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Gianni Gebbia - Gianni Gebbia (Utopia Originals:UTO002)
Gianni Gebbia - Gianni Gebbia

現代的なクラブ・ミュージックにホームリスニング、そして気鋭の新人アーティストから世に知られていない秘蔵音源の再発まで、ジャンルに束縛されずに様々な音楽を手掛けるUKのUtopia Recordsは、多様性が重視される今という時代のために生まれたようなレーベルだ。そんなレーベルが新たに立ち上げたUtopia Originalsは特に貴重で入手が難しい音源の復刻を目的としているそうで、第一弾にはニューエイジ再燃の現在に最適なIury Lechによる1989年のデビューアルバムである『Otra Rumorosa Superficie』(過去レビュー)を取り上げていたが、第二弾も1987年のGianni Gebbiaによる同じようにオブスキュアなデビューアルバムを発掘している。Gebbiaはシチリア島パレルモ出身のサックス奏者で、70年代に独学でジャズを習得し伝統的な音楽と実験的な音楽を結んだ活動を行っていたようで、初めて完成させた作品が本作だ。何か特定のジャンルに当てはめるとしたらコンテンポラリー・ジャズという事になるのだろうが、ニューエイジやアンビエントに現代音楽のミニマルといった性質も感じ取る事が出来て、その意味ではこのタイミングでの再発はジャストという他にないだろう。一部の曲では打楽器や鍵盤で他のアーティストも参加しているが、大半はGebbiaによるサックスとシンセの多重録音で成り立っており、即興性が強いながらもそれがより感情性を強めて非常に綺麗なロマンティシズムを奏ででいる。アルバムの開始は、今で言うドローンの和んだ持続から始まり一日の始まりを告げるような爽やかなサックスの旋律が高らかに響く"Osso Di Seppia"、平穏な日常の時間が過ぎるように穏やかな響きはアンビエント的でもあり、心が洗われる。"Le Cou Oblique"では打楽器奏者が参加しており軽やかな太鼓の音が爽やかな風を吹き込み、しかしそこに加わるのはサックスの多重録音のみで、原始的なリズム主体の曲は現代ミニマル的でもある。"Danza Contrariusa"ではサックス(ソプラノ/アルト/バリトン)を使い分けて、それぞれがリズムと旋律を担当してサックスのみでミニマル×即興のジャズを生み出している。一方で清らかで透明感のあるシンセのミニマルなフレーズを用いた"Cud"は、そこに自由に舞うジャズのサックスを合わせてはいるものの、シンセの終わりの無い反復が心地好くニューエイジ的な作風に繋がっている。同様にシンセが存在感を示す"Vedersi Passare Le Cose Attorno"はしかしどんより曇ったドローンが満ちた感覚がアンビエントに思われ、そこに内向的なサックスが湿り気を帯びた叙情性を加えていき、決して明るいムードではないものの昼下がりの白昼夢を誘う。30年も前の作品だと言うのに全く古ぼけた感覚は無く、これが逆に現代のアンビエント/ニューエイジに馴染んでいるのは不思議だが、忙しない日常を忘れさせてくれる牧歌的な世界観はBGMとしても最適だろう。素晴らしい再発に、今後もUtopia Originalsの動向から目が離せない。



Check Gianni Gebbia
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 20:30 | comments(0) | - | |
Yadava - Earth Tones (Omena:OM026)
Yadava - Earth Tones
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(コンピレーションEPには2016年頃から名があるものの)ソロ作品としては2018年にChurchからいきなりアルバムデビューを果たして注目を集めたYadava、UKはマンチェスターで活動するDJでありラジオのホストも務めるこのアーティストが、2019年にはOmenaからミニアルバムもリリースしている。ChurchとOmenaの両者は、クラブミュージックにアンテナを張っている人であれば現在のシーンで注視すべき存在である事は当然理解しているだろうが、共通するのはハウスミュージックを軸にしながらもジャズやダウンテンポにアンビエントなど境界を越えていく豊かなクロスオーヴァーなレーベル性があり、だからこそどちらのレーベルにもベテランよりは可能性を秘めた多様な若手アーティストが集まっている。Yadavaもそんなレーベルの音楽性を主張するように、ハウスが真ん中にはありながらもジャズやファンクといった生演奏の感覚を前面に打ち出した音楽性を持っており、この新作でもその才能を遺憾なく発揮している。繊細で優美な鍵盤と弾けるように爽快なパーカッションから始まる"Tides"、バックには波の音も混ぜつつざっくりとした生っぽいリズムを響かせブロークン・ビーツ調の曲だが、中盤以降ではブルージーなソロ演奏も加わると途端にファンクっぽさが強くなる。"Good Mourning"も耽美なエレピや艶のあるベースのオーガニックな展開で始まり、こちらは4つ打ちを基調としながらも、様々なオルガンや金管楽器等の生っぽい音も合わせて非常にライブ感溢れるハウスを聞かせる。自由な演奏でインプロビゼーション的に始まる"Ixelles '42"はジャズのモードと土着的な雰囲気があり、ホーンや鍵盤で情緒的なエモーショナル性を強く感じさせるメロディー、そして繊細で小刻みなリズム感が心地好く酔わせる。"Hiro's Cosmos"は朗らかな笛と可愛らしいピアノに先導されるジャジー・ハウスだが、ミニマルなエレクトロニクスの旋律が多幸感を生み、生音と電子音を巧みに用いてモダンなダンス・ミュージックへと昇華させている。そしてしなやかに躍動するリズムを刻み黒っぽく艶めかしいベースとファンキーな歌によるジャズ×ブロークン・ビーツ調の"Message From The Poets"、最後は乾いたパーカッションと生っぽい音を優しく用いて夜のしっとりした煌めきを演出する穏やかなディープ・ハウスの"Earth Tones"と、僅か6曲ではあるものの正にOmenaのレーベル性に沿ったジャズの要素たっぷりな新星らしくフレッシュながらも大人びた内容だ。クラブで映えるのは当然として、家でじっくりと耳を傾けてもそのエレガントな響きにうっとり陶酔してしまう。



Check Yadava
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 21:30 | comments(0) | - | |
HNNY - Music Is Nice (Omena:OM028)
HNNY - Music Is Nice

Rhythm Section InternationalやLocal Talkなど一部のレーベルにおいてジャズをハウスのフォーマットに落とし込んだクロスオーヴァーな音楽性が盛り上がっているように感じられる近年、同様の流れはスウェーデンのOmenaにおいても顕著だ。前述の音楽性のみならずダウンテンポやニューディスコまでと幅は実に広く多様なアーティストがカタログに名を連ねるが、同レーベルの初めての作品はJohan CederbergことHnnyで、このアーティストもレーベルの多様性を示す存在だ。2019年には色々なジャンルが同居した『2014.12.31』(過去レビュー)をリリースしメランコリーな世界観でリスナーを魅了したが、それから間を空けずにリリースされたのが本作で、何でも2013年に制作されていたお蔵入り音源だそうだ。レコードだとA面には7曲収録されており、ゆったりとしながらもサンプリングを用いたビート感とネオソウルな雰囲気のあるしっとりメロウな"Hej"に始まり、フルートやストリングスに生音強いリズムを用いて優美なジャズを聞かせる歌モノの"So Good"、そして気怠い甘さが白昼夢に浸らせるインタールード的な短いダウンテンポの"Lyn"と、序盤から前作以上にメランコリー一色で小洒落たカフェのBGM的な落ち着いた音楽性だ。"Meandyou"はヒップ・ホップ色の強いリズムを用いながらも気怠い歌と繊細なエレピやキーボードで優しく包み込むダウンテンポで、そしてスペーシーな電子音響やストリングスを合わせて浮遊感のあるドリーミーなダウンテンポに仕立てた"ILY"と、どの曲も温かい温度感としっとりした湿度感があり、サンプリング重視な音楽性ながらも非常に人間の血が通ったような風合いだ。そしてB面は1曲だけながらも11分にも及ぶ"You Be Good, See You Tomorrow"が収録されており、こちらはか弱くも優美なピアノが繊細な装飾を行い静かなジャズ・ドラムと相まって、全く変化の無いループ構成ながらもレイドバックした雰囲気がたまらない。全体的に短い曲が多い事もあってか断片的でラフスケッチな印象もあるEPだが、このオーガニックで人肌を感じるメランコリーは昼下がりの午後3時の眠気が強くなる時間帯にもぴったりだ。



Check Hnny
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 13:30 | comments(0) | - | |
Black Jazz Consortium - Evolution of Light (Perpetual Sound:PS003)
Black Jazz Consortium - Evolution of Light
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AnomalyやFP-OnerにFP197など複数名義を用いて活動している人気絶頂のテック・ハウサーのFred P.ことFred Peterkin、その中でも特に古くから続く名義がBlack Jazz Consortiumだ。レーベルとしても現在は停止したSoul People Musicに始まり、BoardsやEnergy Of Sound、そして最新のPerpetual Soundまで活動の幅は広く、その名義やレーベル毎に明確な音楽性の違いはリスナー側からは区別はつかないものの、一点最近の傾向を挙げるとすれば生音志向が明確に打ち出されていた。例えば2017年の『Sound Destination』(過去レビュー)ではアンビエント性の強いフューチャー・ジャズと呼べる音楽性で、有機的な響きを強めてより叙情性を増した作風で新機軸を展開したが、この復活したBJCのアルバムはブラジルのアーティストや歌手をフィーチャーする事で、更にラテンやブラジル音楽の性質が前面に出たテック・ハウス/ディープ・ハウスとなっている。曲名が示す通りに祝祭感のある"More Blessings"は、鳥の囀りのアンビエントに切ないアコギの旋律、神々しく清楚なコーラスが幻想の世界を広げ、キックが入ってくると浮遊感のある有機的なテック・ハウスと化して、至福の高みへと上り詰める。"Another Path"も同様にブラジリアンなパーカッションやドラムのリズムが柔軟に弾け、美しいFred P.らしいシンセのメロディーや温かみのあるアコギやソウルフルなコーラスワークが一体となり、エモーショナル性抜群のテック・ハウスだ。"Sacred Sun"はもはやフュージョン・ハウスと呼ぶべきか、複雑でオーガニックなリズムの上に美しいシンセのコードと鍵盤ソロや朗らかなアコギの旋律、そこに爽やかで甘い歌も合わせて、太陽の光の下で笑顔に包まれる幸福感だ。ブラジリアンな複雑なリズムを刻むドラムが特徴の"Soul People For Life"では渋いオルガンやピアノのプレイと相まって、ラテンなファンキーさも滲むライブ感のあるディープ・ハウスとなっている。後半にはFred P.が得意とする疾走感に乗って叙情性に包まれるテック・ハウスが並んでおり、繊細で耽美なエレピと甘い女性の呟きにうっとりさせられる幻想の"Energies Collide"、ズンドコとパーカッシヴに跳ねるグルーヴと透明感のある女性の呟きと神聖なパッドのコード展開がスピリチュアル性を生む"Focus"、力強いビート感と男性の感情性爆発な歌に引っ張られてポジティブな高揚感に満たされる"Love Alliance"と、ここら辺の曲はリスナーを感動に包み込みながらフロアを絶対的な幸福圏へと引っ張り上げるに違いない。ジャズやファンクのオーガニックで人肌の温もりが伝わる響き、そこに従来のFred P.らしいテッキーなダンス性を融合させた、正に言葉通りにフュージョンな新局面へと至るこのアルバムは、2019年のベストな一枚にも挙げるべき名作である。まだまだFred P.の快進撃は止まりそうにもない。



Check Fred P.
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 13:00 | comments(0) | - | |
Marcos Valle - Sempre (Far Out Recordings:FARO211CD)
Marcos Valle - Sempre
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9年ぶりのアルバムという事でちょっとした話題になっているみたいなMarcos Valleの新作。普段クラブ・ミュージック中心に聞く筆者にとっては余り縁の無さそうなアーティストだが、2015年には"1985"をTheo Parrishがリミックスをして話題になっていた事もあり、この新作も軽く試聴してみたところアーバンかつブギーなディスコ/ラテンな作風が直ぐに耳に馴染んだので購入した次第。Valleは60年代から活動するブラジルのアーティストで、ボサノヴァから始まりMPBにディスコ、そしてジャズやファンクにAORやソウルと様々な要素を咀嚼する事で結果的に時代に適合しながら生き抜いてきているように思われるが、過去の作品を聞いてみるとどの時代にもポップなソングライティングが発揮されておりその音は実に懐っこい。そして注目すべきは90年代後半以降はダンス系のブラジリアン・ミュージックでは筆頭格のFar Out Recordingsから作品をリリースしている事で、その点からも少なからずクラブ・ミュージック的な方面からも違和感無く聞けるダンスなグルーヴ感も存在しており、クロスオーヴァー性はここでも発揮されている。そこからのこの新作、Pat Metheny Groupに参加していたパーカッショニストのArmando Marcal、Azymuthのベースプレイヤーとして活動していたAlex Malheirosといった様々なアーティストが参加しているが、特筆すべきはIncognitoのリーダーであるJean-paul Maunickの息子であり、ハウス・ミュージックのアーティストであるDokta VenomことDaniel Maunickがプロデュース&プログラミングを担当しており、その影響として大きくブギー&ディスコな性質が打ち出されている事だ。冒頭の"Olha Quem Ta Chegando"からいきなりファンキーなギターカッティングにトランペットの情熱的な響きが聞こえ、ドタドタとした生っぽいドラムが躍動するディスコな曲で、しかし熱くなり過ぎずにサマーブリーズな爽快な涼風が舞い込んでくる。"Odisseia"では実際に生ドラムを用いた臨場感あるリズムに豊潤なフュージョン風のシンセや甘美なエレピを重ねて、派手さのあるラテンファンクかつサンバながらも哀愁も込み上げる切ない一曲。バラード風なスローテンポの"Alma"では光沢感のある優雅なシンセやしみったれたギターメロディーが活きており、AORで大人のアーバンな雰囲気には余裕たっぷりな円熟味が。そして再びディスコ・ファンクな"Vou Amanha Saber"、ズンズンと力強い生ドラムがリズムを刻み、ギターやベースがうねりつつ豪華さを彩るホーンが響き渡る、陽気さに溢れ肉体感を伴う熱いダンス・ミュージックを聞かせる。音楽的な新しさは皆無ではあるものの色々なスタイルが元からそのままであるように馴染みながら、エネルギッシュに脈動するダンスからしっとりと聞かせるリスニングまで丁寧なソングライティングが耳馴染みよく、取り敢えず老獪なベテランに任せておけばOKみたいな安心感のあるアルバム。真夏は過ぎてしまったけど、蒸し暑い時期にも体感温度を下げる爽やかなブラジリアン・フレーバーが吹き込んでくる。



Check Marcos Valle
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Aura Safari - Aura Safari (Church:CHURCH017)
Aura Safari - Aura Safari
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All My ThoughtsとCoastal HazeとUKのモダンなダンス・ミュージックの界隈で注目を集めるレーベルを主宰するSeb Wildblood、その彼がまた別に主宰しているChurchはテクノやハウスのみならずジャズやクロス・オーヴァーな方向にも振れて、現在特に面白いレーベルの一つになっている。そのようにここ数年ロンドン界隈では、ディープ・ハウスにジャズの要素を盛り込んだ音楽がまた再燃してきているように感じられるが、このChurchから突如デビューしたAura Safariなるバンドのアルバムは特に出来が良い。このイタリアの5人組バンドについて詳しい情報は持ち合わせいないものの、メンバーにはQuintessentialsや4 Lux等のレーベルでも活躍するディープ・ハウス系DJのNicholasも含まれており、もしかしたらそれぞれがキャリアのあるDJやミュージシャンなのだろうか。5人ものメンバーがいる影響か音楽性もディープ・ハウスにジャズ、バレアリックやファンクにブギー等正に多様にクロス・オーヴァーする内容で、それが上手く一つの世界観に纏められている。オープニングのエレピにしんみり切ない気持ちにされられる"Music For The Smoking Room"、トロピカルで快活なパーカッションと肉感的なベースも用いたフュージョン風の曲を聞けば、おおよそAura Safariの音楽性は理解出来るだろう。"Sahara"はハイハットが効いた複雑なリズムや生々しいベースによってジャズやフュージョンへとより傾倒しており、柔軟でしなやかなグルーヴやベースや鍵盤のセッション性の強い演奏はライブ感に溢れている。タイトル通りにインタールードの"Albaia Interlude"でもトランペットやエレピの情緒的な響きが深いメロウネスを奏でているが、それ以上にスモーキーな音像は例えばデトロイトのディープ・ハウス系のDJがルーツへと取り組んだような雰囲気も。同じジャジーな作風でも"The Lost Reel"はもっと視界が開けて青空が広がるバレアリックな爽快感があり、一転安定した4つ打ちを刻む"Saturn and Calypso"は乾いたパーカッションによるラテンフレーバーに陽気なブギー感覚があり、一曲一曲に個性が込められている。"Midnight Discipline"は特に打ち込みのリズムを活かしたディープ・ハウス調で、力強いビート感はクラブ寄りだがそこに艶めかしいサックスとしっとりしたエレピを被せて、程好くクラブ・ミュージックと親和性のあるジャズ・ハウスになっている。リリース元のレーベルがChurchという事もあり、ジャズやフュージョンに振り切れるのではなくハウス・ミュージック等の融和を軸にしており、ジャズ等を普段聞かない人達にとっても垣根を壊して興味を抱かせるには十分な内容であろう。Aura Safariの音楽によってリスナー側にとっても、分断されていた層がクロス・オーヴァーさせられるようだ。



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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 10:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Various - Street Soul Brasil (1987 - 1995) (Hello Sailor Recordings:HSR 006)
Various - Street Soul Brasil  (1987 - 1995)

筆者にとっては全く造詣のないブラジリアン・ミュージックをコンセプトにした本作、タイトル通りに1987〜1995年のブラジル・アーティストによって制作された音楽を纏めたコンピレーションだが、これが心の中に眠った懐かしさが込み上げる至極サウダージな音楽ですこぶる良いので紹介したい。編集を担当したのはブラジルのエクスペリメンタルかつコズミックな秘蔵音源のリイシューに力を入れるSelva Discosを主宰するSelvagemやTrepanadoの名義でも活動するAugusto Olivaniで、前述のレーベルが少々特異性が際立つブラジリアン・ミュージックを手掛けているのに対し、本作ではそういった実験性よりも素直にブラジル音楽の表現に一般的に用いられやすいサウダージを前面に打ち出しており、その意味では多くの人に馴染みやすい感情性に溢れている。実際に本作ではひとえにブラジル・ミュージックと言っても、ディスコやファンク、ソウルにヒップ・ホップなどジャンルは多様ながらもどれもポップなりメロウなりの要素があり、そしてダンス・ミュージックとしてのグルーヴ感はありながらもただ熱狂的に踊る事よりもそれをクールダウンさせるしっとりした情感が強い。"Fora De Mim"はフルートの朗らかなメロディーとエレクトロニックな打ち込みを活かしたシンセ・ポップ調の曲だが、甘ったるく優しい歌はR&B調で、一聴して泣きを誘う実にドラマティックな曲だ。"Ladroes De Bagda"はレイドバックしたディスコかダウンテンポか、まったりした打ち込みのリズムにピアノやギターが簡素に装飾したすっきりした作風で、それが故にポップながらも何とも言えない侘び寂びも感じさせる。"Guarde Minha Voz"なんからSoul II Soulを思い起こさせるヒップ・ホップのスタイルで、ずっしりねっとりした重心の低いビートに合わせてぐっと胸を締め付ける感傷的な歌は正にサウダージそのもの。"Coisas Do Amor (Trepanado Edit)"は元は3分にも満たない曲をOlivaniがこのコンピレーションの為にエディットしたもので、ギターのファンキーなカッティングが切なくもポップさを演出し、陽気な歌が心を躍動させるポジティブなラテントラック。一転"Jeito De Ser (Menina)"は甘いセクシーさが際立つR&Bやヒップ・ホップの系譜にあり、切なくも美しいシンセが伸びる中にしっとりした打ち込みのビートが心地好く、ぐっと心に染みる一曲。喜びや悲哀、切なさといった心象が込み上げる本作は基本的にはどの曲もポジティブな響きで通底しており、ブラジル・ミュージックに詳しくない人にとってもジャンルに対し身構える必要はなく、すっと耳に自然と入ってくる非常に馴染みやすいポップ・ミュージックなのだ。アナログのみの販売だがダウンロードコードが封入されており、その点でもありがたい一枚。



Tracklistは続きで。
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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Hnny - 2014.12.31 (Omena:OM027)
Hnny - 2014.12.31
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2014年設立の新世代で頭角を現すスウェーデンはストックホルムのOmenaは、ディープ・ハウスからダウンテンポにニュー・ディスコやトライバルと多様な要素をクロスオーヴァーし、これからを期待させる多種多様なアーティストを擁している。同郷のJohan CederbergことHnnyはそのレーベルの主力アーティストの一人であり、レーベルの特にダンスの枠を越えた方面の音楽性を担っている。Hnny自身は過去にLocal TalkやLet's Play HouseにStudio Barnhus等からモダンなエレクトロニック・ハウスやディスコ・サンプリングなハウスといったダンスフロアを意識した曲をリリースしているが、その一方でOmenaからはリスニングへと傾倒したダウンテンポやアンビエントな作風で多彩なアーティスト性を発揮しており、本作はOmenaからということもありその後者の音楽性を披露している。タイトルは自らのキャリアのターニングポイントとなった日だそうで、また各曲名は世界各地の地名を現しており、これらは彼にとっての旅の表現なのだろうか。飛行場内の雑踏のフィールド・レコーディング風で空港を表現したような23秒のインタールード的な"Arlanda"で始まり、オルゴール風の可愛らしいメロディーと生っぽいジャジー・リズムによりエレクトロニカ風の"Dolores Park"、落ち着いたハウス・ビートと共に素朴な鍵盤音に優しく癒やされる"Frankfurt"と、しっとりと繊細なメランコリーが通底している。"Dublin"ではビートレスな構成に愛くるしいメロディーの鍵盤ワークでアンビエント性を披露し、"Rue De Bagnolet"でヒスノイズ混じりのアンビエント×エレクトロニカを、そして最後の"Hemma"ではドリーミーなダウンテンポによって旅の終着点となる家(Hemmaはスウェーデン語でHome)へと帰着したのだろうか。各曲は短く全体で15分と随分コンパクトな作品だが、逆にそのおかげで全体を通して一つの流れとなるような正に感覚があり、Hnnyらしい繊細でメランコリーなサウンド・スケープを体験出来るだろう。



Check Hnny
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 11:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Seb Wildblood - Sketches Of Transition (All My Thoughts:AMT010)
Seb Wildblood - Sketches Of Transition
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テクノ/ハウスの境界を越えていくモダンなChurchにAll My ThoughtsとCoastal Hazeと、3つの勢いを増す注目すべきレーベルを並行して運営するSeb Wildbloodは、音楽への審美眼を含めてA&Rとしての才能は疑うべくもない。では自身をプロデュースする手腕について、つまりは自身のアーティスト性の確立についてはどうだろうか。勿論その才能についてもまごうことなきもので、目下最新EPである『Grab The Wheel』(過去レビュー)では彼らしいバレアリックやアンビエントの感覚に、テクノやエレクトロの要素を加えてダンスな性質を強めた方向性も見せて、現在もアーティストとして進化中である事を示していた。そして4枚目となるこのニューアルバム、決してダンスではないとは言わないがリスニング志向が強く、そして何よりも多彩なリズム感とムードによる音楽性の拡張を果たしつつ温かみのあるオーガニック性や純朴なバレアリック性が通底している。チャカポコとした抜けの良いパーカッションと切ないシンセのメロディーが印象的な生っぽくスローモーなハウスの"Sketches"で始まり、ディレイをかけたギターや生っぽいベースを用いて広大な開放感を感じさせるダウンテンポの"Twenty Eight"、繊細ながらも耽美なエレピや甘ったるく気怠い歌が陶酔させられざっくりとしなやかなにうねるリズムを刻むネオ・ソウルの"Thought For Food"と、アルバム冒頭3曲からしてまったりメランコリーな雰囲気が充満している。"Small Talk"はアルバムの中では比較的一般的なディープ・ハウス色が強く、すっきり端正なグルーヴと透明感のあるパッドや電子音によって、快適な浮遊感に包まれながら優雅さに酔いしれるだろう。また力が抜けて気怠い歌とポップなサウンドで懐かしさを呼び覚ますシンセ・ポップ/ニューウェーブ寄りの"Amelia"、電子音が抽象的に揺れ動き空間を満たしながら微睡み状態が続くビートレスなアンビエントの"One For Malcolm"まで、アルバムには実に様々な要素が混在しながらバレアリックなムードで統一されている。パーティーの派手派手しい華やかさや喧騒とは無縁で決して熱狂的な興奮を呼び起こすような音楽ではないが、心の中からしみじみとしたメランコリーを呼び覚まし現実ではない何処かへ連れて行ってくれるこの音楽は、安らぎを提供するセンチメンタル・ドリームだ。10曲で40分とコンパクトな構成ながらも、逆にすっきり気軽に聞けてリラクゼーションにも最適である。



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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Hidden Spheres Ft Oscar Jerome - Words Can't Explain (Church:CHURCH014)
Hidden Spheres Ft Oscar Jerome - Words Cant Explain
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Seb Wildblood率いるロンドンのChurch、テクノ/ハウスのみならずジャズやダウンテンポと手を広げて面白い作品をリリースする近年注目すべきレーベルで、そこからの新作もジャズからの影響が滲むハウス作で興味深い。手掛けているのはRhythm Section InternationalやMoods & Groovesからも作品をリリースしているTom HarrisことHidden Spheresで、そういったレーベルからの曲もベースは勿論ハウスながらもジャズの要素を散りばめて艶かしく情緒豊かな作品をリリースしており、本作でもその流れは更に強まっている。ロンドンのジャズ・グループであるKokorokoからOscar Jeromeをフィーチャーしている事からもジャズへの傾倒は感じ取れるだろうが、実際に"Words Can't Explain"は湿っぽく仄かにエモーショナルなフェンダー・ローズや大人びてソウルフルな歌が洗練されたニュージャズの延長線上にあり、小気味良いブロークン・ビーツ調なドラムに生き生きとしたシンセ・ベースやギターが躍動を生み出して、実に耳を惹き付けるアーバンでモダンなハウスだ。甘く感情を吐露する歌が入っているバージョンも良いが、"Words Can't Explain (Dub)"のインスト・バージョンの方を聞いてみると、より黒い音楽性の強いハウス/ディスコのミックスの流れの中に違和感無く組み込まれるように思われる。そして本作で特筆すべきはSecond CircleやArcaneからのエクスペリメンタルかつバレアリックな作品で一躍注目を集めている中国生まれのYu Suがリミックスを提供している事で、寧ろこのYu Suの名があったからこそ購入したようなものだ。ここでの"Words Can't Explain (Yu Su Remix)"は奇を衒う事はなく原曲を尊重してジャジーな雰囲気は残しつつも、ざっくりロウな響きのリズムがクラブ・ミュージック色を増して軽くも弾けるグルーヴ感を獲得している。元のしなやかなジャジー・グルーヴではなく直線的で4つ打ちへと接近し、全体をエレクトロニックな質感で滑らかに染め直して、一見クールなテクノ/ハウスながらもローファイ感が微熱を感じさせる点はYu Suらしい。



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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |