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Soulphiction - 24/7 Love Affair (Local Talk:LTLP010)
Soulphiction - 24/7 Love Affair
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デトロイトやシカゴの影響も匂わせ、スモーキーで訝しいディスコティックにモダンなミニマル性も込めて良質なディープ・ハウスを量産していたPhilpot。その主宰者であるMichel Baumann、またの名をSoulphiction/Jackmateとも名乗るDJ/アーティストも、PampaやSonar KollektivのみならずPerlonやPlayhouseからもリリース歴がある事からも分かる通り、やはりブラック・ミュージックを下地にした艶かしくファンキーな響きを打ち出しているが、DJツールとしての洗練された機能性も持ち合わせた音楽性が特徴だ。そんな彼も常にフロア適応型のEPはリリースしていたものの、アルバムは2008年の『Do You Overstand?!』(過去レビュー)から音沙汰無しの状態が続いていた。しかし2019年の暮れ、なんと11年ぶりとなるアルバムがLocal Talkからリリースされた事には驚いたが、様々なブラック・ミュージックを咀嚼したクロスオーバーな音楽性を持つレーベルだからこそ、Soulphictionの音楽性と共鳴するのも自然の流れだったのだろう。さて、アナログでは3枚に分かれていた作品を配信で纏めたアルバムなのでボリュームもたっぷりなので、音楽性も今まで以上に豊かに色々な要素を含んでいる。出だしの"U'll Like It"からして過去のKDJの作風まんまな煙たくサイケデリックなビートダウン・ハウスで、そのインスパイア具合には苦笑しつつもファンキーなサンプリング使いには、有無を言わせない説得力がある。対して金属のロウな響きがスリージーで冷淡でミニマルな"Luv Yaselves"はセオパリ影響下と思われ、微かに官能性はありつつも淡々としたヒプノティックな曲は機能的だ。しかし"Jus Listen"では柔軟なリズム感のブロークン・ビーツ風で、清涼なコーラスと耽美な鍵盤使いにうっとり陶酔し、フロアの闇から光の射す方へ向かっていくようだ。そしてタイトル曲の"24/7 Love Affair"、こちらはズンズンと重く太いキックを活かしたディスコ・ハウスだが、暗闇の中にひっそりと耽美なエレピサンプル等を配して、深い黒さから官能が浮かび上がる。また"The Mood"もディスコな作風だが、ざらついて荒々しいドラムのリズムとうねるチョッパーベースが生臭くファンキーで、そこに人間臭いソウルネスを感じずにはいられない。ブラック・ミュージックの流れでざっくり生っぽいリズムがヒップ・ホップでメロウに染みる"Goodnite Ema"もあれば、シカゴ・ハウスにも似たスカスカで安っぽいリズムが逆にファンキーな味わいを生む"Raw Track"もあるが、異色なのは"French Kiss"の派生とも呼べる"Beehive (HiPhife Mix)"で、アルバムの中で最もテクノのヒプノティックな快楽性がありフロアを高揚へと包み込む事は間違いないだろう。単なるハウス・ミュージックではない、その殻を打ち破りつつもSoulphiction流のブラック・ミュージックを体現したバラエティーにも富んでおり、80分越えのボリュームながらも飽きずに楽しませてくれるファンキーでエモーショナルなアルバム。尚、最近では毛並みの異なるJackmate名義も復活させており、そちらではよりユニークな音楽性を発揮している。



Check Soulphiction
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 12:00 | comments(0) | - | |
DJ Mitsu The Beats - All This Love (Jazzy Sport:ZLCP-370)
DJ Mitsu The Beats - All This Love
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ヒップホップのDJ/ビートメイカーであるDJ Mitsu The Beatsは、またヒップホップのトリオであるGagleの一員としてそちらではより鋭利なビートが効いたトラックを制作するアーティストであるが、ソロ活動に於いては勿論そういったビート中心の制作も行うがどちらかというとメロウなジャジー・ヒップホップの活動が特に注目を集めているように思われる。ここ数年は前述のGagleのエッジのあるヒップ・ホップなアルバムや、ソロ活動に於いてもビートに主軸としていたのだが、やはりシンガーとコラボしてR&Bやソウルを下敷きにしたメロウな作風でヒップホップの枠組みを越えていく音楽性が魅力的なのであり、その意味ではこの久しぶりのソロアルバムは歌とインストによるジャズやコンテンポラリー・ミュージックにネオソウルといった要素も聞けるアルバムでファンの期待に応える秀作だ。本作ではMarter、Mahya、Akiko Togo、Naoko Sakaiの4人のシンガーと、そして演奏者ではMark De Clive-LoweとCro-magnonのキーボーディストである金子巧が参加しており、以前にも増してしっとりとした艶めかしい情緒が印象的だ。Marterが参加した"Togetherness"では落ち着いた華やかさを放つエレピとしっとりしたベースにねっとりしたダウンテンポのリズムのトラックに、枯れた味わいのある声で希望を謳い上げ、アルバム冒頭から期待通りのメロウネスに満たされる。続くインストの"Mellow Curves"はフェンダー・ローズの湿っぽく優美なコードが印象的なジャジー・ヒップホップで、展開を抑えたビートの上で鍵盤が切ない感情を吐露するように引っ張っていく。Mahyaをフィーチャーした"You Are Mine"でもゆっくりと滴り落ちるようなピアノが情緒的だが、やはり愛らしく甘い歌が加わる事でR&Bやソウルといった趣きが強くなり、リズムは軽やかで心地好いがねっとり甘い世界観にうっとりとさせられる。一方でMark De Clive-Loweが参加した"Slalom"は軽快に響くアフリカンなパーカッションと走るハウスの4つ打ちに合わせて感情性豊かなエレピソロも躍動感に溢れており、そして金子が鍵盤を弾く"Intimate Affairs"はメロウに揺らめく情緒的なエレピに4つ打ち合わせおり、どちらも一見ハウス・ミュージックなのだがジャズが根底に感じられる共通点がある。目玉はJose Jamesをフィーチャーした10年前の名曲である"Promise In Love"のリミックスで、原曲の陽気なトランペットを抑えつつざっくり生々しいビートとピアノの艷やかな響きを前面に出した事で、情緒を残しながらもすっきり研ぎ澄まされたソウルとジャズとヒップホップの混合が聞ける。徹頭徹尾、間違いなくDJ Mitsu The Beatsのメロウと呼ばれる性質が横たわるアルバムで、最早ヒップホップだとかジャズだとかジャンルを区分けする必要もなく、その湿り気を帯びたメロウネスにこれでもかと浸れる世界観はアダルトな円熟味に溢れている。



Check DJ Mitsu The Beats
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 12:00 | comments(0) | - | |
Jazz N Palms - Jazz N Palms 01 (Jazz N Palms:JNP01)
Jazz N Palms - Jazz N Palms 01

突如届いたJazz N Palmsなるプロジェクトの一枚のEPが、しかし何も情報が無いにもかかわらず一回試聴しただけで耳を魅了し、即座に購入を決意させられてしまった。レコードの盤面にもクレジットも無いため全くこのプロジェクトについて分からないのだが、ウェブに散見される情報を集めた限りでは、イビサのPikes Hotelで開催されているRonnie Scott'sのライブ公演のウォームアップを務めているようで、Hell Yeah Recordings等からも作品をリリースするRiccioが絡んでいるようだ。ラテンやファンクにロックが一つとなった音楽は正にフュージョンで、イビサの自然溢れる長閑で穏やかな日常を映し出しているような、リゾート感がありながらも享楽とは無縁な大人びた音楽は注目の的だ。出だしの"Coastal Highways"はスティールパンの優しく爽やかな響きが行きたジャズ・フュージョンで、軽やかにスウィングするリズムに哀愁のなギターや艶めかしいベースなど生音中心に、徐々に感情の昂ぶりを誘うように熱狂的な流れも見せる。"Going East"は躍動するオルガンとムーディーなギターカッティングを軸に、ラテンなグルーヴで飲み込んでいく情熱的なジャズ・ファンクで、ホテルのラウンジで客もフロアで踊り出す光景を換気させる。バレアリック側からお勧めなのは"Chira"だろうか、軽いパーカッションを用いた緩やかなリズムに透明感のあるシンセやエレピを重ねて優雅さを演出しており、青空の下で長閑な海原の航海へと出発するようなイージーリスニングで快適さは抜群。アフロ・キューバンな"1492"は大胆に静と動が切り替わり躍動するドラム・パーカッションが印象的で、そこに艷やかなギターや官能的な管楽器が彩っていく熱量の高い情熱的な曲で、特にライブ感溢れる一曲だろう。それに対し"St. Martin"はフラメンコ・ギターが清涼感いっぱいに響き渡り、爽快で軽く疾走するドラムのリズムも相まって、開放感溢れる屋外で太陽を全身で浴びるような喜びに満ち溢れている。僅か6曲、全く未知のアーティストのEPながらもその存在感とインパクトは十分で、ホテルのプールサイドで演奏されたものが発展したこのEPは確かにトロピカルでラグジュアリーでもあり、イビサの京楽的なクラブからは離れたまた異なるイビサの一面を映し出している。とても素晴らしいEPなのだが、ヴァイナルオンリーであるので気になる人は早めに入手を。



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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 10:00 | comments(0) | - | |
Fred P. - Reaching For The Stars (Neroli:NERO 046)
Fred P - Reaching For The Stars

イタリアのNeroliはハウスを基軸にしつつブロークン・ビーツやネオソウルにテクノまで、いうなればクロスオーバーな音楽性を2000年代序盤から先取りしているレーベルで、エレクトロニックとオーガニックを匠に共存させながら非常に優雅な世界観を持っている。多種多様なアーティストがカタログに名を連ねており、非常に豊かな音楽性を持っているが、しかしまさかUSの人気絶頂にあるテック・ハウサーのBlack Jazz ConsortiumやFP-Onerなど複数の名義を持つFred.Pがそこに加わるとは、予想だに出来なかった。確かにFred P.は深遠なるディープ・ハウスから壮大なテック・ハウスに、またはジャジーな要素に瞑想的なアンビエントまで正にクロスオーバーという点においてはNeroliとの親和性が無いわけではないのだが、それでも同レーベルの他のアーティストに比べるとやはりテクノ/ハウス色が強く毛並みが違っていたように思われる。しかしそこは流石Fred P.でNeroliというレーベルを意識した作風でレーベルカラーに寄せてきたEPになっており、DJとしての腕は勿論作曲者としても非常に優れた才能を発揮している。タイトル曲の"Reaching For The Stars"は正にタイトル通りに星へと接近するような叙情的なテック・ハウスで、幻想的なパッドを配した上に踊るように躍動する流麗なシンセソロを被せて宇宙の中に溶けてしまうようなドリーミーさがあるが、しかしリズムは崩れたブロークン・ビーツでしやかに疾走感のあるグルーヴを生み出しており、ハイテック・フュージョンと呼びたくなるフロアでも圧倒的な感動を呼び起こす曲だ。"Moonlight"の方がよりレーベルカラーを表現しており、生音風のドラムマシンによるジャズ調のリズムを下地に耽美で繊細なエレピと流麗なストリングスを用いて、迫力のあるビート感を叩き出しつつも非常に優雅なアンビエンスで包み込むなど、過去の『Sound Destination』(過去レビュー)上にある作風だ。"Riverside Drive"も非4つ打ちのブロークン・ビーツ寄りだがそれよりは荒々しく太いグルーヴ感があり、なのに上モノはエモーショナルなパッドと優美なピアノが溶け合うようにアンビエンスを作り出しており、激しさと静謐さという対照的な性質が同居している。"Moonlight"と同様に"New Ways"もレーベルカラーに寄せた作風で、生音強めでざっくりジャジーなリズムにエレピを大胆に用いたメロウかつエモーショナルな曲はフュージョン・ハウスと呼ぶべきか、DJツールではなくただ単一の曲としても魅力を発揮する。Neroliというレーベルのクロスオーバーな雰囲気を尊重しつつ、Fred P.らしくフロアに寄り添いつつエモーショナル性があり、相変わらずの安定感で見事な一枚だ。



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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 12:00 | comments(0) | - | |
Gianni Gebbia - Gianni Gebbia (Utopia Originals:UTO002)
Gianni Gebbia - Gianni Gebbia

現代的なクラブ・ミュージックにホームリスニング、そして気鋭の新人アーティストから世に知られていない秘蔵音源の再発まで、ジャンルに束縛されずに様々な音楽を手掛けるUKのUtopia Recordsは、多様性が重視される今という時代のために生まれたようなレーベルだ。そんなレーベルが新たに立ち上げたUtopia Originalsは特に貴重で入手が難しい音源の復刻を目的としているそうで、第一弾にはニューエイジ再燃の現在に最適なIury Lechによる1989年のデビューアルバムである『Otra Rumorosa Superficie』(過去レビュー)を取り上げていたが、第二弾も1987年のGianni Gebbiaによる同じようにオブスキュアなデビューアルバムを発掘している。Gebbiaはシチリア島パレルモ出身のサックス奏者で、70年代に独学でジャズを習得し伝統的な音楽と実験的な音楽を結んだ活動を行っていたようで、初めて完成させた作品が本作だ。何か特定のジャンルに当てはめるとしたらコンテンポラリー・ジャズという事になるのだろうが、ニューエイジやアンビエントに現代音楽のミニマルといった性質も感じ取る事が出来て、その意味ではこのタイミングでの再発はジャストという他にないだろう。一部の曲では打楽器や鍵盤で他のアーティストも参加しているが、大半はGebbiaによるサックスとシンセの多重録音で成り立っており、即興性が強いながらもそれがより感情性を強めて非常に綺麗なロマンティシズムを奏ででいる。アルバムの開始は、今で言うドローンの和んだ持続から始まり一日の始まりを告げるような爽やかなサックスの旋律が高らかに響く"Osso Di Seppia"、平穏な日常の時間が過ぎるように穏やかな響きはアンビエント的でもあり、心が洗われる。"Le Cou Oblique"では打楽器奏者が参加しており軽やかな太鼓の音が爽やかな風を吹き込み、しかしそこに加わるのはサックスの多重録音のみで、原始的なリズム主体の曲は現代ミニマル的でもある。"Danza Contrariusa"ではサックス(ソプラノ/アルト/バリトン)を使い分けて、それぞれがリズムと旋律を担当してサックスのみでミニマル×即興のジャズを生み出している。一方で清らかで透明感のあるシンセのミニマルなフレーズを用いた"Cud"は、そこに自由に舞うジャズのサックスを合わせてはいるものの、シンセの終わりの無い反復が心地好くニューエイジ的な作風に繋がっている。同様にシンセが存在感を示す"Vedersi Passare Le Cose Attorno"はしかしどんより曇ったドローンが満ちた感覚がアンビエントに思われ、そこに内向的なサックスが湿り気を帯びた叙情性を加えていき、決して明るいムードではないものの昼下がりの白昼夢を誘う。30年も前の作品だと言うのに全く古ぼけた感覚は無く、これが逆に現代のアンビエント/ニューエイジに馴染んでいるのは不思議だが、忙しない日常を忘れさせてくれる牧歌的な世界観はBGMとしても最適だろう。素晴らしい再発に、今後もUtopia Originalsの動向から目が離せない。



Check Gianni Gebbia
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 20:30 | comments(0) | - | |
Yadava - Earth Tones (Omena:OM026)
Yadava - Earth Tones
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(コンピレーションEPには2016年頃から名があるものの)ソロ作品としては2018年にChurchからいきなりアルバムデビューを果たして注目を集めたYadava、UKはマンチェスターで活動するDJでありラジオのホストも務めるこのアーティストが、2019年にはOmenaからミニアルバムもリリースしている。ChurchとOmenaの両者は、クラブミュージックにアンテナを張っている人であれば現在のシーンで注視すべき存在である事は当然理解しているだろうが、共通するのはハウスミュージックを軸にしながらもジャズやダウンテンポにアンビエントなど境界を越えていく豊かなクロスオーヴァーなレーベル性があり、だからこそどちらのレーベルにもベテランよりは可能性を秘めた多様な若手アーティストが集まっている。Yadavaもそんなレーベルの音楽性を主張するように、ハウスが真ん中にはありながらもジャズやファンクといった生演奏の感覚を前面に打ち出した音楽性を持っており、この新作でもその才能を遺憾なく発揮している。繊細で優美な鍵盤と弾けるように爽快なパーカッションから始まる"Tides"、バックには波の音も混ぜつつざっくりとした生っぽいリズムを響かせブロークン・ビーツ調の曲だが、中盤以降ではブルージーなソロ演奏も加わると途端にファンクっぽさが強くなる。"Good Mourning"も耽美なエレピや艶のあるベースのオーガニックな展開で始まり、こちらは4つ打ちを基調としながらも、様々なオルガンや金管楽器等の生っぽい音も合わせて非常にライブ感溢れるハウスを聞かせる。自由な演奏でインプロビゼーション的に始まる"Ixelles '42"はジャズのモードと土着的な雰囲気があり、ホーンや鍵盤で情緒的なエモーショナル性を強く感じさせるメロディー、そして繊細で小刻みなリズム感が心地好く酔わせる。"Hiro's Cosmos"は朗らかな笛と可愛らしいピアノに先導されるジャジー・ハウスだが、ミニマルなエレクトロニクスの旋律が多幸感を生み、生音と電子音を巧みに用いてモダンなダンス・ミュージックへと昇華させている。そしてしなやかに躍動するリズムを刻み黒っぽく艶めかしいベースとファンキーな歌によるジャズ×ブロークン・ビーツ調の"Message From The Poets"、最後は乾いたパーカッションと生っぽい音を優しく用いて夜のしっとりした煌めきを演出する穏やかなディープ・ハウスの"Earth Tones"と、僅か6曲ではあるものの正にOmenaのレーベル性に沿ったジャズの要素たっぷりな新星らしくフレッシュながらも大人びた内容だ。クラブで映えるのは当然として、家でじっくりと耳を傾けてもそのエレガントな響きにうっとり陶酔してしまう。



Check Yadava
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 21:30 | comments(0) | - | |
HNNY - Music Is Nice (Omena:OM028)
HNNY - Music Is Nice

Rhythm Section InternationalやLocal Talkなど一部のレーベルにおいてジャズをハウスのフォーマットに落とし込んだクロスオーヴァーな音楽性が盛り上がっているように感じられる近年、同様の流れはスウェーデンのOmenaにおいても顕著だ。前述の音楽性のみならずダウンテンポやニューディスコまでと幅は実に広く多様なアーティストがカタログに名を連ねるが、同レーベルの初めての作品はJohan CederbergことHnnyで、このアーティストもレーベルの多様性を示す存在だ。2019年には色々なジャンルが同居した『2014.12.31』(過去レビュー)をリリースしメランコリーな世界観でリスナーを魅了したが、それから間を空けずにリリースされたのが本作で、何でも2013年に制作されていたお蔵入り音源だそうだ。レコードだとA面には7曲収録されており、ゆったりとしながらもサンプリングを用いたビート感とネオソウルな雰囲気のあるしっとりメロウな"Hej"に始まり、フルートやストリングスに生音強いリズムを用いて優美なジャズを聞かせる歌モノの"So Good"、そして気怠い甘さが白昼夢に浸らせるインタールード的な短いダウンテンポの"Lyn"と、序盤から前作以上にメランコリー一色で小洒落たカフェのBGM的な落ち着いた音楽性だ。"Meandyou"はヒップ・ホップ色の強いリズムを用いながらも気怠い歌と繊細なエレピやキーボードで優しく包み込むダウンテンポで、そしてスペーシーな電子音響やストリングスを合わせて浮遊感のあるドリーミーなダウンテンポに仕立てた"ILY"と、どの曲も温かい温度感としっとりした湿度感があり、サンプリング重視な音楽性ながらも非常に人間の血が通ったような風合いだ。そしてB面は1曲だけながらも11分にも及ぶ"You Be Good, See You Tomorrow"が収録されており、こちらはか弱くも優美なピアノが繊細な装飾を行い静かなジャズ・ドラムと相まって、全く変化の無いループ構成ながらもレイドバックした雰囲気がたまらない。全体的に短い曲が多い事もあってか断片的でラフスケッチな印象もあるEPだが、このオーガニックで人肌を感じるメランコリーは昼下がりの午後3時の眠気が強くなる時間帯にもぴったりだ。



Check Hnny
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 13:30 | comments(0) | - | |
Black Jazz Consortium - Evolution of Light (Perpetual Sound:PS003)
Black Jazz Consortium - Evolution of Light
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AnomalyやFP-OnerにFP197など複数名義を用いて活動している人気絶頂のテック・ハウサーのFred P.ことFred Peterkin、その中でも特に古くから続く名義がBlack Jazz Consortiumだ。レーベルとしても現在は停止したSoul People Musicに始まり、BoardsやEnergy Of Sound、そして最新のPerpetual Soundまで活動の幅は広く、その名義やレーベル毎に明確な音楽性の違いはリスナー側からは区別はつかないものの、一点最近の傾向を挙げるとすれば生音志向が明確に打ち出されていた。例えば2017年の『Sound Destination』(過去レビュー)ではアンビエント性の強いフューチャー・ジャズと呼べる音楽性で、有機的な響きを強めてより叙情性を増した作風で新機軸を展開したが、この復活したBJCのアルバムはブラジルのアーティストや歌手をフィーチャーする事で、更にラテンやブラジル音楽の性質が前面に出たテック・ハウス/ディープ・ハウスとなっている。曲名が示す通りに祝祭感のある"More Blessings"は、鳥の囀りのアンビエントに切ないアコギの旋律、神々しく清楚なコーラスが幻想の世界を広げ、キックが入ってくると浮遊感のある有機的なテック・ハウスと化して、至福の高みへと上り詰める。"Another Path"も同様にブラジリアンなパーカッションやドラムのリズムが柔軟に弾け、美しいFred P.らしいシンセのメロディーや温かみのあるアコギやソウルフルなコーラスワークが一体となり、エモーショナル性抜群のテック・ハウスだ。"Sacred Sun"はもはやフュージョン・ハウスと呼ぶべきか、複雑でオーガニックなリズムの上に美しいシンセのコードと鍵盤ソロや朗らかなアコギの旋律、そこに爽やかで甘い歌も合わせて、太陽の光の下で笑顔に包まれる幸福感だ。ブラジリアンな複雑なリズムを刻むドラムが特徴の"Soul People For Life"では渋いオルガンやピアノのプレイと相まって、ラテンなファンキーさも滲むライブ感のあるディープ・ハウスとなっている。後半にはFred P.が得意とする疾走感に乗って叙情性に包まれるテック・ハウスが並んでおり、繊細で耽美なエレピと甘い女性の呟きにうっとりさせられる幻想の"Energies Collide"、ズンドコとパーカッシヴに跳ねるグルーヴと透明感のある女性の呟きと神聖なパッドのコード展開がスピリチュアル性を生む"Focus"、力強いビート感と男性の感情性爆発な歌に引っ張られてポジティブな高揚感に満たされる"Love Alliance"と、ここら辺の曲はリスナーを感動に包み込みながらフロアを絶対的な幸福圏へと引っ張り上げるに違いない。ジャズやファンクのオーガニックで人肌の温もりが伝わる響き、そこに従来のFred P.らしいテッキーなダンス性を融合させた、正に言葉通りにフュージョンな新局面へと至るこのアルバムは、2019年のベストな一枚にも挙げるべき名作である。まだまだFred P.の快進撃は止まりそうにもない。



Check Fred P.
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 13:00 | comments(0) | - | |
Marcos Valle - Sempre (Far Out Recordings:FARO211CD)
Marcos Valle - Sempre
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9年ぶりのアルバムという事でちょっとした話題になっているみたいなMarcos Valleの新作。普段クラブ・ミュージック中心に聞く筆者にとっては余り縁の無さそうなアーティストだが、2015年には"1985"をTheo Parrishがリミックスをして話題になっていた事もあり、この新作も軽く試聴してみたところアーバンかつブギーなディスコ/ラテンな作風が直ぐに耳に馴染んだので購入した次第。Valleは60年代から活動するブラジルのアーティストで、ボサノヴァから始まりMPBにディスコ、そしてジャズやファンクにAORやソウルと様々な要素を咀嚼する事で結果的に時代に適合しながら生き抜いてきているように思われるが、過去の作品を聞いてみるとどの時代にもポップなソングライティングが発揮されておりその音は実に懐っこい。そして注目すべきは90年代後半以降はダンス系のブラジリアン・ミュージックでは筆頭格のFar Out Recordingsから作品をリリースしている事で、その点からも少なからずクラブ・ミュージック的な方面からも違和感無く聞けるダンスなグルーヴ感も存在しており、クロスオーヴァー性はここでも発揮されている。そこからのこの新作、Pat Metheny Groupに参加していたパーカッショニストのArmando Marcal、Azymuthのベースプレイヤーとして活動していたAlex Malheirosといった様々なアーティストが参加しているが、特筆すべきはIncognitoのリーダーであるJean-paul Maunickの息子であり、ハウス・ミュージックのアーティストであるDokta VenomことDaniel Maunickがプロデュース&プログラミングを担当しており、その影響として大きくブギー&ディスコな性質が打ち出されている事だ。冒頭の"Olha Quem Ta Chegando"からいきなりファンキーなギターカッティングにトランペットの情熱的な響きが聞こえ、ドタドタとした生っぽいドラムが躍動するディスコな曲で、しかし熱くなり過ぎずにサマーブリーズな爽快な涼風が舞い込んでくる。"Odisseia"では実際に生ドラムを用いた臨場感あるリズムに豊潤なフュージョン風のシンセや甘美なエレピを重ねて、派手さのあるラテンファンクかつサンバながらも哀愁も込み上げる切ない一曲。バラード風なスローテンポの"Alma"では光沢感のある優雅なシンセやしみったれたギターメロディーが活きており、AORで大人のアーバンな雰囲気には余裕たっぷりな円熟味が。そして再びディスコ・ファンクな"Vou Amanha Saber"、ズンズンと力強い生ドラムがリズムを刻み、ギターやベースがうねりつつ豪華さを彩るホーンが響き渡る、陽気さに溢れ肉体感を伴う熱いダンス・ミュージックを聞かせる。音楽的な新しさは皆無ではあるものの色々なスタイルが元からそのままであるように馴染みながら、エネルギッシュに脈動するダンスからしっとりと聞かせるリスニングまで丁寧なソングライティングが耳馴染みよく、取り敢えず老獪なベテランに任せておけばOKみたいな安心感のあるアルバム。真夏は過ぎてしまったけど、蒸し暑い時期にも体感温度を下げる爽やかなブラジリアン・フレーバーが吹き込んでくる。



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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Aura Safari - Aura Safari (Church:CHURCH017)
Aura Safari - Aura Safari
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All My ThoughtsとCoastal HazeとUKのモダンなダンス・ミュージックの界隈で注目を集めるレーベルを主宰するSeb Wildblood、その彼がまた別に主宰しているChurchはテクノやハウスのみならずジャズやクロス・オーヴァーな方向にも振れて、現在特に面白いレーベルの一つになっている。そのようにここ数年ロンドン界隈では、ディープ・ハウスにジャズの要素を盛り込んだ音楽がまた再燃してきているように感じられるが、このChurchから突如デビューしたAura Safariなるバンドのアルバムは特に出来が良い。このイタリアの5人組バンドについて詳しい情報は持ち合わせいないものの、メンバーにはQuintessentialsや4 Lux等のレーベルでも活躍するディープ・ハウス系DJのNicholasも含まれており、もしかしたらそれぞれがキャリアのあるDJやミュージシャンなのだろうか。5人ものメンバーがいる影響か音楽性もディープ・ハウスにジャズ、バレアリックやファンクにブギー等正に多様にクロス・オーヴァーする内容で、それが上手く一つの世界観に纏められている。オープニングのエレピにしんみり切ない気持ちにされられる"Music For The Smoking Room"、トロピカルで快活なパーカッションと肉感的なベースも用いたフュージョン風の曲を聞けば、おおよそAura Safariの音楽性は理解出来るだろう。"Sahara"はハイハットが効いた複雑なリズムや生々しいベースによってジャズやフュージョンへとより傾倒しており、柔軟でしなやかなグルーヴやベースや鍵盤のセッション性の強い演奏はライブ感に溢れている。タイトル通りにインタールードの"Albaia Interlude"でもトランペットやエレピの情緒的な響きが深いメロウネスを奏でているが、それ以上にスモーキーな音像は例えばデトロイトのディープ・ハウス系のDJがルーツへと取り組んだような雰囲気も。同じジャジーな作風でも"The Lost Reel"はもっと視界が開けて青空が広がるバレアリックな爽快感があり、一転安定した4つ打ちを刻む"Saturn and Calypso"は乾いたパーカッションによるラテンフレーバーに陽気なブギー感覚があり、一曲一曲に個性が込められている。"Midnight Discipline"は特に打ち込みのリズムを活かしたディープ・ハウス調で、力強いビート感はクラブ寄りだがそこに艶めかしいサックスとしっとりしたエレピを被せて、程好くクラブ・ミュージックと親和性のあるジャズ・ハウスになっている。リリース元のレーベルがChurchという事もあり、ジャズやフュージョンに振り切れるのではなくハウス・ミュージック等の融和を軸にしており、ジャズ等を普段聞かない人達にとっても垣根を壊して興味を抱かせるには十分な内容であろう。Aura Safariの音楽によってリスナー側にとっても、分断されていた層がクロス・オーヴァーさせられるようだ。



Check Aura Safari
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 10:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |