CALENDAR
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2019 >>
RECOMMEND
RECOMMEND
FRKWYS Vol.15: serenitatem
FRKWYS Vol.15: serenitatem (JUGEMレビュー »)
VISIBLE CLOAKS,YOSHIO OJIMA,SATSUKI SHIBANO
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
The State Between Us
The State Between Us (JUGEMレビュー »)
The Matthew Herbert Big Band
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
MOBILE
qrcode
SPONSORED LINKS
Shelter - Profondeur 4000 (Growing Bin Records:GBR016)
Shelter - Profondeur 4000
Amazonで詳しく見る(アナログ盤)

2018年も絶好調だったGrowing Bin Records、ダンス・ミュージックの枠に収まらずにオーナーの音楽観に適ったものであればジャンルに関係なく取り上げられるが、特に昨今のニュー・エイジやアンビエントの再燃の中でこそこのレーベルは輝きを取り分け放っていると感じられる。2018年には幾つか素晴らしい作品がこのレーベルからリリースされていたが本作もその中の一枚であり、手掛けているのは過去にはInternational FeelやIs It Balearic?傘下のUber等からリリースをしているパリジャンのAlan BriandことShelter。これまでの作品ではエキゾチックやカリビアンな雰囲気を軸に生音も用いながら緩く開放的なバレアリック・サウンドを展開していたが、このニューアルバムもバレアリックという方向性は変わらないものの1960年代のフランスの短編映画にインスパイされたとの事で、何処かサウンド・トラック的でもある。ハープの深い残響から始まる"Variation Abyssale (Part 1)"はビートも無く静謐さの中に美しさが持続するアンビエントで、続く"Immersion"は神聖なシンセのレイヤーに繊細で民族的なパーカッションも加わりながら荘厳さもあるニュー・エイジ風と、以前の作風に比べると随分と慎ましい。"La Vie à L'Ombre"も音の数は制限され空間の静けさが際立ち、そこに点描のように描かれる電子音のメロディーや管楽器やピアノらしき音を微かに用いて、映画の一場面のようなBGM感覚が強い。と思いきや一定間隔のシンセのディレイが多幸感を生む"Plenitude Azotee"は極楽浄土へ向かうドリーミーなアンビエントで、その意味を含まない音の心地好さは無垢そのものだ。"Dans La Jungle De Varech"では不思議なシンセの鳴りにかつてのジャーマン・プログレを思い起こす点もあり、しかし生命力が息衝いているかのようなエキゾチック感もある世界観は過去の作品とも共振する。そして無重力空間に放り出されるフローティングなシンセが特徴の"Fumeurs Noirs"、ぼやけたアンビエントの中に時折スピリチュアルな打楽器や鈍い電子音が現れ、快楽的ながらも聞き流す事を許さないぐっと意識を掴む個性がある。アルバムは過去の単純明快なエキゾチックやトロピカルなバレアリック性に比べると随分と観念的でエクスペリメンタルなニュー・エイジ色が打ち出されているが、そういった音楽だからこそ自由度の高いGrowing Binからリリースされたのも納得であり、昨今のニュー・エイジの流行りの中でもユニークな個性を確立させている。



Check Shelter
| ETC4 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Motohiko Hamase - Reminiscence (Studio Mule:studio mule 10)
Motohiko Hamase - Reminiscence
Amazonで詳しく見る(US盤)
 Amazonで詳しく見る(アナログ盤)
アンビエントやニューエイジの再評価、そして7〜80年代の日本の音楽の再発掘、ここ数年のこの動きは最早一種のムーブメントであるのは間違いなく、そんな動きに追随するのはダンス・ミュージックの業界において日本から世界へと羽ばたいたMule Musiqだ。別ラインとして立ち上がったStudio Muleはダンスに拘らずに制約から解放され、その動きは現時点では和モノへと向かっているようで、2018年にはジャズ・ベース奏者である濱瀬元彦の『Intaglio』(過去レビュー)をリメイクという形で復刻させている。それから間髪入れずにリメイクされたのが本作『Reminiscence』で、こちらは1986年にリリースされた濱瀬の初のソロアルバムだ。本作も『Intaglio』と同様に諸般の事情により本人によって新たに再レコーディングとなっているが、一般的なジャズという音楽から想像される音楽そのものではなく、エレクトロニクスも大幅に導入しながら現代音楽のミニマル性やアジアのエキゾチックな雰囲気、勿論濱瀬の武器でもあるフレットレス・ベースのジャズ性もあり、もし何かの言葉で述べるとすればアンビエント・ジャズという事になるのだろうか。木琴系のミニマルなフレーズがパーカッションが先導する"Childhood"はその構成が現代音楽的な要素があり、そこにオーケストラも加わるとクラシックにも聞こえ、咽び泣くような感情的なベースやしみじみとした笛の音色も渾然一体となり、幕開けから非常にドラマチックに展開する。"Intermezzo"も高速に連打されるマリンバのミニマルなフレーズが耳に付くが、静かに躍動するフレットレス・ベースはジャズのスウィング感があり、エキゾチックな軽く響くパーカッションの連打も加わって後半に向かって徐々に盛り上がっていく流れはミニマル性が活かされている。もう少しジャズの要素が感じられるのは"Tree"だろうか、繊細で優美なピアノのメロディーや朴訥とした笛の音色、そして自由に踊るベースラインはエモーショナルなのだが、そこに民族系のメタル・パーカッションや壮大なオーケストラも入ってくるのは最早ジャンルの形容がし難く面白い。"Na Mo Che"では打楽器や木管系の笛も用いて、メロディーというよりはリズム的に用いる事でビートは入っていないものの疾走するリズム感を生んでおり、Steve Reichを思い起こさせる世界観もあるのはやはりコンテンポラリー・ミュージックや現代音楽としての要素も含んでいる。ただどの曲にしても濱瀬によるフレットレス・ベースはリズムとなるための単なるベースラインではなく、これが曲の印象を作っていくメロディーの一つとして存在している事で、それがジャズの雰囲気を醸している事もありベース奏者らしい音楽性も十分にある。こんなユニークな音楽が80年代の日本にあった事は驚きだが、廃盤になった憂う状況から現代になって再評価されるも、時代を越えて聞けるエモーショナルかつメロウな普遍性があるかであり、文句無しに素晴らしい名作と断言する。



Check Motohiko Hamase
| ETC4 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Dalholt & Langkilde - Sur Plus (Music For Dreams:ZZZV17001)
Dalholt & Langkilde - Sur Plus
Amazonで詳しく見る(アナログ盤)
 Amazonで詳しく見る(MP3)
現行バレアリックを引率するレーベルの一つ、2000年初頭にKenneth Bagerが設立したデンマークのMusic For Dreamsはそのジャンルの中では最早老舗と呼んでも差し支えないレーベルで、膨大なカタログにはイビサ系のベテランから新進気鋭のアーティストまで名を連ねており、このレーベルからリリースされる事はある意味では太鼓判を押されているのと同義だ。そんなレーベルから2018年5月に突如リリースされたのが本作で、デンマーク出身のMads DalholtとFrederik Langkildeのデュオによる初のアルバムとなっており、過去にEPさえもリリースしていないアーティストがこのようにいきなり名門レーベルからアルバムを出すのだからレーベルとしてもそれなりの一押しでないかと伺える。アルバムはもはやダンス・ミュージックの延長線上ですらなく、レイドバックしたダウンテンポ〜バレアリックが中心で、哀愁が滲むスパニッシュギターも効果的に用いる等バンド的なサウンドも強い。虹色に染まった夕日の中に薄く広がっていくようなスパニッシュギターがサウダージを奏でる"Charite"でアルバムは始まり、朗らかながらも咽び泣くようなギターソロに心酔する緩やかなダウンテンポの"Doucement"で何だか空が暗い闇へと移ろい変わる時間帯のよう。"Disco Disco"は軽いキックの4つ打ちも入ってスムースなグルーヴに乗り、そこに喋り口調の歌やチョップ風なコズミックなシンセも加わってバレアリックを通過したモダン・ディスコか。そしてタイトル曲の"Sur Plus"、静寂の中にか細いアコギの残響が広がりオルガンや乾いたパーカッションが無味乾燥に味付けする非常にブルージーな曲で、この枯れた感もある円熟味は長年活動を続けたベテランアーティストかのよう。また比較的ハウス・ミュージック寄りな"Groovin Man"では爽快なタブラが空へと抜けつつメランコリーなアコギとキラキラしたシンセが絡み合いながら、ぐっと情感を強めて興奮も高まりながら夜が深まっていく曲調でもある。ただやはりアルバム全体の印象としてはバレアリックではありながらも、明るい青空が広がるよりは夜の闇が広がる空のイメージで、大きな空間に残響が広がっていく開放感がありながらもそれは多幸感よりは侘び寂びにも近い質素な美意識が通底している。



Check Dalholt & Langkilde
| ETC4 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Chris Coco - Indigo (Music Conception:MUCOCD031)
Chris Coco - Indigo
Amazonで詳しく見る(日本盤)
 Amazonで詳しく見る(MP3)
バレアリック・ミュージックが世界的に盛り上がる現在のシーン、日本においてはその道を求道的に歩み続けるCalmがその先駆者である事は間違いないが、そのCalmが自信を持って彼が主宰するMusic Conceptionから送り出したのがChris Cocoによるニューアルバムだ。Cocoは80年代後半から活動を開始し、90年代初期に訪れたイビザのバレアリック・ミュージックに強い影響を受け開眼し、その中心的存在であるイビザのCafe Del MarやCafe MamboのレジデントDJを務めるなどこのシーンの重鎮の一人。そんなアーティストが最新作に名付けたタイトルは『Indigo』で、日本に何度か訪れる度に日本の藍色に魅了されたそうで、この色に対するイメージや意味を音楽へと転換させたと本人は述べている(参照)。そんなコンセプトから生まれた音楽は全編淀みの無いクリアな多幸感に満たされたチルアウト/バレアリックな響きで、開始となる"Event Horizon (In)"からしてビートレスな空間にほのぼのとした電子音のメロディーが静かに浮遊しながら淡いシンセのディレイが広がるこの曲は、Meditation Y.S.(Yoshihiro Sawasaki)の音に意味を込めずに底抜けにオプティミスティックなアンビエントを思い起こさせる。続く"Pou Des Lleo"もビートの無いぼんやりとしたアンビエントだが、ピアノやギターにベース等の有機的な音色を前面に打ち出しながら透明感あるエレクトロニクスも自然に溶け込んで、喧騒から離れた何処か落ち着いた時間が過ぎる田園地帯の牧歌的な雰囲気に心が安らぐ。そしてCalmと一緒に制作した"Indigo"は胸を締め付けるトランペットやピアノも用いられて確かにCalmらしいセンチメンタルな雰囲気が強く出ており、ざっくり生っぽいリズムも合わせてしみじみとした郷愁が溢れ出る音楽は、静寂の中に凛とした気品が感じられる。"You Are Exactly Where You Need To Be"も繊細で美しいピアノが静けさの中に点々と描かれ、抽象的でぼやけたシンセがキャンパスに滲みながら広がっていくようで、淡くも美しい色彩感覚がドリーミーな風景を喚起させる。"Onda"はまたしてもMeditation Y.S.路線のオプティミスティックな響きを活かしたダウンテンポ・アンビエント、天上へと誘われる夢心地な時間。最後は"Event Horizon (In)"と遂になった"Event Horizon (Out)"、豊かな色彩とクリアの響きの電子音と壮大なオーケストラの音が一つとなり豪華絢爛でありながら、音の隙間を活かす事で気品良さも残した壮大なバレアリック・サウンドは、またここからアルバムの開始へと繋がる事でアルバムの世界は何度でもループする。イビザと言うとどうしても夏の商業的で享楽的なパーティー・シーズンが有名なものの、其の地には豊かな自然が自由奔放に広がる場所もあるようで、このアルバムからはやはり後者のイメージが適しているだろうし、それは日本の藍色の深い感情や穏やかな安堵のイメージと被さる点もあったのだろう。ただひたすら心の安静を取り戻す清々しくもドリーミーなこのバレアリック・ミュージックは、流石イビザでの長い音楽経験に裏打ちされた真髄がある。



Check Chris Coco
| ETC4 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Midnight In Tokyo Vol. 2 (Studio Mule:Studio Mule 6 CD)
Midnight In Tokyo Vol. 2
Amazonで詳しく見る(US盤)
 Amazonで詳しく見る(日本盤)
近年再発掘がされる和モノはもはやムーブメントに近い勢いとなっているが、その流れに乗るレーベルも少なくはない。2005年の設立以降、ダンス・ミュージックのシーンにおいて世界規模での成功を成し遂げた日本のMule Musiqもその流れに同調し、2018年初頭からダンス・ミュージックという制限を取り払ったStudio Muleから和モノのシリーズとして『Midnight In Tokyo』を開始させている。第一弾はディスコやブギーが主題となっていたが、その第二弾となる本作は全体としてエレクトロニックなフュージョンやジャズ、またはシティーポップが中心となっており、当方は収録されているアーティストについて大半は知らないもののそれでも尚直ぐに魅了される程の普遍的な魅力を持った曲が集められている。オープニングはサックス奏者の沢井原兒による"Hikobae"だが、これがかなり異形なフュージョンで面白い。回転数が狂ったのかスローモーなテンポに和なのかエキゾチックなのか訝しいサックスのメロディーに民族的なパーカッションも加わり、空間も歪むようなサイケデリックな感覚に満たされるこの曲は、Bill Laswell率いるMaterialがプロデュースしたとの事で納得。続くTodayʼs Latin Projectはラテンのカバープロジェクトだったようで、"Danza Lucumi"は燦々とした太陽の日が降り注ぐカリビアンの長閑な雰囲気に溢れており、その青々として清々しいイメージは正に南国だ。そして坂本龍一も制作に加わった鈴木茂による"On The Coast"は、AORやシティー・ポップの範疇だろうかレトロながらもキラキラとした都会的な響きで、特に咽び泣くようなメロウなギターが心に染みる。一方でかなりジャズ色の強い曲もあり、King Kong Paradiseによる"Samarkand"はリズムは大胆かつライブ感溢れて展開しギターも感情が爆発した如く咆哮し、ラテンとジャズが融合したセッション性の強い激熱な展開が繰り広げられる。そしてアルバムの終盤は特にメランコリーなフュージョンが中心で、鳥山雄司による透明感のあるシンセに切ないギターが表情を付けていくアーバン/ブギーな"Bay/Sky Provincetown 1977"、しんみりとしたエレピに女性ボーカルも起用して切なくしとやかなAORに仕上げた奥慶一による"Heat Wave"、そして最後はSafariによる南国のリラックスしたビーチサイドな雰囲気が溢れる郷愁のレゲエ風味もあるラテン・フュージョンの"Day Dream At The Bob's Beach"と、メランコリーな曲調が続きぐっと引き込まれる事間違いなし。7〜80年代の日本に、そしてクラブ・ミュージックではないものの、こんなに素晴らしい音楽があったなんて今更ながら再発見であり、こうやって素晴らしい音楽に出会う機会を提供するStudio Muleの役目は非常に大きい。



Tracklistは続きで。
続きを読む >>
| ETC4 | 10:00 | comments(0) | trackbacks(1) | |
山口美央子 - 月姫 (pinewaves:PW-04)
山口美央子 - 月姫
Amazonで詳しく見る(日本盤)

ダンス・ミュージックの界隈で発生している和モノ・ブームだが、例えばニューエイジやアンビエント方面で前衛的な活動を行うMusic From Memoryからもニューウェーブ・ポップのdip in the poolがリイシューされるなどの流れを見ると、それを単なるブームとして冷ややかな視点で見逃してしまうのはもったいない。時代に埋もれながらも魅力ある作品だからこそリイシューに至っている事も事実であり、例えば2017年に纏めて3枚リイシューとなった山口美央子のアルバムも、当時は売れなかったものの同様に魅力的だ。1980年に「シンセポップの歌姫」というキャッチコピーでデビューしたそうだが、売上的には芳しくなくその当時の最終作品である本作で自身の作品を制作する事は止めてしまう。その代わりに作曲家として様々なアーティストに楽曲を提供し、表舞台には立たずとも音楽的才能を発揮していたようだ。

さて、1983年にリリースされた本作は、それまでのオリエンタルなシンセ・ポップ/テクノ・ポップな作風ががらっと変わったわけではないが、しかしジャンルとしてのアンビエントではなくアンビエントなムードが全体に立ち込めており、その意味では昨今のアンビエントやニューエイジの再評価の中に含められてもおかしくはないだろう。プロデューサーに立川直樹、アレンジャーに土屋昌巳、シンセサイザープログラマーに松武秀樹など一流のサポーターが揃っている事も影響は大きいだろうが、何処か懐かしいレトロなシンセのサウンドの響きと共に哀愁が溢れ出す山口のメロディーの素晴らしさは、非常に耳馴染みが良いという意味でポップだ。風鈴のサンプリングから始まるアンビエント調の"夕顔 ―あはれ―"はしかし繊細で美しいピアノのコードへと展開し、シンセの効果音も色々と鳴る中に切なく悲哀の歌が続く。続く"夏"は流麗なシンセストリングスやアナログのキックが印象的で、演歌にも似たようなゴージャスな感もありつつ、物悲しい歌によってしんみりと纏められている。そして"沈みゆく"では何とTR-808のリズムマシンによる素朴で簡素なリズムが鳴っており、そこにシンプルながらも繊細な美しさが際立つピアノが淡い叙情を付け加え、シンプルな構成だからこそ音の響きや心に染みる旋律の良さが際立っている。本作を最も特徴付けているのは"白昼夢"で間違いなく、浮遊するようなアブストラクトなシンセから始まり、そこからほんのりとメランコリーなピアノの旋律が現れ霧がかったようなシンセが全体を覆うこの曲は、正に白昼夢に溺れている状態のポップ・アンビエントだ。中には"月姫 - Moon Light Princess -"のようにアニメソングにも似たような弾けるシンセ・ポップな曲もあるが、変わったシンセの使い方の響きやアタック感の強いキックなど、ここら辺はYMO辺りのファンにも訴求出来るだろう。アンニュイだったりメランコリーだったりという要素が曲によって現れながらも 全体としてはポップでアンビエントな響きで山口の書く旋律が非常に心打つもので、時が経とうとも全く風化しない普遍性がある。何故当時これが売れなかったのか、それは時代が早過ぎたのかもしれないが、こうやって和モノ・ブームの中で再発掘されたのは当方にとっても山口というアーティストに出会うきっかけとなり非常にありがたいものだ。





Check Mioko Yamaguchi
| ETC4 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Calm - By Your Side (Music Conception:MUCOCD-030)
Calm - By Your Side
Amazonで詳しく見る(日本盤)
 Amazonで詳しく見る(MP3)
名は体を表すという諺があるが、Calmと名乗るそのアーティストが2018年にリリースした本作はその諺通りの音楽性を端的に示している。Calm=穏やかな、平穏なという意味を持つアーティスト名で活動する深川清隆は、元来からダウンテンポやディープ・ハウスにアンビエントといった要素を交差させながら、ダンスフロアに足を踏み入れながらも徹底して胸の奥を締め付けるような切なく叙情的な音楽を尊重していた。その意味でCalmの音楽活動は一本筋がずっと通っておりそのCalmという言葉通りの音楽を深掘りしていたが、本作はそれがより際立って強くアーティスト性を主張している。前作『From My Window』(過去レビュー)ではMoonage Electric & Acoustic Ensembleという他アーティストも招いたある種バンド的な制作だったが、本作では再度一人での制作に戻った事がよりパーソナル性を強めた事も落ち着きのある作風に影響しているだろうし、何と言ってもバレアリック・ミュージックが溢れる現在のシーンに自然と馴染む本作はCalmが元々持っていたバレアリック性を改めて提示もしている。アルバムの幕開けは"Space Is My Place"、美しいシンセのコードに合わせてCalm自身の清らかな歌や綺麗に舞うシンセのメロディーが穏やかにゆっくりとしかし雄大に展開し、後半から感傷的なギターやシンセコードへと切り替わって深い叙情を増すこの曲は、これから待ち受けるであろうドラマの始動に相応しい。そしてその曲名通りに夕焼けの中に星が現れてくるような"Afterglow And First Star"、しっとりとしたダウンテンポのリズムに輝かしいシンセが瞬きながら、湿っぽく感傷的なオルガンのソロが闇が深くなりつつある中に切なさを落とし込む。続く"Ending Of Summer, Beginning Of Autumn"はビートが入らないアンビエント色強めな曲だが、アナログシンセの引き締まって光沢感のある音が続く中に咽び泣くように切り込んでくるギターやほのぼのとしたシロフォンがしっとりした情緒を生み、深く心に潜り込んでいく内省的な雰囲気が強い。"Sky, Color, Passing"や"Shade Of Tree"のように活動初期のニュー・ジャズの系譜に連なる作風もあり、ざっくりとして生っぽいジャジーなビート感が大らかに揺蕩いながら、そこに無垢なシンセのレイヤーや素朴な歌が清らかな空気を持ち込こんで、落ち着いたムードながらも心の奥底から喜びが溢れ出すその世界観はバレアリックと共振している。そしてアルバムの最後を飾る"You Can See the Sunrise Again"も繊細でジャジーなリズムを刻んでおり、そこに一寸の曇りもないポジティブなシンセのメロディーやコードを重ねて、シンプルな作風ながらも心を開放するリラックスした雰囲気はアルバムを締め括るのに相応しい。全体として真夜中のクラブ/ダンスフロアよりも、静かに時が始まる早朝から長閑な昼を過ぎてオレンジ色に染まる夕暮れ時の時間帯という印象で、熱狂的な興奮よりも聞いていて心が穏やかに安堵するその音楽は、最早クラブ・ミュージックのリスナーだけで聞くのは勿体無いくらいだ。Calm流のバレアリック・ミュージックは、これまで以上にメロディアスでポップとして通用する。



Check Calm
| ETC4 | 22:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Domenique Dumont - Miniatures De Auto Rhythm (Antinote:ATN044)
Domenique Dumont - Miniatures De Auto Rhythm
Amazonで詳しく見る(MP3)

ほのぼのとした牧歌的な色彩感覚ながらも何かおかしな世界観のジャケット、ポップでもあり少し捻れた感もあるその雰囲気は音楽がそのまま投影されているようだ。近年のバレアリックやシンセウェイヴのムーブメントと共振するフランスのAntinoteから2018年9月にリリースされた本作は、2015年に同レーベルより謎のフランス人プロデューサーという紹介でデビューしたDomenique Dumontによる2枚めのアルバムだ。作品数が少ない事もあり今も尚謎多きアーティストだが、実はラトビア共和国のArturs LiepinsとAnete Stuceによるプロジェクトと判明した。とは言っても両者に関してそれでも尚謎多き存在である事に変わりはないが、しかしそんな霧に隠れたような知名度ながらも音楽そのものは闇を燦々とした光で照らし出すが如く抜群に魅力的なものだ。シンセ・ポップやバレアリックにトロピカルといった要素が含まれているがしかしどれか一つに当て嵌めるのは難しい音楽、陽気で牧歌的なムードと共に爽やかなダンスでもありリラックスしたリスニングでもあるそれは、とにかく愛くるしいポップ・ミュージックなのだ。急ぎ足のように、しかし軽いドラムが走る"Le Debut De La Fin"はほのぼのとしたシンセのコードに愉快で爽快なギターが切り込んできて、そして透明感のある歌も加わって実にフレッシュな空気が弾けるシンセ・ポップだ。続く"Quasi Quasi"もチープなリズムマシンのような素朴なビート感が辿々しくも新鮮で、そこに朗らかで愉快なシンセやキュートな歌が目まぐるしく展開して、一点の曇りも無いピュアな世界観はバレアリックとも共振する。この後の"Faux Savage"はちょっとした小休止のダウンテンポ調で、奇妙な弦楽器や打楽器がごちゃごちゃと鳴って異国情緒もありながら、哀愁あるフォーキーなギターが切なくもある。そんなカントリーなりフォークなりの雰囲気がより強く現れたビートレスの"Ono Mambo Haiku"、それは素朴なギターによるものだけでなく淡い色彩感覚のシンセによるほのぼのとしたメロディーが枯れた味わいも生み出していて、肌にしんみりと染みていく感覚のあるインストルメンタルに安静を覚える。"Sans Cesse, Mon Cheri"では再び軽くレゲエ寄りなアフタービート調のリズムに開放感を生むパーカッションも入ってきて、そこにまろやかでドリーミーなシンセに哀愁爆発なギターが加わって、南国の極楽ムードなトロピカル・シンセ・ポップを聞かせている。その南国ムードをはっきりと感じさせる"Message Of The Diving Bird"では、鳥のさえずりをバックにどこどことした土着的な打楽器と訝しいフルートの響きによって、深い亜熱帯の森林の中に誘い込まれていく。一体何処の国だろうかと思う程に、エキゾチックの原始な風景であったり長閑な田園風景だったりと曲によって異なる雰囲気があるが、しかしそのリラックスして開放感のある響きに共通するのはバレアリックという感覚だろう。それも大らかで陽気なポップ・ミュージックなのだから、愛らしく聞こえるのも当然だ。



Check Domenique Dumont
| ETC4 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Garrett - Private Life II (Music From Memory:MFM036)
Garrett - Private Life II
Amazonで詳しく見る(MP3)

アンビエントからニュー・エイジ、ファンクやジャズにエクスペリメンタルと特定のジャンルにとらわれずに、そして基本的には過去の時代の狭間に取り残されたように眠っている音源を掘り起こす、オブスキュア・サウンドの代表的レーベルであるMusic From Memoryは、しかし非常に数少ないものの時には過去ではなく未来への視点が向けられた作品もリリースを行う。その一つがLAのミステリアスなプロデューサーとしてMFMから2017年にデビューしたGarrettで、その後その正体はモダン・ファンク代表格のDam-FunkことDamon G. Riddickによる新たなプロジェクトである事が判明した。『Private Life』(過去レビュー)は彼のモダン・ファンクな音楽性にバレアリックな世界観が加わった作品として高い評価を獲得したが、それから一年を経て届いたその続編である本作は、よりバレアリックやアンビエントへと傾倒し静かな海辺の夕焼けのようなメロウなサウンドを強めている。アルバム冒頭の"Gotta Get Thru It"が既に本作を象徴するような作風で、TR-808系のパーカッションが柔らかい膨らみを生むようにリズムを刻んでいるが、しかし何よりも極彩色の光沢さえも放つようなシンセの薄っすらとした伸びや甘いエレピの装飾は非常にロマンティックで、夕日を望む遠景に自我も溶け込んでいくようだ。かっりちとしたロービートが刻まれDam-Funkの面影を残す"Changes"でも自由にメロウな旋律を奏でるエレピやフュージョン風な豊かなシンセの音色がこれでもかと切なさを誘い、しんみりとしたムードが満点。そしてアンビエントへと向かった"Awaiting The Light"ではビートは完全に消失し、その代りにぼんやりとしたシンセのドローンが抽象的に持続して、その中に星の瞬きのような電子音の響きも加えてそのロマンチシズムはピークへと達している。リラックスしながらもざっくりしたヒップ・ホップのビートに和んで甘いシンセを被せた"Warn Sentiments"、透明感のあるシンセやエレピが揺蕩いその下ではキレのある鋭角的なビートがしっかりと地を掴む"Sitting At The Bar Waiting"とリズムの躍動が心地好い曲もあるが、それにしても白昼夢に浸るドリーミーな音の響きはバレアリックだ。がやはりGarrett名義を主張するのはビートの無い曲で、弦楽器らしきアルペジオに先導され浮遊感たっぷりに宙を優雅に舞う"Conflicted Lovers"は、フュージョンやアンビエントが一つとなり豊かな情感を誘発する。全編通して色彩溢れるシンセが躍動するメロウでバレアリックな、部屋の空気を切なさで満たす素晴らしきリスニング・ミュージック。MFMのレーベルの知名度を更に高める事間違いなしの一枚だ。



Check Dam-Funk
| ETC4 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Orquesta De Las Nubes - The Order Of Change (Music From Memory:MFM033)
Orquesta De Las Nubes - The Order Of Change
Amazonで詳しく見る(アナログ盤)
 Amazonで詳しく見る(MP3)
2018年も秘蔵音源を中心に辺境音楽の発掘を続けるMusic From Memoryの活躍は目覚ましかったが、そんなレーベルの後押しによって2016年に注目を集める事になったスペインの音響派ギタリストであるSuso Saizも、2018年にはSaizが関連する作品の過去の名作がリイシューされるなど話題には事欠かなかった。そしてMFMからもSaiz関連の作品を編集したコンピレーションがリリースされたのだが、それこそ歌手のMaria VillaとパーカッショニストのPedro EstevanとSaizが80年代に組んでいたOrquesta De Las Nubesなるバンドの作品で、活動当時にリリースした4枚のアルバムから選曲されたのが本作である。スパニッシュ・ニューエイジを代表するSaizの音楽は本作に限らず神秘的なり霊的なり現実を超越したようなここではない何処かの音楽な雰囲気があるが、特に本作ではVillaの歌も加わる事によってその要素はよりはっきりと強くなっている。勿論作風としてはSaiz特有の奇妙なギターや素朴なパーカッションの有機的な響きと、シンセサイザーや電子音といったエレクトロニクスの自然な調和が前提にあり、そこにアンビエントや現代ミニマリズム、民族音楽やニューエイジといった要素が融け込んだ前提で実にSaizらしく静謐な世界観がある。うねるような細いギターと聖なる歌声に癒やされる"Un Regalo"から始まり、ぼんやりとしたシンセのドローンと天上の歌声が伸びる中にサウダージな泣きのギターや清らかなピアノが胸を打つ"Vendran Lluvias Suaves"からして、桃源郷が目の前に広がるニューエイジ。8分にも及ぶ"Tiempo De Espera"は繊細なギターに合わせて静謐なビブラフォンが奥深く広がり、そこに天使の歌声を想起させる歌唱も加わってくると正に霊的なミサ曲のようでもあるが、大きく展開をせずに抑揚がある構成は現代音楽のミニマル的だ。一方でマリンバやベルなどEstevanのパーカッションが軸になった"Cama Diarmonica"では、チャントも入り混じり人間の根源的な生命力に溢れた、霊的と言うよりは民族音楽の要素が光っている。アルバムの後半は更にサイケデリック性や豊かな音色が増しており、雷鳴のような電子音やサイケデリックな音響と破壊的な打撃音によって躍動感を増していくトライバルな"Como Un Guante"、朗らかなマリンバのミニマルな旋律と清らかな歌が和やかな色彩を生みつつも反復の展開が催眠を誘う"Me Paro Cuando Suena - Parte 1"、そしてラストの少々浮いた感もあるファンキーなロック寄りの"Ella No Lleva Gafas"と、前半の神妙で霊的な雰囲気に比べるとオーガニックで弾けた感さえもある。とは言っても全体を通して聞けば現行バレアリック/ニューエイジの中にあっても全く古びれない普遍性もあり、そして何よりも非日常的な幻想的な美しさやメランコリーはSaizに期待しているそのものだ。またしてもMFMは素晴らしい音楽を纏め上げ、価値あるコンピレーションを届けてくれた。



Check Suso Saiz
| ETC4 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |