Deadbeat - Drawn And Quartered (BLKRTZ:BLKRTZ001)
Deadbeat - Drawn And Quartered
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1999年にPoleことStefan Betkeによって創立され音響派ダブテクノを引率してきた~scapeは、惜しむらくも昨年2010年に運営をストップさせてしまった。巨匠Basic Channelの以降のベルリンにおけるダブテクノの先導者でもあった~scapeにはJan JelinekやKit Clayton、Mike Shannonと云った奇才が集まっていたが、今日紹介するDeadbeatも同レーベルから作品をリリースしていた。~scapeのクローズを惜しむDeadbeatの新たなる指標は、自らがBLKRTZなる新レーベルを立ち上げ~scapeの意匠を継いで行く事。Wagon Repairからの前作は完全にフロアへと視点が向いていたダブテクノだったが、新作に於いては先祖返りして初期Poleらを受け継ぐ極力無駄を排しグルーヴの起伏も抑えたダブテクノで、緩いどころか極スローテンポでドロドロとした作風はレゲエへと同調したRhythm & Soundの様でもある。まあ彼等に比べれば甘美で深遠なる音響には色気があり、紫煙の様に漂う微かな上物のノイズにはアンビエンスも感じるし、粘り気のあるグルーヴはあれどRhythm & Sound程のダビーなしつこさはなくミニマルが基調になっている。全てが10分以上の長尺な5曲収録とミニマルな作風を生かしたどっぷりはまらせる構成で、蒸し暑く気怠い真夏には更に部屋の湿度を上げるであろうが、意識も朦朧とする位の中で聴く方が気持良さそうなアブストラクトなアルバムだ。



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David Alvarado / Santiago Salazar - La Soledad / Caja De Luz (Historia y Violencia:H&V006)
David Alvarado / Santiago Salazar - La Soledad / Caja De Luz

一時期はLos Hermanosのメンバーとして、そして自身のIcanで活動しているSantiago Salazarと、Sandwell Districtでの活躍も記憶に残るSilent Servantの共同レーベル・Historia y Violencia。レーベル公式のリリースながらもどのEPもホワイト盤らしき制作で、完全にDJツール向けのテクノトラックを粛々とリリースしているアンダーグラウンドなレーベルです。そのレーベルの新作はロスアンゼルスのテックハウサー・David AlvaradoとSantiago Salazarのスプリット盤。寡黙ながらもどの作品においても高品質なテックハウスを聴かせてくれるDavidは、やはり新作でも硬質で重厚感たっぷりなキックと朧げで無機質な上物で飛ばしまくるミニマルなテックハウスをやっていて、特に近年の硬派なベルリンテクノのミックスにはすんなりはまりそうな内容。そして一般的にはIcanでの活動からハウス系と思われている節もあるSantiagoは、なんとCarl Craigの"At Les"をネタに用いた神秘的なテックハウスを披露。"At Les"の儚いあの上物を終わりなくミニマルに反復させ、その下でアクの強いブリーピーなシンセが蠢き、美しさとドープなフロアの高揚が混じり合う見事な手腕を発揮しております。マイナーなレーベルなので一般的には耳にする機会は多くないのが寂しいところですが、是非とも今後も継続してフロア向けのトラックを制作して頂きたいですね。

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Resoe - Black Void Of Space (Echocord:echocord cd09)
Resoe - Black Void Of Space
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デンマーク・コペンハーゲンよりBasic Channel影響下のディープかつダビーなテクノを推し進めるレーベル・Echocordの新作は、Dennis BogことResoeの1stアルバム。Dennis自身もBaum Recordsと言うミニマルダブのレーベルを運営しておりミニマルダブへの偏愛ぷりは伝わってきますが、このResoeのアルバムを聴く限りではベーチャンの意思を汲み取りつつも更に前進する姿勢も感じられます。平たく言ってしまえばリズミカルなベーチャンと言うべきか、霞がかった不鮮明なノイズのヴェールや過剰なダブ処理は適度に抑制され、その分硬質な音質と手数の多い非4つ打ちなリズムで揺さぶりをかけてきます。この手のジャンルらしくBPMも早くないしテンションも高くはないけれど、変則的なキックで左右に揺さぶられるグルーヴには非常に躍動感が感じられ、奥深さのあるディープな音でありながら肉体的刺激もしっかりと感じられますね。なのでベルリンで流行っているダブステップと邂逅したテクノとも親和性も良さそうだし、ベーチャン以降のミニマルダブを更に推し進めているとも言えるでしょう。本家ベーチャンの様な沈静で極度のストイックさはないものの、その分この手のジャンルに精通していない人にとっても聴き易い作品であるとも思います。

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Aril Brikha - Forever Frost (Art Of Vengeance:AOV003)
Aril Brikha - Forever Frost
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スウェーデンから最もデトロイトに接近したAril Brikha。先日テクノ史に残るアルバムをリイシューしましたが、今度は自身のニューレーベル・Art Of Vengeanceから新作もリリースしました。元々寡黙な活動で作品数も多くはないのですが、純然たる新作はなんと4年ぶり。タイトル曲の"Forever Frost"からして幽玄なシンセのリフが幻想的なシーンを演出し、動きの多いベースラインで躍動感を産み出すスタイリッシュなテクノで、まさにAril Brikhaの真価が感じられます。そして裏面のソフトな耳障りのシンセが温かく染み入る"Tundra"、層のように乱反射する上物の中を透明感のあるパッドが伸びる"Glaciar / For Minou"と、どちらもディープ目かつ内に情熱を秘めるように控えめな心情の表現に侘び寂びを感じます。普段よりは幾分か地味と言うか落ち着いた印象が強いですが、Aril Brikha節とも言えるメロウなシンセのリフは健在だし、一聴して彼の音と判断出来る個性があるのは流石ですね。

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Dominik Eulberg - Diorama (Traum Schallplatten:TRAUM CD24)
Dominik Eulberg - Diorama
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3年半前に突如Cocoon Recordingsに鞍替えしてリスナーを驚かせたDominik Eulbergの新作は、古巣Traumに戻っての通算4枚目のアルバム。昨今の土着的でオーガニックなミニマル大旋風の中でも、Dominikは活動当初からエレクトロニックで優雅なスタイルを崩さずに自身の音を確率しているアーティストの一人。本作でも以前と変わらずプログレ的、又はトランス的な大仰なメロディーはゆったりとしかし心身も溶けてしまう程の喪失感を伴い、攻撃的ではなくしっとりと包み込んでくれるソフトな優しさが特徴。宝石箱をひっくり返しキラキラと眩い光が乱反射するような繊細な美しさが散りばめられて、線の細さも活かして上物を強調したトラックが中心。しかしその一方で、気の抜けたアシッディーなベースラインは飄々としながらも不吉な空気を纏い、上物の美しさとは対照的にトラックの一抹の闇を落とし込みます。基本的には今までの作風を踏襲し大幅な変化は見受けられないものの、一部のトラックでは牧歌的なダウンテンポに取り組み人工的な自然回帰を感じさせたり、音の肉付きはすっきりしつつも心なしかより豊潤な音の鳴りを聴かせていたり、ジャーマンミニマルの枠を越えた耽美派と言えるでしょう。

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Surgeon - Breaking The Frame (Dynamic Tension Records:DTRCD2)
Surgeon - Breaking The Frame
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一方では日本のテクノポップユニット・Perfumeを愛し、そして本業では無慈悲なテクノ外科医を務めるAnthony ChildことSurgeon。ハードテクノ、いやインダストリアルテクノの真打ちが12年ぶりに自身のDynamic Tensionよりアルバムをリリースさせました。12年ぶりとは言いながらもその間にも常にEPは出していたし、日本にも何度も訪れてDJ/ライブを行っていたので特に久しぶりと言う事でもないのですが、しかしアルバムと言うフォーマットにおける本作品の完成度は予想を越えた物でした。幕開けは予想外にビートレスのメタリックな音響系テクノから始まりますが、ここからして既に荒廃した雰囲気に包まれるSurgoenの凍てついた世界観が拡がります。そして次からは皆様お待ちかねのハードなテクノの開始。金属的な質感を全面に出したインダストリアル臭は当然ながらも、ソフトウェア音源中心なのだろうかかなり鋭く研がれた音はまるでカミソリの様。かつてのザクザクとした鉈の切れ味で雑な暴力感を出すのではなく、カミソリの鋭角な刃で裁断されるように緻密で正確なビートが刻まれ、重量感や密度に頼らないハードな音楽性を打ち出しています。緻密に抑制されたマシーナリーなグルーヴ、しかし躍動感を失わない鞭の様なしなやかさも兼ね備え、これこそDynamic Tensionとも呼ぶべき物なのでしょう。アルバムはリスニング系とダンストラックがほぼ交互に連なっておりますが、リスニング系の曲に関しても決して箸休めな作品でもなく、Surgeonの狂気を帯びた抑圧感がリスナーをアルバムの世界に閉じ込めるでしょう。容赦も情けも一切無しの男気溢れるハードなテクノ、流石にSurgeonは別格でした。

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Agoria - Fabric 57 (Fabric:fabric113)
Agoria - Fabric 57
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今年オリジナルアルバムを出したばかりのフレンチテクノの貴公子・Agoriaですが、その熱も冷めやらぬ間に名門FabricからMIXCDもリリースさせました。今までにもジャンルレスに縦横無尽なMIXCDを3枚もリリースしているけれど、今年出たアルバムから毒々しさが消えて洗練されたのと同様に、本作もかつての作風に比べると艶はありながらもやんわりと落ち着いた印象を受けました。序盤のVainqueurやMoritz von Oswaldのダブテクノなどどっしり重たいグルーヴから深く始まり、歌物テクノも多用して刺激的に盛り上げつつ、そこからSpace Dimension ControllerやInfiniti、そして自身のヒット曲"Speechless"などデトロイト系で一気に未来へと加速して行く中盤。ただヒット曲をプレイするだけでなくそこに声ネタを被せて原曲以上の盛り上がりも作る技も披露しつつ、ゴリゴリのブギーハウス〜アシッドハウスで攻撃的になったと思いきや、終盤ではJose JamesやCarl Craig(本当C2の曲はよく使うな)でぐっと夜のアダルティーな世界へと突入するディープハウスからElla Fitzgeraldのジャズトラックでしっぽりと終焉を迎えるドラマティックな展開。散々色んな方向へと引きずり回されながらも、そこはAgoriaの審美眼で選びぬかれた曲が使われており、派手な夜の喧騒と言うよりはエレガントな大人の舞踏会の夜のようです。ベテランらしく深化したと言う表現がしっくりきました。

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Autechre - EPS 1991 - 2002 (Warp Records:WARPCD211)
Autechre -  EPS 1991 - 2002
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気付けば今年はAutechreの最初のリリースから20年目。多難の時代を耐え抜いてきたUKテクノの牙城・Warp Recordsの最初期からレーベル専属ユニットとして、レーベルと共に成長と進化を成し遂げたAutechre。インテリジェンステクノやアンビエントから始まり、ヒップホップやIDM、エレクトロニカと言った時代の流れも吸収しながら、何時の間にかロックリスナーまでをも虜にしてしまった稀代の才能。とは言いながらもアルバムも全部持っているのにそこまで聴き込んでいないのは、自分はやはり単純なビートで踊れるクラブミュージックが好きだからで、Autechreの音楽は取っ付きにくい印象を持っているから。しかし定期的にリリースされるアルバムとは別の意味を持つ、アルバムには収録されずに小さい世界の中であくなき実験と挑戦を敢行してきたEP群は、こうしてBOX集として聴くとアルバムよりもバラエティーに富んでおり面白みと言う点で優っている様に思われる。タイトル通り1991年から2002年までのEPをアルバムとしてまとめた5枚組と言うお腹の膨れるボリュームだが、目玉はWarp契約以前にリリースしたEPである"Cavity Job"。これだけ聴けば到底Autechreとは思えないアシッディーなレイヴサウンドで、流石に古臭い感じは否めないもののイケイケ感が逆に新鮮でもある。そして初期のハードでありながら荒廃した凍てつく音から、徐々にビートへの拘りを開花させ難解性を深めると共に無駄を削ぎ落としてシャープなIDMへと変容を遂げ、ヒップホップやドリルンベースの片鱗も聴かせつつAutechreにしか成し得ない音楽を形成していく。特筆すべきはアルバムよりも遥かにダンスミュージック的であり、その意味では彼等の歪なリズムなリズムを生かしたハードなライブに近い物を感じた。今思うとアルバムはリスニング向け、EPはフロア向けと分けて制作していたのかもしれないが、兎に角まあアルバムよりもアグレッシブで楽しめるのは間違いないだろう。そしてアートワークはあのThe Designers Republicが担当だ、正に記念的作品集となっている。

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Yoshinori Sunahara - Liminal (Ki/oon Records:KSCL 1666-7)
Yoshinori Sunahara - Liminal
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日本のテクノ…と言うよりは電子音楽と言うジャンルにおいて金字塔となった"Lovebeat"(過去レビュー)から10年、ようやく待ちに待った砂原良徳のオリジナルアルバムが到着。余りにも完璧過ぎたあのエレクトリックソウルなアルバムは10年もの歳月を耐え忍ぶには十分なノスタルジーがあったが、更なる変容を遂げた新作は得た物と失った物があり、またもや物議を醸し出す作品となっている。当たり前の事だが音へのこだわりを人一倍持つ砂原が創り出すこの音は、一聴してメロディーやハーモニーも抜きに彼の音だと気付かせる程の電子たる個性を放っている。しかし音の尖り具合たるや前作の比ではなく歪なノイズや強烈に打ち付けるインダストリアルなパーカッションも導入され、その上引き算の美学から一転して音数の密度や動きが増えた事により耳への直接的な刺激は前作以上だ。分り易いメロディーは排除されノスタルジーもファンタジーも忘却の彼方へと消え去り、それどころか何処か虚ろで感情が捨て去られた重苦しいムードが全編を支配し、今の過酷な現実とリンクするように不安が重く伸し掛る。もう夢は見られない、妄想へと逃避も出来ない、そして電子世界から生まれたバーチャルリアリティーが迫り来る。非常に力強くも閉塞感に包まれ聴く者に忍耐力を要求するであろうアルバムだが、砂原良徳にしか成し得ない電子音楽(※敢えてテクノではなく)を確固たる音として具現化している。

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G.Mitchell & Jebski Feat. Kengo Ono - Natsu EP 2 (Panoramic Audio Domain:pad-06)
G.Mitchell & Jebski Feat. Kengo Ono - Natsu EP 2

デトロイトからLos HermanosのGerald Mitchellと東京のJebskiの友情から生まれた"Natsu"プロジェクト第二弾は、国内のクラブシーンを盛り上げるアーティストがそれぞれの持ち味を存分に打ち出したリミックスを披露。リミキサーにはJebskiとも交流の深い井上薫(Kaoru Inoue)、DJ Yogurt & Koyas、Calmとばっちり相性の合うアーティストが集められ、どのリミックスも原曲のエモーショナルな面を残しつつ更なる進化を遂げております。Calmのリミックスはライブ感溢れるブレイクビーツとファンキーなサックスの絡み合いから始まり、後の盛り上がりを予想させるブレイクで一旦4つ打ちに移行し、再度ブレイクビーツに回帰する予想外の構成。サックスを残しながらもドスドスと力強い4つ打ちと透明感のある美しいシンセリフを被せたDJ Yogurt & Koyasのリミックスは期待通りの出来で、中盤での壮大な感情の爆発が素晴らしく、とにかくフロアでも野外でも盛り上がりそうな大箱向けのテック系。そして贅肉を削ぎ落としてミニマル色を強めた井上薫のリミックスは、テックな音でじわじわ引っ張りつつも中盤以降は煮えたぎるソウルフルなサックスも爆発させ、電子とオーガニックの自然な融和が成り立っています。どのリミックスもアーティストの持ち味が存分に発揮されているとともに、様々なフロアの状況で映えそうな音でお薦めです。

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