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C2-R2 (Knife & Folk Records:KF 000)
C2-R2

2015年の中頃、突如としてネット上のクラウドファンディングでC2-R2なる名義の7インチの制作発表がなされたが、それは実は井上薫ことChari Chari名義の覆面プロジェクトである事に驚いた者は多いだろう。元々Chari Chariは国境を越えて多民族的でコスモポリタンな音楽性を持つプロジェクトだったが、近年は本人がよりクラブ的なダンス・ミュージックへ接近する事で、Chari Chari名義は活動を停止していた。それが2014年にはライブバンドとして復活した事で何か動きを見せるのかと期待していた所に、こうやって実際に新作が届けられた事で、Chari Chariが間違いなく帰還した事を証明している。ただこれが覆面プロジェクトという事もあるのか、内容はかつてのChari Chariとは同じでもなく、彼の音楽体験のルーツであるパンクやニューウェーブを意識したダンス・ミュージックへと変化を遂げている。A面の"Everlasting F.U.G.I."は80年台に活躍したエスノインダストリアルファンクバンドの23 Skidooの"Fuck You GI"をカバーした作品で、オリジナルの原始的な胎動を帯びた人力ファンクのイメージを壊す事なく、より図太いリズムやベースでの肉体的な揺さぶりを強めた上に洗練された現代の音へと塗り替える事に成功し、ある意味ではChari Chariのエスニックな雰囲気の線路上にあるとも言える。B面の"Boy's Tray"は4ADで活躍していたインスト・バンドのDif Juzへのオマージュだそうで、淡いギターが咆哮するシューゲイザーサウンドにファンクなベースや民族的なパーカッションが炸裂し、更にはダビーな音響を加える事で開放感のある清々しいバレアリック・ミュージックへと昇華している。クレジットを見る限りでは2014年にライブを行った時の4人のメンバーで制作がされており、Chari Chariはライブバンドとしての路線を歩む事が予想されるが、ダンス・ミュージックとパンクやニューウェーブの邂逅が新たな道を切り開いていく事に期待したくなる復活の狼煙となる作品だ。



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| ETC4 | 07:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Funkadelic - First Ya Gotta Shake The Gate (The C Kunspyruhzy:CKY003)
Funkadelic - First Ya Gotta Shake The Gate
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2014年12月、なんとPファンクの御大であるGeorge Clinton率いるFunkadelicが、33年ぶりのアルバムである本作をリリースした時には驚かずにはいられない音楽ファンは多かっただろう。それもCDでは3枚組33曲という大ボリュームで、齢70を越えるClintonの何処にそんなに音楽への意欲や熱意があるのかと感嘆せずにはいられなく、Pファンク軍団のエネルギッシュな存在をまざまざと見せつけられた。そんなボリュームの中に彼等らしくファンクやR&B、ヒップ・ホップにソウル、果てはハードロックやテクノまで混沌めいたゴッタ煮な音楽を展開しているのだが、それを可能としているのがやはり多数の参加ミュージシャンによるものだろう。ファンク界の大御所であるSly Stone、Kim BurrellやBernie WorrellにBootsy Collinsらファンクの名アーティスト、そしてClintonの孫であるTrafael LewisやTracey "Tra'Zae" Lewis-Clinton、または若手ダンスミュージック方面からはSoul ClapやG Koopを、更には故人となっているEddie Hazelのギターなどもフィーチャーするなど、参加アーティストもものの見事にゴッタ煮状態だ。余りの各アーティストの個性の強さが故に曲調はそれぞれ異なるものの、司令塔となって統率するClintonのコントロール配下に収まればそれらはアフロ・フューチャリズムの流れになり、そしてPファンクという音楽を成すのだ。特に本作での聞き所は、13teenによるプログラミングでエッジの効いたヒップ・ホップのビートを刻む"Get Low"、G Koopが共同プロデュースしてメロウでコズミックなファンクに仕上げた"Ain't That Funkin' Kinda Hard on You?"、Soul Clapがプログラミングで参加してテクノ風なビート感のある"First Ya Gotta Shake The Gate"、Trafael Lewis作曲による直球メタルな"Dirty Queen"などだと思う。それらは旧来のファンだけが望むような懐古的な作品としてではなく、今も尚未来へと前進するように現在の音楽も取り込みながら、それを次世代へと引き継ぐような意志が感じられるものであり、Clintonが今も尚現在進行形のアーティストである事を証明する。大きなボリュームと濃密な音楽性故に全てを通して聴くにはなかなかのエネルギーを要するが、Pファンクらしい賑やかで陽気なノリが今という時代の閉塞感を打ち破るようだ。



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| ETC4 | 08:30 | comments(0) | trackbacks(1) | |
Gigi Masin - Wind (The Bear On The Moon Records:BAR003)
Gigi Masin - Wind

2015年の音楽的な出来事の中で、Gigi Masinの再評価を抜きにして語る事は出来ないだろう。Masinは70年代から活動するイタリアの実験音楽のアーティストで、どういう訳か最近ではSven Weisemannのリミックスを行い、またニュー・ディスコ系のTempelhofとの共同でアルバムを制作、そしてJonny NashやYoung MarcoとのGaussian Curveを結成したりと、クラブ・ミュージックの方面から注目を集めている。2014年にはオランダのMusic From Memoryから編集盤である『Talk To The Sea』がリリースされるなど、確実にMasinの再評価の動きは強くなっていた。そんな状況の中、今年になって遂にMasinが主宰するThe Bear On The Moon Recordsから1986年作である本作が遂にリイシューされたのだ。この作品は当時は500枚程プレスは終わったものの、その大半が洪水被害に遭い殆ど販売されないまま、少々のみが出回ったとされる非常にレアな物だ。ただそんな稀少性のみが特別扱いされる理由ではなく、勿論その音楽性は今も尚古びれる事もなくその当時のまま輝いているのだから、現在も評価される所以なのだろう。本作でMagin自身はシンセやピアノにギターを演奏し、そして歌まで披露しているが、他にもサックスやトランペットにベースやストリングの奏者まで率いて、限りなく静謐なアンビエントを形成している。"Call Me"ではMasinによる消え行くような物哀しいボーカルと共に朧気なストリングスや静かに浮かび上がるピアノのメロディーが、一体となり儚くシネマティックな風景を見せる。"Tears Of Clown"もやはりピアノのメロディーがとても美しいが、それは瑞々しく昼下がりの夢現な快活さがあり、アナログの柔らかいシンセとの合間から気高いトランペットが目覚めを引き起こすようだ。逆にぼんやりとしたシンセが抽象的にゆっくりとうねる"Tharros"は鬱蒼とした空気が満ちたドローン風で、室内楽を通過したアンビエント的だ。また"The Wind Song"では穏やかなシンセのコードに割って入ってくる牧歌的で和んだトランペットに涙しそうになり、"Celebration Of Eleven"では羽毛のような柔らかいシンセが反復する中に哀愁のギターやベースが零れ落ちる展開が琴線に触れ、全く汚れのない清らかな音が心身共に洗い流すような日常生活の中に存在するアンビエントとして受け止める事が出来る。その極限まで静謐で美しい世界観はBGMとして聞き流すのではなく、しっかりと相対し面と向かって耳を傾けたくなる程に真摯な内容で、部屋の空気を一変させるリスニング作品として素晴らしい。



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| ETC4 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Mac-Talla Nan Creag (Firecracker Recordings:FIREC015CD)
Mac-Talla Nan Creag

近年はダンス的な要素の強いEPではなくアルバムに依って音楽表現の拡大を続けているスコットランドはエジンバラのFirecracker Recordingsから、更にコンセプト重視のアルバムがリリースされている。公式サイトによれば「1万年より昔、最後の氷河期の後に人類は現在のスコットランドと呼ばれる場所で、探検をし定住を始めた…」という件から始める長いコンセプトがあり、そんなスコットランドに根付いた探検から生まれたのが本作なのだ。製作者として記載されているのはエジンバラで活動するLord Of The Isles、レーベル主宰者であるLindsay ToddことHouse Of Traps、レーベルとは馴染みの深いFudge Fingas、そして正体不明のD. Wrightの4人だ。彼らは2014年の暮れにスコッチを嗜みながら古美術を学びつつ廃墟を訪れてはセッションを行い、そしてフィールド・レコーディングで音を集めながら、それぞれがギターやシンセにパーカッション、ハーモニウムやハープを演奏して、そんな短い探検の末に得られた材料を元にして本作を完成させたそうだ。その意味で本作は正にスコットランドから生まれた音楽であり、レーベルが今までリリースしてきた作品の中でも特に異色さが際立っている。つまりは一般的なパーティーで聴けるであろうダンス・ミュージックは皆無で、民族音楽やレフト・フィールドにフォークのような音楽性が中心となっており、その土地から発せられたスピリチュアルな空気を含んでいる。特に曲によってはシャーマンによる祈りを喚起させる歌も入っており、そこに伝統楽器と電子楽器にその土地から発せられた環境音を絡めながら、半ば宗教的な神妙さと大自然の謎めいた営みを体感させるのだ。環境音やセッションを元にした音楽性だけあって、形式に則っるのではなく生き物のように常に流動的で自由な変化を続ける音楽からは、探検を続ける内に様々な未知なる風景に出くわすかの如く。Firecrackerのファンが期待している音楽性とは全く異なるだろうが、あくまでコンセプト有りきである事を考えれば、スコットランドを拠点として活動するレーベルの郷土への思いが表現された作品として面白い。

| ETC4 | 08:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
George Clinton - Computer Games (Universal Music:UICY-77154)
George Clinton - Computer Games
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2014年末に正に奇跡的にもFunkadelic名義で33年ぶりのアルバムをリリースしたP-FUNKの帝王であるGeorge Clinton。丁度そんな話題が挙がっていた昨今、実は2013に発売30周年を記念してClintonの初ソロアルバムである『Computer Games』がボーナス・トラックを収録した30周年記念エディションとしてリリースされる予定があったのだが、理由は分からないままその企画は消滅。しかし、2015年である今年になって日本限定で再発(ボーナス・トラックは含まれない)が決まり、しかも1000円というお値打ち価格での販売でと、既存のファンにも新規のリスナーにも大変ありがたい出来事だ。Clintonは60年代からFunkadelicやParliamentを率いてP-FUNKの旋風を巻き起こしそのグループは70年代には一大集団となっていたが、しかし金銭や契約等の問題によりその軍団は空中分解してしまう。しかし転んでもただでは起きない、そんな逆境を逆手に取り電子楽器を大幅に導入したエレクトロ・ファンクを生み出したのが本作『Computer Games』なのである。何と言っても本作で話題になるのは"Atomic Dog"で、アメリカのR&Bチャートで4週連続No.1となった程の人気曲だが、その後多くのヒップ・ホップのアーティストにサンプリングされているいう事実がこの曲の素晴らしさを現している。曲そのものはファンクと言うかヒップ・ホップと言うか低重心で粘りのあるグルーヴがあり、そこにシンセサイザーのコズミックな音や下品ささえ漂うコーラスワークが絡む最高にファンキーな曲で、以前のP-FUNK時代に比べれば随分とスリムな音楽性ながらもファンキーさは全く失われていない。"Man's Best Friend/Loopzilla"は2曲が一続きになった曲で、前半のロボットボイスも導入したレトロフューチャーなP-FUNKから、後半は延々と同じ4つ打ちを繰り返しながらそこにモータウン・クラシックや過去の曲をサンプリングして仕立て上げたごった煮展開で、こんなノリもP-FUNKらなではだ。比較的前時代のP-FUNK色を残した"Get Dressed"はオーケストラやチョッパーベースに様々なコーラスワークが混じって猥雑さを生み、何だかメンバーが楽しくセッションをしている姿が浮かんでくるような陽気な曲だ。逆に小ぢんまりとして可愛らしいボーカルが入ったポップス的な"Pot Sharing Tots"や妙に懐メロのレゲエ調な"Free Alterations"などは、Clintonに期待する卑猥さが濁流となって渦を巻くような音楽性は無く、汎用な印象を残す。アルバムの中でも出来のばらつきはあるものの、アルバムは30分弱に上手く纏まってだらだらとせずに、すんなりとエレクトロ・ファンクを堪能させてくれるので冗長な印象を受ける事はない。それに1000円のお値打ち価格なのだから、これは買うしかないでしょう。

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| ETC4 | 18:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
DJ Koze - DJ-Kicks (!K7 Records:K7325CD)
DJ Koze - DJ-Kicks
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生まれては埋もれていくMIXCDシリーズが多い中で、1995年に開始したDJ-Kicksは20年以上もの歳月を経ても勢いが衰えるどころか、続々と新興勢力も巻き込みながら発展をしている。テクノやハウスから始まりダウンテンポやレゲエ、果てはエレクトロニカやダブ・ステップまで吸収し、そして作品毎に手掛けたアーティストの新曲を収録する事で、常に新鮮な状態でダンス・ミュージックの現在形を紹介する役割があるのだ。そして栄えある第50作目の監修に選ばれたのは、Stefan KozallaことDJ Kozeだ。現在は自身で主宰するPampa Recordsも軌道に乗る中で奇抜さとユーモアを持ったダンス・ミュージックを手掛けるなど、その稀有なアーティスト性はオリジナルかつ変態性を伴っている。そんな彼が久しぶりに手掛けたMIXCDは、いや実際には殆どミックスされていないのでコンピレーション的な意味合いが強いが、正にDJ Kozeのそんな自由な創造性を夢のような甘い世界に溶け込ませたような彼らしい音が浮かんでは消えていく。冒頭はDJ Kozeによるエクスクルーシヴな"I Haven't Been Everywhere But It's On My List"だが、カットアップされた声とヒップ・ホップ的なリズムにドリーミーなシンセが組み合わさったポップな一曲で、この時点で既にDJ Kozeの世界観に魅了されるに違いない。続く"Can't Get Used To Those? (Kosi Edit)"は生温く風変わりなブレイク・ビーツで、そして牧歌的な雰囲気で軽快なビートを刻むエレクトロニカの"Dead Dogs Two (Boards Of Canada Remix)"、更にスモーキさが広がる訝しいドラミングが特徴の"Holiday (Kosi & Fink's Edit)"など、序盤は長閑な雰囲気ながらもヒップ・ホップ的なビート物が中心だ。中盤に入れば更に束縛から解き放たれビートは希薄化しつつフォークやシティーポップにジャズまで展開し、後半に入ればクラブらしい雰囲気のディープ・ハウスやミニマル・テクノまで飛び出す変幻自在の流れが待っている。ただそれは決してバラバラに離散しているのではなく、様々なビートや音色が一つの流れに合わさるようにポップかつドリーミーに仕立てあげられ、まるでサウンド・トラックにも感じられる心象風景を浮かび上がらすのだ。DJ Kickが決してダンス・トラックを集めただけの内容ではなく、当初から続く「奇妙なホームリスニング」というコンセプトを再度知らしめる、そんな意思さえも伝わってくるようだ。DJ Kozeが制作する奇妙な音楽の性格がそのまんまMIXCDに反映されている点でも、期待通りと言うべきで非常に面白く切ない一時間を体験させてくれる事だろう。



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| ETC4 | 14:00 | comments(0) | trackbacks(1) | |
Grandbrothers - Dilation (Film:Filmcd001)
Grandbrothers - Dilation
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2014年、ドイツからErol SarpとLukas VogelによるGrandbrothersによる初の作品である「Ezra EP」(過去レビュー)はリリースされる前から、Gilles Peterson等著名なDJから称賛を浴び、いきなりデビュー前にもかかわらず注目を集めたのが今から一年前の話だ。純然たるクラブ・ミュージックからは外れたプリペアド・ピアノを用いた静謐な世界観とクラシカルな洗練された音楽性は、その意外性も相まって耳を惹き付けるには十分な個性があった。それから一年、その期待された音楽性はそのままにようやく初のアルバムが届けられた。アルバムはおおよそ多くの人が予想出来るEPの路線を踏襲している点で驚きは無いが、だからこそ多くの人が望んでいた事を理解した上で、実に正しくGrandbrothersらしい作品となっている。曲名通りアルバムの幕開けとなる"Prologue"は、リズムを排し環境音をバックに配置する事でプリペアド・ピアノの切ないメロディーがより鮮明に浮かび上がり、これから何かが始まろうとする予兆が感じられる。続く"Wuppertal"ではリズムも入ってくるがあくまでメインはピアノのコード展開であり、ピアノは滴るような美しい旋律と共にビートの一部となってスムースな流れを作り出す。アルバムの音楽性はピアノのサウンドが軸となっている事から印象はどれも似ているが、"Arctica"のようにグランド・ピアノとプリペアド・ピアノの異なるラインの対比により、その音自体をより際立たせるような効果も見受けられる。勿論アルバムのピークは先行EPとなった"Ezra Was Right"であるのは間違いなく、その淡い世界の中に儚く消え入るような美しいピアノの音色と乾いたマシンビートが生み出すこの曲は、正にジャンル的な意味と語源な意味でクラシックと呼べる賜物だ。ジャズ奏者でもあるErolとコンポーザーであるLukasだからこそ、ピアノのパターンとエレクトロニクスのビートを駆使し、それらによって何処まで音楽性を拡張出来るのか実験的に試した結果がこのアルバムの成果に現れている。クラシックでもありジャズでもあり、またアンビエントでもあり現代音楽でもありそうで、そのどれにも属さないGrandbrothersの音楽は一つの個性として成り立っている。その個性の強さ故にデビューアルバムにして殆ど形が形成され切ってしまったようにも感じられ、今後の展開があるのかも逆に不安にも思うが、先ずはこのデビューアルバムを素直に楽しむべきだろう。



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| ETC4 | 21:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Vakula - A Voyage To Arcturus (Leleka:LELEKA006CD)
Vakula - A Voyage To Arcturus

ロシアンハウス隆盛の中でその先陣を切っているのがウクライナのMikhaylo VitykことVakulaだ。変名も用いながら多作な活動を行う彼の音楽性はもはやディープ・ハウスだけに括る事は出来ず、アンビエントやジャズにコズミックなどの要素も盛り込みながら、アーティストとしての表現方法に磨きをかけている。その多様性はアルバムに於いて最も顕著だが、一年半ぶりのアルバムとなる本作でも同様にVakulaの隠れていた一面が新たに出現している。アルバムタイトルはDavid Lindsayによって1920年に出版されたSF小説「A Voyage to Arcturus」から拝借しており、曲名も同書の各章をそのまま引用している事から、推測するに同書に対してのサウンドトラック的な位置付けなのだろう。ここではかつてFirecrackerやDekmantelからリリースしていたようなダンストラックはほぼ鳴りを潜め、その代わりに70年代のジャーマン・プログレかクラウト・ロックか、そこにフュージョンの要素も加えながら現在の電子音楽に再構築したような、型に嵌まらないシンセサイザーの自由な響きが存在している。その意外性は落胆に結び付くかと言うとそうでもなく、もしテクノやハウスなどの電子音学を愛する者にとっては、ジャーマン・プログレの系譜はきっと興味をそそる作品であると断言する。曲によっては全くビートが入らずにトリップ感のあるシンセがうねり、生のギターやベースがバンドらしい一体感を生み、爽やかなパーカッションが肉体的なグルーヴを生む。酩酊感のあるジャーマン・プログレどころか、サイケやファンクやジャズなど様々なスタイルにも挑戦しており、CDでは2枚組の大作の中で早々と変化していくアルバムは正に音楽の旅なのだろう。もしVakulaというアーティスト名が冠されていなければどれ程の人がVakulaの作品だと気付くだろうか、それ程までにこのアルバムはかつてのディープ・ハウスの影を残していない。その変化故に戸惑う人もいるだろうが、サウンドトラック的なリスニング要素の強いこのアルバムは、Vakulaの音楽性の豊かさを示す作品として評価を高めるに違いない。全16曲の素晴らしきコズミックジャーニーが待っている。



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| ETC4 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Yakenohara - SP1 Self-Portrait (Felicity:RECF-1093)
Yakenohara - SP1 Self-Portrait
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2010年の初のオリジナルアルバム"This Night Is Still Young"(過去レビュー)でトラック・メーカーとしても高い評価を獲得したやけのはら。本作はそれよりも前、2007年から2013年までに彼が手掛けたリミックス作品を集めたコンピレーションであるが、そこにはロックやポップスなどやけのはらが活動するクラブシーンとは少々畑が異なるアーティストの名が並んでいる。所謂クラブ・ミュージック外からのリミックス依頼が多いのにも驚きだが、やけのはらによるリミックスもジャンルは収束するどころか更に自由な広がりを見せており、彼のの多様性を自己投影させたと言う意味でも「Self-Portrait」と言うタイトルは相応しい。彼自身がライナーノーツで述べているようにリミックスではなくリ・アレンジ、オリジナルを異なる方面から解釈した作品群は、ダブやレゲエ、エレポップにハウス、アンビエントなど様々なスタイルが並んでいるが、不思議とアルバム自体に散乱した印象はない。いや、むしろある種の統一感さえ感じられるが、それこそやけのはら特有のノスタルジアを含むポップな世界観だろう。各曲は全く異なるスタイルにリミックスされているにも拘わらず、それぞれにおいて一点の曇りさえもない透明感のある音色が発せられ、何だか掴み所のないゆるふわな空気とオプティミスティックな気分が満ちている。過去の2枚のオリジナル・アルバムでもポジティヴな心象が浮かび上がっていたが、それと同じものがリミックス作品にも投影されており、確かに色々な作風がありながらもそれらは全てポップスと表現すればしっくりくるように感じる。そう考えると本作はやけのはらと言う個性の周りに様々なアーティストが集まり、ポップスと言うコンセプトに沿って作り上げたアルバムのようでもあり、最早やけのはらによるオリジナル・アルバムにさえ聞こえてしまう。やけのはらのラッパーとしての活動やDJでは派手なハウスやディスコをプレイする姿からは想像出来ないかもしれないが、彼のポップスへの愛情が最も表現されたアルバムだ。



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| ETC4 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Lord Echo - Curiosities (Bastard Jazz:BJCD05)
Lord Echo - Curiosities
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来日が目前に迫るニュージーランドで活躍するMike Fabulousによるソロプロジェクト・Lord Echo。レゲエをベースに多方向へと音の広がりを見せた2011年のデビュー作"Melodies"(過去レビュー)は世界的にも高い評価を得て、DJのみならず一般のリスナーからも好感を得て大ヒットを記録したようだ。当方が好むテクノでもなくハウスでもなくレゲエを土台としているが、そんな筆者にとってもLord Echoの甘いメロディーと洗練されたレゲエサウンドは耳を魅了し、即座にLord Echoはお気に入りのユニットとなった。そしてそれから2年、満を持してLord Echoの2ndアルバムが到着。基本的にはレゲエを軸にジャズやファンクにソウルやダブなど、前作からの路線に大きな変更は無い。がアルバムの幕開けとなる"Endless Dawn"では、いきなり小気味良いジャジーなリズムにギターやキーボードが被さり、スィングするグルーヴが門出を祝うような高揚感を誘発する。続く"Bohemian Idol"は正にLord Echoらしいラヴァーズ・ロックよろしくなレゲエで、裏打ちのカッティング・ギターとかすれたような甘いボーカルに心酔。更に"Digital Haircut"ではふくよかなパーカッションのリズムとキレのあるギターにはファンクを感じるが、清々しいまでの爽やかな音がからっと心地良く広がる。一方コズミックな電子音が躍動する"Put In My Head"ではアフロなビートが疾走し、Pharoah Sandersのカバーである"The Creator Has A Master Plan"ではもはやバンド・サウンドを活かした円熟味のあるハウスと言った赴きで、その観点からすると随分とダンサンブルになった印象も受けるだろう。また前作に於ける音を絞ったすっきりとした演奏に比べると、本作では少々豊かな音色で装飾し過ぎてしまった感もあり、タイトで身軽なレゲエの雰囲気は若干後退したように聞こえる。これを円熟と捉えるかメジャー化してしまったと捉えるかは微妙なところだが、レゲエファン以外も魅了する都会的なレゲエとしては申し分がないのも確かだ。さて、後はライブで真価を体験するのみだ。



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