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Waveguide - Venera EP (WAVEGUIDE:WAV.G002)
Waveguide - Venera EP

日本を飛び出しベルリンへと移住して(現在は更にリスボンで活動中のようだ)海外を拠点に活動しているKen SumitaniことSTEREOCiTI、当初の活動はベルリンはMojubaからの幽玄かつ仄かの情緒を忍ばせたディープ・ハウスな作風が特徴だったが、海外での音楽環境から受けた影響はテクノへと歩みを進ませる事になり、2017年には遂にモダン・テクノへとフォーカスしたWAVEGUIDEを設立していた。そしてそんなレーベルが遂にはアーティスト名にもなったレーベル第二弾が本作、『Venera EP』だ。テクノを送り出すレーベルがそのままアーティスト名になったのだから、よりハードなテクノ性が押し出される事となり、過去の作風と比べても非常にツール性の高いミニマルなモダン・テクノが出来上がっている。特にタイトル曲となる"Venera"、変則的なぶれるキックに鋭いハイハット、そして金属的なパーカッションの連打が組み合わさり、荒廃した闇の中を猛スピードで駆け抜けるトラックだが、中盤からは幽玄な上モノとヒプノティックな反復音も加わって、ミニマルな持続感を伴いながら深く潜っていくような感覚もあるハイエナジーなテクノだ。"Zond"はつんのめったリズム感でグルーヴは抑制されながらも、金属的な音のループと奥で鳴っているようなダビーなパーカッションを前面に打ち出して、奇矯な効果音も時折折り込みながらリズム重視で引っ張っていく作風で、より感情性を排してツールとして特化させている。"Rosetta"になってくると冷えたハイハットのリズムと唸る低音のベースライン、そしてサイケデリックかつミステリアスな上モノの音響が相乗的にインダストリアルな雰囲気を生み出しており、昔のハードミニマル全盛時代から派手さは削ぎ落として骨太さのみを残したようなハードさが伺える。"Philae"はチキチキと粗い質感のハイハットと落ち着いたキックの4つ打ちが平たいリズムを刻んでいるが、それに合わせて抽象的に鈍くうねる金属的な電子音響がアブストラクトな空気を作り、その不明瞭な響きがサイケデリック性に繋がるこれもDJツール。本作以前からもテクノ化の傾向は見られたものの、本作によってその志向は完全に達成され、そして新たWaveguideなる名義となったのも納得の路線。全く過去のSTEREOCiTIとは異なるものの、小手先の音楽ではなく本気でテクノを歩もうとしているのが感じられる。



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| TECHNO14 | 21:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Powder - Powder In Space (Beats In Space Records:BIS036)
Powder - Powder In Space
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2015年のESP Instituteからのデビューに始まりBorn Free RecordsやCockTail d'Amore Musicからの作品もヒットかつ高い評価を獲得しているPowder。今では世界各地のパーティー/フェスにも出演するなど、今日本の若手アーティストの中では最も勢いがあり期待が注がれているアーティスト、それがPowderだ。久しぶりとなる新作は人気レーベルのBeats In Spaceからで、何でも新ミックスシリーズ立ち上げとなる初作からのシングルカット的なEPだそうだ。勿論このレーベルからでもPowderらしい個性的で踊れる電子音楽は変わらず、より一層Powderの特異性を強めてその評価を着実なものにする事は間違いないだろう。新曲は2曲のみだが、どちらもユニークかつ間違いなくフロアで戦力となる性能を秘めている。"New Tribe"は既に先日パーティーでプレイされているのも体験したエグい曲で、鞭打つ痺れるリズムに鈍くうねる電子音のループがビートを叩き出すダークで緊張感が張り詰める雰囲気があるが、薄っすらと女性のウイスパーボイスも聞こえたり爽快な電子音の上モノが壮大に覆っていきながら、徐々に宇宙へと飛び立っていくようなスケール感の大きさによって間違いなくフロアを沸かすキラートラックに成り得る。対照的に"Gift"は序盤から泡が弾けるような可愛らしい電子音のループに合わせずっしりしたキックの4つ打ちが安定感を生み出しており、そこに入ってくる透明感のある水彩画風なシンセの旋律が和んだ牧歌的ムードに染めて、軽やかなダンスのグルーヴに大らかさを感じて天真爛漫な無邪気さが感じられる。裏面には前述のMIXCDに収録されている曲から2曲が収録されており、その内のDaphneによる"When You Love Someone (Groove Instrumental)"は1993年作の古典ディープ・ハウスで、弾性のあるビート感が走りつつヴィブラフォンや鍵盤を用いたムーディーな上モノによっていかにもな時代感を閉じ込めた名曲。そしてもう1曲はSamo & Hidden Operatorによる新録となる"Capture Behind Rox"、低音が効きロウな質感による溜めのあるリズムが変則的ながらも、素朴な響きによるエモーショナルなシンセも相まってじわじわと引っ張られ、ダビーなボイスサンプリングなども効果的に用いて惑わすようなトリッキーさが面白い。Powderの素晴らしい新曲と他の2曲も合わせてどれもDJMIX仕様は前提として個性やクラシカル性があったりと、文句無しの出来栄えでテクノ/ハウスの両面から推したい一枚だ。



Check Powder
| TECHNO14 | 17:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Substance - Rise And Shine (Ostgut Ton:o-ton115)
Substance - Rise And Shine
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テクノの質・人気共に最高峰を誇るベルリンのクラブ・Berghain、そのクラブが運営し音楽性が反映されたOstgut Tonも当然テクノファンから多大なる羨望の眼差しを集めている。そのレーベルの新作はミニマル・ダブの伝説であるBasic Channelの正当なる継承者、かつてはSubstance名義で活動し近年はScionやTR-101といったユニットの一員としても活躍していたDJ Peteによる作品で、コンピレーションへの提供を除けばこのSubstance名義ではおおよそ20年ぶりとなる。なんでも活動30周年を記念したとの事だが、その音楽性はダブという音響を引き継ぎながらも過去よりも更にダンスへと接近し、アーティストとして円熟という言葉で表現するよりはフレッシュなエネルギーを含みながら現在のダンスフロアへと帰還したと説明するのが適切だろう。特にタイトル曲である"Rise And Shine"は金属的でひんやりしたパーカッションをダブの音響で鳴らして奥深い空間性と共にテクノの激しさも内包しているが、そこに意外にもぼんやりしながらもエモーショナルなIDM風な上モノで覆い、ダブ・テクノとダブ・ステップが融合したような新機軸を披露している。最も破壊的で重厚感あるダブ・テクノを聞かせるのは"Countdown"で、巨大なハンマーを振り下ろすような硬いキックや鋭いシンセがズカズカと体を打ち付けるハイテンションなグルーヴの中、しかしそこにスペーシーで幽玄なシンセのメロディーが入る事で、暴力的だけにならずに全体が洗練された響きのテクノとして纏まる。中盤の2曲はインタールード的な扱いだろうか、ヒスノイズが持続する奥にダブの残響が微かに鳴る"Bird Cave"、闇の中の低い所で弦のような低音が蠢きじんわりと深みにはまっていく"Distance"、どちらも全くダンストラックではなくその代わりに繊細かつ空間性のある音響へのこだわりが強く発揮されている。最後は"Cruising"は強烈なダンス・トラックでいかにもBerghainらしいというか、鉄槌で頭を殴打される硬く重厚感あるキックの4つ打ちに金属がひしゃげたような鈍い電子音のループが続き、終始無感情な空気感で無慈悲にもガツガツと押し迫る強烈なピークタイム向けの一曲。随分と今という時代のテクノを意識している事が伝わってくるが、その一方でダブ・テクノの匠としての技量も光る音響へのこだわりもあり、クラシックとモダンを見事に咀嚼している。本作が単にアニバーサリー的な一枚で終わってしまうのだとしたらもったいない、是非ともまたこの名義で活動をと期待させられる。



Check Substance
| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
John Beltran - The Season Series EP Autumn
John Beltran - The Season Series EP Autumn

今だからこそ正直に言えるがここ数年の作品はエレクトロニカやニュー・エイジ、または優しく包み込む有機的な響きの作風を軸にしたアンビエント作が多く、予てからファンであった人にとっては物足りなさがあったのも否定は出来ないだろう。デトロイト・テクノ第2世代のJohn Beltranは90年代前半から活躍するベテランであり、そしてその世代の中では数少ない今も尚新曲を作り続ける貴重な存在だ。だからといって手放しに全ての作品を称賛出来るわけでもなく、近年はややリスニング志向になり過ぎていたと思う。変化の兆しは2017年リリースの『Moth』(過去レビュー)位からだろうか、アンビエントな雰囲気の中に明確なダンスビートが現れるようになり、ファンが期待しているであろう音楽性が戻ってきたのだ。そして2018年、更に復活を決定付ける動きがあったのだが、それこそ秋から始まり一年の中に流れる各季節をコンセプトにしたシリーズで、その第1弾は秋。幕開けとなる"Lustrous Orb"からして初期の躍動感溢れるグルーヴとセンチメンタルなメロディーが広がっていくアンビエント・テクノな作風で、ファンからガッツポーズをしたくなる程の期待に応えた曲だ。この曲はキックは入ってないものの荒々しい質感のスネアがけたたましくビートを刻み、そこに重層的なシンセがデトロイト・テクノばりばりな叙情的な旋律を描き出して、じわじわと感傷的なムードを高めていくドラマティックな流れで、特に中盤以降の美しいシンセの絡みはこの上ない至福の世界だ。"Beautiful Things Cry"も全くキックは用いずにハイハットやスネアの軽やかなビートを活かしつつ、弦楽器らしき音のミニマルなリフに透明感のあるシンセの上モノを被せて、清涼感たっぷりに浮くような感覚で快活に疾走する。キックを用いないのは本作の特徴だろうか、"Pumpkin Skies (Jordi's Song)においても同様でその代りにブレイクビーツ風なスネアが軽快に躍動感あるビートを叩き出し、多層的に覆い被さっていくような朗らかなメロディーによって淡くドリーミーな世界観を演出する。"Autumn's Key (What Will You Be)"も作風としては前述の曲と一貫しておりスネアやハイハットの爽やかなビート感があり、そしてディレイも用いた清涼な上モノによって開放感を打ち出したメロウなアンビエント・テクノで、遂に最後の"Lose You"は完全にビートレスになり振動するように細かいシンセが躍動して壮大さを生むパッドと相まって物静かに感動を高めていく。秋の雰囲気の一つに哀愁があるが、正にそんな季節に思いを馳せる切ないアンビエント・テクノはコンセプトを的確に表現している。自身のBandcampのみで販売されている事からも分かる通りパーソナルな作品でもあり、非常にBeltranのエモーショナルな性質が打ち出されたこのシリーズ、ファンならば必聴だ。



Check John Beltran
| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Iury Lech - Musica Para El Fin De Los Cantos (CockTail d'Amore Music:CDALP 002)
Iury Lech - Musica Para El Fin De Los Cantos

アンビエントやニュー・エイジの再考は既に珍しくない環境になっているが、こちらは2年前の2017年にユニークなダンス・ミュージックを送り出すCockTail d'Amore Musicから再発されたIury Lechによる1990年作。Lechはスペイン在住のアーティストで、そしてまた作家でもあり映画監督でもありとマルチな活動をしているそうだ。スペインと言えばアンビエントやニュー・エイジの方面では一際注目を集めるSuso Saizがいるが、本作も元々はSaizが作品をリリースしていたHyades Artsからリリースされていた事を知れば、このアーティストについて造詣が無くとも少なからず興味は湧くだろう。本作は全編ビートレスでミニマル性の強い構成とフラットな感覚のアンビエントに振り切れており、基本的には電子音楽という意味合いでは統一されているので、ニュー・エイジの文脈だけでなくテクノの延長線上として聞く事でも全く違和感は無い。物悲しさが漂うシンセのリフレインが続く"Cuando Rocio Dispara Sus Flechas"、大きな変化も無くアルペジオも用いながら出口の無い迷路を彷徨うアンビエントな世界観と、ある意味ではインナートリップを誘発する。"Barreras"は左右に振れる軽やかなシンセのディレイが浮遊感を生み出しており、果ての見えない大海原や野外の開放感を思わせる壮大な空間の広がりが正にフラットな心地好さに繋がっている。"De La Melancolia"も同じタイプの曲でディレイを効果的に用いた空間の奥深さの演出を軸にしつつ、それ意外の音は省きながら多層的に聞こえながらも実はシンプルな構成によって、すっきりと軽やかなアンビエント感覚を作っている。最もアンビエントやニュー・エイジの瞑想的な雰囲気が強い"Ukraina"は16分越えの大作で、これにしても大きな展開もなく空間を埋めるような幻想的なドローンの隙間に煌めく電子音を散りばめて、ただひたすら物静かながらもドラマティックに叙情を強めていくアンビエントな構成。アルバム総じて取り立てて目立った山場という山場もなく、感情をいたずらに刺激しないようにひたすらフラットな存在感の構成で、その意味ではただそこで鳴っていて意識的に聞く事も必要としない環境音楽そのもの。心を落ち着かせる瞑想のお供に、または就寝前のBGMとしても役に立つ静謐なアンビエントだ。



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| TECHNO14 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kuniyuki Takahashi - Early Tape Works (1986 - 1993) Vol. 1 (Music From Memory:MFM027)
Kuniyuki Takahashi - Early Tape Works (1986 - 1993) Vol. 1
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ジャンルの垣根を越えて、そして特に知名度に頼らないどころか寧ろ敢えて時代に埋もれてしまった音源の発掘を積極的に進めるMusic From Memoryが、またしても素晴らしい仕事を遂行した。およそ2000年頃から作品をリリースし始めMule Musiqを拠点に日本から世界へと羽ばたいた高橋邦之は、今やこのクラブ・ミュージックの界隈では名の知れた存在だが、何とMusic From Memoryはそのデビューの遥か前の1986〜1993年に制作されたという未発表音源を掘り起こしてしまった。今までのレーベルの方向性としては世に生まれながらも不遇にも見過ごされてしまった作品に対し再度視点を向けるような流れだったと思うが、本作は既に知名度があるアーティストの完全なる未発表音源を発掘したという点において、そのアーティストの初期音楽性を体験出来る意味で興味深い。公式デビューの遥か前に制作された本作は古いシンセやリズムマシンにテープレーコーダーやサンプラー、そして彼らしくギターやフルートも用いて制作されるなど既にマルチプレイヤーとしての片鱗は見せているが、当時のクラブ・ミュージックに触発されて向かった先はダンスではないアンビエント志向な電子音楽の探求であったのだ。"Night At The Seaside"を聞いても全くビートは入っておらず、幻夢のドローンに覆われた電子音響の中にぼんやりと抽象的なメロディーやノイズにも近い音が浮かび上がっては消えるアンビエントな作風は、しかし既に邦之らしい温かい情緒が存在しており現在の作風へ繋がる点も見受けられる。続く"Day Dreams"では爪弾きのギターらしき音やベルなどが和の侘び寂び感を醸しており、山奥の寺院の中で鳴っていそうな瞑想的な音楽は現在のスピリチュアルな性質と紐付いている。明確なダンスビートではないがリズムが入った"Drawing Seeds"、内なるイマジネーションを刺激する多層なシンセの旋律は重厚感もあり、深いインナートリップを誘発する。一方で現在のシーンの中にあっても全く違和感の無い曲もあり、例えば"You Should Believe"では催眠的なシンセのループと快楽的なベースライン、そして官能的な女性の歌も導入してInnnervisions系のディープな曲調を思い起こさせる。"Signifie"に至ってはTR系のリズムとTB系のベースラインが鳴っており、シカゴ・ハウス/テクノに影響を受けたであろうローファイな音響と相まってライブ感溢れるダンス・ミュージックは、実に邦之らしいフィーリングだ。まだ手探り状態で焦点が定まっていないためか曲調にばらつきはあるが、邦之の単なるダンス・ミュージック以上の豊かな世界観はこの時点から既に存在しているし、またアンビエントやニュー・エイジの要素が強いからこそMusic From Memoryからリリースされるのも納得な内容だ。



Check Kuniyuki Takahashi
| TECHNO14 | 14:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
The Orb - No Sounds Are Out Of Bounds (Cooking Vinyl:COOKCD711)
The Orb - No Sounds Are Out Of Bounds
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アンビエント・テクノの重鎮であるAlex Paterson率いるThe Orbの目下最新アルバム、2018年6月にリリースされた本作はある意味では非常にThe Orbらしく多くのアーティストとの交流によって生まれた作品だ。ここ数年はThe Orbとしても長らく活動しユニットの音響的な面で多大なる影響を残しているThomas Fehlmannとの共同作業が多かったものの、このニューアルバムでは旧友であるYouthや過去にも繋がりのあるRoger EnoやGuy Pratt、Public Image Limitedの元ベーシストであるJah Wobbleにイタリアのダブ・アーティストであるGaudi、勿論Fehlmann含めその他多くのアーティストが制作に参加している。その影響なのか、またはFehlmannとの濃密な共同作業ではないせいなのか、所謂Kompaktらしいクールなテクノ色は薄れつつよりバラエティーに富んでポップかつメジャー感のある作風は2001年の作品である『Cydonia』を思い起こさせる点が多い。例えば冒頭の"The End Of The End"では女性ボーカルを起用しながら最早アンビエントですらないエグいシンセが豪華絢爛さを演出するダウンテンポな作品で、その中にもThe Orbらしくヒップ・ホップやR&Bにダブなどごった煮は要素はあるものの、純度の高いテクノとアンビエントの融合は失われている。"Rush Hill Road"ではぶっ飛んで奇想天外なサンプリングから始まるも、直ぐにノリノリなレゲエ調のダンス・ビートが入ってきて更に色っぽい女性の歌も加わればポップなダンスそのもので、Patersonらしい面白いサンプリングの妙技よりもどうしてもメジャーな作風の前に抵抗感が強い。聞き所が全くないわけでもなく、かつての名曲である"Blue Room"の延長線上と考えてもよい"Pillow Fight @ Shag Mountain"はダブのぬめったリズムとしっとり艷やかなピアノによってズブズブと沼にハマるような音響と奇抜な世界観があり、色々なサンプリングも交えながらThe Orbらしい快楽的なダブ・アンビエントを展開する。余り外野を入れずにFehlmannと制作された"Isle Of Horns"は、非常に多くのサンプリングを用いて異空間世界へとぶっ飛ばしつつ、その足元にはダブ/レゲエのスローモーで重心の低いビートを張り巡らせ、Fehlmannらしく音の間を強調しながら研ぎ澄まされたアンビエントを作り上げている。ラストの"Soul Planet"はゲストがほぼ勢揃いした15分にも及ぶ大作で、全くビートの無い空間に静謐で物悲しいピアノや浮遊感のある電子音を配置した序盤、勢いのあるダンス・ビートが入ってきてソウルフルな歌も加わり熱量を増して躍動する中盤、そして再度ビートが消失しメランコリーなアンビエントの流れから最後は悲壮感漂うピアノの旋律で幕を閉じていくなど、長尺を活かす事で一曲の中に感動的なドラマが存在する。曲毎に随分とバラエティーに富んでいるのはやはり多様なゲストを迎えた事が影響しており、ある意味ではThe Orbらしいジャンルを横断するごった煮なサウンドは下世話な感もあってそれも司令塔Patersonのユーモアと考えられるが、やはり個人的にはテクノ音響職人のFehlmannが全面参加している時の方が音楽性は優れているように思う。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Robert Hood - DJ-Kicks (!K7 Records:K7376CD)
Robert Hood - DJ-Kicks
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オリジナル・デトロイト・テクノの重鎮、そして頑固一徹ミニマル・ネーションとでも呼ぶべき作風を貫く生粋のミニマリストであるRobert Hood、久しぶりにMIXCDへと参戦したその作品は長く続く老舗MIXシリーズの「DJ-Kicks」だ。このシリーズ自体はジャンル問わずに多方面のアーティストを起用する事でバラエティーを拡張しマンネリを避けているようにも思われるが、そんな中に飛び込んだミニマリストはやはりミニマル・テクノから全くぶれずに求道的に自分の道を貫き通している。近年はFloorplan名義を復活させてゴスペル性も伴ったディスコ・ハウスによって別の魅力も開花させていたが、ここで聞けるのはミニマル・テクノ、それもルーマニアやチリの官能と陶酔による揺らぎをもたらすそれではなく、ある意味では古臭くもありそれが味でもある直線的なグルーヴで猪突猛進するテクノだ。勿論ベテランだからといって昔を懐かしんだりクラシックに頼ったミックスではなく、それどころかヨーロッパの最新のハードなテクノを軸に選曲を行っており、しっかり現在形のDJである事を証明している。ヒスノイズのような凍てついた音響が続く"Connected (Intro)"によって幕が開き、即座にこのシリーズの為に書き下ろされた弾性のあるキックが鉄槌の如く振り下ろされるダークなテクノの"Focus (DJ-Kicks)"で直線的なビートが走り出す。ざらつきのあるリズムに睡眠的な電子音のループに引き込まれる"Terminal 5"、薄い電子音響を張り巡らせつつハードなキックが地面を揺らす"Remain"など、序盤から豊かさを排除しながら退色した世界観の中を疾走するこれぞHood流ミニマル・テクノな流れ。恍惚感のある電子音にハンドクラップが刺激的な"Mirror Man"からファンキーなサンプリング系の"King (Gary Beck Remix)"の流れはやや大箱を意識したであろう派手さがあり、中盤に入っても息抜きや下げもなく常に高いテンションで爆走するスタイルは、上手い下手で評価されるべきではなく愚直なまでのミニマルへの信仰を喜ぶべきだろう。ハードなだけではなく快楽的なループによって意識を融解させる"Signs of Change (Robert Hood Remix)"や、Floorplanの音楽性に近いファンキーなゴスペル・テクノとでも呼ぶべき"Make You Feel Good"など印象的な曲も用いつつ、そして壮大で派手なブレイクも導入して直線的で平坦なグルーヴながらもしっかりと盛り上げる場面も作っている。そのまま終盤までドスドスと太いキックが4つ打ちで大地を揺らし、最後は簡素なドラム・マシンによるリズムのみがファンキーさを生む"Protocol"でミニマルとして相応しい締め方だ。展開的な面白さという点では余り推せる内容ではないものの、妄信的なまでのミニマルなスタイルは骨太な芯があり、興味の無い人にとっては全く興味が無い代わりに好きな人にとっては一生愛せるミックスになり得る可能性も秘めている。兎にも角にも痛快な音楽性である事は断言する。



Check Robert Hood

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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Mark Barrott - Nature Sounds Of The Balearics (Running Back:RBINC003CD)
Mark Barrott - Nature Sounds Of The Balearics
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International Feelを主宰する事でバレアリック・ミュージックの芳醇を促し、そして自身もアーティストとしてもその音楽性を開花させている現行バレアリック・シーンの代表格であるMark Barrott。その彼によるニューアルバムは何とInternational FeelではなくGerd Jansonが運営するRunning Backからのリリースになるが、これは単純に彼とTalamanca Systemなるユニットを組んでいる関係性もあっての事であり、「Nature Sounds Of The Balearics」というタイトルからも分かる通りそのバレアリックな世界の中にある自然的な音響は全く変わっていない。その一方で本人曰く本作について「テクノ・アルバム」とも呼んでいる事もあり、過去の木々が生い茂るトロピカルでオーガニックな世界観に加え爽快で透明感のある綺麗な電子音響やカチッとしたリズムも前面に出ており、大自然とエレクトロニクスの見事な調和が結実している。過去の作風はリスニング重視でビートレスな曲も珍しくは無かったが、本作はカタカタとしたローファイなビートが入った"Aroon"で幕を開ける。と言っても有機的な笛らしき音色やニュー・エイジ調なシンセが融和しており、最後には虫の鳴き声も混ざりながら自然の中で深い瞑想へと誘われるような感覚から始まる。続く"Morning Star"は完全にビートが無いインタールード的作品で、アシッドなベースが生命の営みのように自由に蠢きつつ美しい複数のシンセのラインが豊かさを演出するバレアリック志向な曲。"Point & Figure"も豊かな大自然を感じさせる曲で、アタック感の強いキックを用いた緩いビートに合わせ深い森林を想起させる生命の音や透明感のあるオーガニックなシンセの響きが壮大な世界観となり、いつしか心は南国のトロピカルな森の中。一方で"TRIX"はキレのある電子音局が大胆に躍動しシカゴ・ハウスにも近い乾いたビートが荒ぶるテクノ色の強い曲で、とは言ってもビートが走る事はなく溜めを効かせたまま引っ張り続け、爽快な電子音響が刺激的に肉体に降り掛かってくる。そして一般的にイメージされるであろうバレアリックという曲なら大らかな青空に包み込まれるような緩いダウンテンポの"Keltner & Chalkin"もあれば、"Ichimoku"では心地好いアシッド・ベースのシーケンスが走りながら90年代前半のArtificial Intelligenceを思わせるギャラクティックな宇宙遊泳を楽しむ如く浮遊感のある曲もあったりと、バレアリックとテクノの自然な調和が存在するアルバムだ。最後は夜の帳が降りてきてしっとりムーディーに染まる"Evening Star"、幻想的なシンセのレイヤーがメランコリーで静かに幕を閉じていく。過去の作風に比べ随分とシンセサイザーの瞑想的な旋律を用いており、テクノやアンビエントにニュー・エイジの要素も濃くなった作風ではあるものの、根底にある自然主義のバレアリック性も変わらず実にBarrottらしくもある。記事にするのが遅れて間に合わなかったものの、2018年のベストアルバムに入れたかった程に素晴らしい作品だ。



Check Mark Barrott
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Stacey Pullen - Detroit Love Vol.1 (Planet E:PEDL001CD)
Stacey Pullen - Detroit Love Vol.1
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「デトロイト・ラブ」、何とも直球ストレートなタイトルのMIXCDシリーズが立ち上げられたのだが、そのプロジェクト元はデトロイト重鎮のCarl Craigだ。2014年頃からデトロイト・テクノ/ハウスのシーンの後押しをする目的で同名パーティーを世界各地で行っているが、その雰囲気を家でも体験出来るようにとMIXCDとしても企画されている。その第一弾を担当しているのは当然デトロイトのDJでありまたベテランの一人でもあるStacey Pullenで、現在は制作活動は見受けられないものの数年に一度はMIXCDをリリースしてはいるので、DJとしての手腕が買われているのだろうか。過去に手掛けたMIXCDではアフロ・パーカッシヴなファンキーなテクノやハウスから、ヨーロッパ系の流麗なテック・ハウス系、派手なプログレッシヴ・ハウス調までその時々で色々な音楽性を披露しているが、今回はUSの作品を軸とした作品になっている。開始こそUS勢ではないSoulphictionの"Ann Arbor"だがアフロなパーカッションが土着的なドス黒いハウスで重厚感があり、そこからはデトロイト勢の曲が続く。どっしり重さを保ってサイケデリックな"The Fader"、ミニマルなスタイルで洗練された"They're Coming"、そして序盤のピークはざらついた質感がファンキーな名曲のハウスの"Raw Cuts (Marcellus Pittman Remix)"でやってきて、低空飛行ながらもじわじわくるスムースなハウスの流れが序盤を作っている。中盤からはやや上げてきてベテラン勢の一人Gary Martinによる"Galaxy Style"の爽快なパーカッションがなるファンキーなハウスから、ギャラクティックな上モノと荒々しいリズムに躍動する"Horney Chords"、ダークな雰囲気からデトロイトらしいエモーショナルな旋律が浮かび上がってくるテクノの"Delray"、ディープな雰囲気を作る太いベースラインが脈動する"Wired Everything"など、デトロイトというコンセプトはありながらも一般的なデトロイト・テクノ/ハウスというイメージよりは更に拡張性が感じられるだろう。終盤はテンションを落としてきて空間の広がりと浮遊感が存在するスペーシーな"Purple Pulse"から女性のシャウトが印象的なトライバル系の"Low Down"、最後はデトロイトの叙情性が発揮されたアンビエント系の"Detroit State of Mind"で気分を落ち着かせながら幕を下ろす。所謂昔の安っぽさや素朴さの中にファンクネスやスペーシーな感覚が込められたデトロイト・テクノというタイプの選曲ではないが、これが現在のデトロイトのシーンの一部である事を提示するような音楽性で、その意味では懐古的ではなく未来の視点を向いたMIXCDだ。テクノとハウスを横断し大人びてスムースな流れのプレイはベテラン的だが、欲を言えばもっと野性的で荒々しいファンキーなプレイも聞いてみたいとも思うが、このシリーズには今後も期待したい。



Check Stacey Pullen

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| TECHNO14 | 09:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |