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keita Sano - Ōtotsu (Let's Play House:LPHWHT18+)
keita Sano - Ōtotsu
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引く手数多と呼ぶには言い過ぎだろうか、いや、決してそれも誇張ではない位に日本から世界に向けて今最も注目を集める若手アーティストであるのは間違いなく、事実Crue-L RecordsをはじめRett I FlettaやMister Saturday Nightと言った人気レーベルからHolic Traxや1080pを含む多くのアンダーグラウンドなレーベルからも求愛を受けるアーティストがKeita Sanoだ。2012年頃から作品をリリースするも既にその量は30作を超えるなど尋常でないハイペースで量産しながら、その多作さに呼応するようにテクノ〜ハウス〜ディスコと作品毎に作風のバラエティーも広げて、幅広くファンを獲得している。本作は過去にもリリース歴のあるニューヨーク拠点のLet's Play Houseからとなるアルバムで、実はアナログでは『Kubo』と『Totsu』として別々にリリースされたものを、配信では合わせて凹凸=Ototsuとして纏めた作品だ。ここでは基本的にはハウスをベースにした作風になっているが、何と言ってもどれもフロアを強烈に沸かせるダンス・トラックである前提ある事を主張したい。8分にも及ぶ"A Place Called Sun Beach"は特にじわじわと来る快楽的な一曲で、序盤の溜めに溜めたシンセベースのシーケンスで長く引っ張りつつトランシーな上モノも入ってくれば、ディスコティックな多幸感の雰囲気に染まる機能的な作風で、幕開けから強烈な一撃を食らわせる。鈍いアシッドと不気味なホーンを用いてシカゴ・ハウス風な悪っぽい不良感のある"Hmmm"は、ロウな質感も相まって粗悪なマシン・グルーヴがより覚醒感を誘発する。次の"Sweet Fruit"もラフな音質ながらもズンドコとしたドラムやカラッとしたパーカッションで構成されたリズム重視のハウスで、亜熱帯の密林を喚起させる原始的なトライバル感が心地好い。ここまでの『Kubo』で十分に作風の幅広さは証明されているが、続く『Totsu』は更に賑やかなパーティー仕様な曲調が強くなっている。ピュンピュンとしたコズミックなSEや管楽器の派手なディスコ・サンプリングを多用した"Can't Wait The Party"は、そのタイトル通りにパーティーが待ち遠しくなるズンドコとしたフィルター・ディスコで、ドタドタとした安っぽいビート感ながらも輝きを放つようなメロディーで楽しさに溢れている。そして色っぽい女性ボーカルのサンプルを用いた"Bitch"はソウルフルかつ優美なディスコ・ハウスで官能的に聞かせつつも、最後の"The Stripper"は回転数が狂ったようなスローモーなテンポ、そして即興的なボーカルも入り紫煙も揺らぐ怪しい残響も加えてダンスホール・レゲエ調と、曲調は正に様々でありながらあの手この手で踊らせる曲ばかり。悪っぽさ、または華やかさなど曲毎に異なる表情やスタイルがありバラエティー豊かで、しかしどれもSanoの衝動的な勢いでの世界観の統一があり、大量にリリースをしているにもかかわらず爆発力は一向に衰えない。更に今度はClue-lからのアルバムも控えており、一体何処までこの勢いは続くのだろうか。



Check Keita Sano
| HOUSE13 | 10:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Nick Anthony Simoncino - Mystic Adventures (Vibraphone Records:VIBR 012)
Nick Anthony Simoncino - Mystic Adventures
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2015年に復活を果たしたイタリアの伝説的レーベルであるVibraphone Recordsは、92〜93年頃の僅か短い期間だけ活動を行っていた。復活後も当初は以前にリリースされていた作品のリイシューが中心だったものの、再評価に伴い活動も軌道に乗っており、今では積極的にイタリアの現在形のアーティストの後押しを行っている。そしてレーベルとしてはやや古典的なハウスを得意としているが、イタリアにおけるシカゴ・ハウス狂のアーティストと誰を差し置いてもSimoncinoなわけで、このレーベルとの相性の良さは説明するまでもないだろう。基本的にどのレーベルからのリリースであろうとSimoncinoの作風に大きな差はなく良くも悪くも金太郎飴的、本作においてもアナログサウンド全開の簡素な味わいのディープなシカゴ・ハウスが中心だ。TR系の音に近似したドタドタとしたキックと生々しいハイハットが骨のある4つ打ちを刻み、そこに毒々しくヒプノティックなシンセのフレーズを被せた"Mystic Adventures"は、非常にシンプルな構成が故にシカゴの狂気や荒々しさが端的に表現されたハウスだ。中毒的なアシッド・ベースが這いずり回る開始から淡々として無機質なキックやハイハットが加わりビートを作っていく"Righteous Rule"も、基本的に似たような作風でミステリアスなメロディが不気味な空気を発している。"Alba Techno"も無機質な4つ打ちビートという点では全く同じだが、浮遊感のある上モノやSE、そしてダビーな残響の効果によって荒々しさだけでなくディープな雰囲気も伴う。攻撃的で粗暴なトラックである"Galactic Devotion"は膨らみのあるキックや粗いハイハットによってラフさとパワフルな圧を生み、トランシーでもある快楽的な上モノも用いてレイヴ風なケバケバしさもある。動物の鳴き声みたいな効果音がユニークな"RX5 Theory"のみは抜けの良いパーカッションも加わってトライバルな感覚もあるが、それにしてもやはり無機質というか淡々としたリズムマシンの音が何処か空虚だ。シカゴ・ハウスへの愛が故に一本調子な安っぽいアナログ・サウンド全開、良く言えば非常に分かりやすい音楽性でぶれる事はないし、好きな人にとっては浮気させない位の変わる事のない魅力を放つ作品でありアーティストだと思う。



Check Simoncino
| HOUSE13 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Hear & Now - Aurora Baleare (Claremont 56:C56LP011)
Hear & Now - Aurora Baleare
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2018年も注目すべきバレアリック・ミュージックは多くこのジャンルが豊潤の中にある事は間違いないが、そんな一年の中でも特に見逃せない作品がClaremont 56から夏頃にリリースされたHear & Nowの初のアルバムだ。Claremont 56と言えばPaul 'Mudd' Murphyによって運営されているUKのクラシカルなバレアリック・レーベルの代表格であり、バレアリックというスタイルの周りにディスコやクラウト・ロックにダウンテンポといった要素を取り込んで、特に生音の有機的な響きを用いた開放的なサウンドが特徴的だ。そんなレーベル性にこれ以上ない位にぴったりな音楽性を本作は含んでいるが、そのHear & Nowは2000年代から活動するイタリアからNYハウスへと接近したハウスアーティストであるRicky Lと、そして同郷のアーティストであるMarcoradiによる二人組の新しいユニットだ。このユニットの経歴としては同レーベルに一枚のEPを残しているだけで決して長くはないが、その音楽性はその活動歴よりも遥かに円熟している。アルバムは湿った霧が満ちる中でゆっくりと眠りの中から目覚めていくような"Aurora Baleare"で始まり、哀愁のギターの旋律と透き通ったシンセが溶け合い微睡んでドリーミーな雰囲気から徐々に動き出す。神秘的なシンセや凛としたエレピで青々しい空の下で闊歩するような長閑なニューディスコの"Stella Dei Venti"は、しかし中盤から印象的なベースも加わってよりオーガニックな響きによって血の通ったサウンドを増す。メランコリーな泣きのギターとからっとしたパーカッションが乾きながらも心地好いディスコダブな"Salsedine"、浮遊感と透明感のあるパッドを用いてバレアリックな壮大さを演出しながらもしっとりしたディスコのリズムがある"Trasimeno"、ここら辺もギターやドラムの生な音を前面に打ち出されており、身も心も包み込んでくれる優しさに溢れた温かさを感じる事だろう。風の音や鳥の鳴き声から始まる"La Marsa"はいかにも古典的なバレアリックとも言えるが、繊細なギターのメロディーから徐々にギターカッティングやシンセーベースも加わり、そして安っぽいマシンビートも入ってくれば途端にイタロの快楽的なディスコになる流れで、底抜けな多幸感へと突入する。そして最後の"Airone"はアルバムを締め括るに相応しい憂いの感情が溢れ出すセンチメンタルかつバレアリックなアンビエント系で、抜けの良いパーカッションがキックレスながらも大らかなビートを感じさせ、そこに哀愁溢れるシンセと泣くように咆哮するギターがこれ以上ない程にドラマチックに展開して、感動的な映画の一場面を見せるが如くのサウンドスケープを広がらせる。アルバム通して基本的には踊らせるのではなく心に響かせるリスニング主体となっており、特に感情を全く隠さずに豊かな心の内を見せる豊かな響きは何処までも清々しく、そして太陽の光を全身で浴びるが如くの楽天的な世界観だ。夏にリリースされた作品ではあるが、夜が長くなってくるこれからの季節にもぴったりな一枚。



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| HOUSE13 | 08:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Lay-far & Phil Gerus - Solitary High Social Club (Leng:LENG041)
Lay-far & Phil Gerus - Solitary High Social Club
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バレアリックシーンの代表的レーベルの一つであるClaremont 56、そのサブレーベルとして運営されるLengはどちらかと言うとユーモアや実験性もあるニューディスコ寄りのレーベルで、フロア向けのダンス・トラックを送り出している。そのレーベルの新作はロシアはモスクワからの人気アーティストであるAlexander LeyfaことLay-farと、そして同郷であるPhil Gerusの共作だ。Local TalkやSoundofspeed等からディープ・ハウスにヒップ・ホップやモータウン感覚を取り込んで優美に磨き上げた音楽をリリースする前者、そしてSonar KollektivやBastard Jazz等からブギーなディスコを送る後者と、今ではどちらもロシアン・ハウスの信頼の置けるアーティストだ。ここでは共作という形が単に話題性だけではなくその言葉通りに二人の音楽性が共存して良い具合に相乗効果となっており、Lay-farの色彩豊かな音色と多彩なビート感、そしてGerusの輝かしいコズミックなディスコ感が自然と一体化している。それが最も端的なのは"City 2 City, Star 2 Star"だろうか、もっさりしながらもずっしりブギーなディスコのビートに優美なエレピやシンセのメロディーで実に情感たっぷりに展開する豊かな音楽性で、特に咽び泣くようなシンセソロのエモーショナルな旋律に胸が締め付けられる。"Am I Tripping"もしんみりと憂いを含んだシンセのメロディーが耳に残るが、更にしっとりとした質感を生むヒップ・ホップかまたはエレクトロにも近い落ち着いたビート感で、勢いを抑える事によりしっかりとメロウな響きが耳に入ってくる。と思いきやずんどことけたたましく生っぽいディスコビートな"Love Life"ではゴージャスなシンセの響きやコズミックなSEもあって賑やかでハッピーなディスコ・ハウスを聞かせ、"4 Snowflakes On Her Lips"では優しく包み込むようなエレピのコードに豊かなシンセを被せて滑らかな展開で軽快なビートを生み、ブギーでうきうきと体も弾むディスコを披露している。比較的Gerusの影響と思われるディスコティックなビート感が強く出ているかなとは思うが、Lay-farによる動きの多いフュージョン風なシンセもしっかりと盛り込まれ、肉体的に踊れる感覚とリスニングの面でも申し分なく作曲家としての非凡なる才能を感じさせる作品だ。



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| HOUSE13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Baaz - Earth 2 (Office Recordings:OFFICE 14)
Baaz - Earth 2
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アナログをこよなく愛するものの置き場所に困る事や価格高騰の煽りを受け、当方も最近ではすっかり配信で音源を購入する事にも抵抗は無くなっている。例えそうだとしてもしかしアーティストにとってアナログでのリリースは価値あるものだと思うが、しかしベルリンの正に深い音響を放つディープ・ハウスのレーベルであるOffice Recordingsすらも積極的に配信に力を入れるようになるとは、これも時代なのだなと感慨深い。本作はそのレーベルの中心的存在であるBastian VolkerことBaazによる作品で、恐らくアナログでは2枚組でリリースされるのだろうが、今現在では配信でのみリリースされているのものだ。このレーベルのみならず過去にはElevateやSlices Of Lifeからもリリース歴があるのを理解すれば、如何にBaazの音楽性がミニマルな機能性があり深遠なる音響を持っているかを想像するのは難くないだろう。冒頭の"Who Am I"からして太くも軽快な、そして単純な4つ打ちのグルーヴを刻み、うっすら情緒匂わせる上モノのループとシンセストリングスによって仄かなエモーショナル性が発せられ、8分の中で大きなブレイクも特に用いずただただ心地好く踊らせるだけのミニマルなディープ・ハウスは彼の真骨頂だろう。続く"Odeon"ではロウで乾いた音質の詰まったリズムが変則的で、しかし優しく延びるシンセや耽美なコード展開を配して、これまた控えめに耽美な響きを持ったオールド・スクール寄りのハウスだ。次は一点してゴリゴリとした厳ついキックが打ち付ける骨太なグルーヴの"Hiding Space"、しかしここでも酩酊感を誘う幻惑的なシンセが奥深い空間演出を成し、淡々と冷えた感覚が持続しながらディープに潜っていく。"Oza"ではぐっとビート感は弱まりさざ波が広がっていくような穏やかなビートが優しく持続し、ぼんやりと浮遊するムーディーな上モノや遠くで聞こえるようなボイス・サンプルの効果もあって、殆どアンビエント・ハウスの状況ながらもより情緒が強く漂う。どの曲に対しても言える事は淡い音像が生み出す仄かなエモーショナル性、ミニマルに洗練されたグルーヴ、深い音響とBaazの個性は確率されている。ボリューム的にはアルバムと変わらない程で、Baazの魅力を十分に堪能する事が可能だ。



Check Baaz
| HOUSE13 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Tom Flynn - AW18 Collection (Planet E:PLE65393-6)
Tom Flynn - AW18 Collection
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もはやデトロイト・テクノ/ハウスという言葉だけでは括れない程に初期の頃から変化はしているものの、しかし今も尚積極的な活動を続けるデトロイトの古参レーベルであるPlanet E。特に主宰者がDJ業に勤しんでいる為か彼のオリジナル新作は滅多にリリースされないものの、デトロイトやまたはその外の世界からも優秀なるアーティストの作品をリリースする事でレーベルに多様性をもたらしながら、停滞する事なく活動を続けられているのだろう。レーベルの新作はまたしてもデトロイト外、UKはバーミンガムからのTom Flynnによるもので、2010年頃からStrictly RhythmやHypercolourを含む様々なレーベルから作品を量産するようにリリースしており、それはテクノ〜ディープ・ハウス〜エレクトロと多岐へと渡っていて音楽性の広さもあるようだ。そしてPlanet Eからの本作、ここでは官能的で大人びたディープ・ハウスを披露しており、いわゆるデトロイト的ではないものの美しく花弁が開くような叙情性はエモーショナルという点で共通項はあるだろう。"Packard"では淡々と4つ打ちのハウスのリズムを刻む中で、闇夜の中で黒光りするような繊細ながらも艷やかなピアノが妖艶に鳴っており、そこに時折ミステリアスなボーカル・サンプルのループが繰り返されたりするも、基本的に大きな展開は無くジャズ影響下のピアノが官能的な世界を作り上げている。同様のスタイルを踏襲する"Anna"も色っぽくムーディーなピアノが闇の奥で鳴っているようで、そこに女性の呟きを被せながらしっとりメランコリーな空気で満たしているが、若干パーカッシヴで鋭いリズムによって切れがあるハウス・トラックになっている。残りの"Marx"は前述の曲らと似たような官能性はあるのだが、曲調自体はよりヒプノティックな電子音が色々と現れて酩酊感を誘うヨーロッパのモダンな、例えばIsolee辺りの奇妙なエレクトロニックな鳴りのするハウスに接近している。一体どれがFlynnの主となる音楽性なのかまだ掴む事は出来ないが、ここではそのしとやかな官能性が十分に発揮されており、真夜中にもばっちりとはまるだろう。



Check Tom Flynn
| HOUSE13 | 19:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Paolo Di Nicolantonio - Close To Me EP (Craigie Knowes:CKNOWEP9)
Paolo Di Nicolantonio - Close To Me EP
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リリース元のレーベルもアーティストについても全く知らなかったものの、色々と試聴している内に一聴して魅了されて購入した本作。グラスゴーの新しいレーベルであるCraigie Knowesからイタリア人のPaolo Di Nicolantonioによるもので、YoutubeではSynthManiaなるチャンネルを主宰しており、特にシンセサイザーやキーボードのマニアとして様々な電子楽器を紹介している。また元々90年代から音楽家としも活動はしていたようだが、本作がEPとしては初のリリースになるようだ。"Pyramid"はいきなりシンセのシンセらしい音色を発揮したバレアリックな曲で、ビート無しながらも光沢感を伴うゴージャスなシンセをメロディアスに展開して甘ったるいドリーミーな世界に即座に引き込み、イタロ・ディスコからリズムを抜いたらこんな曲になるのだろう。そしてお待ちかねビートも入ったダンス曲の"Close To Me"では、綺麗めの伸びやかなシンセストリングスで優雅なメロディーを配し、少々エグみもあるシンセベースがイタロな雰囲気を醸し、そこに安定感あるリズムマシンの4つ打ちと抜けの良いパーカッションを被せてずんずんと意気揚々と闊歩するようなバレアリック/イタロ・ディスコを聞かせる。シンセの音色の魅力を伝えるべく常に電子音が鳴っていているものの決してしつこくなり過ぎてはなく、青空を喚起させるような爽快なシンセの音色は野外パーティーにもはまる外向的なバレアリックで、8分という長さも全く長尺に感じさせない程の白昼夢だ。それをリミックスしたのはデトロイト・テクノ寄りでメロディアスな作風を得意とするJohn Shimaで、繊細で生っぽい響きのつまらせたリズムで変化を持たせ、シンセの音色はどちらかというと内向的で落ち着きを持たせて何だか90年代のAIテクノや初期のデトロイト・テクノへと接近した作風になった"Close To Me (John Shima Remix)"。元の太陽の光に照らされたような陽気な雰囲気に比べると、レトロ・フューチャーな懐かしく未来的なSFの世界をイメージさせる点で想像力を掻き立てる作風だ。原曲もリミックスも各々のアーティストの個性がしっかりと反映されているが、どちらもやはりメロディーに重きを置いている点が共通している。是非ともDJ向けのEPではなく、アルバムもと期待したくなる作品だ。



Check Paolo Di Nicolantonio
| HOUSE13 | 09:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
I:Cube - Double Pack (Versatile Records:VER 120)
I:Cube - Double Pack
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フレンチ・ハウスの老舗レーベルであるVersatile Recordsは今でこそ多彩なアーティストを擁しているが、そのレーベル発足時から活躍するのがNicolas ChaixことI:Cubeだ。レーベル運営を行うGilb'RとのユニットであるChateau Flightでの活躍も華々しいが、このソロ活動ではフィルター系のまんまフレンチ・ハウスではなくより自由なエレクトロニック・ミュージックがベースにあり、特に作品を重ねる毎にその奇抜で変幻自在な音楽性は拡張を成しており、ベテランだからと言って全く落ち着くどころか尖った個性をより尖らせている。新作はアナログではダブルパックでのリリースでミニアルバム的な扱いだろうか、その分だけ収録曲も多くその多彩性は富んでいる。初っ端はアフロ・トライバルな抜けの良いパーカッションが乱れ打ちつつ、そのタイトル通りにミニマルな旋律のフルートが密林の奥の怪しい祭事かのような雰囲気を醸す"Flutes Souterraines"で、エキゾチックな効果音も入る事でより催眠的な効果を強くしている。"Troglo Dance"もエキゾチックな感覚はあるものの、アタック感の強いドラムと光沢感のあるシンセリフから感じられるのはディスコの系譜で、野暮ったくも簡素な味わいが逆に新鮮に聞こえる。一方で眠気を誘うようなぼんやりとしたシンセがにうっとりさせられ繊細な電子音も組み込まれたディープ・ハウス性の強い"Bifurque"や、アシッドなベース音が膨張しながらも壮大でゴージャスなシンセが感動的に展開する真夜中の雰囲気たっぷりなバレアリック・ハウスの"Ramurc"と、どちらも大らかな作風の中に美しいメロディーを活かした曲だ。そして奇抜性が特に発揮されている"La Nuit Des Rats"、変則的なブレイク・ビーツと民族的なパーカッションが生み出す不気味なグルーヴは黒魔術か何かの儀式か、何かが生まれる胎動らしき原始的なエネルギーがほとばしりトランス感覚を誘うこの曲は、ジャンル分け困難なダンス・トラックだ。ひとえにフレンチ・ハウスと言っても単純なものではなく、流石ベテランらしくその底深さを教示する如く様々な要素を披露しているが、実験的だけでなくどれもにI:Cubeらしいメランコリーがあるのも素晴らしい。



Check I:Cube
| HOUSE13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Andrew Soul feat. Robert Owens - Slipping Into Darkness EP (Vibraphone Records:VIBR013)
Andrew Soul feat. Robert Owens - Slipping Into Darkness EP
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シカゴとデトロイトのハウスに触発され、イタリアはローマからアンダーグラウンドなハウスを1992年頃に7枚のみ残したVibraphone Recordsは、恐らく忘れさられていたレーベルであろう。しかし2015年に失われた名作の復刻を機に特にイタリアのアーティスト推しでレーベル運営を復活させ、今ではオールド・スクールなハウス・ミュージック好きな人であればきっと注目するであろう存在として、再度輝きを放っている。そのレーベルからの新作はやはりイタリアの比較的若手でもあるAndrew Soulによるもので、シカゴ・ハウスの伝説的ボーカリストであるRobert Owensをフィーチャーしている事、そしてシカゴ・ハウス黎明期から活動するVincent Floydやイタリアからシカゴ・ハウスへの妄信的な愛を示すNick Anthony Simoncinoをリミキサーと迎えているのだから、それらの名前を見ただけでも反応する人は少なくないだろう。実際に作品を聞いてみれば期待通りのボーカル・ハウスが収録されており、"Slipping Into Darkness"では自己陶酔系の甘く呟くようなOwensの歌は健在で、そこに控え目な響きながらもしっとり情感漂うピアノと鈍いアシッドベースが弾ける官能的なディープ・ハウスのトラックが合わさっており、古き良きハウス黄金時代を思い起こさせる。それをFloydがリミックスした"Slipping Into Darkness (Vincent Floyd Remix)"はTR系の安っぽく乾いたパーカッションと透明感ある伸びるシンセによってメロウな方面のシカゴのハウス、つまりはLarry Heard直系のシンプルな構成ながらも感情に訴えかけるエモーショナル性を掘り起こした作風になっており、未成熟な初期衝動を残しながら実に味わい深さがある。対して"As You Are"はより硬いキックとアシッドの攻撃性をそのまま打ち出した骨太なハウスで、音の隙間を残した簡素な構成ながらも跳ねる肉体的なグルーヴが迫り、Owensによる歌も深い陶酔感を引き出している。それをSimoncinoはフラットに均したビート感に作り変えた"As You Are (Nick Anthony Simoncino Remix)"を披露しており、魔術的な歌やより音を絞り込みながら初期シカゴ・ハウスの悪っぽさや暗い雰囲気を強調した点は、原曲よりも更に先祖返りしていてSimoncinoのシカゴ・ハウスへの忠実さが際立っている。どのバージョンも最新のと言うよりは8〜90年代の時代性が強い懐古的な意味合いは強いものの、そこはシカゴ・ハウスへの理解が深いアーティストだからこそ、本物のシカゴ・ハウスを提唱している点で評価すべき作品だ。



Check Andrew Soul
| HOUSE13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Trinidadian Deep - Organic Roots EP (deepArtSounds:dAS 021)
Trinidadian Deep - Organic Roots EP

もはやRon Trent直系で愛弟子という売り文句も説明は不要であろう、トリニダード・トバゴ出身で現在はニューヨークを拠点に活動するTrinidadian Deepは、アフロで爽やかなパーカッションと流麗なシンセやオルガンを前面に出した壮大なディープ・ハウスにおいては群を抜いており、非常に多作なリリースながらもどれも高い品質を保って信頼足るアーティストの一人だ。本作は前述のTrentやAnthony NicholsonにGlenn Undergroundらもシカゴ勢も積極的に手掛けるdeepArtSoundsからのリリースで、そういった意味ではレーベルとの相性の良さは言うまでもないが、当然の如く普段の彼らしい澄み切った空気が広がる清涼なディープ・ハウスをここでも聞かせている。ボーカルにSarignia Bonfaをフィーチャーした"I Need You"はエレガントなシンセ使いで優雅さを振りまきつつポコポコとした響きのコンガ系パーカッションで弾けるようなグルーヴを生み出し、そして甘く問いかける歌が官能的でありながらダビーな残響を伴って大空の中へと消えていく清々しいロマンティックさを感じさせ、いきなりTrinidadian Deep節全開なディープ・ハウスを披露。そして"Fusion"も序盤はゴージャスな響きのシンセで綺麗なメロディーを展開し、金属的なパーカッションや軽やかな4つ打ちで軽やかに身体を揺さぶるハウスだが、中盤からは衝動のあるがままにキーボードを演奏したような必殺のオルガンソロが炸裂して輝かしい太陽光を全身で浴びるようなポジティブな雰囲気に包まれる。続く"Future Funk"も同じタイプな耳に残るシンセリフとエモーショナルなオルガンソロ、そしてチャカポコした抜けの良いアフロ・パーカッションで軽やかさを生むハウスで、金太郎飴的な作風ではあるもののここまで徹底されると何か自然と笑みがこぼれてしまう。そして以前にTrinidadian Deepがリミックスを行った事で絡みもあるAllstarr Motomusicが、ここでは逆に"I Need You (Allstar Motomusic Remix)"としてリミックスを提供しているが、原曲の優美な雰囲気はそのままにビート感は滑らかに整え、フュージョン風な豊かなシンセソロも加えて艶やかさを増した上でアンビエント性や浮遊感も盛り込んで、しっとりとした落ち着きを持ったハウスへと生まれ変わっている。いつものTrinidadian Deepらしい開放感の中で大手を振って舞い踊る躍動感に溢れたディープ・ハウスが並んでおり、完全に我が道を突き進む活動にブレは無い。



Check Trinidadian Deep
| HOUSE13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |