Dominik Eulberg - Mannigfaltig (!K7 Records:K7380CD)
Dominik Eulberg - Mannigfaltig
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2011年の『Diorama』(過去レビュー)から8年、EPは継続してリリースしつつもアルバムを全く出さなかったDominik Eulbergが、2019年遂に5枚目のアルバムをリリースした。ダンス・ミュージックの前提を踏襲しつつも線の太さに頼らず、酩酊感溢れる優雅な美意識やアシッド的な中毒性といった響きを打ち出して、精神へと作用する覚醒感を持った音楽はEulbergを個性あるアーティストたらしめていたが、この最新アルバムはより多様性を受け入れて最早ダンス・フロアへの依存度は低くなっている。前のアルバムのジャケットからも分かる通り自然志向的な意識が感じられたEulbergは、実は生物学者や鳥類学者でもあり自然保護の重要性を唱えているそうで、本作でもジャケットにも多種多様な生物が描かれている通りで多様性のある音楽によって自然保護を訴えるコンセプト・アルバムを作り上げた。曲名も全て動物の名前であったりとそのコンセプトは徹底しているが、アルバム出だしの"Eintagsfliege"(カゲロウ)はどんよりとした暗いムードの中に静謐なピアノやベルの和音が浮かび上がり、ダウンテンポなしっとりしたビートを伴いながら美しくも物哀しい雰囲気の夢の中を彷徨うリスニング系の曲。続く"Zweibrutiger Scheckenfalter"(蝶の一種)も荘厳なシンセのレイヤーで覆われキラキラとしたメロディーが反復し非現実的な美しさが広がるが、下部では先程よりもしっかりしたキックやアシッドのベースがダウンテンポのリズムを刻んで、ゆったりゆらゆらと心地好い酔いを生む。"Dreizehenspecht"(ミユビゲラ)では視界は明るくなり鉄琴のような朗らかなメロディーと薄いシンセの層が色彩豊かな表情を付けているが、途中からポスト・アシッド的な音も混ざってくると華やかながらも陽気な毒々しさも現れて、爽快な多幸感へと入っていく。中にはIDM系のような奇抜な印象も受ける曲もあり、"Funffleck-Widderchen"(蝶の一種)ではグリッチのようなリズムやパーカッションを用いつつ退廃的で美しくも催眠的な旋律が持続するが、次第にビートは数を増やして催眠状態ながらも刺激的な緊張感を高めていく。また少ないながらも"Sechslinien-Bodeneule"(蛾の一種)や"Neuntoter"(セアカモズ)のようにしっかりした4つ打ちテックハウスなダンスフロアに根ざした曲もあるが、こういった曲でもEulbergらしい緻密で知的な性質を失わずに、優雅なベルの音色や幻惑的なシンセのレイヤーに中毒的なアシッド・サウンドも盛り込んで、快楽性溢れ機能性抜群のトランス状態を発揮している。このようなダンス曲は少なくアルバムは総じてリスニング性が強く、狂おしい美意識と牧歌的な多幸感が溢れる世界観だが、音としてのアシッドではなく感覚としてのアシッド性を盛り込んだトランシーな空気もあり、表面的にはダンスフロアからはやや離れているものの十分にクラブ・ミュージックらしい。また今までのアルバムの中でも、特にEulbergらしい優雅な美意識での統一感があり素晴らしい。



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| TECHNO14 | 11:30 | comments(0) | - | |
Ricardo Tobar - Continuidad (ESP Institute:ESP 060)
Ricardo Tobar - Continuidad
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2007年にかのBorder Communityから鮮烈なデビューを果たしてから既に10年以上経過しているが、チリ出身のRicardo Tobarはギターノイズを用いたシューゲイザーからモジュラーシンセの毒々しいサウンド等、自信の個性を存分に発揮しながら地道に自身のアーティスト性を深めている。デビュー作での溢れんばかりのフィードバックノイズに覆われたサイケデリアなロック風テクノから、金属が捻れたような歪な響きの狂気的なダンス・ミュージックまで、強烈な音像によって覚醒感や高揚感を生み出してきたTobarだが、この2019年の最新アルバムではダンス・ミュージックでもあるがしかし快適なダンス・フロアからはみ出して混沌へと落ちていく面もあり、相も変わらず刺激的な音響テクノを披露している。アルバムは金属的なパーカッションが空虚に響く中、鈍いモジュラーシンセや歪んだシンセが狂おしく唸る"Les Vagues"で始まるが、不気味なパーカッションや訝しい空気もあってどこか呪詛的な集会のようだ。そこに続く"Recife"は比較的ダンス寄りな曲だが、小刻みに動き回るようなスピード感のあるドラムがけたたましく疾走し、そこに美しく荘厳なシンセストリングスがサイケデリックな高揚感をもたらして、アルバムの中でも特にTobarのメランコリー性が発揮された叙情的な一曲だ。そこを過ぎると緊張感から開放され、落ち着いた4つ打ちを刻みながらヒプノティックなシンセのリフとノイジーなギターサウンドが酩酊感を生む"Totem"、ビートレスながらも祭事かのような打楽器のスピリチュアルな鳴りとぼんやりとしたフィードバックの持続により意識もくらむ混沌が広がる"Entrada Y Salida"と、ダンスフロアに依存しないベッドルームでの想像を刺激する曲もある。"Seguridad"になると壊れた機械を叩いているような朽ち果てたドラムマシンのリズムに合わせ、不明瞭な歪んだシンセやディストーションギターで空間が満ち、破壊的で圧倒的なエネルギーが爆発するもはやダンスでもリスニングでもない混沌が出現する。以前にも増して狂ったような強烈な音楽性を主張し、安易には聞き流せない程の響きは人によっては神経をすり減らされてしまうかもしれないが、しかしそんな破壊的な響きの中にも時折メランコリーや美しさもあり、その意味ではTobarの音楽性は初期から一貫しているように思われる。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Kuniyuki Takahashi - Early Tape Works (1986 - 1993) Vol.2 (Music From Memory:MFM032)
Kuniyuki Takahashi - Early Tape Works (1986 - 1993) Vol.2
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隠れた名作から埋もれしまった未発表曲まで、時代に取り残されてしまった曲群を抜群の嗅覚を以て掘り起こすMusic From Memoryが次に目を付けたのは、テクノやハウスにジャズやアンビエントといった多用な音楽を、エレクトロニクスと生演奏を駆使してライブ性溢れる有機的な作風に仕立て上げるKuniyuki Takahashi(高橋邦之)だ。作品をリリースし出したのは1995年頃ではあるがそれまでにも音楽制作は行っていたようで、1986〜1993年に制作された音源をプライベートでカセットテープという形に残していたようだが、一体何処から嗅ぎ付けたのかMFMがそんな音源を2枚のアナログに渡って編纂している。本作はこの前にリリースされた『Vol.1』(過去レビュー)に続く第二弾で、路線としては全く変わらずに旧式のシンセやリズムマシン、そしてテープレーコーダーやサンプラー等レトロな機材を用いて、古くもどこか懐かしい響きを持ったアンビエント志向な音楽を手掛けている。"Island"は現在のムーブメントであるニューエイジそのもので、微睡んで叙情的なパッドに深い森の中で聞こえるような鳥の鳴き声らしきサンプリングを被せ、生命が宿る神秘のジャングルから大地の香りが沸き立つような桃源郷エスノ。ダウンテンポなしっとりダビーなリズムも入り、Kuniyukiらしい有機的な温かみを発するメロウなシンセに引っ張られる"Your Home"は、ドラマのロマンティックなシーンで流れるBGM的で物憂げな情景を浮かび上がらせる。後の作品に繋がるようにしみじみとしたギターの音色、生っぽいドラムやパーカッションを用いた"Echoes of The Past"は、Mule Musiqからのアルバムで見られるオーガニックなジャズ×ディープ・ハウスに開眼した作風のプロトタイプと言えるだろうか、非常に熱の籠もった感情性の強い響きはKuniyukiの特徴が顕著に現れている。重厚な湿っぽいストリングスと祈りのようなコーラスによる瞑想アンビエントの"Ai Iro"は霊的な存在感を放ち、静謐なピアノと琴らしき弦による悲哀の旋律と内向的な笛の音色を組み合わせ瞑想へと誘う"Sakura No Mizu"はそのタイトル通りに和の儚い侘び寂びの美しさが表現され、こういった音楽性には後のKuniyukiらしさが散見される。Mule Musiqからリリースする以降の熟練者としての卓越した技術による綺麗な響きや練られた構成の音楽に対し、本作はまだまだ辿々しく未完成な雰囲気も残る作風ながらも、それは素朴さへと繋がりKuniyukiの心の中からほっと温まる音楽性と自然な調和を成している。現在のアンビエント/ニューエイジの視点から見ても素晴らしいのは当然として、Kuniyukiの音楽性の初期胎動を感じられる作品として意義深い。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Barker - Utility (Ostgut Ton:OSTGUTCD46)
Barker - Utility
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世界でも有数のタレントが集まるBerghain/Panorama Bar、そんなテクノの聖地的な場所でレジデントを担うSam Barkerは、10年間ベルリンの音楽業界に身を置くアーティストだ。過去にはOstgut TonからはAndy Baumeckerと手を組みBarker & Baumeckerとしてダンスだけに偏らずアンビエントな雰囲気もあるバラエティーに富んだアルバムを2枚も出しており、アーティストとして確かな才能を持っている事は証明されていたが、何故かソロでの作品は少なく2019年リリースの本作が初のソロアルバムとなる。作品の少なさはもしかすると彼の性格に依るものだろうか、自身の発言において完璧主義としての意識が強い事を述べており、完全に納得する迄は自身の分身である作品としての音楽をリリースしたくないのだろう。そんな彼がようやくアルバムを出したという事は、当然本作への自信も相当なものに違いないが、ダンス・ミュージックに当然として存在するキックドラムを殆ど用いずにしかしダンスフロアへとも通じるこの実験的かつ挑戦的な音楽は、確かな魅力を持っている。冒頭の"Paradise Engineering"でも当然全くキックが入ってこない作風はアンビエントな様相もあるが、美しく伸びる幻想的なパッドとトランス感さえもある繊細な電子音のメロディーが深遠なる世界を繰り広げるこの曲には、物哀しいセンチメンタルなムードも充満し非常に感情的な響きだ。"Posmean"もやはりキックレスだが、しかしバウンスし脈打つベースラインとリズムのようにも用いた細かく躍動する切れのあるシンセが疾走感を生み出しており、例えキックが入らずとも高揚感のあるダンス・ミュージックとして成り立つ事を証明している。変則的なリズムを刻むようなシンセのメロディーはまるでIDMを想起させる"Experience Machines"、キックという明確なリズムが無くとも振れ幅の大きいシンセが大胆な動きによって躍動感を生み、一方で不明瞭な奥深い音響が幻惑の濃霧で満たす"Gradients Of Bliss"は夢のようなダブ・テクノで心地好い。アルバムの終盤になるとダウナーに落ち着いて、闇の中で星が煌めくような静謐な電子音の連なりが微睡みのアンビエンスを発する"Wireheading"、そして珍しく金属的で鈍い打撃音が入りながらもメランコリーな風合いの強いダウンテンポ調の"Die-Hards Of The Darwinian Order"によって静けさを取り戻しながらアルバムは幕を閉じる。見事にキックを一切使わずアンビエント/IDMの要素を持ち込みながら、しかしアフターアワーズではなく真夜中のダンスフロアへも意識を向けたノンビートのダンス・ミュージックは、今までにはなかなか見受けられなかった作風として非常に挑戦的だが、美しくもサイケデリックな電子音の響きは勿論リスニングとしても十分に機能する。重厚なキックや迫力のある音圧が無くともダンスを可能とするテクノ、クラブにおけるライブではこれがどう演じられるのかも興味深い。



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| TECHNO14 | 18:30 | comments(0) | - | |
Robert Hood - Paradygm Shift (Dekmantel:DKMNTL050)
Robert Hood  - Paradygm Shift
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近年はディスコ・サンプリングを前面に打ち出したファンキーなゴスペル・ハウスな作風が特徴のFloorplan名義がヒットして、ベテランながらもより一層アーティストとしての進化を見せつけているRobert Hood。しかし根はやはりデトロイト生まれのテクノ・アーティスト、かつては最初期のURメンバーとして、そして脱退後にはミニマル・テクノのオリジネーターの一人として活動していた事もあり、Hood名義でこの何処を切り取ってもミニマル・テクノなアルバムへ5年ぶりに戻ってきたのは意外でも何でもない。2017年作の本作はしかも今や世界有数のフェスティバルとしてのみならず実力派レーベルとなったDekmantelからのリリースで、レーベル自体は個性的で豊かなジャンルに及ぶ多様性があるが、そんなレーベルからこういったテクノ頑固一徹な音楽がリリースされるのも、やはりレーベルからレジェンドに対する畏敬の念みたいなものもあったに違いない。出だしの"Preface"こそ深い底で謎めいた電子音が蠢きクリック音等が連打されるビートレスなアンビエント調の曲だが、それ以降に続く曲はある意味では金太郎飴的とも言える、決して流行や新鮮味とは無縁の冷えて無機質なリズムを刻む、しかし一方でマッチョな肉体感も伝わってくるミニマル・テクノが陣取っている。金属の鳴りが強いシンバルとドスドスとしたキックの応酬に、ミニマル性が根付く単純なシンセのリフ、スプレーのような音響も交えた"Idea"は音の抜き差しによって若干の展開はあるものの、古典的なミニマルの様式美を実践する曲だ。続く"I Am" - 俺とは - という自己主張を感じさせるこの曲は、より平坦なキックとハイハットやハンドクラップの永続的なグルーヴと警告音のようなシンセの反復が、永続的な催眠性を催してミニマル地獄へと誘うファンキーなテクノで、こういった冷たくも肉感溢れるテクノがHoodらしさを主張する。同じミニマルな構成でも、例えば"Nephesh"のように明るいコードを用いて陽気なファンキーさを打ち出した曲、ドンドンと太い芯を持ったキックが骨太ながらもエモーショナルなシンセのループを用いて若干デトロイトな雰囲気もある"Pneuma"、音の隙間を浮かび上がらせる事でリズムの生々しい骨っぽさを強調する"Thought Process"など、ミニマルという軸を守りつつ曲毎に個性があるからこそアルバムを通して全く飽きさせない流れも見事だ。最近のシーンに溢れる線が細く揺らめくグルーヴを用いたミニマルとは一線を画す、これがオリジネーターだ、これがデトロイトだ、という気概が伝わる骨太なこのミニマル・テクノはもはやクラシック。断然支持する。



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| TECHNO14 | 22:00 | comments(0) | - | |
Lost Souls Of Saturn - The Awakening (R & S Records:RS 1908)
Lost Souls Of Saturn - The Awakening
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2017年に名門テクノレーベルのR&S RecordsからデビューしたLost Souls Of Saturnは、完全な新人ではなく実は人気DJのSeth TroxlerとPhil Moffaによるユニットだ。とは言いながらも個人的に両アーティストがお気に入りではなかったのだが、この新作ではBorder Community主宰のJames Holdenが久しぶりにリミックスを提供しているのだから、自然と注目せずにはいられずに購入に至る。Troxlerについては機能的でDJ向けの曲を作るアーティストであるが、Moffaについては全く知らなかったので調べてみると、最近ではドローンを用いた重厚なアンビエント・アルバムも手掛けていたりしている。そんな二人によるLSOSは、最近はなかなかリミックスも行わないHoldenさえもが興味を抱く程に独特で奇抜な音楽性を含んでおり、このEPでも単純なクラブ・トラックではなくアンビエントに民族音楽やスピリチュアル性に映画音楽といった要素が一つなり、ライブ感に満ちた胎動と共にダークかつサイケデリックな世界を構築している。"The Awakening"は平坦なドローンを用いた穏やかなアンビエントで開始するが、その闇の何で繊細ながらもヒプノティックな電子音の粒が不気味にうなり、そして宗教感がある祈りのような重層のコーラスも加わり、静謐ながらも厳かな佇まい。しかし中盤以降は闇の奥底でズカズカと鳴る民族的なパーカッションによって土臭さも獲得し、破壊的なエネルギーが炸裂し強烈なグルーヴに飲み込まれていく。しかしやはり格が違うのはHoldenで、元々8分だった曲が12分越えまで拡大された"The Awakening (James Holden's Past Life Rave Regression)"は、序盤こそ原曲のエスノ・トライバルな雰囲気は残しているが、次第に鋭利でささくれだったビートを刻みながら毒々しくもトランシーなモジュラーシンセのループによってHoldenらしいトランス感で包んでいく。重層的なシンセが生み出す目くるめくサイケデリックな幻覚、浮かんでは消える崇高なコーラスもより魔術のように効いてきて、Holdenの狂おしくも美しく音響によって麻薬のようにズブズブと嵌めてくるサイケデリック・エレクトロは圧巻以外の何物でもない。Holdenのリミックスは言わずもがな素晴らしいが、LSOSの音楽性も個性的であり、本作の後にリリースされたアルバムも注目すべきだろう。



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| TECHNO14 | 22:00 | comments(0) | - | |
Santiago Salazar - The Night Owl (Love What You Feel:LWYFLP 02)
Santiago Salazar - The Night Owl
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かつてはUnderground Resistanceという集合体の一員として、そしてLos Hermanosのメンバーとして活動していたDJ S2ことSantiago Salazar。ロスアンゼルスからデトロイトへと移住し憧れのURの中で大きく羽ばたいたSalazarは、しかし成長と共に自身の足で歩むべきグループを離脱して、ラテンプロジェクトのIcan Productionsやテクノ寄りなHistoria y Violenciaを運営するなどしていた。今では活動が停滞しているURに関連するアーティストの中では現在形の人であり、積極的にアルバムも制作するなどデトロイト・テクノ好きなファンだけにではなくより開かれた存在と言えるだろう。そんなSalazarによる2019年リリースの3枚目のアルバムでる本作は、アナログでリリースされた同名のEPに曲を付け加えて配信でリリースされたものだ。随分と前にURを離脱しロスアンゼルスへと戻ったりとはしているものの、デトロイト・テクノへの敬意を忘れずに、そしてチカーノ系アーティストとしてラテンな根源を含むその音楽は、流行に左右されないテクノとハウスの中庸な音楽性だ。情熱的で希望を抱かせるシンセのメロディーとブイブイとしたベースライン、弾ける爽快なパーカッションに足も軽くなる"Light The Sage"は、内省的ながらもいかにもデトロイトらしいエモーションが伝わってくる。音の数を絞った事で臨場感のあるハイハットやベースが強調された"Loca"は、一見地味ではあるがDJとして立場からツール性を意識したキープ感を強調している。一般的なデトロイト・テクノのイメージと特に合致するのは"Midnight Oil"だろうか、軽快に疾走する4つ打ちのグルーヴに叙情的なシンセストリングスとコズミックな旋律を絡めたこの曲は、完全にURの系譜に属するハイテックなテクノで宇宙へと飛び立っていく。同じようにコズミック感溢れる"The Night Owl"はどちらかと言えばディープ・ハウス寄りで、ゆったりと余裕のあるグルーヴ感に乗って大空で遊泳を楽しむかのような壮大な曲。"Cosmic Creasing"はファンキーなラテンのフレーズを執拗に用いつつハウスへと落とし込み、ミニマルの流れでじわじわと持続感を保ちつつ酩酊感のある電子音を用いて深さも感じさせる。同じラテン系でも"Chuco's Groove"は激しいパーカッションや力強いドラムマシンのリズムが肉体を激しく揺さぶる勢いがあり、多くのダンサーが熱狂的に躍り狂うカーニバルの喧騒のようだ。アルバム全体を通して決して特別な衝撃を受けるような斬新性や流行のスタイルは皆無ではあるが、デトロイトのクラシックな作風に則った音楽性には寧ろ安心感を覚えるだろうし、リスナーもそれを期待しているだろうからこれで良いのだ。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
STEREOCiTI - Constant Turbulent Riot EP (Groovement:GR034)
STEREOCiTI - Constant Turbulent Riot EP
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日本からベルリンへ移住し、そして現在はリスボンを拠点に活動するSTEREOCiTI。自身でWAVEGUIDEというレーベルを設立した上で同名のプロジェクトであるWaveguideによって、かつての深遠なるディープ・ハウス色の強かったSTEREOCiTIからハードなテクノへと舵を切ったKen Sumitani。ここに来て久しぶりのSTEREOCiTI名義の新作はどのようになっているのかと興味は尽きないが、蓋を開けてみればやはりこの名義でもテクノ色を強めた上に、更にはDrexciyaのようなエレクトロへと果敢にも挑戦し、その意味ではより無骨でハード(響きではなくスタイルとして)な方向性へ向かっている。特にエレクトロを打ち出したのがタイトル曲の"Constant Turbulent Riot"で、ミニマルかつヒプノティックな電子音のループに鞭で叩き打つような鋭いビートを合わせて、暗き闇が広がる無機質なエレクトロを披露。ジャンルとしては以前のディープ・ハウスとは異なるものの、無駄な音を排して隙間を活かして骨格を浮かび上がらせた構成はいかにもSTEREOCiTIらしく、厳ついエレクトロ・ビートなもののどこか侘び寂びも感じられる。"Celestial Seeker"はテクノともハウスともとれる中庸な曲調で、Mojubaからリリースしていた頃の浮遊感のある電子音を散りばめる事で幽玄な叙情性を生み、しかしややこれもロウなリズムの響きがエレクトロを匂わせる。"Ineffable Truth"は比較的近年のWaveguideのツール性の強いミニマルなテクノに寄せてきた感もあるが、すっきりとしたキレのある4つ打ちに従来の微睡んで叙情性のある上モノを被せた上に繊細な電子音響を込めた作風は幽玄なテック・ハウス性もあり、Mojubaの頃の音楽性を備えつつテクノ化したような。最後の"Paragraph"が一番従来のSTEREOCiTIらしいディープ・ハウスだろうか、内向的な深遠な音響の中には覚醒的なアシッドもじんわりと牙を向きつつも、ハードなのではなく慎ましささえ感じられる控えめな神秘性が現れている。一つのEPの中で色々な方向性が含まれているのはシーンに適応すべく色々と試しているのだろうか、しかしそのどれもSumitaniの燻し銀的な渋い魅力がある。



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Sonmi451 - Nachtmuziek (Astral Industries:AI-13)
Sonmi451 - Nachtmuziek
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沸き立つアンビエント/ニューエイジのムーブメントが比較的ダンス・ミュージックの外から起きているのに対し、ロンドンを拠点にするAstral Industriesはよりエレクトロニックで表向きはそうでないものの夜のダンスが根底にあるアンビエント/ニューエイジを掘り下げるレーベルだ。人気のあるテクノ系のアーティストの新作だけでなく、過去の埋もれたアンビエントの編纂も行い、このムーブメントが発生する前からレーベルの特異性を確立している。本作はベルギーのアーティストであるBernard ZwijzenことSonmi451の過去音源を纏めたもので、アーティスト自身がそれ程知名度があるわけではないものの、2005年頃から活動を初めてアルバムリリースは10枚を越えるなど精力的な活動を行っている。その音楽性はグリッチやミニマルを含むアンビエントで、"Probe"を聞けば分かる通り水面に波紋が伝わっていくような揺らぎのあるシンセレイヤーに繊細な美しさを秘める電子音やヒスノイズを散らし、ダビーな音響によって更に酩酊する揺らぎを生み出して、時間軸が遅くなるような感覚に陥らせる。時折入っくる日本語サンプルは妙に艶かしく、エレクトロニックでありながら有機的であり、人肌の温もりが伝わってくるようだ。よりチリチリとしたヒスノイズとぼやけた音像を作るドローンに覆われる"Vladivostok"も、日本語サンプルや動物の音らしき環境音を導入して有機的な響きを打ち出し、殆ど動きの無いひたすら安眠作用の強いアンビエントを展開。"Outer Shell"はザラザラとしたノイズやクリック音の上に弦が物静かに美しく鳴り、怪しくながらもその静謐な幽玄さに魅了される。"Quiet Piece For Bram"に至っては広大な宇宙に数々の星が瞬くように、ぼんやりとした音の粒が繊細な美しさを発しており、日本語の呟きが催眠的に用いられながら寝る前の子守唄かの如く安らかな鎮静作用のあるアンビエンスを発揮している。複数のアルバムやEPからの曲を纏めながらも世界観は一貫して心を落ち着かせる癒やし効果もあるアンビエントで、Sonmi451というアーティストの音楽性が正確に伝わってくる良質なコンパイルがされている。闇夜が広がる時間帯にぴったりな、しっとりとしながら美しいアンビエントで、是非とも寝る前にかけておくと最適だろう。



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| TECHNO14 | 09:00 | comments(0) | - | |
Grand River - Pineapple (Spazio Disponibile:Spazio 015)
Grand River - Pineapple

全く知らないアーティストだったものの、Donato DozzyとNeelが主宰しトランス感覚を含むディープな音響テクノを実践するSpazio Disponibileからのリリースだった事もあり試聴してみたところ、思いの外に想像力を刺激するようなアンビエントやニューエイジの要素が鳴っているリスニング寄りの音楽性に魅了され購入を決断した一枚。それこそイタリアのアーティストであり、本人曰くサウンドデザイナーを務めているAimee PortioliことGrand Riverによるデビューアルバムで、2017年に同レーベルからEPをリリースしてその翌年には本作へと繋がるのだから、レーベルの期待値も大きかったに違いない。勿論、時代的にも丁度アンビエント/ニューエイジが再燃しているタイミングだった事もあり、その意味ではリスナーにとっても非常に自然と受けいられる内容だ。アルバムの始まりからして非常にイマジナリーかつディープな"Pleasure Garden"が待ち受けており、重厚感のあるドローンに覚醒的なアルペジオや神秘的な電子音が入り組み、多層になって絡み合うようなエレクトロニクスが深い瞑想のアンビエンスを生み出している。続く"Installation"は一転して音の数は減少し間を作る事で奥深い空間演出をし、霞んだような音響によってアブストラクトな雰囲気もあるニューエイジ風。そして特にニューエイジを強く感じさせるのが10分にも及ぶ"When It All Was Flourishing"で、ぼんやりとした電子音のループはしかし抽象性もあり、ゆったりと液体が形を変えていくように少しずつ変化し音が組み立てられ、ライブ感を伴いながら輝かしい多幸感の中へと入っていくノンビート・アンビエントだ。かと思えば長閑な田舎風景が思い浮かぶ素朴な電子音に懐かしみを感じる"Matter"や、生き物の活動が聞こえるフィールド・レコーティングにヘビーなドローンが被さり、そして何処か民族的で太古の時代を思わせるパーカッションも加わった原始的な"Ecouri"と、しっかりと軸はありながらも曲毎にそれぞれ強い個性が現れている。フロアを沸かすダンス・トラックは皆無とSpazio Disponibileの作品にしては意外に思うところもあるが、繊細で美しくもあるディープな音響という意味では共通点もあるし、またサウンドトラック的で風景を描写するような音楽性が芸術的でもあり魅惑を持っている。デビューアルバムながらも、新人とは思えない高品質なアンビエント・テクノだ。



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