2017.04.24 Monday
トラックメーカーとしてその才能に知名度も追い付きつつある東京在住のTominori Hosoyaが、2014年に始動させたレーベルがTH Pressing。2016年までに2枚のEPのみしかリリースしておらず決して活発とは言えないが、その分だけHosoya自身もクオリティーには細心の注意を払っており、2016年にリリースされた『Wishes & Memories Vol.1』でも4人のアーティストがピュアで透明感あるサウンドや清々しいエモーションを放つ音楽性を展開し、Tominoriが共感し目指す音を示していた。そしてそのシリーズの第二弾が到着したが、ここには日本からエモーショナルな音楽性でCadenzaにも取り上げられたTakuya Yamashita、デトロイト・フォロワー系の音楽性で注目されるLife Recorder、エジンバラのディープ・ハウサーであるBrad P、スペインからはErnieと単に有名なだけのアーティストを集めたコンピレーションとは一線を画す内容重視の作品となっている。Life Recorderによる"While She Dreams"は正に期待通りだろう、透明度を保ちながらすっと伸びていく上モノと乾いたパーカッションの爽やかなグルーヴによって、青々しい空の中へと飛翔するような浮遊感溢れるディープ・ハウスでエモーショナルと呼ぶ音に相応しい。Ernieによる"Dynamic Workflow"は逆にリラックスしたビートがしっかりと地に根を張っており、仄かに情緒的なパッドの下では刺激的でダビーなパーカッションが鳴り響く事で広がりを感じさせる。一方Brad Pは最もテクノ的なダークさと無駄を排したミニマル色の強い"Grey Blue Passion"を提供しており、闇の中に恍惚を誘う電子音を配置しながら暗闇を潜行するようなトリップ感を演出。そして最も意外だったのはTakuya Yamashitaの"Somewhere"で、ノンビートのアンビエント・スタイルを披露したこの曲は夜空に瞬く星の煌きの如く美しい旋律を奏でて、広大な宇宙の無重力空間で遊泳をするような感覚に包まれる。どれもこれも作風は異なれどエモーションや美しい響きに軸が置かれTominoriの目指す音楽性と共振するのだから、もしTominoriの音楽に惹かれている人ならば是非とも聞いてみるべきだろう。