Planetary Assault Systems - Straight Shooting (Mote-Evolver:MOTE055)
Planetary Assault Systems - Straight Shooting
Amazonで詳しく見る(アナログ盤)
 Amazonで詳しく見る(MP3)
L.B. Dub CorpやThe 7th Plainといった変名でも活動するUKテクノの重鎮であるLuke Slater、しかしその音楽性が最も輝くのは過去から今に至るまでPlanetary Assault Systems名義であると筆者は感じており、ここで聞けるハードで機能的なフロア志向のテクノは、長い時を経て過去の洗練される前の荒々しさに現在の磨かれた機能性が融和し完成形を迎えているように思われる。そう言えばジャケットの過去のアルバムを思い起こさせるデザインでもあったりするが、実際に冒頭のざらついたノイズが吹き荒れる中に低音の冷えたキックが続く"Beam Riders"では上辺には電子音のループが覚醒的に持続し、単調に聞こえつつ上手くパンで音を散らしたりして微細な変化を付けるスタイルは、まるで往年のJeff Millsのスタイルを思わせる。決してハードな重厚感だけではなく、"Born Anchors"では弾性のあるリズムと膨らんだ電子音のシーケンスで疾走感を打ち出し、切れのあるパーカッションも抜き差ししながらミニマルでファンキーな機能性に特化したテクノとなっており、パーティーのある瞬間の爆弾的な作用としてではなく長い一夜の一部となるような曲もある。ざらついたハイハットの生々しさと硬く引き締まったキックが重圧を生む"Humans Use Concrete"はシーケンスが催眠性を帯びながらも暴力的なハードミニマルといった印象で、これが昔のアルバムに入っていたとしても全く違和感が無いように良くも悪くも昔からP.A.Sは変わらないなと思う点も。特に印象的な曲はボーカル・サンプルを用いてファンキーさを打ち出した"Give It Up"で、跳ねるパーカッシヴなリズム感に電子音が左右にパンしながらホットなシーケンスとなり、途中からは金属が擦れるようなノイズが混じってきて神経に深く刺さるような刺激的的な展開が待ち受けている。尚、配信のみで20年前の曲を編集した"Screen 2018 Re-edit"が収録されているが、鈍いキックと暗い展開のホラー的なハードテクノだった原曲が、ここではキックはかっちり硬くなり全体が引き締められながらエネルギーが溢れ出すような骨太ハードテクノへと生まれ変わり、こうして聴き比べてみるとハードテクノも時代と共に洗練や機能性に磨きを掛けて進化しているのだ。



Check Luke Slater
| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Satoshi Ashikawa - Still Way (Wave Notation 2) (We Release Whatever The Fuck We Want Records:WRWTFWW030CD)
Satoshi Ashikawa - Still Way - Wave Notation 2
Amazonで詳しく見る(US盤)
 Amazonで詳しく見る(アナログ盤)
世界的に再発見が進むジャパニーズ・アンビエント、日本のレーベルでなく海外からその波はここ日本にも伝搬し、時代に埋もれた音楽が今再度脚光を浴びている。本作は1983年に30歳にして亡くなってしまった芦川聡による唯一のアルバムのリイシューで、吉村弘による『Music For Nine Post Cards』(過去レビュー)に続く「波の記譜法(=Wave Notation)」シリーズの第二作目となる。Brian Enoが提唱したアンビエント・ミュージックのコンセプトを継承しながらも、より引き算の美学が研ぎ澄まされミニマリズムとコンテンポラリー・ミュージックやモダン・クラシカルといった言葉で説明されるべきその音楽性は、特にメッセージ性や意味を込める事もなくただただ日常の中に同化したような環境音楽だと言えよう。エレクトロニクスにピアノやハープ、ヴィブラフォンやフルートを用いてはいるが過剰な装飾は一切なく、アルバム冒頭の"Prelude"こそ2分に満たない短い曲で、ハープの純朴な美しさのフレーズや淡々としたピアノの単音なミニマルな構成など、この時点から既にアルバムの静寂を際立てる環境音楽は出来上がっている。続く"Landscape Of Wheels"にしても12分と長尺ながらも間を生むハープの単純なフレーズが続くが、それ故にメッセージ性は込められずに隙間から想像力を膨らませるような面もあり、そしてまたハープの響きは事のようにも聞こえ和の雅楽的な響きが侘び寂びを漂わせる。ピアノ/ハープ/ヴィブラフォンが揃った"Still Park - Ensemble"だともう少し華やかさがないわけでもないが、ゆったりと花弁が開いていくような時間の経過が遅く感じられる感覚は、忙しない日常生活に一時の安らぎを与える如く空間の雑音を落ち着かせる。そこから引き算がなされピアノソロとなった"Still Park - Piano Solo"の静謐な美しさながらも無機質かつ無感情なただの音の連なり、やはりメッセージ性を排したからこそ日常空間に融和する性質がある。本作は確かにアンビエント・ミュージックとして説明される音楽ではあるが、当ブログの読者に誤解を与えないようにいうとクラブ・ミュージックの俗物的なアンビエント・ミュージックとは真逆の、単純で素朴を極めたコンテンポラリー・ミュージックと伝えれば分かり易いかもしれない。またはECMが提唱する"静寂の次に最も美しい音"というコンセプトにも共鳴する音楽で、静的な音響が逆に存在感を放っている。



Check Satoshi Ashikawa
| ETC4 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Booshank - Operating With A Blown Mind (Butter Sessions:BSR023)
Booshank - Operating With A Blown Mind
Amazonで詳しく見る(アナログ盤)
 Amazonで詳しく見る(MP3)
オーストラリアはメルボンを拠点として活動するPaul GrahamことBooshank、まだこの名義では本作で3作目と決してアーティストとしてベテランではなく初々しさが残るものの、過去にはFirecracker傘下のUnthankからロウな響きとアシッディーな音楽性による快楽的なテクノをリリースしていたりと、なかなかに新鮮なエネルギーと強い個性を放っている。そしてこの最新作も大きな変化があるわけではないが、曲毎にアシッド〜アンビエント〜ディープといった豊かな性質を持たせて耳を惹き付けるが、また今では世界的評価を獲得したGonnoが素晴らしいリミックスを提供している点にも注目だ。9分にも及ぶ"F.T.H."がリードトラック的だろうか、ロウで切れ味のある4つ打ちのリズムに覚醒感のあるアシッド風なシーケンスと滑らかなビート感を生んでいるが、そこにアンビエント的でもありメランコリーさもある艷やかなシンセのメロディーがうっとりとした情感に包んでいく。中盤以降には潰れたようなスネアも強くなり徐々にビルドアップしていく持続性の強い曲で、そんな流れにおいてシンセのメロディーに陶酔させられながら深みにハマっていく。そんなシンセの陶酔感を前面に出したのが"Andys"でこれはビートレスなアンビエント・スタイルで、金属的な電子音を背景にダビーな音響やぼんやりとした電子音をセッション的に構成して、ただただ意味もなく夢想空間が広がるベッドルーム・ミュージックだ。一方でハウスの弾力のある跳ねたグルーヴ感にメランコリーなピアノコードを重ねた"Come On Honey"は、ラフな音質のリズムも肉感的でライブ・フィーリング溢れるシンセの聞かせ方など、EPの中で最も熱狂的なクラブのグルーヴ感に満ちている。がそれ以上に驚かされたのはGonnoによって新たに生まれ変わった"Andys (Gonno Remix)"で、テクノからアシッドにバレアリックやブレイク・ビーツと何でも上手く用いる彼がここではそれらを一纏めに、骨太でゴリゴリとした荒々しいブレイク・ビーツを下地にしながら控えめにトリッピーなアシッド・ベースも導入しながら、叙情的な上モノを微かに被せながらエモーショナル性も打ち出した攻撃的なレイヴ・トラックへとGonnoという音楽性に塗り替えている。太く脈動するグルーヴ感による攻撃的な勢い、アシッドの快楽性と完全にフロアを狂乱へと突入させるピークタイム仕様な曲調で、原曲からこんなリミックスを想像出来ない上にダンス・トラックとしてしっかりと盛り上がれる曲になってしまうのだから、Gonnoのアイデアとフロアを掴む感覚には感嘆せずにはいられない。そのような内容なので、本EPはアンビエントからダンスまで上手く収録されているナイスな一枚。



Check Booshank
| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Shinichiro Yokota - I Know You Like It (Far East Recording:FER-06916)
Shinichiro Yokota - I Know You Like It
Amazonで詳しく見る(日本盤)
 Amazonで詳しく見る(MP3)
「こういう音が、いいんだろォ…?」こんなCD帯のあおりに笑わずにはいられない横田信一郎のニューアルバム。今となってはジャパニーズ・ハウスの創世記のレジェンドとなったSoichi Terada(寺田創一)と活動を共にしながら、しかしネームバリューでいえば寺田の大きな存在に隠れがちではあったものの、寺田と共に長く活動をしていただけありそのハウス・ミュージックのシンプルさが生み出す素晴らしさは寺田に負けず劣らずだ。90年初頭からリリースをしているだけありNYハウスに影響を受けてリズムマシンによるシンプルなビートとベース、そして綺羅びやかなピアノや流麗なシンセによるキーボード主体のサウンド、そして和的なポップ感覚を載せたハウス・ミュージックは、シンプルが故に時代が経とうとも色褪せない強度と普遍性がありだからこそ今再度注目を集めているのだろう。そしてこの新作である、冒頭のあおり文句まんまにファンが期待するクラシカルなハウス・サウンドは良い意味で変わらない。新曲である"I Know You Like It"から直球ハウス、ソウルフルな歌と凛としたピアノのコード、贅肉を落としながらも跳ねるハウスのビート感であっさりした響きだが、ポップさ弾けるメロディーや美しいシンセの伸びがぐっと心を熱くする。"Tokyo 018 (Watashi Wa Tokyo Suki)"はなんと寺田との15年ぶりの共同制作だそうだが、可愛らしいシンセの音色やエフェクトを掛けたボーカル等からは確かに寺田の影響も感じられ、そしてシンプルなビート感と鍵盤を用いた流麗な展開のシンセコードには二人の音楽的な相性の良さが現れている。ややブレイク・ビーツでズンドコと重厚感のあるリズムを強調した"Time Travelling"も内向的な鍵盤と哀愁奏でる歌がしんみり切なさを誘い、"Gypsy Woman (She's Homeless)"を思い起こさせるキャッチーなピアノ使いが印象的でざらついて安っぽいビートは跳ね感がある"Take Yours"は途中からふざけたようなアシッド・サウンドも加わりユーモラスで、どれもシンプルではあるが丁寧に個性が込められている。YMOカバーの"Simoon"含むラスト3曲は実は90年前半の曲ではあるが、それがら新曲と並んでいても全く違和感なく聞こえるのは、やはり横田の音楽性が当時から大きくは変わってないない事を示している。90年代のハウス・ミュージック黄金時代が蘇る横田の音楽、決して新しいとか革新性があるとかではないが、「これでいいんだよォ!」と太鼓判を押したいアルバムだ。



Check Shinichiro Yokota
| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Martin Buttrich - Northeast / Southwest (Planet E:PLE65396-6)
Martin Buttrich - Northeast Southwest
Amazonで詳しく見る(アナログ盤)
 Amazonで詳しく見る(MP3)
過去にはPoker FlatやCocoonといった人気レーベルから覚醒感あるテック・ハウスをリリースし、またLoco Diceと共に自身ではDesolatを主宰するMartin Buttrich。そんな彼が注目を集めるきっかけになったのは2006年にPlanet Eからリリースした『Full Clip / Programmer』(過去レビュー)であるのは間違いなく、妖艶でトランシーな上モノを用いたディープかつミニマルなテクノは正にPlanet Eの音楽性そのものだった。それがCarl Craigに気に入られたのだろうか同レーベルから何枚かのEPはリリースしたものの、本作では11年ぶりのPlanet Eへの帰還となる新作だ。良い意味で過去に同レーベルから出した作品と大きな変化はなく、また初めて聞かされたらC2の新作と勘違いする可能性もある位に、実にこれがPlanet Eらしいテクノで期待に応えてくれた。"Northeast"はシャッフルする切れのあるハイハットによって疾走するビート感を生み出し、トランシーなシンセのリフを執拗に繰り返しながらその下では動きの多いベースラインが躍動し、じわじわと高揚へと上り詰めていく持続感によって長い恍惚状態を誘う壮大なテック・ハウス仕様。深い闇が広がる深遠さ、または逆に広大な宇宙空間が眼前に広がる荘厳な世界観で、フロアで少しずつ盛り上がっていく機能性を磨きながらもデトロイトのエモーショナル性も兼ね備えたButtrichらしい一曲だ。対して"Southwest"はしっかり重心の低いリズムとカラコロとしたパーカッシヴなリズムが軸になっているが、隙間が多い構成の中にヒプノティックで繊細な電子音をループさせてミニマル感を持たせている。途中からやや動きの多い派手なシンセのメロディーが出てくる辺りは余計だったと思うが、こちらもじわじわとビルドアップするスタイルで、テクノだけでなくプログレッシヴ・ハウスにも合わせやすいだろう。



Check Martin Buttrich
| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |