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Thomas Fehlmann - Los Lagos (Kompakt:KOMPAKT CD148)
Thomas Fehlmann - Los Lagos
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ベルリンのニューウェーブ変異体であるPalais Schaumburgの元メンバーであり、Moritz von Oswaldとの3MBによってベルリンとデトロイトを結び付け、そして何よりもThe Orbのメンバーとしての輝かしい功績を持つベルリンのダブ・テクノ/アンビエントの重鎮中の重鎮であるThomas Fehlmann。DJではなく生粋のライブアーティストである彼が生み出す音楽は、揺らめくダビーな音響と緻密な電子音の変化、そしてシャッフルするリズムを組み合わせてダンスとしての機能性に芸術的な美学を持ち合わせた職人芸的なものだ。特にその音響面の才能は、例えばAlex Patersonがコンセプトを生み出すThe OrbではFehlmannがダブ音響の多くを担っているのではと思う程に、研ぎ澄まされた電子音の響きには個性を持っている。ソロアルバムでは前作から8年ぶりと随分と間は空いてしまった本作、繊細な音響面に於いては全く陰りは見られないものの年を経たせいもあるのだろうか、一聴して以前よりは地味でアブストラクト性を増している。オープニングの"Loewenzahnzimmer"は地を這うようなのそのそとした粘性の高いダブ・テクノで、モワモワとしたヒスノイズの奥には繊細な電子音響が散りばめられ、闇が広がる深海を潜航するようだ。続く"Window"で浮遊感ある上モノとしっとりしながらも軽く走り出す4つ打ちのテクノに移行するが、過剰な残響を用いずとも空間に隙間を残してダブらしき音響効果を作っている。"Morrislouis"ではお得意のシャッフルするビートで軽快に上下に揺さぶられ、徹底的にミニマルな構成ながらも微細な鳴りの変化によって展開を作り、ヒプノティックな世界に嵌めていく。元Sun Electricの一人であるMax Loderbauerが参加した"Tempelhof"は比較的幻想的なアンビエントの性質もあるが、シャッフルするリズムに加えて敢えて金属的な歪な響きの電子音を加えて目が眩むようなトリッキーさを加えている。しかしここまで聞いても以前と比べると随分とアンビエントの性質や甘美なメロディー等は抑えられており、ひんやりとした温度感で閉塞的な印象だ。しかし中盤以降、官能的ですらある妖艶なメロディーのループと溶解するようなねっとしたダブ・アンビエントの"Freiluft"、ギターサンプリングのループや色彩豊かな電子音を用いて祝祭感が溢れ出すダウンテンポの"Neverevernever"、そして惑星や星々が点在する無重力の宇宙に放り出されたかのように繊細な電子音が散りばめられたノンビート・アンビエントの"Geworden"と、前半とは打って変わって途端に鮮やかな色彩を伴いながら叙情性が現れて、こちらの方が以前のFehlmannの作風の延長線上だろう。アルバムの前半後半でがらっと雰囲気が変わる点でバランス感はやや崩れているが、それでもベルリン・テクノの音響職人としての才能はいかんなく発揮されており、するめのような噛みごたえのあるアルバムだ。



Check Thomas Fehlmann
| TECHNO13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
The Field - Infinite Moment (Kompakt:Kompakt CD 149)
The Field - Infinite Moment
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現在のKompaktを代表するアーティストであるAxel WillnerによるプロジェクトであるThe Field、霧のようなシューゲイズが充満して生まれるサイケデリアと多幸感によってテクノのリスナーのみならずロックのファンも魅了し、自身の世界観を完全に作り上げた。しかし2005年のデビューから13年経過し本アルバムで通算6枚目となってくると、その確立された個性が故に時として飽きられてくる懸念もあるが、アルバム毎に雰囲気を変えたり音の鳴りを変える事でアルバム毎の味を生み出して進化/深化を続けている。特に初期3枚のアルバムジャケットが淡い白色だったのに対し、本作含め直近3枚は黒色がイメージとなっており、おおよそその色に合わせて本作も更に内省的でベッドルーム的な聞き方も可能であり、事実本人曰く「これまでの作品よりもずっと遅い」とも語っている。オープニングの"Made Of Steel. Made Of Stone"は祈りのようなエフェクトのかかったボイス・サンプルのループから始まり、鈍いアシッド感もベースのうなりも加わって遅いビート感でずぶずぶと嵌めていく。途中からシンフォニックな響き現れたりと暗いムードの中にも神秘的な美しさがあるが、決して多幸感に振り切れるでもなくサイケデリック性が勝っている。続く"Divide Now"からビートは走り出し淡いシューゲイザー寄りな電子音の執拗な反復を被せて如何にもThe Fieldらしい曲だが、そのミニマルなビート感だけかと思いきや中盤でドラムン・ベースのリズムが挿入される意外な展開も盛り込み、そこを堺に後半はまたやや曲調が変わるという大胆な構成の大作だ。"Hear Your Voice"は聞けば同じくKompaktのWolfgang VoigtことGasの初期ミニマル・アンビエント作に近い作風で、ハートビート風なノリの良い4つ打ちに荘厳な電子音がオーロラーのように揺らめいて空間が音で完全に満たされており、余りにも快楽的で忘我しそうである。そこからダウナーに転調した"Something Left, Something Right, Something Wrong"でのっそり遅いビートに合わせてアブストラクトな音像や奇妙な効果音によって抽象性を高めてサイケデリック性を増し、モコモコと柔らかくも詰まったリズムで神々しいボイス・サンプルのループで宗教的でもある神秘性を得た"Who Goes There"、そしてラストの"Infinite Moment"でもじっくりと大地を踏みしめるような遅いビートと白色光に包まれる力強いシューゲイザーな電子音が鳴り響き、ゆっくりと恍惚状態へと入っていく事で正にタイトル通りに永遠の時間が続くかのようだ。初期のような多幸感爆発なフロア向けのダンス・トラックはそう多くはないし、やはり全体的に閉塞感がありムードが決して明るいわけではないが、サイケデリアが生むじわじわと増えていく恍惚性もひたすら心地好い。きっとライブでも汗だくになって踊るのではなくゆらゆらと揺れて聞く事は容易に予想出来るが、この圧倒的な密度の音に包まれてカタルシスを体験出来るだろう。



Check The Field
| TECHNO13 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Luciano - Sequentia Vol. 1 (Cadenza:CADENZA 118)
Luciano - Sequentia Vol. 1
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かつてはチリアン・ミニマルでRicardo Villalobosと双璧を成すとまで称されたLucien NicoletことLucianoは、しかしその前者の神々しく圧倒的なまでの存在感と比べると、この数年は控えめに言っても余り高い評判を聞く事は多くない。当方が自身で彼のDJを聞いているわけでもないし体験すらせずに批評する事は正当な判断ではないが、しかしそれでもやはり特にアンダーグラウンドな方面からはLucianoがコマーシャルになってしまったという批判が出ていた事も事実だ。それに従ったわけではないが当方も積極的にLucianoの作品を追う事は少なくなったものの、本作は彼が主宰するCadenzaの15周年を記念したシリーズの一環だそうで、何となく試聴してみたところなかなかの出来だったので購入した次第である。アナログでは2枚組で5曲だけの収録ながらも通して50分もある内容はアルバム級と言っても差し支えはなく、その長尺な構成を活かしたミニマルを軸にしながら妖艶な美しさを放つオーガニックかつトライバルな作風は、かつての名作『Tribute To The Sun』(過去レビュー)の芸術的な美しさを思い起こさせる。いきなり12分超えの大作である"The Amazing Lilou"は民族的で土臭い、しかし細く繊細な響きのリズム感であっさりとした軽快なビートを刻み、そこにしとやかで幽玄なシンセストリングスや覚醒感を煽る電子音を絡ませながら、大きな展開を作る事なく催眠術のように執拗にほぼ同じような繰り返しを続けながら酩酊させる如何にもなミニマルだ。よりダンスのグルーヴが活きているのは Rebelskiをフィーチャーした"Hiding Hearts"で、有機的な響きのパーカッションやタムにやスネアを効果的に用いて複雑に跳ねるリズムを刻む様相は正に異国情緒溢れるトライバル・ビートで、そこに哀愁たっぷりな弦楽器の泣きの旋律が入ってくれば、それは真夏の夕暮れ時の海のセンチメンタルな時間帯が現れる。"Nabusima"もラフなドラムの音が生っぽく湿り気を帯びたアフロと言うかカリビアンなグルーヴ感があるが、それとは対照的にか弱く繊細なピアノや細い電子音で控え目に上品さを加えているこの曲は、天にも昇るような楽園的な雰囲気がある。"Magik Mechanics"はエレクトロニック性が強いややメジャー感もある機能性に沿ったミニマルだが、それでも音圧に頼らない繊細なビートやメロディーで音を削ぎ落とした無駄の無い美しさが表現されている。特に個性的だったのはタイトルが示すように東洋の雰囲気がある"Tirana Del Oriente"、寺院の中で鳴ってそうで宗教臭くもある太鼓系のパーカッションが複雑なリズムから始まり、弦楽器の妖艶な響きに酩酊させられながらグルーヴが疾走るでもなくただゆらゆら感が続く呪術的なムードで、キックが入らずともフロアでもきっと踊る者を魅了するに違いない。こうやって作品を聞くとチリアン・ミニマルの中でもその繊細な美しさは一つ飛び抜けていると思うし、少なくとも作曲家としてはやはり才能が光っている事を実感する。



Check Luciano
| TECHNO13 | 13:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Afriqua - Vice / Principle EP (R & S Records:RS1808)
Afriqua - Vice/Principle EP
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80年代テクノを代表するレーベルの一つであるR & S Records、ニュービートから始まりハードコアなテクノやデトロイト・テクノを先取りし、時代を象徴するムーブメントの一旦を担った重要なこのレーベルは、しかしある意味では頑さが故にその後は流行に乗り切れずに2000年頃に一度は倒産してしまう。その後復活を果たして以降はやや流行も意識して新しいジャンルにも手を伸ばしつつ再度の繁栄を見せているが、それでもしかしこういった艶かしく催眠的なミニマル・ハウス/テクノにまで手を拡げてきた事にはやや驚きを隠せない。本作を手掛けたのはアメリカはバージニア州出身のAdam Longman ParkerことAfriquaで、これより前の作品でも生っぽい湿り気を帯びた流行りの繊細なミニマル・ハウスを手掛けていたものの、本作でその機能性と芸術性は極致へ辿り着いている。レーベルインフォでは70年代のクラウト・ロックやジャズに触発されたとの触れ込みだが、それ以上に掴み所のない滑った音楽性は個性的だ。ビートレスながらも繊細で変則的なパーカッションと彷徨うように方向性の無い電子音の旋律によってふらふらと酩酊する"Vign"に始まり、映画のシーンからのボーカル・サンプルを用いた"Melamed"でそのミニマル・ハウスは艷やかな花弁を開くように、妖艶な美しさを露わにする。官能的な電子音のリフ、生っぽい弦楽器風を民族的に用いたループは覚醒感を誘い、太いどころか細く連なる繊細でしなやかなビートはその軽さにしなやかに揺らされ、霊的なトライバルビートとなってエキゾチック・トランスとでも呼ぶべき原始的な快楽を呼び覚ます。"Noumenon"はアシッド・ハウスとは異なりながらも鈍いアシッドのベースが跳ねながらつんのめったようなリズムと合わせて、細いグルーヴ感を活かしながら躍動的に跳ねながらコズミックかつファンクな、それは何処かデトロイト・テクノのエモーショナル性とも共振するような響きがある。そして10分越えの"Cerch"は例えばチリアン・ミニマルの線が細くも艶めかしさを強調した作風で、ここではジャジーなベースが正に生命が胎動するようにリズミカルにビートを刻み、様々な電子効果音と爽快なシンセのメロディーを散りばめながら陽気にウォーキングするノリで軽快に引っ張っていく。残りの曲も基本的には骨格が浮き出て音の隙間を活かしながら繊細なグルーヴ感と生っぽく滑りのあるミニマルな曲調で纏められており、基本的にはここ数年の流行りのミニマルなモードを踏襲はしているのだが、没個性にならずにジャズ/エキゾチック/コズミックといった要素を自然と取り込み自分の音として消化出来ているように思う。非常に素晴らしいモダンなトラックではあるのだが、思い出の中の頑固職人的なテクノをやっていたR & S Recordsの音とは随分異なる点も面白くもある。



Check Afriqua
| TECHNO13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Severnaya - Polar Skies (Fauxpas Musik:FAUXPAS 024)
Severnaya - Polar Skies
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ドイツのFauxpas Musikは深い音響によるメランコリーなアンビエントを提供するレーベル性が確立されており、この手の音楽が好きな人にとってはレーベルの新作が出る度に多少は興味を惹かせる程の魅力を持っている。2018年2月頃にこのレーベルからSevernayaなる見知らぬアーティストのアルバムがリリースされ聞いてみるとこれがまた神秘的なアンビエントで素晴らしく、調べてみると実はConforce名義でも活躍するBoris Bunnikの新たなプロジェクトである事を知った。今までにもConforce含め多数の名義を用いてDelsinやRush HourにEchocordやClone等多くのレーベルから、デトロイト寄りなテクノから深いダブに硬質なエレクトロ、実験的な音響テクノまでその多彩な音楽性を披露していたが、ここでは厳寒の中の凍てついたアンビエント性に焦点を当てている。プロジェクト名の「Severnaya」とはロシア語で北部を意味するそうで、彼が生まれたオランダの最も北部であるテルスヘリング島が本作のコンセプトになっているそうだ。その地がどんな環境であるかは知る由もないが、しかしアルバムから感じられるその色を失い白一色の凍えるような世界観は、北欧の氷河に囲まれたそれをイメージさせる。収録曲の多くはノンビート・アンビエントで、幻想的なシンセのドローンが持続しその中にほんのりと火が灯るような朧気なメロディーが入る"Proud Cliffs Garbed In Blue"は外では雪が吹き荒れる一方で家の中で暖炉で温まるような、そんなしみじみとしたメランコリー性の強いアンビエント。続く"Floating Space"では繊細でダビーな音響や機械音を配置して奥深い空間を作りつつ、宗教的な雰囲気さえもあるメロディーも用いてニューエイジにまで音楽性は広がっている。彼らしいノイジーかつダビーな音響が活かされている"Vivid Ascension"では重厚でモノクロなドローンが底辺で蠢き、明確なメロディーも無くひたすら不気味な効果音や金属音が展開を作る凍てついたアンビエントだ。その一方で雪景色の中に太陽の日がそっと割って差し込むようなSun Electricを思わせるオプティミスティックな"Quiet Arcs"は、ただただ静かにドローンと音の粒子が意味を込めずに無垢な響きのみを残している。そこに続く"Terramodis"は柔らかい音質ながらも躍動感溢れるリズムが打ち鳴らされ、夢の中を泳ぐアンビエント感覚ながらもダンスフロアを意識した作風は、このアルバムに於いてはやや余計だったかもしれない。しかしアルバム全体としてはBunnikのメランコリー性、深い電子の音響が正確に反映されたアンビエントが軸になっており、敢えて新たな名義を用いて制作しただけの意義はあるリスニング作品だ。



Check Conforce
| TECHNO13 | 17:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Gui Boratto - Pentagram (Kompakt:KOMPAKT CD 146)
Gui Boratto - Pentagram
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優秀なタレントを多く抱えるドイツはKompaktはその規模を活かしてクラブ・ミュージックを根底としながらも多様性を展開出来るレーベルであり、テクノやミニマルにハウス、またはロック寄りからアンビエントまで、そして流行のEDMを取り込む事さえも躊躇わない。流行り廃りが大きい業界だからこそ、敢えて大きく間口を広げる事で時代を生き抜いていると言えるが、そんなレーベルの多様性を一人で表現出来るアーティストがGui Borattoだ。同レーベルからは本作で5枚目となるアルバムをリリースするなど今ではレーベルを代表するにまで成長しており、初期のシューゲイザーかつミニマルな作風から、機能的なテック・ハウスやエレクトロ・ハウスにサイケデリックなポスト・ロック寄りまで、アルバム毎に多彩な音楽性を披露している。しかしそのどれもに共通するのがポップさだったり印象的なメロディーだったりで、人懐っこく心に訴え掛けるエモーショナル性はレーベルの中でも随一だ。アルバムの始まりはいきなり夕暮れ時の浜辺のようなメランコリーなメロディーが炸裂するミッドテンポの"The Walker"で、ややシューゲイザー風なシンセの使い方もある点は初期作風を思わたりもする。続く"The Black Bookshelf"は自身でピアノやドラムも演奏してバンド風な躍動感もあるハウスで、ピアノの美メロや綺麗なシンセのコード展開を武器に感動的に盛り上げていくアルバムの中でも特にポップさが強調された曲だ。逆にボーカルを起用した"Overload"は妖艶な歌の作用もあって真夜中のフロアをドラッギーに染めるようなプログレッシヴ・ハウス色強い曲で、また同様にシューゲイザーとプログレッシヴ・ハウスが一つになったような覚醒感の強いハイエナジーな"Forgotten"ら辺りも、ギトギトした中毒性が暗闇の中で侵食するような快楽性が強い。そして刺激的なシンセのリフと連打するビートが強迫的に迫るミニマル寄りな"Forgive Me"、逆にストリングスを用いてオーケストラを展開して物悲しいシーンを演出する"Scene 2"と、一枚のアルバムの中で異なるジャンルを見せながらもしかしドラマティックなストーリーを読ませるように流れは紡がれる。そして遂にここまで来たかと思わせられるのはEDMへと寄り添った"The Phoenix"で、元々ポップな音楽性のあるBorattoだからこそ派手なギターサウンドやブリブリとえぐいシンセの使い方も違和感を感じさせる事はなく、好き嫌いは別としても意外とBorattoの音としては成り立っている。EDMとの親和性の高さにより人によってはEDMへの認識を改めるようになる機会もあるのではと思うと、閉塞感が拭えないテクノシーンの中でもこういった試みは評価されるべきだろう。やや色々手を出し過ぎて散漫な印象がないわけでもないが、非常にBorattoの個性が体験出来るアルバムである。



Check Gui Boratto
| TECHNO13 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Radio Slave - Trans (REKIDS:REKIDS 122B)
Radio Slave - Trans
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古くはアダルトなラウンジ音楽趣向のQuiet Village、レフトフィールドなダンス系のRekid、またはテクノ〜ハウスを横断してよりダンス・フロアを意識したRadio Slaveと、様々な名義を用いて幅広くしかしディープな音楽性を展開するMatthew Edwards。アーティストとしてもDJとしても人気を博すベテランではあるが、個人的な音楽的好みには当て嵌まらず今まで避けていたものの、本作は是が非でも聞かねばという衝動に突き動かされ購入した次第。この名義では初のアルバムとなった2017年作の『Feel The Same』からのシングルカットである本作には、Innervisionsの頭領として名高いDixon、そしてデトロイト・テクノのソウルの塊であるUnderground Resistanceがリミックスを提供しているのだから、その名前を見ただけでも反応してしまう人も少なくはないだろう。原曲は歪んだように蠢くシンセベースにヒプノティック&ドラッギーな上モノが反復する妖艶なテック・ハウス調で、これはこれで真夜中のピークタイムのダンスフロアをも賑わすような派手さがあり、Edwardsの的確にフロアを意識した曲調は確かなものだ。そしてそれを更に機能的に手を加えたのがDixonによる"Trans (Dixon Retouch)"で、以前からもリミックスと言うよりはエディットとしての手腕を発揮している通りで大きく曲調を変える事はないが、少しだけ暗闇の中で光るようなシンセのメロディーやスネアロールでの盛り上がりも盛り込んで、原曲を活かしながらも起承転結らしい展開を作ってエディットの妙技を披露している。だがしかしやはり一際強い個性を感じさせたのはURのリミックスである"Trans (Underground Resistance Hamtramck Remix)"の方で、Mike Banksがどの程度制作に絡んでいるかは謎なもののファンキーなギターカッティング、鈍くうねるベースと鋭利なリズムトラックと、ややバンドサウンドらしき物が感じられるのはURが集合体としての存在感を今も尚体現している。催眠的にエフェクトが掛けられたボーカル・サンプルや不気味なシンセのフレーズなども、よりダークなエレクトロ調になる事に役立っており、この肉体を揺さぶるファンキーさには冷気と共に心の中で燻る熱いソウルも感じられる。最近目立った活動が見られないURが、しかしやはり地力を感じさせるリミックスを披露すると、どうしても新作を期待せずにはいられないのだ。



Check Radio Slave
| TECHNO13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Tom Middleton - Sleep Better (UMC:6716832)
Tom Middleton - Sleep Better
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最近は主だった制作活動が無かった為、この突如としてリリースされた作品に驚きを隠せなかった。それこそGlobal Communicationのメンバーでありアンビエントマスターの一人であるTom Middletonが手掛けた『Sleep Better』で、その安直なタイトルからも分かる通りアンビエントすら通り越して所謂ヒーリング系へと向かった良質な睡眠の為のサウンドスケープである。ここ数年は目立った新作のリリースもなく、数年前にリリースされた数作にしてもクラブトラックとしての機能面を重視したテック・ハウスが中心だったが、その後睡眠科学のコーチになったMiddletonが、不眠症に悩まされる現代人の睡眠の質向上の為に真面目に取り組んだプロジェクトのようだ。CD1には10分に及ぶ"Sleep"シリーズが8曲収録されており、それぞれ"Sunset"や"Moon"に始まり最後は"Dream"に至るそれっぽい副題が付けられているが、どうやら80分に渡ってそんな副題が示すような幸福に満ちた空想の旅をイメージしているとの事。それぞれ副題はあるものの全ては連続しており徹頭徹尾ぼんやりとした抽象的なドローンが続くアンビエントは、まだしっかりと展開のあったGlobal Communicationのそれと比べると随分と精神を鎮静へと導く作用が目的とされており、時間の経過も忘れるような平坦でなだらかな電子音の持続のみのある意味ではシンプルな作風を突き詰めている。ボーナスディスクとなるCD2にはヨガや瞑想のお供に制作された"Relax"と活力の補充をする為の"Recharge"が収録されているが、こちらは環境音風な繊細な電子音がエネルギーが外へ向かって放射するようなドローンとなっているのが特徴で、音楽自体は非常にゆったりとしながらも少しずつ心身が活動的になり目覚めていく点で"Sleep"とは対照的な作品だ。踊らす事を目的としたダンス・ミュージックの業界を生き抜いてきたベテランが、しかしそれとは全く真逆の眠りに付く為の音楽を制作するとは - 元々アンビエントを制作していたとは言えでも - 何とも意外だが、真夜中を生業とする彼だからこそ不眠についての理解も一段と深いが故にこういったプロジェクトに取り組んだのも自然だったのかもしれない。Global Communicationのような未来的なテクノ/アンビエントとは異なるが、安らぎながら眠りに落ちる為のBGMとしてはより最適なプロジェクトだと言えよう。



Check Tom Middleton
| TECHNO13 | 14:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Brame & Hamo - Limewire EP (Brame & Hamo:B&H003)
Brame & Hamo - B&H003
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Dirt Crew RecordingsやHeist等からセンスの良いサンプリングを武器にブギーかつビートダウンなハウスをリリースするアイルランドのBrame & Hamo、リミキサーとしてもやはりファンキーなハウス方面によく起用されており、新世代の中でも台頭を表してきているユニットの一つだ。特に2017年からはユニット名をそのまま冠したBrame & Hamoというレーベルも始動させているが、この自身のレーベルではよりハードで真夜中のフロアで映えるようなハウスを打ち出してきている。そんなレーベルの3作目となる本作でも以前より更に厳つく骨太に、テクノ/ブレイク・ビーツ/ハウスの要素が混ざり合いながらフロアを熱狂へと巻き込むようなダンス・トラックを披露している。何と言っても最もパワフルな"Parade Rain"は肉体が震えずにはいられず、太くマッチョなキックの4つ打ちとブレイク・ビーツ気味なリズムが地面を揺らしつつトランシーな上モノの反復と膨らみのあるダークなベースラインで引っ張りながら、高エネルギー状態で猪突猛進する。途中からヒプノティックなシンセやドラッギーな効果音も加わり、喧騒の盛り上がりの突き進むピークタイム仕様な一曲だ。"Sports Complex"はEPの中で最も毒々しくダークな曲で、TR系の乾いたパーカッションやTB系の鈍くも魅惑的なアシッドのベースラインを用いたハイエナジーなアシッド・ハウスだが、トランス風な快楽性の強い上モノも入ってくるとHardfloorを思い起こさせたりもする。そして時代感のあるブレイク・ビーツに優雅なピアノのコード展開やボイスサンプルを織り交ぜた90年代前半のレイヴ全盛の時代を匂わせる"Limewire"は、しかしニュー・ディスコ系のTuff City Kidsによってドタドタとした4つ打ちのアシッド・ディスコで感動的に盛り上がっていく"Limewire (Tuff City Kids Remix)"へとリミックスされ、それぞれ古き良き時代の空気を発しながらも今のフロアでも間違いなく盛り上がる魅力を含んでいる。初期の頃の作品に比べると随分アッパーで快楽的な要素が強いかなと思ったりもするが、真夜中のパーティー向けな曲を目的としたレーベルのようでもあるし、その音楽性が適切に反映されている意味で成功と言えよう。



Check Brame & Hamo
| TECHNO13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Miruga - Spirit Garden EP (Moods & Grooves:MG-061)
Miruga - Spirit Garden EP
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デトロイトのMike Grantが主宰する老舗レーベルであるMoods & Grooves、20年近くに及ぶ活動の中で嘘偽りなく多くの実力あるアーティストの作品をリリースしてきたディープ・ハウスのレーベルであるが、何とそんなレーベルから日本人初となる作品が到着した。それこそEthereal SoundやRough House RosieにBalance Musicなど正にディープなハウスで個性を持つレーベルから作品を送り出してきたMirugaで、しかし幾らMirugaのディープ・ハウスが素晴らしい音楽性を持っていようともまさかMoods & Groovesからリリースされるなんて、予想出来た人は一人としていないだろう。実際に収録された曲はいわゆるデトロイト・ハウスそのものでは当然なく、しかしどれもMirugaらしい内にソウルを秘めたような仄かなエモーショナル性があり、それは決してデトロイトのそれと乖離してないからこそレーベルからリリースされたのだろう。しっとりしたキックの4つ打ちと爽やかに響くパーカッションのリズムが疾走る"Into the Zone"は、感情をぐっと込めたシンセのコード展開で引っ張りつつリバーブの効いた女性ボーカルで幻想的に惑わせ、じわじわと熱量が高まっていくようだ。カタカタと乾いたパーカッションがオールド・スクールな感覚もある"In Heaven Above"、しかし踊り舞うようなエレガントなフルートの旋律と情緒的に覆っていくパッドで実にエモーショナルに展開するジャジーでアンビエントな性質もあるこの曲はUSハウスっぽさもあるが、ダビーな残響の効果もあり奥深い空間創出を伴う事で大らかで壮大に広がっていく。"Without Words"は簡素なリズム感やベースラインの音などが古きシカゴ・ハウスを思わせるところもあるが、ハイハットの使い方はジャジーでアンビエント感ある上モノによってしっとりとした情感に包む。ラストの"Scenery in My Mind"は疾走感ある4つ打ちのグルーヴに、情熱的なトランペットの響きや繊細なピアノで情緒的に装飾を行い、そして浮遊感ある霞んだパッドでアンビエント性を付加した非常にMirugaらしいディープ・ハウスだ。どれもこれもエモーショナルという表現が相応しい感情を温める性質があり、それならばMoodsとGroovesを重視するレーベルの方向性とずれてはいないのだ。



Check "Miruga"
| TECHNO13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |