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Steven Rutter & Kirk Degiorgio - Braconian Beta (FireScope:FS016)
Steven Rutter & Kirk Degiorgio - Braconian Beta
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密室のベッドルームから宇宙への夢想、かつて90年代前半に盛り上がったインテリジェンス・テクノというムーブメントの元祖の一つに挙げられるのが、B12またはRedcell名義で活動していた二人組だ。大きなムーブメントとなる事は、逆にそれが去る時も早く2000年になる頃にはこのユニットの活動もほぼ停止しシーンからすっかり忘れ去られていた。その後も細々とは活動していたようだが、二人の内の一人であるSteve Rutterが2016年にFireScopeを立ち上げてからの勢いは目を見張るものがあり、自身ソロやB12名義だけでなくRuss GabrielやJohn Shimaといったデトロイト・フォロワーの作品もリリースし、全盛期にも劣らないインテリジェンス・テクノのオリジネーターとしての実力を発揮している。本作はそんなRutterと同じくインテリジェンス・テクノでは大ベテランのKirk Degiorgioが2018年末にリリースしたEPで、恐らく二人を知っている者であればおおよそ予想が出来るデトロイト・テクノの未来感にも共鳴しながら洗練されたテクノで、全く驚くような作品ではなく寧ろその出来に安心出来る期待通りの内容だ。決してリスニング寄りの曲だけでなく、例えば"Reconnaissance Pass"のように跳ねるようなリズム感と美しいパッドを伸ばしたデトロイト・テクノ的な曲もあり、アシッド風なベースラインやコズミックなSEを織り交ぜて、広大な宇宙空間を高速で移動するようなSF感覚は二人の得意とする音楽性だ。"Sechel"ではぐっとテンポを抑えて、そこに光り輝くようなコズミックなシンセのリフやトリッピーなアシッド・ベース、そして望郷の念を感じさせるロマンティックなシンセストリングスが宇宙を描き出し、ゆっくりと未知なる宇宙の深層へと入っていく。如何にもインテリジェンス・テクノらしい曲は後の2つだろうか、霞みながらも幻想的なパッドに覆われる中に美しいシンセが層となりアンビエンスな感覚も作る"Encapsulation"、ラフながらも軽快なリズムを刻む中にしっとりとしながらも未来的な音の鳴りをするシンセが瞑想へと引き込む"Tri Order Descent"、ベッドルームという閉鎖空間に深い精神世界への旅を発生させる想像力が感じられる。当たり前と言えばそうなのだが、この手の音楽の先人だけあり二人の相性も抜群で、これがインテリジェンス・テクノだと言わんばかりの音楽は時代に左右されず普遍的な魅力を持っている。



Check Steven Rutter & Kirk Degiorgio
| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Keihin - Esoteric Communication (Prowler:PROW001)
KEIHIN - Esoteric Communication

千葉を拠点として数々のアンダーグラウンドなパーティーを活動の場にし、自らでは今は無きModuleでAlmadellaを主宰していたKeihin。4つ打ちのテクノだけでなく変則的なリズムと、そしてダブ・ステップやトランスにインダストリアルといった複数の音楽性を貪欲に咀嚼したそのDJプレイは、筋肉隆々とした肉体感を思わせるエネルギッシュな勢いと荒廃したようなダークな世界観が特徴だ。2016年頃からは子育ての為に一旦活動は休んでいたものの、2018年暮れに遂に再始動に合わせ遂にProwlerを立ち上げて、2019年1月にはこのレーベル第一弾となる初のEPをリリース。もし過去にKeihinのDJを聞いた事がある人であれば、本作を聞いたら正にKeihinの音楽性そのものである事は直ぐに理解出来るような、ベース・ミュージックやブレイク・ビーツも咀嚼した切れ味鋭くもハードなリズムにインダストリアル系譜の機械的で荒廃した響きがあり、そして何よりフロアを刺激するダンス・トラックである。"Dawn"は初っ端から太いキックが変則的なリズムを刻むダブ・ステップ調だが、闇の奥底で不気味な何かが蠢くような音がジワジワと鳴っており繊細な音響も聞かせたりと、ハードなグルーヴ感にダビーな響きも織り交ぜて勢いだけではなく深い酩酊感も伴うディープな一曲。より金属的で鋭いリズムが肉体を抉るような"Rust"は特に連打されるブレイク・ビーツが刺激的で、中盤からはホラー的なぼやけた音像が恐怖を煽るようなインダストリアル調もあったりと、全く明るさの見えない退廃的な世界観が続くアグレッシヴなテクノだ。"Stiff"では更にイーブンキックから外れてつんのめって角々としたリズムを刻み、横にぐらぐらと揺らすベース・ミュージックやダブ・ステップの要素が前面に出てくるが、ここでもうっすらとした冷えたパッドや闇夜に浮遊するダビーな音響がディープな面も作り出して、勢いだけではない深みはKeihinのDJと同様だ。そして今回ドローン音響ユニットのSteven Porterの一人でもあるKatsunori Sawaがリミックスを提供しているが、"Dawn (Katsunori Sawa Remix)"は原曲のイメージを損なわずにより打撃が強いインダストリアル性と、ダブ音響を増す事で空間の広がりを獲得し、ダークながらも恍惚のトランス感を引き出したこちらも盛り上がるリミックスとなっている。どれもKeihinのDJ経験に裏打ちされたテクノ×ダブ・ステップの機能的なダンス・トラックで、まだDJを体験した事が無い人でも本作を聞けば彼のDJがどんなものか一端でも知る事が出来るに違いない。



Check Keihin
| TECHNO14 | 11:00 | comments(0) | - | |
Trux - Untitled (Office Recordings:OFFICE 13)
Trux - Untitled
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ディープな音響美学に定評のあるBaaz主宰のOffice Recordings、そのレーベルが今特にプッシュしているのが不明瞭ながらも情緒的なアンビエンスを奏でるTruxで、2016年に『Trux』(過去レビュー)で同レーベルからデビューして以降、今に至るまで蜜月の関係を築き上げている。霧に覆われたような不鮮明な音像と同様にそのアーティストの存在もミステリアスなままで今も尚Truxとは誰ぞや?という状態だが、例えば2nd EPである2018年発表の本作もアンタイトルとわざわざ付けている通りで、ミステリアスな存在感を敢えて敢えて演出する事で音楽性に惹き付けられるのだろう。基本的にアブストラクトな作風に大きな変化はないが、本作では特に吹雪に覆われたようなヒスノイズ混じりのドローンが一貫して鳴っており、それが特に不明瞭な世界観を強くしている。サーっ鳴り続ける柔らかなノイズの音像の中に不規則なリズムが鳴る"Just A Moment"、朧気ながらもほんのり暖かいパッドが浮かび上がってくると心地好いアンビエンスを発しながらも、抽象性の高い景色に行き先が全く読めない。"Leash"もチリチリしたノイズと幽玄なドローンがダビーな音響で鳴る事で奥深い空間演出にかっており、柔らかなノイズが吹き荒れながらも激しさよりは壮大で大らかなアンビエントに包まれる。特に印象的だったのは"Gold"で、ぼんやりとした不鮮明なシンセとゆっくりとしながらも牧歌的なブレイク・ビーツ風なリズムが合わさったこの曲は、90年代のアーティフィシャル・インテリジェンスのテクノかBoards Of Canadaを思わせるノスタルジーが蘇ってくる。しかし、そこから一転強く重いキックと切れのあるハイハットに目が覚める"Pulse"、ミステリアスなパッドの上を情緒的なシンセが舞い躍動感のあるブレイク・ビーツに揺さぶられる力強いダンストラックだ。またリミックスも2曲収録されており、ずぶずぶ深い音響とミステリアスな雰囲気を残しつつ4つ打ちに接近し心地好い浮遊感を生む"Pulse (Lowtec Remix)"、原曲からがらりと様相を変えてドローンが晴れつつメロディアスでのどかなダウンテンポ寄りへと作り変えた"Just A Moment (O$VMV$M Version)"と、これらも面白い作風ではあるがやはりTruxの原曲が強い印象を植え付ける。



Check "Trux"
| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Jon Dixon - Sampa EP (4evr 4wrd:4EVR-003)
Jon Dixon - Sampa EP
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デトロイト・テクノ/ハウスの大きな原動力であるUnderground Resistanceがかつて程の勢いを失っているのはやはり頭領であるMike Banksの動きが少ない事が原因であろうが、そんな状況において新生代が決して生まれていないわけでもなく、URのライブ・バンド形態であるTimelineの現在のキーボード奏者であるJon Dixonは比較的活発に活動を行っている。2018年にはPlanet Eから『Erudition: A Tribute to Marcus Belgrave』(過去レビュー)もリリースし更に注目を集めていたが、その前の2016年からは自身でも4evr 4wrdを主宰し、積極的に自身を推し進めている。Dixonの説明に依ればレーベルの方向性は電子音楽とジャズにヒップ・ホップ、その他のスタイルの融合だそうで、このEPでも単にハウスの一言で括れない多様な要素が体験出来る。"Paulista Avenue"は既に著名なDJの御用達だそうで、EP名が特に意識されるラテン・パーカッションが連打な激しいサンバ風で、旋律やコード展開は用いずに切れ味鋭いハイハットや金属的なベルの響きも加えて、ただひたすら爽快に駆け抜けるDJツール性の強いテクノだ。一転"Five 15"はムーディーなシンセのリフが夜中のしっとり官能を思わせるディープ・ハウスだが、これも大きな展開を繰り広げるのではなくミニマルなスタイルで、途中から渋いサクソフォンのソロや妖艶なキーボードが加わってくると一気にフリーなジャズ・セッション風に変化する。女性のスキャットを起用した"Our Love Goes Over"は現在形のデトロイト・ハウスといった趣きか、エモーショナルなシンセのコード展開に艷やかなエレピを添えて湿っぽくも希望を感じさせるジャジーなハウスで、ただ他の曲と同様にミニマルな構成でフロアでの機能性を意識しているようだ。そして幻想的なシンセのリフレインから始まる"Inicio"は一見アンビエントかと思いきや、繊細なジャジーなリズムが入り微睡んだパッドにも包まれると、ゆったりとドラマティックな世界に溺れる安らぎの一曲。デトロイトのアーティストらしくジャズを根底に持ちつつ、フロアに即した現代的な機能性も意識した面で新世代としての才能が感じられる内容で、デトロイト・オタクでない人にも是非。



Check Jon Dixon
| TECHNO14 | 11:30 | comments(0) | - | |
Akis - Remixed (Into The Light Records:ITL005.5)
Akis - Remixed
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近年、世界各地に眠るニューエイジやアンビエントの秘境音楽の発掘が著しいが、特にギリシャに焦点を当てて発掘を行っているのがInto The Light Recordsだ。2017年にはギリシャのコンポーザーであるAkis Daoutisの埋もれた曲をコンパイルした『Space, Time and Beyond (Selected Works 1986-2016)』(過去レビュー)をリリースしちょっとした話題を集めていたが、そこに収録された曲を現在のアーティストがリミックスを行ったのが本作。PejzazやEarth Trax名義も含めてニューエイジやダンス方面で活躍中のBartosz Kruczynski、オルタナティブなダンスを手掛けるBenoit BやTolouse Low Trax、Miltiades名義でも活動するロウテクノのK100 Signalとやや癖があるというか個性的なアーティストがリミックスを提供しているが、どれも今風なサウンドになっておりリミックスの妙技を楽しめる。原曲はカラフルなシンセ・ポップの感覚もあったのが"Into The Light (Tolouse Low Trax Remix)"ではかなり抑揚は抑えられ淡々としたマシンビートとカラコロとしたパーカッションが引っ張っていき、ベースにしろ上モノにしろ全てが整然と変わらないループを繰り返すリズム重視なリミックスで、その執拗な反復が催眠的でもありずぶずぶハマっていく。比較的バレアリック寄りな作風が爽快で心地好かった"Ecological Awareness"、これは2アーティストがリミックスしているが、"Ecological Awareness (Benoit B Remix)"は原曲の雰囲気を受け継ぎつつ音や構成をクリアにする事で綺麗なアンビエント/バレアリック性が増し、非常に素直なリミックスと言えよう。一方"Ecological Awareness (K100 Signal Remix)"は原曲の明るさから一転、重苦しくミステリアスな雰囲気が漂うディープな瞑想系アンビエントへと生まれ変わり、ズブズブとしたロウなリズムと重苦しい電子のドローンが持続して、何処までも深く潜っていくよう精神世界へと誘われる。圧巻のリミックスは"Christmas (Bartosz Kruczynski Remix)"で、元々夢のようなニューエイジ曲だったのがこのリミックスでは更にそれ推し進め、静謐なドローンと美しい電子音やピアノを繊細に組み合わせて実に幻想的に仕上げており、中盤からは覚醒的なアシッド・サウンドも出現してドラマティックなのにトリッピーなアンビエント空間を創出するのだ。全体的にリスニング寄りの曲なのでダンス中心のクラブで使うのは難しいかもしれないが、ニューエイジやアンビエントが再燃する今という時代にぴったりなリミックスである。



Check "Akis Daoutis"
| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Juliano - Chanme (Mojuba:Mojuba 029)
Juliano - Chanme

ベルリンのディープ・ハウスの深部を突き進むMojuba Records、シカゴやデトロイトからの音楽性までも咀嚼し深いダビーな音響にこだわった作風は芸術的ですらあり、また無駄を削ぎ落とした機能性にも磨きを掛けてDJからの視点も含む音楽性だ。本作は2019年3月頃にリリースされたEPで、担当しているのはフランスのDJであるというJulien BesanconことJuliano。自身で主宰するThat Place(なんとHouse MannequinのEPもカタログに入っている!)から既に2枚のEPをリリースしているが、それ以外の情報は乏しくアーティストについての音楽性は掴めずじまい。この新作に限って言えばシカゴ・ハウスの系譜にあたるアシッド・ハウス寄りの作風で、シカゴ・ハウスのBernard Badieの作品もリリースするMojubaの方向性に則っていると言えるだろう。"Chanme"は剥き出し感あるハイハットと太いキックが淡々と無機質に4つ打ちを刻み、そこに奇妙なサウンド・エフェクトを折り込みつつ乾いたハイハットの連打と捻れたようなアシッド・ベースが入ってきて狂った展開になる粘り強いアシッド・ハウスで、スピード感を抑える事でより不気味な響きとタフなグルーヴ感が活きたDJツールになっている。一方"Percussion Discovery"は軽快でシャッフルするリズムと浮遊感と透明感のある上モノがクラシカルなデトロイト・テクノ風であり、安っぽく粗雑さも残したリズムの音質が逆に懐かしく響いてすっと耳に馴染み、そして途中から入ってくる叙情的なパッドも加われば正にデトロイトな叙情性は、Mojubaというレーベル性を端的に表現している。まだまだ作品数が少ないJulianoについて決定的な評価を下すには時期早々ではあるが、Mojubaを追っているファンであれば本作もチェックして損はしないだろう。



Check Juliano
| TECHNO14 | 20:00 | comments(0) | - | |
Jung Deejay - Wave Idea (Lillerne Tape Club:LL110)
Jung Deejay - Wave Idea

デジタル化が進み過ぎた反動なのか、近年ヴァイナルや更にはカセットテープといった手間の掛かる聞き方が必要なメディアが一部の若者の中で脚光を浴びているようだが、それを体験した事のない世代には新鮮さがあるだろうしレトロな雰囲気が逆に良いのだろう。対してリリースするレーベル側もテープというフォーマットにこだわって運営するのも珍しくなく、そこにBandcamp上から物理メディアを購入すればデジタル音源もダウンロード可能な販売方法を活かして、テープの再燃を後押ししている。シカゴのLillerne Tape Clubは2007年発足時からテープでのリリースにこだわっているレーベルで、その音楽性はテクノやハウスだけでなくドローンやロックにシンセ・ポップと特に制約が無いが、近年は特にアンビエントが中心となっているようだ。そんな中たまたま聞いていたら気になったのがJung Deejayによるこのデビュー作で、アーティストについては全く情報が無いのだが、ローファイ感を打ち出した音質に親近感を覚えつつバレアリックな雰囲気が清々しく耳に響いてきた。ドタドタとしたタムのリズムから始まる"Miyu Pattern"、シカゴ・ハウス風な簡素なビートがカタカタとリズムを刻み、透明感のあるパッドが浮かび上がってくると実に清らかな空気に満たされたバレアリック性が広がっていく。やはりローファイで機械的ながらもゆったりとしたダウンテンポのリズム、そして美しく壮大なパッドと牧歌的なピアノが感動的な"Nico 3.0"は、厳寒の冬を越した後にやってくる春の息吹との出会いかのようだ。ややリズムは激しくブレイク・ビーツ風ながらも攻撃的というよりは爽快感がある"Yumi Pattern"も、すっと薄く綺麗なパッドが繰り返し浮かんできて、朝方のフロアで体験したら至福に満たされるに違いない。そして殆どリズムの入らず抽象的に綺麗なシンセが揺らめき瞑想じみたアンビエンスが続く"Tourisme Montreal"から、最後は金属的な打撃のするドラムマシンや強いシンセベースがねっとりとしたマシン・ファンクとなる"Wave Idea"で幕を閉じる。曲によってダンスからリスニングまであるが、作品内にある美しいメロディーの統一感が穏やかに耳へと響いてきて、大自然の中で太陽の光を全身で浴びるような温もりに心もほっこり。



Check Jung Deejay
| TECHNO14 | 16:00 | comments(0) | - | |
Jack Burton - Lake Monger (Analogue Attic:AAR015)
Jack Burton - Lake Monger
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ここ数年、ダンスミュージックにおいてオーストラリア、特にメルボルンからの新興勢力の台頭は著しいが、アンビエントとダンスを跨ぐAlbrecht La'Brooyや異端なダンス性を持つSleep D等がカタログに名を連ねるAnalogue Atticもメルボルンを拠点にしており、アンビエントやバレアリックの観点から注目しても損はしないレーベルだ。そんなレーベルから試聴したところ耳を惹かれ即座に購入したのが本作で、芸術大学作曲科に所属するJack Burtonが手掛ける初の作品だ。レーベルの音楽性に即しながらもよりアンビエントやエレクトロニカへと傾倒しており、もはやダンスフロアを意識させない瞑想じみた深い精神世界を旅する音楽はベッドルーム向けだろう。霞んだようなシューゲイザー風の電子音が浮かび上がり、ノイズ風なSEも加わりひたすら不明瞭ながらも叙情的なコード展開を繰り返す"Opus"で幕を開けるが、ゆったりとした流れながらも空間を埋め尽くす電子音によって濃厚なアンビエンスに満たされる。"Cumulus Revisited"も途切れる事のない持続音が中心だが、牧歌的かつ生音にも近い柔らかく透明感のあるシンセは浮遊感もあり、グリッチ風な旋律が軽くリズムを生んで2000年代のエレクトロニカを思い起こさせる。鳥の囀りのような長閑な電子音は牧歌的ながらも、刺激的に振動する持続音がひりつく緊張感を生む"Aquarius"は、神々しい音響や重厚な低音がスピリチュアルな宗教性を匂わせ祈りを捧げるような神聖な世界観が広がっている。圧巻は12分にも及ぶ三部作の"Lake Monger Pt. I. II & III"で、揺らめく水面から極彩色な光が乱反射するようなシンセのうねりがビート感を生む前半、徐々にエネルギーを増しうねりが強くなりながらも弾けて静謐な時間が過ぎる中盤、大空に広がるようなシンセによって壮大かつドラマティックに展開する後半と、パートを分ける事で起承転結な流れが生まれて大きなストーリーのようだ。グリッチやノイズ、シューゲイズ風な音響を用いて現在のアンビエントで表現したら…という音楽性だろうか、清々しくピュアな空気が満ちる純朴なアンビエントは一寸の闇もなく、心身が洗われる癒やしの音。まだデビューしたばかりで才能は判断するには時期早々だが、アンビエントが再燃する今という時代にぴったりとはまった一枚だ。



Check Jack Burton
| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Indigo Aera - Terraformer EP (Indigo Aera:AERA024)
Indigo Aera - Terraformer EP

Stephen BrownやLouis Haimanといったデトロイト・フォロワー系を擁し、またはKirk DegiorgioやVince Watsonの失われたアーカイブを発掘するなど、オランダからデトロイト・テクノのエモーショナル性を咀嚼しモダンなテクノとして昇華するIndigo Aera。そのレーベルを主宰するのがMaarten MittendorffとJasper Wolffの二人で、まだ2011年に設立された比較的新興レーベルながらも確かな審美眼を持って良質なテクノを世に送り出している。当然二人もアーティストとしてレーベルからEPをリリースはしていたが、この度そのレーベル名と同じ名を冠したユニットとして初のEPが2019年5月にリリースされた。元々二人の名前で制作を行っていたからこのレーベル名を冠したユニットに変化したところで大きく何かが変わるわけでもないと思っていたのだが、蓋を開けてみれば以前のソウルを呼び覚ますメロディ重視な方向から、そういった要素は幾分か抑制されて反復を重視し機能性を磨き上げたモダン・テクノへと変化していた。レーベルインフォに依れば深夜のスタジオセッションで生まれた曲群だそうで、その意味では真夜中のダンスフロアをより強くイメージしたのだろうか。ドムドムしたキックと軽快なタムのリズムが疾走る"Aeris"からしてエモーショナルはメロディーは聞こえず、寒々しい音響にフィルター処理によって変化が付けられて、金属的なSEのクールさもあって終始無感情に疾走し続けるツールと化したテクノだ。"Terraformer"ではソウルというよりは快楽的なシンセのリフが闇の中で映えているが、疾走しつつも膨らみのあるリズムと破壊的な打撃音は攻撃的で、やはり狂騒の中にあるダンスフロアで盛り上がるであろう強迫的なエネルギーが溢れている。そんな中で"Tabula Rasa"はデトロイトよろしくなシンセパッドのリフを反復させ、アンビエントな電子音も織り交ぜながら、キレのあるグルーヴ感で軽快かつエモーショナルに展開するテクノでこれぞ彼等のトレードマークと言える音楽性を表現している。そして"Flux"、湿り気のあるタムが連打されるリズムが疾走しつつ煙たく不鮮明な音響のシンセパッドに覆われる事で深く潜っていくディープさがあり、落ち着いた様相もありながら暗い深部を進む持続感のあるテクノは機能的だ。以前のデトロイトのマシンソウルを継ぐ音楽性から多少ハードかつディープなグルーヴ感重視へと変化があるものの、スタイリッシュなシンセの響きは変わらず、レーベル名を冠したユニットとしてそのレーベルの方向性を示唆するような一枚だ。



Check Jasper Wolff & Maarten Mittendorff
| TECHNO14 | 21:00 | comments(0) | - | |
Nomadico - The Code Switcha (Yaxteq:YXTQ 004)
Nomadico - The Code Switcha
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近年テクノ/ハウスに置いて全盛期に比べると陰りを見せているデトロイトという聖地、その原因の一つは特に影響力の大きいUnderground Resistance一派の活動が停滞している事も、少なからず関係しているであろう。そんな状況ながらも逆境を跳ね返すべく奮闘している者もおり、例えばUR一派のDJ Dex改めNomadicoことDan Caballeroもその一人だ。元はDJ DexとしてURのターンテーブリストとして活躍し、TimelineやLos Hermanosに参加しつつ自らはEl Coyoteというラテンユニットも組んだりしていたが、2015年頃からはYaxteqを設立し自らの足で歩み始めている。そして2018年末にリリースされた自身初のアルバムが本作で、デトロイトのダークサイドを表現したテクノ/エレクトロがこれでもかと詰め込まれており、流行や新しさは皆無ながらもデトロイトのクラシックを地で行く作品だ。オープニングの"Introversion"はビートレスながらもアンビエント性のある壮大さがこれから待ち受ける冒険を示唆するような幕開けに相応しい曲で、続く"Still Cruisin"ではデトロイトらしい叙情的なシンセのリフと跳ね感のあるのリズムによるテック・ファンクを聞かせ、序盤は大人しめな始まり方だ。"RTD 60"でもまだアッパーな展開にはならないが、ダークで膨張するような太いベースラインと不気味な上モノが支配するダークテクノで、徐々にデトロイトのハードな側面を映し出す。そして"909 Soto Street"で遂にリズムは太くかつ跳ねて勢いを獲得し、微妙なアシッド・ベースが底辺でうねり暗黒のデトロイト・エレクトロと化す。"Radio 3031323"は一旦勢いを抑制しつつも同様に細かくアシッドが蠢き、エレクトロ調の角々したリズムで腰にくるグルーヴを刻み、"Machine Learning For Homeboy"や"Hustla"では図太いキックが強烈な4つ打ちを刻み荒廃した街を投影するような暗い上モノに支配されたダーク・テクノで、如何にもUR一派らしいハードさを体験させる。また乾いたパーカッションと横揺れリズムが溜めのあるグルーヴを生み明るいシンセのリフが反復する"Backyard Trippin"もデトロイトらしいエレクトロ・ファンクで、暗く世界観の中にも時折希望を見い出せる瞬間もある。先人達が切り開いてきたテクノ/エレクトロを忠実に受け継いで、流行なんぞ何のその。悪く言えば古臭い古典的な音楽かもしれないが、またぶれない姿勢も実にUR一派らしい。



Check Nomadico
| TECHNO14 | 11:30 | comments(0) | - | |