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Pablo Valentino - Space Tribe (Eureka!:ERK005)
Pablo Valentino - Space Tribe
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世界的に評価を獲得した日本人のDJやアーティストは増えつつあるも、一方でアーティストを送り出すレーベルとしてはまだまだ充実していないと感じる事は少なくないが、そんな状況で"Quality House Music Never Betray"を掲げて活動するEureka!は注目すべき存在だ。Midori Aoyamaらを中心としたグループは2012年頃から同名のパーティーを立ち上げ海外から新進気鋭のアーティストを招致し、若手のハウスミュージックシーンで確固たる存在感を作り上げていた。2015年にレーベルを立ち上げるとLocal Talk周辺のアーティストによる生音強めなハウスを取り上げて、ソウルフルかつジャジーな路線で良質な音楽を提供し続けているが、この2019年の最新作はフレンチ・ハウスにおいて強烈な存在感を示すMCDEやFaces Recordsを主宰するPablo Valentinoによるものだ。予てからブラック・ミュージック性の強いハウスを手掛けてきたValentinoだが、ここではFaces Records繋がりのKez YMやクロスオーバーな音楽性を持つSimbadともコラボレーションを行い、それぞれのアーティストの個性を取り込みながら生音重視な情熱的なハウスを披露している。Kez YMとの共同制作である"Bananas"は軽やかなパーカッションとズンドコと端正な4つ打ちキックにKez YMらしいファンキー性が現れているが、そこに訝しいオルガンと対照的に流麗なエレピやシンセのコードが色鮮やかにエモーショナル性で彩っていき、生音の温かみあるグルーヴが骨太ながらもエレガントでもある。"Inspiracao"はぐっとテンポを落ち着かせたダウンテンポやヒップホップを意識した曲で、湿り気を帯びたような粘りあるロービートに上モノはストリングスや鍵盤が繊細に控えめな優美さを醸し、ダンスの踊り疲れた後のほっと一息つけるようなチルアウト感覚がある。Simbadをフィーチャーした"Space Tribe"もパーカッションが軽やかなリズム感を刻んでいるが、ブロークン・ビーツやジャズ性の強いしなやかなリズム感が特徴で、そこに切なくスペーシーなシンセが緩やかなメロディーを描きながら優美さと情熱を兼ね備えた大人びた響きとなり、リラックスしたムードの中でラグジュアリーな一時を感じられる。Valentinoのブラック・ミュージックへの深い理解が複数のスタイルで表現されており、アーティストとして(特に日本では)もっと評価されるべきと常々思わせられる。



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| HOUSE14 | 18:00 | comments(0) | - | |
Session Victim - Needledrop (Night Time Stories:ALNCD59)
Session Victim - Needledrop
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公式インフォにおいてNightmares on WaxやDJ Shadowなどの90年代後半のトリップホップ、そしてジャズやソウルの構成にインスピレーションを受けたとの記載があり、センスの良いサンプリングを武器にライブ性を重視したディープ・ハウス/ディスコを展開してきたドイツのライブユニットであるSession Victimの新作に驚きを隠せないが、しかし聞き終わった後にはもう終わり?とまた直ぐに聞き直したくなる程にしっかりとSession Victimらしいアルバムになっている。今までにDelusions Of Grandeurを含む多数のレーベルから作品をリリースしながらも、3枚のアルバムに限っては全てDelusions Of Grandeurからと限定的な活動をしてきた彼等が、しかしこの4枚目となるアルバムはLateNightTalesの姉妹レーベルであるNight Time Storiesからという事もあり、表面的にはBGM性の強いリスニングへと様相を変えている。レーベルからの制作依頼か、アーティストの意思か、どちらが先だったのか知る由もないが、過去にもアルバムの中で少しだけ披露してきたダウンテンポのスタイルを本作では積極的に掘り下げている。開始を告げる"Bad Weather Mates"からしてジャズ風なドラム、艶めかしいベースにギターっぽいメロウなサンプリングなどを駆使して、湿り気を帯びたメランコリーな雰囲気を生むこの曲は古びたようなソウル・ミュージックだ。続く"The Pain"はややエレクトロニックな響きが強いが、美しいシンセのラインやファンキーなボーカル・サンプリング等を活かした作風は過去アルバムの系譜にあるが、しかしやはりグッとテンポを落とす事で非常に情緒深いエモーショナルなトリップホップになっている。Beth Hirschをフィーチャーした唯一の歌ものである"Made Me Fly"は、か弱くしんみりとした歌に朧気なシンセや湿度感のある泣くようなベースが有機的に溶け合い、アルバムの中でも特に胸を締め付ける悲哀な曲だろう。対してタイトル通りにジャズのビート感を前面に打ち出してともすればツール的にも思われる"Jazzbeat 7"、しかし彼等はライブユニットでありこんな曲でも変幻自在の躍動するリズムが映えていて、ライブ感のある曲構成が彼等の音楽性を確立させている。そして優雅な鍵盤使いと温かく躍動するベースが印象的な小洒落たジャズ風の"Needledrop"、メロウなピアノやシンセが朗らかで音の間を活かしたアフタービートが心地好いゆるゆるダウンテンポな"Cold Chills"など、アルバムは総じて肩の力が抜けて気け怠く緩いイージーリスニング的で、これは酒でも片手に夜の帳が下りる頃のしっとりした雰囲気の中で聞きたくなる。決して明るく曲調でもないし、曲尺も短くダンスフロア向けでもないが、そういった面からも彼等がホームリスニングを意識した新たなるアプローチである事は明白で、だからこそ以前にも増してサンプリングと生音の自然な同居から生まれる温かみのある響きが強くなり、Session Victimらしいアルバムと思うのだ。



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| HOUSE14 | 18:00 | comments(0) | - | |
Folamour - Ordinary Drugs (FHUO Records:FHUOLP001)
Folamour - Ordinary Drugs
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先日、リヨンに設立されたMoonrise Hill Materialの音源を紹介したので、レーベルの設立者の一人であるBruno BoumendilことFolamourを紹介する。作曲家としては2015年にデビューしたフランスの新世代を代表する一人であり、ベースやギターにドラムやパーカッションといった楽器の経験も積んだマルチプレイヤーが生み出す音楽は、クラシックなハウスを軸にしながらジャズやファンクにソウルやディスコといった要素も咀嚼した幅の広さなり深さがあり、大御所ハウス・レーベルのClassicからダウンテンポやアンビエントまで展開するFauxpas Musikに近年評価の高いクロスオーバーな音楽性を披露するChurchなど多様なレーベルからのリリースがある事からも、豊かな音楽性を持っているアーティストである事を感じ取れる筈だ。この目下最新アルバム(とは言いながらも2019年2月のリリースだが)も言うまでもなくハウスをフォーマットにしつつそこの様々な要素を融合させ、アルバムという形の中で豊かな表現力を発揮した作品は実に素晴らしい。雨音や雑踏の歩く音など環境音を用いて日常の生活感を表したような"Intro"でストーリーを開始させるような幕開けに続き、ヒスノイズ混じりでアブストラクトながらも美しいシンセパッドがアンビエントを匂わせつつWayne Snowによる囁きのような甘い歌もあって情緒的に展開する"Underwater Memories"まではゆったりとした流れだが、3曲目の"I Don't Sleep At Night But I Wake Up At 6AM"でドタドタと生音強めでジャジーなグルーヴと艶めかしいトランペットやピアノが妖艶に彩っていくビートダウン風なハウスでようやくダンスモードへと入っていく。"Don't Make Me Leave You Again, Girl"も同じ様にざっくり生々しいドラムのリズムと管楽器やベースの湿っぽく温かい有機的な響きを前面に出して、ややディスコ寄りの作風は単なるDJツールより血が通っているようにライブ感が活きている。しかしただダンスさせる事を目的としたアルバムでないのは明白で、例えばElbiの色っぽく誘うような歌をフィーチャーしてジャズやソウルへと寄り添った"After Winter Must Come Spring"や、流麗なストリングスに合わせてインプロビゼーション的に躍動するジャズ・ドラムが生き生きとリズムを刻む"Parfums D'Aurore"など、アッパーな勢いや圧力に頼らずに魅力的なメロウネスやリズムによってしっかりと聞かせる音楽が前提なのだ。アルバムの最後は"Theme For Marie Marvingt"、眩しい位にゴージャスなシンセ使いはシンセ・ファンクか、しなやかで複雑なジャズのリズムに有機的なディスコの感覚もあり、Folamourらしいジャンルを横断した曲で幕を閉じるのは印象的だ。イントロから始まり多様なジャンルを盛り込み、前述の終わり方まで含めてアルバムはFolamourの音楽のルーツを感じさせる旅のようで、ソウルフルな新世代のハウス名作だ。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Saint Paul - Escape From Dimension EP (Moonrise Hill Material:MHM011)
Saint Paul - Escape From Dimension EP
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2015年にフランスはリヨンに設立されたMoonrise Hill Materialは、今や人気アーティストとなったFolamourを始めとして複数のアーティストによって立ち上げられたハウス系新興レーベルだが、その運営の一人がSaint Paulだ。Paul自身は2017年に同レーベルからアーティストデビューし、ここ3年程精力的に作品をリリースしフランスの新興勢力として名を挙げているが、本作は2019年の中頃にリリースされたEPだ。レーベルインフォではファンクやジャズ、ソウルにヒップホップ、そしてハウスミュージックを混合して、Paulの多様な音楽に影響を受けた結果が反映されているとの事だが、実際に5曲それぞれに異なるジャンルの要素が込められており、それらが小手先にならずに自分にしっかりと馴染ませた感がある点は評価すべきだろう。"I Really Wanna Get To You"はファンキーに弾けるベースとディスコ・サンプリング的な上モノを用いつつ、優美でソウルフルな歌も加わって光が溢れ出すような煌めくディスコ・ハウスで陽気な雰囲気に盛り上がらずにはいられない。"Funky Cruisin'"は透明感のある薄いシンセコードに流麗な笛の旋律が被さり情緒豊かに展開するが、下部では生音強めでジャジーなリズムがしなやかに走り、EPの中では特にエレガンスな一曲。"Body & Soul"も同様に緩やかに揺れるジャジー・グルーヴを刻みつつ、熱き感情を吐露する歌と耽美で繊細なエレピやストリングスが湿っぽく装飾し、ソウル×ジャズ×ハウスで色っぽささえもある。そして海鳥の鳴き声や波の引いては寄せる音から始まる"Pecheur de la Lagune"はそこから澄んだ上モノの爽快な音や軽快で心地好い4つ打ちによる90年代風というか古典的なハウスを聞かせ、最後はぐっとテンポを落としてヒップ・ホップなねっとりしたリズムを刻み、華麗なエレピや笛のサンプリングによって甘ささえも感じさせるメロウな"Smooth Wit Da Ruffness"で閉幕。これだけの説明だと何だかとっ散らかった印象を受けてしまうかもしれないが、実際に聞いてみると何ら違和感はなく味わいのあるメロウな世界観で自然と統一されており、リスニングに耐えうる楽曲性は今後アルバムという形で聞いてみたくなる。



Check Saint Paul
| HOUSE14 | 21:00 | comments(0) | - | |
E. Live - Boogie For Life (Star Creature:SC1223)
E. Live - Boogie For Life

2019年のGiovanni DamicoやLiquid Pegasusによる色彩豊かな感覚に満たされるシンセ・ファンク〜ブギーなアルバムが素晴らしく、レーベルの音楽性に魅了させられたのがシカゴのStar Creatureだ。2016年頃に設立されたまだ新興レーベルのようだが、ブギーやディスコにファンクやR&Bといった音楽を纏め上げモダンに聞かせる過去から未来への視点を持っており、キラキラとした都会的な感覚が特徴だ。そんなレーベルの新作がEli HurwitzことE. Liveによるミニアルバムで、レーベルを代表するアーティストの一人だけあって前述のレーベルの音楽性を象徴していると言っても過言ではない程に、本作のライブ感溢れるシンセバリバリでファンキー&ブギーな作風はポップさ弾けて爽快な風が吹き込み楽天的な太陽の光が射すようだ。アルバムジャケットのポップな色使い、そして都会のビル群とビンテージシンセを題材した内容からしてもう完全にシンセ・ファンクが想像され、聞く前から何処となく心がウキウキしてこないだろうか。タイトル曲からして素晴らしく、シャキシャキとしたドラムに合わせて透明感のあるスペーシーなシンセとキレのあるギターカッティングがファンキーなビートを叩き出す"Boogie For Life"、懐メロのような心に染みる複数の音色のシンセが代わる代わる登場し、これでもかとメロウに展開するブギーな幕開け。からっと乾いたパーカッションが空に向かって響く涼し気な"Sunny Side Up"は、流麗なピアノコードや生音強めにうねるベースから始まり、中盤では光沢感のあるシンセがキラキラと眩しいように響いて、ライブ感溢れるジャズ・ファンクと呼べかよいか。ずんずんとノリの良い4つ打ちのドラムがディスコ風な"Rolling Steady"は、ここでもエレクトロニックな響きの複数のシンセがお互いを刺激するように盛り上げているが、ポップでスペーシーな感覚に満ちたシンセの響きは憂いと共に儚くもある。"Brazao"はブラジル音楽を意識したようでチャカポコとしたパーカッションのリズムが前面に出ており、そこに艶めかしいベースやギターカッティングを被せて腰にくるファンキーさを出しつつ、そしてやはり分厚く煌びやかシンセのうねるメロディーが郷愁を誘う。扱っているジャンルとしては古典的というか新しさは無いのだろうが、しかしそんな音楽に全く古さを感じさせない澄んで綺麗な音の聞かせ方やこれ以上ない位にエモーショナル性の強い旋律やコードの表現など、古い音楽を咀嚼した上でモダンに昇華している点が素晴らしい。僅か6曲のミニアルバムだが、しかしそこには近未来のモダンブギーが詰まっている。



Check E.Live
| HOUSE14 | 07:30 | comments(0) | - | |
Edward - Underwater Jams (DFA:DFA2618)
Edward - Underwater Jams
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古くはWhiteの主力アーティストとして、その後はGieglingでもレーベルを代表する繊細な音響美を追求するディープ・ハウスの音楽性で注目を集め続けるEdwardが、2019年には意外にもニューヨークのパンキッシュなダンスレーベルであるDFAからEPをリリースしている。正直言ってしまうとDFAの音楽性との関連性は殆ど感じられず、実際にこのEPにおいても繊細な音響を大切にしたEdward節というか、2017年のEP『Giigoog』(過去レビュー)の路線を踏襲してポリリズム感のある土着ミニマル・ハウスで緻密な構成を組み上げ、ダンストラックとしての機能性を得ながらも非常にアーティスティックな作風を披露している。どちらもパーカッショニストのGeronimo Dehlerをフィーチャーする事でいつもより即興的なライブ感が活きているが、"The Lagoon"は揺蕩うような緩いグルーヴが流れる上にカラッと乾いたパーカッションが大地の芳香を漂わせており、そこにモジュラーシンセや奇妙な電子音を配しながら自由気ままに旅するかのように展開する。定形の無い電子音の使い方はジャーマン・プログレかニューエイジかのようにエクスペリメンタルな要素を含んで、勢いではなく雰囲気によってトリップ感を生み出していて、得も言われぬ酩酊感が11分にも渡って持続する。15分にも及ぶ"Mental Dive"は勢いのあるダンストラックになっており、同様にアフリカンで土着的なパーカッションがライブ感溢れるグルーヴを刻みつつ不気味なうめき声がより怪しさを増長し、中盤には怒涛のアフロ・トライバルなパーカッション乱れ打ちな時間帯もあって、終始生々しく胎動するリズムに引っ張られるこの曲は深い密林奥地の儀式のようだ。どちらも不規則なパーカッションが非常に印象的な響きとなって曲と特徴付けており、Edwardの曲の中では異色作ではあるものの、個性が尖りながらもフロアに直結した作風でDJ仕様として抜群であろう。



Check Edward
| HOUSE14 | 18:30 | comments(0) | - | |
Joe Morris - Exotic Language (Shades Of Sound Recordings:SOS EL)
Joe Morris - Exotic Language
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作品をリリースし始めてからおおよそ10年、リーズ出身のバレアリック寄りのディープ・ハウスを手掛けるJoe Morrisが完成させた初のアルバムは、バレアリックからイタロにアンビエントやニューエイジにダウンテンポまで、現時点に於ける自身の活動の集大成的にバラエティー豊かなスタイルを盛り込んだ素晴らしい作品となった。過去にはIs It Balearic?やPleasure Unitからのリリースがある事からも分かる通り、Morrisの音楽性は大きな括りで言えばカラフルな色彩感覚を持つ穏やかなバレアリックになるのだが、本作にはダンスからリスニングまで豊かな感情性や深い情緒性によって心に訴えかける音楽性がある。ホタルの島と題された"Firefly Island"は微かな虫の鳴き声や波の音などフィールド・レコーディングも用いる事で自然の中の疑似空間を演出しており、緑の木々が生い茂り生命が宿る大地に降り立ったような神秘的なニューエイジでアルバムは開始する。続くPrivate Agendaをフィーチャーした"Perfume"は聖なる歌と繊細ながらも優雅でフォーキーな響きのダウンテンポで、甘く切ない10ccの歌が脳裏に浮かんでくるようだ。と思えばイタロ・ハウス風なカモメの鳴き声、そしてレトロなリズムマシンのベースやドラムがシカゴ・ハウスを思い起こさせる"A Dance With Jupiter"は、美しく透明感のあるシンセの旋律からトリッピーで明るいアシッド・サウンドも加わって、実に爽快感かつエモーショナルな空気を纏った古典的なハウスを踏襲している。その一方で湿り気のあるドラムや重いベース、遠くまでヌメッと響くダブ音響が効いた"Echo Station"ではダブやレゲエに取り組んでいるが、優雅なピアノやコズミックなシンセを用いて、アルバムから浮かないようにしっとりメロウな一片となっている。そしてまたも鳥の囀りに土着的なパーカッションを合わせ、幻想的なパッドやキラキラしたシンセを重ねた"Celestial Plantation"は、リズムがもし入っていれば90年代のアンビエント・ハウスかと思うような作風で、温かい太陽の光が降り注ぐリラックスした楽園的なムードは海辺のリゾート地か桃源郷か。また、やや毒々しいうねるアシッド・ベースを用いた"Acid Safari"は力強いパーカッションの鳴りが深い密林を思い起こさせ、アシッド・ハウスとトライバルの融合した切ないダウンテンポで面白い作風だ。曲毎に多彩な音楽性による個性があり実にバラエティーに富んだアルバムなのだが、しかし全体を包括する雰囲気は間違いなく楽園ムードのバレアリックで、爽快感あるダンスからしっとりスローモーなリスニングまでどれも抑圧とは無縁のリラックスした多幸感に満たされている。International FeelやHell Yeah周辺の音楽が好きな人にとっては、これ以上にドンピシャなアルバムはなかなか無いだろう。



Check Joe Morris
| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Simoncino - Timezones (Creme Organization:CR 12-100)
Simoncino - Timezones
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アナログ機材をこよなく愛しシカゴ・ハウスから強く影響を受けたNick Anthony Simoncino、2009年頃から作品をリリースし始めてからおおよそ10年が経過するも、その作風に全くぶれはなくローファイな機材を活かした垢抜けなさもあるハウス・ミュージックは金太郎飴でもある。現在の最新作は過去にも何度か手を組んでいるCreme Organizationから2019年にリリースされた本作だが、やはりここでもその初期胎動を持つシカゴ・ハウスを意識した音楽性に変わりはない。"Housetime"は太いキックが跳ねるようなリズムを打ち付け、そこにミステリアスながらも美しいシンセのラインを重ねたディープ・ハウスで、ひんやり冷えた硬質な曲調ながらも少しずつシンセの鳴りが強くなって惑わしていくようだ。"It Up (Ambient Mix)"は正にキックを抜いて幻惑的な上モノを浮かび上がらせる事でアンビエント的に仕立てているが、乾いたパーカッションやクラップがシカゴ・ハウスのラフな質感を思い起こさせる。そしてそのオリジナルバージョンである"It Up (Original Dub)"、キックは飛び跳ねるリズムを刻み、そこにファンキーなボイスサンプルやヒプノティックな上モノを掛け合わせて、ダークな雰囲気を装いながらギラギラとした迸るエネルギーが溢れるドラッギーなハウスとなる。"Tribu"は更にキックやベースが硬く太く力強いグルーヴを刻んているが、鳥の囀りのサンプリングを用いたりと楽園的な雰囲気はSimoncinoの故郷であるイタロ・ハウスのドリーミーな感覚もあり、無機質で粗い質感ながらも快楽的だ。そして独特に蠢くベースラインが強調された"Una Notte Con Michelle"、メロディーは控えめな分だけより暗くより闇が深く、シカゴ・ハウスの狂気にも似た陰鬱なディープ・ハウスはダンスフロアの暗闇が似合っている。ハードウェアをふんだんに用いて作られたハウスはオールド・スクールそのもので、流行とは一切無縁のクラシカルな作風で、最初に述べたように金太郎飴の如くいつもと同じではあるが、ここまでやれば最早様式美の一つだろう。



Check Simoncino
| HOUSE14 | 18:30 | comments(0) | - | |
Move D - Building Bridges (Aus Music:AUSLP010)
Move D - Building Bridges
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90年代から長きに渡りソロ活動のみならず多くのアーティストのコラボレート・プロジェクトを行う事によって、テクノやハウスにダブやアンビエントにエレクトロまで、音楽的な深さを獲得するに至ったDavid MoufangことMove D。例えば有名なプロジェクトであればJonah Sharpとのインテリジェンス・テクノに取り組んだReagenz、比較的近年であれば前述のReagenzにJuju & Jordashも加わり4人から成るジャムセッションを主体とするThe Mulholland Free Clinicなど、他アーティストと交流をする事が滞留せずにアーティストとしての進化(深化)を促しているように思われる。このAus Musicからリリースされた6年ぶりのソロアルバム、しかしソロアルバムとは言いながらも収録曲の半分はコラボレート作品であり、1999〜2019年の間に録音された事もあって、その意味ではアルバムというよりはコンピレーション的な風合いが強いだろうか。その分だけ各曲がそれぞれの個性を持っており、例えばオープニングの"Cycles"は遠くまで伸びていく軽やかなダブ音響を用いつつも籠もったような音響処理を加えた作風は、フローティング感覚のあるフレンチ・フィルター・ディスコそのもので、しかしファンキーに振り切れる事もなく包容力のある優しい世界観が9分にも渡って展開する。続くDmanとのコラボである"Init"ではぼやけたような浮遊感のある上モノは同様だが、リズムはミュートされ詰まったダウンテンポ調で、内向的で穏やかに落ち着かせる。リズムもメロディーも無駄を削ぎ落として隙間を活かした長閑なディープ・ハウスの"Dots"を通過し、Magic Mountain High名義の"Tiny Fluffy Spacepods"では序盤の透き通った音響のアンビエンスから、次第に浮遊感あるディープ・ハウスへと変遷するが、展開の幅の広さはこのプロジェクトのセッション性が活かされている。そしてまさかのrEAGENZ名義ではベルリンのダブ・テクノ御大であるThomas Fehlmannとコラボした"One Small Step..."、これはもう完全に予想通りなしっとり艶めかしいアンビエントなダブテクノで、サイケデリックに揺らめく微かなギターやもやもやとしたダブの音響が融解し、何か大きな衝撃が待ち受ける訳でもないのにズブズブと快楽の沼に沈んでいく。今をときめくUSのテック・ハウサーであるFred P.とのコラボである"Building Bridges (Move D's Inside Revolution Mix)"も想定通りで、ややオーガニックで温かい響きと共に微細なアンビエンス音響を交えて、彼らしいエモーショナルかつスピリチュアルな空気も纏う荘厳なテック・ハウスを10分にも渡って展開する。全体を通してクラブの喧騒とは乖離したしっとりと情緒的なディープ・ハウス寄りの作風で、例えばダンスとして捉えたとしてもクラブの密室内よりは屋外の開放的な場所に合うような、リラックスして揺蕩うようにして聴きたい大人びなアルバム。その意味では踊り疲れた後のチルアウト的な聴き方、または寝る前の安静の時間帯にもぴったりで、繊細な音にじっくりと耳を傾けて聞きたくなる。



Check Move D
| HOUSE14 | 19:00 | comments(1) | - | |
DASCO - African Power (Local Talk:LT102)
DASCO - African Power
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ここ数年のクロスオーヴァーなハウスに於いては特に人気を博しているスウェーデンのLocal Talk。ベテランから若手まで多くの強力なタレントを抱えるレーベルに、また新星がカタログに名を連ねる事となった。現在はベルリンを拠点とし活動するイスラエルのDJ/プロデューサーであるDascoは、2017年にHousewaxからデビューしたばかり。バイオグラフィーを参照するとシカゴやデトロイトのレジェンドに影響を受けて、ディスコやテクノ、アフロにトライバル、アシッドなどをハウス・ミュージックに取り込んだ音楽性との事で、特に血の通った感情性を強く意識しているようだ。そしてこのEPである、本人の新曲と共に注目すべきはTrinidadian DeepとAnthony Nicholsonのディープ・ハウスの実力派2人がリミックスを提供している事で、こういった事からも周りからの彼女への期待や評価は大きい事は伺える。勿論彼女のオリジナルが素晴らしい事は言うまでもなく、そのタイトル通りにアフリカンなパーカッションを強調した"African Power"では生々しいベースラインも躍動し、そこに祝祭感のあるホーンや煌めきのあるシンセのリフを合わせて、生っぽさとエレクトロニックが自然と融合した陽気なアフロ・ハウスを聞かせる。"Keep Movin'"はよりざっくりとしたパーカッションが土着的なグルーヴを刻むトライバルな性質があり、小刻みに入ってくる乾いた太鼓の音は何処までも爽快に広がりつつ、そこに伸びやかなパッドが加わってくれば、土臭い風を吹きながらも重力から開放されたように浮かんでいく心地好いディープ・ハウスとなる。どちらもダンスフロアを刺激するグルーヴ感、そして揚々としたポジティブなエネルギーに溢れており、新人ながらも間違いのない才能が光る曲だ。リミックスの方もそれぞれ音楽性が正しく反映されており、"African Power (Trinidadian Deep Remix)"の方は原曲よりも滑らかなグルーヴ感と優美な鍵盤ワークを活かしたディープ・ハウスへと塗り替えられ、ベテランらしい円熟味のある大らかな作風だ。"Keep Movin' (Anthony Nicholson Mediterranian Disco Remix)"の方は芯のあるキックで4つ打ち感を強調しているがこちらも綺羅びやで繊細なピアノ等の鍵盤を配置して、希望の光が溢れ出すフュージョン・ハウスで、力強さとエモーショナル性が一つになっている。



Check Dasco
| HOUSE14 | 18:00 | comments(0) | - | |