Russ Gabriel - The Controller (FireScope:FS017)
Russ Gabriel - The Controller
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かつてWarp Recordsが90年代前半に提唱した「Artificial Intelligence」というベッドルームのアンビエントとSF的世界観を持ったテクノがあり、そのシリーズにも参戦しつつ自らはB12やRedcellといった複数の名義で秘密めいた活動を行っていたが、ある時を堺に姿を消し存在自体も忘れられつつあった。がそのB12の二人の内の一人、Steve Rutterは2016年頃に突如としてB12 Records傘下にFireScope Recordsを立ち上げ、Rutter一人でのB12名義、またはSteve Rutterソロとしても作品をリリースし今再度あの時のインテリジェンスなテクノを創造している。それだけでなくFireScopeというレーベル自体がJohn ShimaやDerek Carrといったデトロイト・フォロワー的な存在の作品もリリースしており、そんな活動を見ればレーベルがデトロイト・テクノと共鳴しているのは明白だ。となれば本作を手掛けた(やはりデトロイト・テクノから影響を受けている)Russ Gabrielが同レーベルからリリースされるのも至極納得であり、AIシリーズの延長線上にあるシリアスなテクノを披露している。微かに聞こえるミステリアスなパッドとコズミックなシンセのラインで始まる"Controller"、キックレスな構成も相まってアンビエント感覚もありつつ宇宙を浮遊する無重力感が心地好く、叙情的なシンセが壮大な風景を描き出す。"Drimmits"ではカチッとしたリズムも入り揺らめくようなベースラインとテッキーな上モノがロマンティックに響き、古典的なテック・ハウスに属すような如何にもデトロイト・フォロワー的な作風で、目新しは一切ないもののだからこそ逆に安心して聞ける印象だ。"The Way To Go"はシンセの使い方がファンキーでややFabrice Ligを思い起こさせ、すっきり切れのあるリズム感も相まって軽やかに跳ねるUKからデトロイトへの回答的な作風。そして安っぽいリズムマシンの響きがローファイなシカゴ・ハウスを匂わせる"Nova Deep"、ほぼ骨組みだけの構成にぼんやりとしたパッドやコズミックなシンセを重ねて内なる精神世界への旅へ誘うイマジネーションを膨らませる。現在のダンス・ミュージックの流れに乗る事もなく、またクラブで派手に映えるような作風でもなく、我が道を行くインテリジェンスでディープなテクノはいぶし銀的な味わいだ。



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Planetary Assault Systems - Straight Shooting (Mote-Evolver:MOTE055)
Planetary Assault Systems - Straight Shooting
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L.B. Dub CorpやThe 7th Plainといった変名でも活動するUKテクノの重鎮であるLuke Slater、しかしその音楽性が最も輝くのは過去から今に至るまでPlanetary Assault Systems名義であると筆者は感じており、ここで聞けるハードで機能的なフロア志向のテクノは、長い時を経て過去の洗練される前の荒々しさに現在の磨かれた機能性が融和し完成形を迎えているように思われる。そう言えばジャケットの過去のアルバムを思い起こさせるデザインでもあったりするが、実際に冒頭のざらついたノイズが吹き荒れる中に低音の冷えたキックが続く"Beam Riders"では上辺には電子音のループが覚醒的に持続し、単調に聞こえつつ上手くパンで音を散らしたりして微細な変化を付けるスタイルは、まるで往年のJeff Millsのスタイルを思わせる。決してハードな重厚感だけではなく、"Born Anchors"では弾性のあるリズムと膨らんだ電子音のシーケンスで疾走感を打ち出し、切れのあるパーカッションも抜き差ししながらミニマルでファンキーな機能性に特化したテクノとなっており、パーティーのある瞬間の爆弾的な作用としてではなく長い一夜の一部となるような曲もある。ざらついたハイハットの生々しさと硬く引き締まったキックが重圧を生む"Humans Use Concrete"はシーケンスが催眠性を帯びながらも暴力的なハードミニマルといった印象で、これが昔のアルバムに入っていたとしても全く違和感が無いように良くも悪くも昔からP.A.Sは変わらないなと思う点も。特に印象的な曲はボーカル・サンプルを用いてファンキーさを打ち出した"Give It Up"で、跳ねるパーカッシヴなリズム感に電子音が左右にパンしながらホットなシーケンスとなり、途中からは金属が擦れるようなノイズが混じってきて神経に深く刺さるような刺激的的な展開が待ち受けている。尚、配信のみで20年前の曲を編集した"Screen 2018 Re-edit"が収録されているが、鈍いキックと暗い展開のホラー的なハードテクノだった原曲が、ここではキックはかっちり硬くなり全体が引き締められながらエネルギーが溢れ出すような骨太ハードテクノへと生まれ変わり、こうして聴き比べてみるとハードテクノも時代と共に洗練や機能性に磨きを掛けて進化しているのだ。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Booshank - Operating With A Blown Mind (Butter Sessions:BSR023)
Booshank - Operating With A Blown Mind
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オーストラリアはメルボンを拠点として活動するPaul GrahamことBooshank、まだこの名義では本作で3作目と決してアーティストとしてベテランではなく初々しさが残るものの、過去にはFirecracker傘下のUnthankからロウな響きとアシッディーな音楽性による快楽的なテクノをリリースしていたりと、なかなかに新鮮なエネルギーと強い個性を放っている。そしてこの最新作も大きな変化があるわけではないが、曲毎にアシッド〜アンビエント〜ディープといった豊かな性質を持たせて耳を惹き付けるが、また今では世界的評価を獲得したGonnoが素晴らしいリミックスを提供している点にも注目だ。9分にも及ぶ"F.T.H."がリードトラック的だろうか、ロウで切れ味のある4つ打ちのリズムに覚醒感のあるアシッド風なシーケンスと滑らかなビート感を生んでいるが、そこにアンビエント的でもありメランコリーさもある艷やかなシンセのメロディーがうっとりとした情感に包んでいく。中盤以降には潰れたようなスネアも強くなり徐々にビルドアップしていく持続性の強い曲で、そんな流れにおいてシンセのメロディーに陶酔させられながら深みにハマっていく。そんなシンセの陶酔感を前面に出したのが"Andys"でこれはビートレスなアンビエント・スタイルで、金属的な電子音を背景にダビーな音響やぼんやりとした電子音をセッション的に構成して、ただただ意味もなく夢想空間が広がるベッドルーム・ミュージックだ。一方でハウスの弾力のある跳ねたグルーヴ感にメランコリーなピアノコードを重ねた"Come On Honey"は、ラフな音質のリズムも肉感的でライブ・フィーリング溢れるシンセの聞かせ方など、EPの中で最も熱狂的なクラブのグルーヴ感に満ちている。がそれ以上に驚かされたのはGonnoによって新たに生まれ変わった"Andys (Gonno Remix)"で、テクノからアシッドにバレアリックやブレイク・ビーツと何でも上手く用いる彼がここではそれらを一纏めに、骨太でゴリゴリとした荒々しいブレイク・ビーツを下地にしながら控えめにトリッピーなアシッド・ベースも導入しながら、叙情的な上モノを微かに被せながらエモーショナル性も打ち出した攻撃的なレイヴ・トラックへとGonnoという音楽性に塗り替えている。太く脈動するグルーヴ感による攻撃的な勢い、アシッドの快楽性と完全にフロアを狂乱へと突入させるピークタイム仕様な曲調で、原曲からこんなリミックスを想像出来ない上にダンス・トラックとしてしっかりと盛り上がれる曲になってしまうのだから、Gonnoのアイデアとフロアを掴む感覚には感嘆せずにはいられない。そのような内容なので、本EPはアンビエントからダンスまで上手く収録されているナイスな一枚。



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Martin Buttrich - Northeast / Southwest (Planet E:PLE65396-6)
Martin Buttrich - Northeast Southwest
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過去にはPoker FlatやCocoonといった人気レーベルから覚醒感あるテック・ハウスをリリースし、またLoco Diceと共に自身ではDesolatを主宰するMartin Buttrich。そんな彼が注目を集めるきっかけになったのは2006年にPlanet Eからリリースした『Full Clip / Programmer』(過去レビュー)であるのは間違いなく、妖艶でトランシーな上モノを用いたディープかつミニマルなテクノは正にPlanet Eの音楽性そのものだった。それがCarl Craigに気に入られたのだろうか同レーベルから何枚かのEPはリリースしたものの、本作では11年ぶりのPlanet Eへの帰還となる新作だ。良い意味で過去に同レーベルから出した作品と大きな変化はなく、また初めて聞かされたらC2の新作と勘違いする可能性もある位に、実にこれがPlanet Eらしいテクノで期待に応えてくれた。"Northeast"はシャッフルする切れのあるハイハットによって疾走するビート感を生み出し、トランシーなシンセのリフを執拗に繰り返しながらその下では動きの多いベースラインが躍動し、じわじわと高揚へと上り詰めていく持続感によって長い恍惚状態を誘う壮大なテック・ハウス仕様。深い闇が広がる深遠さ、または逆に広大な宇宙空間が眼前に広がる荘厳な世界観で、フロアで少しずつ盛り上がっていく機能性を磨きながらもデトロイトのエモーショナル性も兼ね備えたButtrichらしい一曲だ。対して"Southwest"はしっかり重心の低いリズムとカラコロとしたパーカッシヴなリズムが軸になっているが、隙間が多い構成の中にヒプノティックで繊細な電子音をループさせてミニマル感を持たせている。途中からやや動きの多い派手なシンセのメロディーが出てくる辺りは余計だったと思うが、こちらもじわじわとビルドアップするスタイルで、テクノだけでなくプログレッシヴ・ハウスにも合わせやすいだろう。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Dan Curtin - The Lush Network (Dolly Dubs:DOLLYDUBS 007)
Dan Curtin - The Lush Network
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デトロイト出身ではないもののデトロイト・テクノに多大なる影響を受けて、デトロイト・テクノのソウルを継承するオハイオ州クリーブランド出身のDan Curtin。USよりは特にヨーロッパのレーベルにおいて頭角を現し、Peacefrog RecordsやMobileeを含む多くのレーベルから今も尚新作をリリースする等、ベテラン勢の中では数少ない音楽制作を続けるアーティストだ。新作はSteffiが主宰するDolly傘下のDolly Dubsからで、レーベル自体がデトロイト・テクノのエモーショナル性とブレイク・ビーツを軸にしたローファイなテクノを中心にしている事もあり、その意味ではCurtinの音楽性と共振するものがあるからこそこのレーベルに抜擢されたのだろう。"Flight Lush"は特に叙情的なテクノで、幻想的な霧の中から視界が開けていくような美しいパッドで開始し、小刻みで軽快なブロークン・ビーツ風のリズムが靭やかに波打ち、優しく温かい太陽の日が射すようなシンセのメロディーに包まれて、昼下がりは午後三時の白昼夢に溺れるテクノは底抜けに朗らかだ。一方"It's What You Wanted"は激しいパーカッションが乱れ打つ肉体性溢れるグルーヴ感のテクノで、やや拍子のずれたビート感とレイヴ調のエグいシンセ音を前面に出して、一見陽気な雰囲気ながらもどこか悪っぽく粗暴な雰囲気もあり攻撃的な曲だ。そして4つ打ちに収束する"Perfume And Cigarettes"はフラットなパッドの伸びとサックス調のシンセがファンキーさを生むデトロイト・テクノとしての要素を持っており、"The Fundamental Mind"では腰を揺さぶるしなやかなブレイク・ビーツに催眠的なシンセのループが微睡むように合わせられ、ぐっと内面へと潜っていくようなディープな性質がある。ベテランだけだって作品の安定度は常にあったものの、本作はその中では頭一つ抜けてデトロイト・テクノらしさが強くエモーショナル性とダンス性が調和した見事なEPだ。



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| TECHNO14 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Klauss & Craig - DJ Deep & Traumer Remixes (Planet E:PLE65395-6)
Klauss & Craig - DJ Deep & Traumer Remixes
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2018年の中頃に久しぶりの新作を発表したCarl Craig、それはアルゼンチンの電子音楽グループであるKlaussとのセッション作『Momentum』(過去レビュー)で、近年再燃しているモジュラーシンセに興味を持ったCraigがそれを用いて重厚感溢れるサイケデリックなテクノを制作した。ここで紹介する本作はそのリミックス盤となるが、手掛けているのはかつてDeeply Rooted House、現在はそれがテクノ化したDeeply Rootedを運営するDJ Deepと、自身でGETTRAUMを主宰しつつDJ Deepとも定期的にコラボしているRoman Poncet aka Traumerの二人。3曲収録なのものの全て同じ曲を同じアーティストがリミックスしている事もありインパクトとしてはやや物足りなさは拭えないが、実際に曲を聞いてみれば現在は硬派なテクノへと傾倒している彼等の手腕が発揮されて、原曲よりもフロアでの効果や機能性に磨きを掛けた内容に一安心だ。3曲のリミックスに共通するのはどれもブレイク・ビーツである事でデトロイト・テクノらしさは特に感じられず、彼等の硬い響きを打ち出したDJツール向けとしての機能に絞られ、その意味では原曲に束縛されず自分達らしさをそのまま表現している。ざっくりと金属的な鈍い響きのブレイク・ビーツに揺さぶられる"Repeat After Me (DJ Deep & Traumer - Free Your Mind)"は、やはり硬質で冷えた響きが如何にもベルリン的で無駄をこそぎ落としながらグルーヴ重視だが、中盤から線の細いコズミックなシンセのラインが浮かび上がる瞬間もあり、冷たいだけでなくエモーショナルに転換する場面はパーティーでも盛り上がりそうな展開を設けている。より切れ味鋭く跳ねたグルーヴ感を強調した"Repeat After Me (DJ Deep & Traumer - Free Your Soul)"もやはり無駄がなくスカスカな構成だが、こちらは重いベースラインが躍動しつつ叙情的なパッドと繊細な電子音が絡み合いながら、前述のリミックスよりはディープで艷やかな情緒によって包んでいく。そしてTraumer単独による"Repeat After Me (Traumer - Reduced Mind)"、こちらはより繊細でスムースなビートや電子音を細やかに配置した先の細さが強調されたリミックスで、前の2つのリミックスが上げるダンス仕様なのに対しこちらはクールなミニマルで沼へと嵌めていくタイプだろう。どれも原曲の重厚感満ちたSF的な雰囲気を残さずに、徹底的に機能性を特化させたリミックスで、これはこれで潔いお仕事だ。



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| TECHNO14 | 14:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Hoshina Anniversary - Zangai EP (Musar Recordings:MUSAR007)
Hoshina Anniversary - Zangai EP
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レコード屋でHoshina Anniversaryという奇妙なアーティスト名のEPが並んでおり、興味本位で試聴をしてみたところエクスペリメンタルな雰囲気もある独特なテクノに魅了され、購入を決断したのが本作。聞いた事のないアーティストのそのEPのスリーブには保科記念日とデカく書いてあり、どうやら2010年頃から配信をベースに制作活動をしている日本のアーティストで、突然現れた新人ではないようだ。本作前にはYoung Marco主宰のSafe Tripからも奇妙なエレクトロニック・サウンドの『Hakkenden』をリリースしており、これらの物理メディアによる作品によって注目を集めるに違いない。日本語を用いた各曲には本人の説明ではそれぞれにコンセプトがあるそうで、例えば"Zangai"は織田信長の主要な城の一つである 『安土城』に焦点を当てている。トラック自体はアシッドの毒々しいシーケンスを導入しながらもジャズ要素のあるピアノのコードが優美さを伴っているが、しかし金属的なクラッシュする打撃音や機械的なリズムが荒々しいグルーヴを生み出しており、フロアを濁流で飲み込むようなピークタイム仕様なテクノだ。"Tenjin"も鈍い金属的なパーカッションと太いキックが軽やかに、しかし骨太な4つ打ちグルーヴを刻み、そこに不思議な電子音のループとピアノらしき鍵盤のループが絡み合うようにして快楽的な効果を付け足していくが、終始暗い世界観と刺々しい音響は冷え切っており廃れたようなテクノは刺激的である。ざらついたハイハットのリズムも相まって疾走感を獲得している"Tenjou"は、慎ましいジャズ・ピアノのコードが情緒を醸す中にヒプノティックなシンセが暴れるように躍動するローファイ感ある曲で、ロウなエレクトロ・ビートとジャズの雰囲気が一つになったユニークさが特徴だ。またサイケデリックなテクノを得意とするRicardo Tobarがリミックスした"Zangai (Ricardo Tobar Remix)"は原曲の雰囲気を壊さずに退廃した荒れたグルーヴを活かし、そして鈍くうねるベース・サウンドや不気味でサイケデリックなシンセによってより闇の中を突き抜けるミニマルな機能性を増したテクノへと塗り替えており、これぞTobarらしい作風だ。今まで配信中心だった為になかなか日の目を見る事が無かったHoshina Anniversaryだが、曲自体は面白くありながらテクノとしての機能性がある事は間違いなく、本作を機に注目を集めるのではないかと期待十分な一枚。



Check Hoshina Anniversary
| TECHNO14 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Powder - Powder In Space (Beats In Space Records:BIS036)
Powder - Powder In Space
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2015年にESP Instituteからデビューして以降、Born Free RecordsやCockTail d'Amore Musicと現在人気を博すダンス・ミュージックのレーベルからEPをリリースし、瞬く間に世界的に高い人気を獲得したMoko ShibataことPowder。ダンス・ミュージックである前提の向こう側にユーモアとポップと奇妙さが混じり合った不思議な要素を含むその音楽はPowderという個性として確立され、ここ日本に於いてはパーティーに出演する事も多くはないため、余計に好奇心を駆り立てる存在になってきている。そんな最中、Beats In Spaceの新シリーズのスタートにPowderが抜擢されミックスを行ったのが本作『Powder In Space』で(同時に同タイトルのEP(過去レビュー)もリリースされ、そちらにはPowderの新曲も収録)、彼女が制作する曲同様にエキセントリックなユーモアさえ感じられるダンス・ミュージックは、キック等による強いグルーヴよりもメロディーや音響によって独特の世界観を生んでいる。序盤からしてトリッキーな構成に惑わされるようで、牧歌的な雰囲気の中に厳つくも変則的なキックとパーカッションが連打される"Захват Сзади Rox"で始まり、層になったダビーなパーカッションの中から神々しいピアノが滴るバレアリックな"Open Door (Born Inna Tent mix)"、グニャグニャと万華鏡のような色彩感に包まれるニューエイジ風な"Release"と、圧のあるキックは全く現れずに朗らかなムードによって道を作っていく。"When You Love Someone (Groove Instrumental)"辺りからようやく安定したダンスのグルーヴのハウスへと転調し、安っぽいリズムマシンが辿々しいロウ・ハウス"When You Love Someone (Groove Instrumental)"やスモーキーで訝しいジャジーな"Roy Brooks"、ダーティーでドラッギーなエレクトロ・ハウス調の"Ton 10"とジャンルは様々なれど、激しいグルーヴに傾倒する事なく時にポップに時に覚醒的にと精神的な作用を働きかける選曲で引き込んでいく。Powderの新曲もぐっと盛り上がってくる瞬間に入ってくるが、泡が弾けるような可愛らしい電子音のループを用いたキュートなハウスの"Gift"、鞭に打たれるようなビートと壮大な音響により飛翔していくテクノの"New Tribe"と、どちらもこのミックスの中でも強い個性を放つ面白い曲だ。それ以降は徐々に勢いを落としながら再度エクスペリメンタルかつフォーキーな"Your Smile"等によって日常の平穏へと帰還する展開で、様々な音楽を通過していく流れはさながら旅の様でもあり、ダンスとリスニングの均衡を保ちながら和やかに聞かせてくれるミックスはひたすら心地好い。アーティスト性から感じる事が出来るユニークさはDJにも反映されており、Powderの音楽が好きならこのミックスもお気に入りの一枚となるだろう。



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Tracklistは続きで。
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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Hedon The Cat - From Inner Space To Outer Rhythm (wandering:10th journey)
Hedon The Cat - From Inner Space To Outer Rhythm

Don Williamsが主宰するベルリンのディープ・ハウス系レーベルであるMojuba、そしてそこから派生したデトロイト・テクノにも影響を受けたa.r.t.less、同様に派生した実験的な要素を盛り込んだwanderingと、三者三様に異なるコンセプトを持って運営されているが、本作はその中で久しぶりとなるwanderingからの作品。約5年程リリースがなくwanderingは自然消滅したかと思っていたが、本作によってその活動を再開させるようだ。そのきっかけとなるのがGunnar GrundことHedon The Catによるデビュー作で、経歴について全く不明なものの90年代初期のエレクトロニック・ミュージックに影響を受けたと公言しており、それはデトロイト・テクノからエレクトロ、ブリープやアンビエントにトランスまで多岐に渡る。実際にその影響は作品にも現れており、このミニアルバム級のボリュームの中で様々なスタイルを表現している。冒頭の"Journey To A Star"の序盤はビートレスのアンビエントで、朧気なパッドが揺らめきながら浮遊するその奥に飛行機が飛び交うようなSEを配置し、少しずつ鈍重なビートも入ってくるとIDMらしくも聞こえるスペーシーなサイエンス・フィクションとなる。すっきりと軽いキックが入った"Terry69"もぼんやりとしたシンセがスペーシーだが、そこにラフなハンドクラップやハイハットも加わるとデトロイト・テクノのレトロな近未来感へと接近し、広大な宇宙空間をイメージさせる。おどろおどろしい効果音とロボット・ボイス、そして鋭利なマシンビートが聞ける"The 5th Wave"はダークなエレクトロで、サイバーな電子音響が飛び交う中でひりつく緊張感を覚える。そして再度ビートレスでシンセ・オーケストラを用いた壮大なスペース・アンビエントの"Look Back"、一方ディープでダビーな音響による真夜中の静けさから発するメランコリーな"Sanc Sula"、そして最後は鳥の囀りなどのフィールド・レコーディングも用いて穏やかな地平が広がるダウンテンポ・アンビエントの9分にも及ぶ"Spring In L.E."と、基本的には壮大な響きとSF感のある電子音響を用いたリスニング寄りの音楽性によって宇宙や未来といったイメージを湧かせるものだ。まだ本作だけではこのアーティストへの評価は確定出来ないものの、wanderingというレーベルのイメージには沿っており今後にも期待を抱かせる。



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| TECHNO14 | 15:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Space Dimension Controller - ReSEQ EP (R & S Records:RS 1902)
Space Dimension Controller - ReSEQ EP
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音にストーリを載せて宇宙の壮大なサイエンス・フィクションを描くJack HamillことSpace Dimension Controller。Mr.8040が24世紀から現代にタイムスリップするという話を音楽で表現した傑作のギャラクティック・ファンク・アルバム『Welcome To Mikrosector-50』(過去レビュー)から6年、その正当な続編と呼べるのが本作。「Mr.8040はその後のメルトダウンにより、銀河全体の幅を越えるレベルで自滅してしまい〜(省略)〜マダガスカル島の何処かを浮遊しながらギャラクティック・ファンクの中でMr.8040の実験は、この惑星を愛する原因となったグルーヴを再発見しようとして、多くの形を成してきた。」というSF仕立ての話も記載した紙をわざわざレコードに同梱するなど、スペースオペラ的な未来感を演出する作品はこれぞSDCの十八番だ。"Beyond Pulso-IV"は完全にファンが期待するであろうレトロ・フューチャーなシンセ・ファンク/エレクトロの影響下にあるテクノで、コズミックなシンセが躍動する中を様々なスペーシーな電子音が飛び交う幕開けからざっくり生々しいドラムマシンが4つ打ちを刻みはじめ、星が宇宙を飛び交うように美しい音の粒が浮遊し叙情的なパッドに覆われるドラマティックな世界観がある。デトロイト・テクノと親和性のある宇宙の壮大さに包まれながら歯切れの良いファンクなグルーヴが刺激的で、逆回転なエフェクトやボコーダー風な音も用いたトリッキーさが面白くもあり、9分超えの大作ながらも常にドラマティックかつワクワクが止まない。対して"First Contact With System Lobitso"はハイハットが爽快なビート感で疾走するコズミック・テクノで、透明感あるシンセがエモーショナルな旋律を描きつつリヴァーブを匠に用いて宇宙の広大な空間を演出し、星と星の間を軽々と宇宙遊泳するように気持ち良く走り抜ける。中盤に見られるシンセソロのうねるようなラインはフュージョンテイストもあり、そこから叙情的なシンセのコード展開へと切り替わる流れは実に情緒的だ。時代性や流行とは一切無縁ながらもSDCのレトロな未来感がある世界は完全に確立されており、徹頭徹尾シンセ好きには堪らない豊かな響きのシンセ・ファンクとなっている。尚、配信には一曲多く"Vaults Of Arcadia"も収録されている。



Check Space Dimension Controller
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