2014.01.15 Wednesday
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プログラミングに長けたクラブミュージック系のアーティストが古典を愛するが故にルーツ志向に向かった場合、得てして本物にもなりきれず中途半端な作風として失敗する事は少なくない。George Evelynを中心としたダブ/レゲエサウンドを極めるユニットのNightmares On Waxは、90年初期から実験的なテクノを手掛けるWarp Recordsから異色にもアフターアワーズ的なダウンテンポ作品を一貫して手掛けていたが、近年はイビサに移住した影響が音にもよりリラックスしたムードとして強く表れている。そして前作から随分と時間が経ったが、この5年ぶりの新作もやはりイビサの空気を反映したように聞こえる開放的でだらりと弛緩したダウンテンポが実に心地良い。過去の作品に比べると空間処理のあるダブ要素は後退しヒップホップのビート感も弱まり、それとは異なるより艶めかしいソウルやファンクの要素が浮かび上がっている。トラックもプログラミングと共にギターやベース、ドラムにパーカッション、ストリングスやホーン系まで生演奏によるジャムセッション的な土臭い音が目立ち、当然と言うべきかリラックスした世界観はより気怠く甘いものへと向かっている。イビサで過ごすEvelynは至福の時間にいるのだろうか、その気分はトラックをゴージャスに彩りイビサの開放的で享楽的な香りを漂わせているのだ。生演奏を主体としたルーズなノリはNOWの個性を見事に上塗りし、よりアーティスト性の強い作風として成功していると言えるだろう。それと共に彼がクラブシーンから生まれた存在である事も忘れさせずに、サンプリングによる遊びの感覚は健在であり、その新しいものも古典も受け入れる許容がNOWの音楽を柔軟なものとしている。決して今と言う時代を象徴するような音楽ではないが、時代が経てば色褪せるような芯のない音楽でもなく、ただただ"Feelin' Good"と題された通りに心地良いヴァイブスが鳴っている。
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