2018.10.11 Thursday
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Kyle Hall主宰のWild OatsやFloating Points主宰のEgloなど、人気沸騰中のレーベルからも作品をリリースした事もあってか注目を集めているロンドンの新世代アーティストであるKieron IfillことK15。しなやかなグルーヴと情緒的な雰囲気のディープ・ハウスを軸にブロークン・ビーツやフュージョンにヒップ・ホップまでと、多彩なリズム感も取り込んで作品毎に異なる豊かな才能を発揮したその音楽性は、ロンドン出身らしく西ロンのかつてのフューチャー・ジャズの系譜上にある。ダンス・ミュージックの枠である前提は変わらないが、ただ踊れるだけでない音楽的にしっかりとした構成やハーモニーやメロディーの響きが必ずあり、例えばクラブ・ミュージックなんかは聞かないというジャズファンにだって訴求する音楽性を含んでいる。最新作は過去にもリリース歴のWotNot Musicからで、このレーベル自体がK15と同じようにヒップ・ホップやディスコにネオソウルなど様々な音楽を手掛けており、その点からするとK15とレーベルの相性は抜群である事は言うまでもない。ここでは僅か3曲16分程の小規模なEPではあるが、それとは対照的にK15の豊かな音楽性を知るには十分過ぎる程の曲が収録されている。ブロークン・ビーツやフューチャー・ジャズ路線の"Be Glad You Create Anything"は優美で情緒溢れるエレピにコズミックなオルガンが絡む幕開けから、徐々にハンドクラップやしなやかなで切れのあるリズムがビートを刻み、フュージョン色の強い光沢溢れるシンセのリフで装飾するモダンなハウスだ。やはりプレイしている姿も想像出来るような楽しげなキーボードの旋律は素晴らしく、またぐっと抑えられながらも躍動するエネルギーを秘めたビートメイクは流石で、ハウスやフュージョンにジャズ等の要素が見事に一体化している。また"Communion"は序盤こそ静けさが際立つ静謐なピアノのコードが繰り返されるが、そこに踊るような耽美なエレピと弾けるキックの4つ打ちが入ってくると途端にグルーヴ感を増し、その後も物憂いなムードでしんみり情緒が続くハウスはフロア向けな作風だ。そしてラストはロービート/ヒップ・ホップ調の"You're Alive (There's Still Time)"でねっとり粘るリズムを刻み、メロウなエレピや輝きのあるコズミックなシンセを用いてぐっと温まる。収録されたどの曲も異なるリズム感でK15のクロスオーヴァー性が存分に活きており、そしれ何よりも感情性豊かなキーボードプレイが素晴らしく、ぐっと心に訴え掛ける音楽性は共通している。
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