのリフレインから始まる"Inicio"は一見アンビエントかと思いきや、繊細なジャジーなリズムが入り微睡んだパッドにも包まれると、ゆったりとドラマティックな世界に溺れる安らぎの一曲。デトロイトのアーティストらしくジャズを根底に持ちつつ、フロアに即した現代的な機能性も意識した面で新世代としての才能が感じられる内容で、デトロイト・オタクでない人にも是非。



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| TECHNO14 | 11:30 | comments(0) | - | |
Gerry Read - It'll All Be Over (Pampa Records:PAMPA033)
Gerry Read - Itll All Be Over
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先日述べたようにPampa Recordsの面白さはフロアで映えるダンストラックとしての機能性だけでなく、それに相反するような実験性やコミカルなポップさを兼ねそなえている事で、曲によってはクラブを覆う闇を消し去るような明るく陽気なものもあり、奇抜ではありながらも決してとっつきにくい音楽性ではない。そんなレーベルの方向性をリードする主宰のDJ Kozeの才能は疑うべくはないが、それを追従する存在と呼んでも過言ではないのが若手アーティストのGerry Readだ。Pampa傘下のFourth WaveをはじめとしてDelsinやAus Musicからディスコ・ハウスからロウ・テクノまで、それらもひねくれたユーモアと呼べる実験性と陽気なポップさを両立させており、例えばMatthew HerbertのAccidental Jnrからのリリースもあれば当然その奇抜な音楽性を想像出来るのは容易いだろう。2019年にリリースされた本作もその音楽性は変わらず、どころかサマーブリーズよろしくな爽快感とメロウネス爆発な世界観に心酔せずにはいられない。ドタドタと粗雑なキックとバンジョーの朗らかなフレーズで始まる"It'll All Be Over"は、そこからソウルフルなボーカル・サンプルとジャジーな切ないギターのフレーズに切ないキーボードを詰め込んで、くどい程までにポップス性を磨き上げた真夏の陽気ながらも夕暮れ時の切なさも込み上げる情熱的なディスコ・ハウスで、これぞPampaなユニーク性だ。"Satyricon"も路線としては似ており、爽快なビート感に呟き風ボーカル・サンプルがしっとりとして、カウベルの可愛らしい音色やほんのり郷愁を添えるギターも加わり陽気なハウスになったと思うと、途中には逆回転風のコラージュも織り交ぜて酩酊したような瞬間も生み出すユニークなハウスで、その遊び心が美味く展開を盛り上げるように役立っている。Readのオリジナルの素晴らしさだけではない、DJ Kozeによる"It'll All Be Over (DJ Koze Remix)"はそれ以上に完璧なピークタイム・トラックで、その切なくもメロウなディスコ・ハウスに感嘆せずにはいられない。方向性は原曲と同じだが、フィルター・ハウス風でより滑らかなグルーヴ感で機能性を磨き、甘いメロディアスな部分をループさせて執拗に用いる事で、濃密なまでのメロウネスを発揮している。リミックスと言うよりはエディットに近い位に原曲へ寄せてきているが、DJとして使うならDJ Kozeのリミックスだろうなと思う映える作風だ。PampaというレーベルのみならずReadの存在感も増すEPで、流石の出来だ。



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| HOUSE14 | 12:30 | comments(0) | - | |
Dave DK - Chicama EP (Pampa Records:PAMPA 034)
Dave DK - Chicama EP
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ポップとユニークを、ダンスとリスニングを跨ぐテクノ/ハウスを絶妙のバランスで混合する事では右に出る者がいないと言っても過言ではない、そんなレーベルがPampa Recordsだ。熱狂的なクラブの興奮の中でも可愛らしくあったり癖があったりする曲が、しかし上手くダンスのグルーヴと馴染みながら場を沸かせる曲となる機能性もあり、ダンス・ミュージックの界隈で特に面白いレーベルの一つ。そんなレーベルの2019年作の一つがこちら、過去にはPampaを始めKompaktやMoodmusicといった人気レーベルに曲を提供しているベルリンのアーティスト、David KrasemannことDave DKによるEPだ。ベテランながらもポツポツと思い出した頃に作品を出す控えめな活動ではあるが、その分どの作品でも淡い霧に満たされたようなディープかつメロウなテック・ハウスは軒並み水準が高く、安定した作風は信頼を寄せられる。がこのPampaからの曲はやはりと言うか、どれも普段よりも癖があって幻惑的な陶酔感に溺れてしまう。"Jelly Legs"はしっかりとハウスの4つ打ちを刻んでいるものの、奇妙な打撃音やパーカッションが印象的で、そこにコラージュ風で抽象的ながらも甘く朧気なシンセが厚みを増して夢の中へと誘うドリーム・ハウスは近年のPampaの作風を踏襲している。余りにも眩いばかりの神々しさと絶対的な多幸感に包まれて、フロアを至福で満たす間違いのないキラートラックだろう。対して"El Point"は不鮮明でドローン調の音響がアンビエンス性を発しており、その中に不気味なボイス・サンプルや金属的なパーカッションを織り交ぜて、勢いはありながらもアブストラクトでトリッピーにはめていくディープ・ハウスを披露。そして土着的でリズムとダビなー音響によって揺らぐ音像を生み出す"Chicama"、チャイムの原始的な響きや荘厳なシンセに呪術的な歌が入り組み、Osunladeに負けず劣らずな壮大なアフロ・ディープ・ハウスを聞かせる。3曲それぞれタイプが異なりながらもPampaというレーベルに見受けられる奇抜性×メロウネスはここでも健在で、どれもフロアで体験したら高揚へ導かれるに違いない。



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| HOUSE14 | 12:01 | comments(0) | - | |