Kaito - And That Was The Way (Kompakt:KOM 208)
Kaito - And That Was The Way
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もうすぐリリース予定のワタナベヒロシことKaitoのビートレスアルバムからの先行シングルカット。とは言ってもA面にはアルバム未収録の"And That Was The Way (Echospace Dub)"が収録。ミニマルダブの現在形であるEchospace(Deepchord)がリミックスを提供していて、Kaitoの音源を完全にEchospaceへと塗り替えていて流石な手腕。押しては引き返す波の様なダビーな音響がどこまでも続くシンプルなのに奥深いミニマルダブで、しっとり濡れた感も妙に艶を感じさせます。しかし僕が気に入ったのはB面に収録されているKaito自身によるビートレスな3曲。正直に言おう、初めて聴いた時、僕は泣きそうになった。それ程までに切なく、そして美しい世界が広がっている。単なるビートレスなアレンジなどはされていない。よりオーガニックで、そして清流が溢れる泉の様に優しさが満ち溢れている。以前クラブで会った時にワタナベさんが、本作はアコースティックな音色を強調したと言う話をしていたのだけれども、正にその通りの人間的な温度を感じさせる音色。アンビエントではない、単なるビートレスでもない。ワタナベさんの朗らかな人柄が表現されたソウルテクノだ。

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| TECHNO7 | 10:00 | comments(2) | trackbacks(0) | |
Koss - Ocean Waves (Mule Electronic:Mule Electronic 68)
Koss - Ocean Waves
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高橋クニユキが実験的な音を追求するエレクトロニックユニット・KossのリミックスEP。収録曲全て"Ancient Rain"(過去レビュー)から"Ocean Waves"のリミックスとなっておりまして、どれもよりクラブ仕様な調理がされております。クニユキ自身による"Return To Ring Mix"は、マリンバが瞑想的な世界を演出するスローなディープハウス。煙がモクモクと立ちこめるように視界は遮られ、暗く深淵な洞窟へと誘われるようなアンビエンスでもあります。もう一つ"Mercury Dub"もクニユキ自身のリミックスで、こちらはトランス風な上物がサイケデリックに響くダンストラック。淡々と、そしてじわじわとエクスタシーを誘発するトリッピーなリミックスですね。で今回ぶっ飛んだリミックスを提供してくれたのがMinilogue。"Minilogue Moves The Waves To The Woods"は10分以上に及ぶ長尺なトラックで、潜水艦の中で金属音が乱反射するようなサイケデリックでミニマルでダビーなテクノを披露。多段に反射するエコーが最高に気持ち良くて、なのにドロドロした不気味な感覚もあり、恍惚と不安の狭間を彷徨う様です。これはクラブで聴いたら相当ヤバイ事になりそうな予感。

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| TECHNO7 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kirk Degiorgio - Ripple Effect (Rush Hour Recordings:RH029)
Kirk Degiorgio - Ripple Effect
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昨日に引き続きもう一枚Kirk Degiorgioの新譜。こちらはオランダからデトロイトへの愛を猛烈に表現するRush Hour Recordingsより。A面の"Ripple Effect"は少々地味な感じもありますが、音を絞ってシャープさとゆったりと沈み込むような深さを表現したテックハウス。線の細さを音の硬さで補っており、すっきりとしていても軟弱な聞こえ方はせずにしっかりフロア対応しておりますね。B面の"Time Spin"はいかにもKirkらしいエモーショナルなテックハウスで、キックもずんどこ図太いし透明感のあるパッドがヴェールの様に張っていて、UK流デトロイトテクノとかピュアテクノとかそんな言葉が相応しいダンストラックになっております。ここら辺のアーティストには目新しさは確かに無いけれど、やっぱり毎回水準が高い物を出してくるからこそ、時代に関係なく僕はKirk Degiorgioは信頼のおけるアーティストだと認識しております。

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| TECHNO7 | 02:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kirk Degiorgio - Membrane (Planet E:PLE65316-1)
Kirk Degiorgio - Membrane
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昨年15年ぶりに伝説のレーベル・Applied Rhythmic Technologyを復活させたり、積極的にEPをリリースしたりするなどしていたKirk Degiorgioですが、今年もその勢いは止まらずに今度はCarl CraigのPlanet Eから新作をリリース。近年テクノ色を前面に打ち出してきているKirkならばPlanet Eとの相性は抜群な訳で、タイトル曲の"Membrane"はぶ厚い低音の効いたハウシーなリズムトラックにエモーショナルなシンセを被せたテックハウス。デトロイトのソウルに更に洗練された都会的な雰囲気も持ち合わせており、流石UK屈指のデトロイトフォロワーの底力を感じさせます。B面にはなんとC2がリミックスを提供していて、こちらはよりディープにより覚醒的にアレンジされ、C2特有の金属的な黒光りする音色が特徴的。残りの一曲"Vesuvio"はアッパーで攻撃的なテクノですが、半ばトランシーささえも感じさせる暗めのシンセフレーズがKirkにしては意外。勿論文句無しにフロアを沸かせるトラックである事は言うまでも無し。

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| TECHNO7 | 11:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Jeff Mills - The Occurrence (Third Ear:XECD-9128)
Jeff Mills - The Occurrence
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二度とMIXCDはリリースしないと公言していたはずのJeff Millsが、その約束を破ってまでリリースしたかったのか新たなるMIXCDを遂にリリース。本作は前作"Sleeper Wakes"(過去レビュー)に収録された"Spacewalk"をコンセプトに、つまりは宇宙遊泳中の出来事を綴ったMIXCDとなっているそうです。ライナーノーツにも自身で宇宙空間での事故が発生したストーリーを書いていたり、トラックは"Sleeper Wakes"からと未発表曲を使っていたりと、つまりはここ数年の宇宙シリーズの番外編と言う位置付けなのでしょうか。相変わらずのハードミニマル的な激しい展開は皆無で、終始ディープでスペーシーかつアンビエンスな音が続く厳かなミニマルなんですが、やっぱり自分的には物足りないなと言う印象。クラブでは激しいトラックをがんがんスピンするのに作品としては残さないと言うのは、ぶっ飛びたければクラブに来いと言う宇宙人からのメッセージなんでしょうか?Sun Raと言いGeorge Clintonと言い、黒人は何故か宇宙と交信をする傾向がある様ですが、最近のJeffからは宇宙思想が優先されファンキーな要素は宇宙の彼方に放置されてしまっているのが寂しいです。ついでにコンセプトを重視する宇宙人の新たなる試みは、CDとレコードを一枚にまとめてしまったVinyl-Disc。CDの表面にレコードが張り付けてあるので、タンテを持っている方はレコードも聴けます。が、このコンセプトがどれだけの意味があるのかと考えると、特に意味は無いなと。たまにはコンセプトから解放されて、衝動に任してファンキーでトライバルなミニマルも作ってくださいね、宇宙人様。



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| TECHNO7 | 08:00 | comments(4) | trackbacks(2) | |
Dominik Eulberg - Daten-Ubertragungs-Kusschen Remixes (Traum Schallplatten:TRAUM V121)
Dominik Eulberg - Daten-Ubertragungs-Kusschen Remixes
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トランス感覚を虚ろなミニマルと毒々しいアシッドテクノに落とし込んだ作風を得意するDominik Eulbergのリミックス盤。リミキサーにはRodriguez Jrなるアーティストと、プログレッシヴトランス界隈では大人気だそうなMinilogueのお二方。先ずはRodriguez Jrのリミックス、こちらは原曲のポップなメロディーを生かしつつエレクトロニック度を高めたテックハウスに仕立てており、湿ったキックと合わせてノスタルジーを感じさせる味わいのあるトラックになっております。で問題なのがMinilogueの方なんだけど、これが14分にも及ぶインナートリップを誘発する極上のサイケデリックミニマル。原曲のポップなイメージはどこへやら、暗黒の沼に引きずり込まれるドロドロのベースと鈍いリズムトラックが永遠と貫ぬきながら、空間の広がりを感じさせるダビーな音響使いで展開を作っていく絶妙なリミックス。徐々に緻密な変化を遂げる螺旋階段を昇っていくようなミニマルな展開は、えも言われぬ恍惚感をもたらします。狂気と快楽を誘発する麻薬的なトラックですね。

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| TECHNO7 | 08:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Donnacha Costello - Before We Say Goodbye (Poker Flat Recordings:PFRCD25)
Donnacha Costello - Before We Say Goodbye
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2004年の10ヶ月連続リリースとなったカラーシリーズが高評価となったDonnacha Costelloの最新作。カラーシリーズではオールドスクールなアナログ機材をフル活用して、ディープなアシッドハウス/ミニマルトラックを打ち出しましたが、新作はPoker Flatからのリリースと言う事を考慮してか比較的癖の少ないテックハウスが中心。勿論ここでもヴィンテージなアナログシンセ・Rolando SH-101を使用したパキパキとした明るいシンセ音は、テクノらしいエレクトロニック度も高めなのに丸く当たりの優しさゆえか耳への馴染みは良く、温かみさえ感じさせるテックハウスは和みがあってリスニングとしても気持ち良い内容です。滑らかな展開ですいすいと進んでいくメロディアスなテックハウス満載で、水準は非常に高いですね。ただ最初に述べた様に癖が少ないせいかやけにあっさりと軽い印象も感じてしまう点もあり、本当に普通のテックハウスだなと。活動歴も長いだけにベテラン的にしっかりと纏め上げたと言う見方もあるのかな。

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| TECHNO7 | 13:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Thomas Fehlmann - Gute Luft (Kompakt:KOMPAKT CD 81)
Thomas Fehlmann - Gute Luft
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Alex Paterson率いるThe Orbの右腕だか左腕だか知らないが、とにかくこの人が参加してるかしてないかでThe Orbのサウンドもかなり変わってくる位の影響力があるThomas Fehlmannのソロ最新作。ベルリン市民の24時間と言うドキュメンタリー番組のサントラと言う位置付けらしいですが、そんなコンセプトには全く関係無くいつものフェルマン節全開なダブアンビエントサウンドが満載。揺らめく重いダビーな音響空間が終始続くアンビエントワールドでありながら、各曲はコンパクトにまとめられ、そして不鮮明なノイズ混じりの霧靄から浮かび上がるポップなメロディーがあるおかげか、不思議と重苦しいだけでなく温かみのある優しさも感じられます。そしていつも思うのは、この人の発する音の美しさはまるでキラキラと煌くガラスの破片の美しさと似たような感覚があり、その洗練された耽美な音色にうっとりする程の陶酔感を感じてしまうのです。もう余りの気持ち良さに身も心も融解してしまうんじゃないか、そう思う位の圧倒的な音の粒子の煌き。The Orbの美的音響を担当しているのは、間違いなくThomas Fehlmannでしょう。ちなみに聴いた限りでは幾つかの曲はThe Orbやフェルマン自身の過去作品から、リメイクと言うか同じネタを借用しているみたいです。

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| TECHNO7 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Agoria - Balance 016 (EQ Recordings:EQGCD029)
Agoria - Balance 016
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フレンチテクノシーンの奇才・Agoriaが、名物MIXCDシリーズとなっている"Balance"の16作目を担当。今までに2枚のMIXCDをリリースしていてそれらもジャンルレスで強烈なぶっ飛び感覚を感じさせる内容でしたが、この新作もやはり同様にテクノだけではなく様々な音を組み合わせ、フロアとチルアウトルームを行き来する様な変態的なミックスを披露しております。ジャンルの多様性はテクノ、ハウス、ダウンテンポ、ディスコダブ、アンビエント、ミニマル、ニューウェーブなどまでに及び、最早このMIXCDがどんな音に当てはまるのかを説明するのは意味が無い状態にまでなっております。そして単純に曲を繋げるだけではなく曲の一部のサンプルを途中に混ぜ込んだり、同じ曲を2度も使用する事で、1度目で感じた印象が2度目で更に強まる効果を誘発するなど、展開の作り方は確かに印象的。何よりも彼の創る音源からも感じられるギトギトでドラッギーな感覚が終始漂っていて、リズムトラックの強さやノリで引っ張っていく勢いのあるタイプのミックスとは異なる、つまりは精神作用の大きい麻薬的な覚醒感の大波に飲み込まれるミックスは、彼特有のトリッピーな感覚があり独創性が存分に感じられる事でしょう。その分振れ幅や展開の浮き沈みも大きく、また音の余りのどぎつさに体力が無い時は聴くのもしんどいかなと感じる点もあります。インパクトがある分だけ聴く人を選ぶ内容でもありますが、はまる人には心底はまって抜け出せなくなるのではないでしょうか。

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| TECHNO7 | 10:30 | comments(2) | trackbacks(0) | |
Autechre - Oversteps (Warp Records:WARPCD210)
Autechre - Oversteps
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英国テクノの良心・Warp Recordsの最古参ユニットの一つ・Autechreの通算10枚目のフルアルバム。前作のレビューを書いた時も「惰性で買い続けている」と酷い事を書いておりましたが、本作もやはり何となくな流れで購入。でもなんだか前作から印象がかなり変わったと言うか、初期のアンビエンスな音がかなり戻ってきたみたい。前作でアンビエント性がかなり戻ってきたかなと当時は感じておりましたが、実はそれを完全に実現させたのが本作なのかもしれない。人工的かつ幾何学的に練られた複雑なリズムは幾分融解しすっきりと引き締まりを感じさせ、インダストリアルで荒廃した音も後退し、そしてその分儚さと美しさが前面に押し出されたように感じます。まるで桜の花が散り行く時に垣間見せる退廃的な美しさ、そして荒涼とした趣を感じさせます。勿論そんな美しさはあるものの、それはどこか冷えていてあくまで人工的で非人間的で機械的で、やはり彼らが意識するかしないかにかかわらず心の奥底では衝動よりも理性を優先させた音楽を創っている様な印象を受けます。それが彼らの音楽性と言ってしまえばそれで終わりなんですが、もう少々ラフでアナログな感覚を打ち出しても良いんじゃないかと思う点も。それはそうと入り組んだリズムが後退した分だけ、寝る時のアンビエンスとして聴くのならばまあ悪くはないかなとも思います。機能美とドラマに満ちた音楽性である事は、疑いようがないのだから。

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| TECHNO7 | 12:00 | comments(2) | trackbacks(0) | |