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Karim Sahraoui - Faith (Blue Arts Music:BAMCD008)
Karim Sahraoui - Faith
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2019〜2020年にかけて精力的をリリースを行ってきた福岡を拠点とするBlue Arts Music。特にデトロイト・テクノ、またはそれに影響を受けたアーティストにフォーカスし、EP主体のこの業界に於いて積極的にアルバムを手掛ける事はそれだけで評価すべき事だ。そんな一連の作品の一つが本作、かつてはDjinxxやElectronic Resistanceとして活動していたフランスのKarim Sahraouiによる初のアルバムだ。一時はこの業界に失望し身を引いていた彼が、しかしTransmatに手を差し伸べられ復活するとそれを機に積極的に音楽活動を行うようになり、今ではデトロイト・フォロワー系の中では特に高い評価を獲得するにまで至っている。さて、この名義では初となるアルバムだが、おおよそファンの期待を裏切らない直球エモーショナルなデトロイト影響下のテクノが軸となっているが、単にフロア機能性重視やツール向けとはならずにアルバムという形態を活かして豊かな要素を取り込んでリスニングとしても最適な内容だ。"Ready (Theme)"はオーロラのような美しい重層的なシンセのシーケンスによってじわじわと盛り上がっていくビートレスな作風で、アンビエントな雰囲気も纏わせながらこの先のドラマ性を予感させ、オープニングに相応しい曲だ。続く"Holy Jazz"はその曲名が示唆するように跳ねるような複雑なジャジーなリズムが印象的で、シンセベースやヒプノティックなシンセも細かく配置され、非常に躍動感に満ちたファンキーさとエモーショナル性が融合した曲だ。"Brotherhood"は某大物DJもリリース前からプレイしていたそうで、9分にも及ぶこの曲はアルバムの中ではかなりダンスフロアを意識した曲だ。序盤はパーカッシヴ性の強い4つ打ちで引っ張りつつ少しずつ幻想的なシンセが浮かび上がり、遂に熱き感情が迸るピアノコードも加わってくると完全にデトロイトのテクノソウルが出現するなど、特にSahraouiのエモーショナル性が顕著に現れた曲で、間違いなくフロアを感動と興奮に包み込むだろう。そういった曲も素晴らしいが、荒々しくも変則ダウンテンポのリズムの中でしっとり情緒的なピアノや切ないピアノでぐっと感傷的に染め上げる"Out Of Confusion"や、ブロークン・ビーツを意識してしなやかなリズムを刻みつつ激情を込めたピアノが熱く唸り声を上げる"Jericho"など、普段の4つ打ちから外れた曲はアルバムにおいて多様性を含む事となりSahraouiが才能あるアーティストである事を証明している。途中色々な作風で豊かなエモーションを披露して盛り上がり、そしてラストは実にジャジーで大人っぽい円熟味で包み込む"The Plaza (outro)"で締め括るなど、アルバムの起承転結な流れも上手く考えられている。デトロイト・テクノが好きな人にとっては間違いないが、テクノやハウスのみならずダウンテンポやジャズといった要素もある音楽性で、より広く多くのリスナーの心にエモーショナルなテクノソウルが届く筈だ。



Check Karim Sahraoui
| TECHNO15 | 21:30 | comments(0) | - | |
Susumu Yokota - Cloud Hidden (Lo Recordings:Lo166CD)
Susumu Yokota - Cloud Hidden
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2015年3月に亡くなられた横田進は日本のテクノ創世記の礎となった一人だ。活動が盛んな頃には半年に一枚のペースでアルバムをリリースし、その内容もどんどん変化してアシッドからテクノにハウス、アンビエントやダウンテンポにブレイク・ビーツ、果てはエクスペリメンタルまで、兎に角歩みを止めずに溢れ出すアイデアを即座に作品に投影して自身の唯一無二の世界観を確立していた。そんな音楽に魅了された人は多く、事実ダンス・ミュージックの枠を越えて他のアーティストからも評価されており、日本に於ける電子音楽の伝説的アーティストと呼んでも過言ではない。そんな横田の多大な功績もあってか彼が亡くなって以降は初期のアルバムが複数枚復刻されていたが、本作は復刻ではなく完全なる未発表音源だ。なんでも過去に横田と共作をしたMark BeazleyことRothkoは、2002年作の『The Boy And The Tree』と同時期のラフスケッチが収録されたDATテープを過去に横田から受け取っていたそうで、それをLo Recordingsを主宰するJon Tyeが「横田の作品の精神と遺産に敬意を表して形にした」との事だ。この2002年頃には既に普通のダンス・ミュージックの枠を飛び越えて、ダンスに依存しないエクスペリメンタルな方向へ足を踏み出していた時期で、実際この未発表曲群も最早ダンスフロアとは無縁のイマジネーション溢れる現実と虚構が入り乱れる倒錯の世界のようで、また『The Boy And The Tree』と同様に和的というかオリエンタルな雰囲気も感じられる。夢の中で鐘や弦などの原始的な楽器が鳴り響いているようなエキゾ・トライバルな"Spectrum Of Love"で始まり、寺院のスピリチュアルな雰囲気ながらも迫力あるパーカッションが乱れ打つニューエイジの"Implications Of Karma"、寂れたギターらしき物哀しいメロディーを軸にした怪しげな笛が加わるアブストラクトな"The Reality Of Reincarnation"と、序盤から形容のし難いジャンルながらも横田らしい静謐な美学が光っている。光が放射し圧倒的な眩しさと多幸感に包まれる"Ama and the Mountain"はもう完全にニューエイジそのもので、一方でガムランらしき音とぼんやりとした電子音が揺らぐ"The Seven Secret Sayings of God"はバリ島のガムランのアンビエント化で、この頃はアジア音楽に興味を持っていたのだろうか。ダンス・ミュージックではないものの原始的な胎動が潜み、この世とあの世を行き交うような夢想の世界は霊的で、聞く者を一時の白昼夢へと誘うだろう。また現在盛り上がっているニューエイジ/アンビエントの流れに乗っても違和感無く、横田の早過ぎた傑作と断言したい。



Check Susumu Yokota
| TECHNO15 | 10:30 | comments(0) | - | |
As One - Communion (De:tuned:ASG/DE029)
As One - Communion
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なんと2006年の前作から13年ぶりとなる本アルバムをリリースしたAs One。UK屈指のデトロイト・テクノ信仰者であり、そしてジャズやフュージョンへの造詣も深く、エレクトロニクスとアコースティックを匠に操るKirk Degiorgioが抱える多くのプロジェクトの内の一つでるAs Oneは、90年代初頭のベッドルームに電脳世界を創出するようなインテリジェンス・テクノの代表格だ。事実彼の初期活動においてはB12やPlanet Eからのリリースもあり、正にダンスに依存せずに知的さを感じさせる未来的なテクノ・ソウルがAs Oneの個性であった。本作のリリース元であるDe:tunedは2019年の間はそういった90年代の音楽の名作を10枚の『DE』シリーズで復刻していたのだが、復刻だけに飽き足らずにまさかAs Oneにインテリジェンス・テクノの最新系を表現する場を用意したのだから感心せずにはいられない。As One自体は実は2000年前後においてはブロークン・ビーツやジャズのオーガニック路線へ傾倒していたものの、しかしこの最新作は90年代初頭のファンが最も好むであろうエレクトリック・ソウル路線のテクノを表現しており、特にデトロイト・テクノの影響大なクラシカルなコード展開やシンセサウンドがそこかしこに存在している。始まりの"Absorption Spectra"はまるでオーケストラのような重厚感と華やかさがあるシンセと繊細な電子音が揺らめき、ビートレスな構成もあってアンビエント的だが、SF感のある未来的な感覚がインテリジェンス・テクノと呼ばれる所以だろう。続く"Downburst"は力強く弾けるベースと複雑なブレイク・ビーツに拘りのあるテクノだが、次第に幽玄なパッドも加わると途端に叙情性に包まれて、宇宙空間を遊泳するような感覚に陥る。柔らかくしなやかなビート感に望郷への思いが馳せるようなデトロイト系のパッドを重ねて、慎ましい思慮深いテクノの"Irimias"、そして動きの多い重層的なシンセのメロディーと有機的なブロークン・ビーツを合わせてジャジーな"The Ladder"など、正に初期As Oneの音楽性そのものな曲もある。"Aimpoint"も特に過去のAs Oneの最良の瞬間を思い起こさせる曲で、ジャズの要素もある変則的なリズムに幻夢のように惑わせる浮遊感あるシンセは深いインナートリップを体験させ、強迫的なダンス・グルーヴで踊らせるのではなく想像力を刺激するような瞑想音楽的だ。これらはそれまでのダンスフロアに依存した強烈なグルーヴではなく、4つ打ちを逸脱した自由なリズムと情緒豊かに揺らめくような上モノを用いたテクノで、ダンスとしてではなく電子音楽の無限の可能性を広げる事に寄与している。アルバムの最後も1曲目と同様にビートレスな"Emanation"で、美しいシンセストリングスを軸に夢幻の電子音響で儚さを演出しながら静かにその世界を閉じていき、アルバムの構成/流れも見事でAs Oneの中でも最高傑作と呼んでも過言ではない程だ。激しくタフなツール特化型のテクノが猛威を奮う現在において、再びインテリジェンス・テクノが注目を集めるかどうかはさておき、流行り廃りとは無縁の深遠なる世界が広がる本作はタイムレスだ。



Check Kirk Degiorgio
| TECHNO15 | 17:30 | comments(0) | - | |
Satoshi - Semi-Vintage (Sound Of Speed:SOSR025)
Satoshi - Semi-Vintage

CZ-5000というカシオのレトロなシンセサイザーを用いた音楽がyoutube上で公開されていたのだが、それを目にしたYoung Marcoはその制作者に連絡を取り、結果的にはMarco主宰のSafe Tripから2017年に『CZ-5000 Sounds & Sequences』(過去レビュー)で世界デビューを果たしてしまうとは、きっと本人達もそんな未来は全く予想していなかったに違いない。勿論それは非常にラッキーな事であったのは間違いないが、そんな気運を引き寄せたのは90年代からずっと制作を継続し続けていたSatoshi & Makotoの不屈の意思があったからこそで、そしてCZ-5000への探求が彼等の音楽性を独自なものへと昇華していたからこそだ。新作はそんな二人の内のSatoshiソロとなるEPで、リリースは東京の信頼に足るレーベルであるSoundofspeedからという事もあり、情報公開後からずっと期待して待っていた作品だ。レーベルインフォに依れば過去の作品と同様にCZ-5000をメインに用いて制作されたそうで、ソロとなっても音楽的に大きな差はないだろうのだろうが、前述のアルバムが牧歌的でアンビエントやバレアリックが前面に出ていたのに対し、本作はハウスなリズム感も獲得して少しだけクラブ的な側面も見受けられる。可愛らしいシンセのコード展開と優美に舞うようなシンセの重層的な構成、そして静かに淡々と刻まれるハウスの4つ打ちと、落ち着きのあるダンストラックとしても聞ける"New Dawn"から始まるが、切なさを歌い上げるようなシンセの響きが何だか懐かしくさえあり琴線に触れるメランコリーな世界観だ。"Mabuquiri"では笛を吹くような軽やかなメロディーと軽快なパーカッションが印象的で、キックは入ってないものの動きのあるシンセのおかげもあってビートが感じられて、浮遊感と躍動感を獲得している。"β-Wave"ではぐっと抑えた生っぽいドラムマシンがリズムを刻みダウンテンポ調だが、ここでも艷やかで大らかに包み込むようなシンセがぐっと情緒的に迫り、過去のクールな作風よりぐっと熱量が高まっている。勿論、牧歌的なシンセのシーケンスを活かしてフラットな心地好さが広がっていくドリーミー・アンビエントな"Capricio"は、前のアルバムの路線を踏襲しておりこういった作風も素晴らしい。計5曲のみだが外れ無しの充実したEPは、ややダンスフロアからの影響も意識した面もありつつ、やはり昨今のアンビエントやニューエイジの文脈の中でも輝く音楽性があり、郷愁を呼び起こすエレクトロニック・ミュージックである。



Check Satoshi
| TECHNO15 | 12:00 | comments(0) | - | |
The Orb - Abolition Of The Royal Familia (Cooking Vinyl:COOKCD757)
The Orb - Abolition Of The Royal Familia
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ダンスミュージックという流行の浮き沈みが大きいジャンルにおいて一定した活動を続ける事は容易ではないが、30年以上も活動しながらも常に第一線で活躍し続ける存在が居る。それこそAlex Patersonを中核と成すアンビエント・テクノのオリジネーターであるThe Orbで、今年16枚目だか17枚目だかとなるスタジオ・アルバムである本作をリリースしている。こちらは2018年の『No Sounds Are Out Of Bounds』(過去レビュー)の続編というか兄弟的アルバムで、その為前作の流れから同じようなメンバー、例えば旧友のYouthにRoger Eno、On U-SoundのDavid Harrow、System 7のSteve HillageとMiquette Giraudy、過去にも関わりのあるGaudiが制作に参加しており、そして全面的に作曲に関わり新たなるThe Orbの一員としてエンジニアのMichael Rendallが名を連ねている。アルバムのコンセプトは、18世紀から19世紀にかけてのアヘン戦争に関連した東インド会社をイギリス王室が支持していたことに対する抗議の意味だそうだが、そのコンセプトの有無にかかわらずテクノやハウスにアンビエントからダブやレゲエなどいかにもThe Orbらしい雑食性の強いアルバムは、摩訶不思議な世界を展開する1stアルバムの系譜に属している。オープニングの"Daze"からして心地好い4つ打ちのハウスビートと甘ったるくメロウな歌を活かしたハウス調でいきなりもう脱力させられ、続くHillageがサイケデリックなギターを披露している"House Of Narcotics"も軽快に跳ねる4つ打ちにソウルフルな男性ボーカルが随分とポップな印象だが、アシッド・サウンドをかけ合わせる事で快楽的な歌モノハウスになっている。Stephen Hawkingsへのトリビュートとなる"Hawk Kings"では流麗なストリングスを用いつつも、勢いのある4つ打ちとエナジー溢れるシンセに淡々とした呟きを導入してレイヴ風のアッパーなダンスを展開し、アルバムの序盤は随分とポップで陽気なダンスモードだ。そこからアルバムは変化を見せて、"Pervitin"ではシンセ/トランペット/ストリングスが優美ながらも融解するようにドロドロと一つなり抽象的なビートレス・アンビエントを奏で、続く"Afros, Afghans And Angels"では古ぼけたラジオや日本語のサンプリングを交えるユーモアを入れつつもオーケストラ風の荘厳なアンビエンスを生み、そしていかにもなレゲエやダブの心地好いアフタービートを強調しながらハーモニカやトランペットの有機的な響きで湿り気を演出する"Say Cheese"など、もう何処を切り取っても全てがThe Orbという変幻自在で何でもありな音楽に笑みが溢れずにはいられない。終盤にはドラムン・ベースのしなやかなリズムを刻む"The Queen Of Hearts"もあるが、色々な音が混ざりながら融和するようなサイケデリック性に耳馴染みの良いポップな感覚も加わり、ごった煮となった音楽はコテコテながらもその多彩さが楽しくもある。個人的な好みでいうとPateresonの盟友であるThomas Fehlmannが参加した時のインテリジェンス性の強いアルバムの方が好みではあり、The Orbの歴史の中で本作が突出して素晴らしいかと言うとそうではなくThe Orbらしくはあるも平均的な出来だと思う。しかし色々なアーティストとコラボしながら貪欲に色んなジャンルを吸収する事でマンネリを回避し、流れの早いダンス・ミュージックの業界で活躍し続ける術を理解している事を、本作で証明している意味ではThe Orbの本質が現れていると言えよう。



Check The Orb
| TECHNO15 | 07:00 | comments(0) | - | |
CFCF - Liquid Colours (Plancha:ARTPL-110)
CFCF - Liquid Colours
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2019年7月にリリースされた本作は紹介が遅れてしまったものの、その年のベストの一枚に挙げられてもおかしくはない名作だ。ジャンル的に言えばニューエイジ、つまり再評価著しい音楽であり流行の一つとしても注目されるのも当然だが、そこに留まらずにジャングルやドラムンベースも咀嚼する事でかつてのノスタルジーを獲得している。アルバムを制作したのはカナダはモントリオールのMichael SilverことCFCFで、Visible Cloaksの作品でも話題となったRvng Intl.やニューエイジ含め幅広い音楽性を持つ1080pからのリリースがあり、そして2016年にはかのInternational Feelから『On Vacation』(過去レビュー)をリリースし、長閑な田舎風景が広がるようなバレアリックなアルバムによって注目を集める事となった。テクノやハウスにアンビエントやニューエイジと手掛ける音楽の幅は広いのと同時に、予てからCFCFの音楽には大衆性というかポップな感覚は備わっていたが、本作について本人曰く「企業化されたポップなジャングルに興味を持っている」とも述べており、今までの作品と比べても随分と商業的な雰囲気が強くなっている。マリンバ風の打楽器が柔らかく広がり微睡んだアンビエンスを展開しつつ、巻き込んでいくようなしなやかなジャングルのリズムが疾走する"Re-Utopia"で始まり、同じ高速かつしなやかなリズム感に牧歌的なシンセが彩っていく"Green District"、そしてリズムは鋭角的になりつつも透明度の高いシンセが湧き水のように溢れ出す"Retail Commune"と、序盤からミックスCDのようにシームレスな構成を活かして綺麗な清流が勢いよく下流へと流れていくような疾走感とカラフルながらも高い透明度は随分とポップだ。終盤はサウダージ的な味わいのあるアコギを活かした南国風ドラムンな"Oxygen Lounge"、エレガントに舞うようなシンセと高速ブレイクビーツを用いたアートコア系の"Blobject of Desire"、そしてアコギの透明感溢れ穏やかな響きに癒やされる"Subdivisions"など、少しずつ終わりに向かってドラマティックに盛り上がっていく構成だ。便宜上15曲に分かれているが40分一曲と捉えられるポップなトーンの統一感、そして軽快なリズム感を保ちつつ山あり谷ありで駆け抜けるスピード感、一般的に想像するニューエイジからは掛け離れておりそこにスピリチュアル性は皆無だ。何でもプレスリリースによれば「超商業的。無印良品で鳴っているようなBGM」との事で、前述の自然志向な『On Vacation』とは真逆の人工的でキッチュな世界観は都会的に洗練されており、ダンスフロアに接近した興奮はありながらも汗臭さや熱狂とは無縁の快適なダンス・ミュージックだ。勿論リスニングとして日常の生活の中でBGMとして鳴っていても違和感はなく、疲れの溜まった心を洗うニューエイジ・ジャングルとして作用する。



Check CFCF
| TECHNO15 | 12:00 | comments(0) | - | |
Aril Brikha - Dance Of A Trillion Stars (Mule Musiq:MULE MUSIQ 249)
Aril Brikha - Dance Of A Trillion Stars
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スウェーデンはストックホルムを代表すると言っても過言ではないテクノ・アーティストのAril Brikhaが、何と前作から13年ぶりとなるアルバムを意外にもMule Musiqからリリース。アルバムは随分と期間が空いてしまったが、その間にも散発的にBlack Crowや自身のArt Of VengeanceからEPはリリースしていたので決して休んでいたわけではないものの、DJではなくアーティスト性の強い人だからこそアルバムこそ待ち望んでいたものだ。元々Transmatやその傘下のFragileからのリリースで注目を集めたせいもあってデトロイト・フォロワー的な見方は拭えなかったが、ここ10年程の活動を見ればトランス感さえも含んだメランコリー性の強い叙情的なテック・ハウスが主体となっており、そろそろデトロイト系…という紹介は無用にも思われる。だとしてもこの新作がアンビエントへと向かった事は誰にも予想は出来なかった筈で驚きは隠せないものの、「一兆の星によるダンス」というアルバム・タイトル自体も非常に馴染んだ神秘的メディーテーションな音楽は、前述のトランス感の延長線上にあるもので小手先のアンビエントではなくしっかりと彼の作風として馴染んでいる。荘厳さを発するトランシーなシンセのアルペジオにオーケストラ風のパッドが重なり、静けさを保ちながらしかし徐々に壮大な世界観へと引き込まれていく"A Cautious Gaze"から、既に広大で無重力の宇宙空間に放り出されたような感覚に陥るアンビエントだ。全編キックの入らない構成あるが、例えば"Dance Of A Trillion Stars"では星のように空間に浮遊するシンセと共に、他の電子音も躍動するリズムを刻むように用いられて、内省的で静謐な世界観を作りながらも普段はダンストラックを制作している一面も微かに残している。"A Lifetime Ago"はでふんわりと羽毛が舞うようにトランス感強いシンセがゆっくりとアルペジオを奏でて快楽的だが、音の隙間を大きくもたせる事で空間の広がりも感じさせ、次第に分厚いシンセストリングスも加わってくると静かにドラマティックに盛り上がっていく。カラッとしたパーカッションがリズムを刻んでいる"Thrive On Chaos"は黒光りするようなドラッギーな上モノが非常に快楽的で、ここにもしキック等も加わっていたらInnervisions風のディープなテック・ハウスになりそうな曲で、狂おしくも美しい深いアンビエントへと引きずり込まれていく。トランス作用の強いシンセを用いた神秘的ながらも覚醒感溢れる作風は、70年代のジャーマン・プログレや昨今のニューエイジ再燃などにもリンクしているようにも思われるが、やはり元々がダンスフロアを生業としているだけありダンスとしてのグルーヴ感も潜ませている点が彼らしくもある。なのでアンビエントへと向かったアルバムではあるが、今までのBrikhaのファンにとっても特に違和感無く馴染めるである事も間違いない。



Check Aril Brikha
| TECHNO15 | 09:00 | comments(0) | - | |
Daniel Avery + Alessandro Cortini - Illusion Of Time (Phantasy Sound:PHLP12CD)
Daniel Avery + Alessandro Cortini - Illusion Of Time
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数年前からテクノシーンの中でも異彩を放ちながら一躍人気アーティストの一人となったDaniel Avery、アシッドなダンスからArtificial Intelligence的なリスニングまで90年代リヴァイヴァルなテクノを実践しながらも、その存在感は単なる模倣に陥らず強烈なインパクトを纏う。2018年の『Song For Alpha』(過去レビュー)ではブレイク・ビーツやドローンも駆使しながらダンスフロアとベッドルームの溝を埋めるようにクラブの枠を超えていくものだったが、この最新作ではAlessandro Cortiniと共同制作を行う事でフロアの闇を感じさせる衝動がありながらもスタイルとしてはよりリスニングへと向かう事になった。しかしCortiniについて知らなかったので調べてみると、実はNine Inch Nailsのギター/キーボードを担当するアーティストで、特にモジュラーシンセへの造詣が深くソロでもシンセやギターのドローンを用いたダーク・アンビエント〜エクスペリメンタルな作品をリリースしており、NINの単なるサポーターと言うよりは一アーティストとして個性を確立しているようだ。そんな二人の数年に渡る共同作業により、Cortiniの風合いとしてドローンも用いた全編ビートレスとながらも破壊的なインダストリアルな響きもあり、まだAveryによるAIとしての瞑想感や内省的な感覚もあり、両者の魅力を損なわずに相乗効果となって一つの音楽が出来上がっている。先行のEPからの"Sun"はヒスノイジ混じりの破壊的で荒廃したドローンがゆったりと胎動しているが、そんな中にぼんやりと流れる浮遊感に溢れたアンビエントなシンセは幻惑的で、朽ち果てた世界観ながらも何処か心の拠り所となるような安堵が存在する。タイトル曲の"Illusion Of Time"はAveryを語る際に引用されるAphex Twinの無垢で牧歌的なアンビエント・テクノの流れで、ザーッと淡いノイズがバックに流れ続けそこにピュアで優しさに溢れたシンセの微睡んだループがまるで子守唄のように心を落ち着かせるが、次第にノイズは大きくなり相反する音響は破滅的でもある。そして雪がこんこんと降り積もるような厳寒の世界が広がる零下のドローン・アンビエントな"Space Channel"を通過すると、待ち受けるのは混沌から生じたようにノイズ混じりの重厚感溢れるドローンが胎動する"Inside The Ruins"で、衝動に身を任せたようなライブ感溢れるモジュラーシンセの響きは破滅的な闇を演出している。その先に待ち受けるのは闇を切り裂き光で照らし出すようなディストーションギターが伸びるシューゲイザー風なアンビエントの"At First Sight"で、この光と闇の切り返しがアルバムをぐっとエモーショナルなものとしている。アルバムは大雑把に言えばアンビエントになるのだろうが、ただ聞き流してしまうのを可とする空気に溶け込んだ音楽ではなく、寧ろ刺々しく荒れ狂うシンセの音響が生む衝動的な美しさや優美さを楽しむもので非常にインパクトのある内容だ。コロナで外出を楽しみづらい時期だからこそ、こんな音楽を聞いて部屋に籠もって空想に耽けて内なる世界に没頭するのも悪くない。



Check Daniel Avery & Alessandro Cortini
| TECHNO15 | 11:30 | comments(0) | - | |
Joris Voorn - \\\\ (Four) (Spectrum:SPCTRM004CD)
Joris Voorn - (Four)
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3枚目のアルバムであった2014年作『Nobody Knows』(過去レビュー)から2019年時点で早5年、オランダ随一のテクノ・アーティストであるJoris Voornがそのタイトルまんまに4枚目のアルバムを送り出した。その間にもこの名義やまた別のDark Science名義も合わせて複数のEPをリリースしていたのでそれ程には待った感は無かったものの、前作においてメランコリーではあるが極端にリスニングへと傾倒していた事もあって、新しいアルバムへは期待と不安が入り乱れて待たされていた。前のアルバムではフロアでの鳴りを前提としたEPとは異なりアーティストとしての懐の深さを見せ付けるように、メロウなリスニング性を深堀りしそれはそれでVoornの表現力を褒め称えるべきだったのだが、ファンが期待する方向性とはやや乖離があったのも事実だ。しかし本作は蓋を開けてみればメランコリーなムードはそのままに再びダンスへの回帰も見受けられ、一大絵巻のように壮大な世界観で展開しながら、今までの集大成的にも思われる完成度を誇っている。本人の話では「ここ数年の音楽の旅を反映したもので、自分の音楽の原点を探り、新たな境地を切り開いた」との事で、テクノにハウスやトランスにブレイク・ビーツやダウンテンポなど色々と取り組みながらも、メランコリーかつドリーミーなムードで統一されてVoornのメロディー・センスが遺憾なく発揮されている。幻想的なシンセのレイヤーと可愛らしい鍵盤のメロディーが一つとなりながら、ビートを適度に抑えながらじわじわと高揚感を増していく冒頭の"Never"から圧倒的な叙情性に飲み込まれ、続く"District Seven (Broken Mix)"ではブレイク・ビーツを用いて腰に来るグルーヴを作りつつ、壮大なスケール感を持つプログレッシヴ・ハウス調のゴージャスなシンセで覆い尽くし、メランコリーな大河に飲み込まれる。先行EPの一つである"Ryo"はヒット作の"Ringo"を思い起こさせる物憂げなテクノで、美しくも消え入るようなシンセのリフレインとオーロラのようなパッドによってこれでもかと涙を誘うサウダージなテック・ハウスは、滑らかなグルーヴを刻みながら何処までも感動の高みに連れて行く。また"Polydub"では妖しくも美しいピアノのメロディーやシンセループを重層的に活かして、ミニマルなディープ・ハウス調に毒気のある妖艶さを放ち、アルバムに持続性をもたらしている。そして特筆すべきは本作では強烈な個性を持つアーティストをフィーチャーしており、"Too Little Too Late"ではUnderworldを共作に迎えているが、元となる艷やかなテック・ハウス調の曲にKarl Hydeの機械的で淡々とした歌が加わる事でニューウェーブ調へと染まり、予想外に相性の良さを発見する事だろう。そしてロンドンのトリップホップ・ユニットであるHaelosをフィーチャーした"Messiah"は、分厚く豊かなシンセのリフレインと揺れるブレイク・ビーツを用いて何処か90年代的な懐かしい感覚を持つが、ソウルフルなのにトランシーな快楽性が今風だろうか。そして終盤にはピアニストのMichiel Borstlapを迎えた"Blanky"で、哀しみにも近い切ないピアノが清らかに挿入されたドリーミーなダウンテンポを展開し、終わりへと向かう如くテンションを落ち着かせてアルバムは穏やかに幕を閉じていく。想定していた以上にダンス性を増しながらも全体としてはシンセのメロディーやコードを尊重し、アルバムらしく様々なスタイルを披露しながらもある一つの統一感を持っている。それは、幻想の濃霧が立ち込める如くメランコリーなムードであり、ともすれば装飾過剰な音楽になってしまいそうなぎりぎりのラインを保ちながらも、アルバムは感動的なまでの壮大な流れで聞く者を魅了するだろう。



Check Joris Voorn
| TECHNO15 | 12:00 | comments(0) | - | |
Kaito - Nokton (Cosmic Signature:CSCD1001)
Kaito - Nokton
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2019年4月、突如としてHiroshi Watanabeがbandcamp上でKaito名義による『Nokton Vol.1』を発表した。2013年の4枚目のアルバムである『Until The End Of Time』(過去レビュー)以降、Kaitoの目立った活動はなかったのだが、見えない所でギタリストやベーシストをフィーチャーしたKaitoの本来は5枚目となるアルバムは制作中とは伺っていたので、スケジュールとは異なり『Nokton Vol.1』が配信された時にはやや驚きもあった。実はその予定されたアルバム制作中にある大きな出来事が発生した事で制作を止める事となり、しかし再度歩みを始めるべく新たに取り掛かって生まれたのが前述の『Nokton Vol.1』であり、それを更に展開しアルバムとして纏めたのがこのCDである。夜の風景、夜のドライブをイメージしたという本作は、基本的にはYAMAHA reface CSというシンセにフィルターを施しながらシンプルに制作されているそうで、今までのダンスの前提があるテクノという音楽や何度も構成を積み重ねるよう作られた曲調とも異なり、飾り気がなくある意味では非常に泥臭い本作はより一層喜怒哀楽という感情が渦巻く衝動的な音楽になっている。全編ビートレスでほぼ前述のシンセのループとインプロビゼーションによる手弾きで構成されていると思われるが、逆に一つの楽器を舐め尽くすようにいじり倒した事でWatanabe氏の激情が溢れ出る作品となったのだ。冒頭の"The NeverEnding Dream"から既に激しい慟哭をあげるようにトランス感にも近いシンセが唸りを上げて、活を入れ衝動に突き動かされるように脈動するシンセが歌っている。続く"Passing Through Darkness"は例えばkaitoのビートレス・アルバムにも見受けられるように、しんみりと切ない気持ちを投影したシンセが淡い水彩画を描くように広がり、前述の激しさとは逆に心の平穏を誘うように優しさに包み込む。一方で"Follow Me"は比較的整然とした流れのあるコード展開のループを用いているが、そこに悲しみにも近いシンセの装飾を重ねて、穏やかさを保ちながらも自己の内面へ意識を向けさせる深さがある。全体的にはやや内向的な印象の強いアルバムだが、"Become You Yourself"はそんな中でも喜びに満ち溢れて外へ外へと飛び出していこうとするポジティブな心情が感じられ、澄み切った青空の下でシンセが喜々として踊っているような、いやもしリズムが入っていれば以前の情熱的なテクノを体現するKaitoそのものだ。全てがビートレスという構成なので昨今の流行りのアンビエント・スタイルと予想する人もいるかもしれないが、全くそんな事はないどころか表面的にリズムは無くとも強いうねりのような躍動は感じられ、寧ろ込められた感情が魂の源泉からどくどくと溢れ出す如く非常に熱量の高い作風は、以前にも増してマシンソウルを体現している。今までのダンスの枠組みに沿ったKaitoのアルバムから一歩踏み出して、やりたいようにやった本作は丸裸のKaitoであり、だからこそ一層Watanabe氏に潜む感情性が実直に感じられるのだ。



Check Hiroshi Watanabe
| TECHNO15 | 17:30 | comments(0) | - | |