CALENDAR
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930    
<< June 2020 >>
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
MOBILE
qrcode
SPONSORED LINKS
Move D - Building Bridges (Aus Music:AUSLP010)
Move D - Building Bridges
Amazonで詳しく見る(日本盤)
 Amazonで詳しく見る(MP3)
90年代から長きに渡りソロ活動のみならず多くのアーティストのコラボレート・プロジェクトを行う事によって、テクノやハウスにダブやアンビエントにエレクトロまで、音楽的な深さを獲得するに至ったDavid MoufangことMove D。例えば有名なプロジェクトであればJonah Sharpとのインテリジェンス・テクノに取り組んだReagenz、比較的近年であれば前述のReagenzにJuju & Jordashも加わり4人から成るジャムセッションを主体とするThe Mulholland Free Clinicなど、他アーティストと交流をする事が滞留せずにアーティストとしての進化(深化)を促しているように思われる。このAus Musicからリリースされた6年ぶりのソロアルバム、しかしソロアルバムとは言いながらも収録曲の半分はコラボレート作品であり、1999〜2019年の間に録音された事もあって、その意味ではアルバムというよりはコンピレーション的な風合いが強いだろうか。その分だけ各曲がそれぞれの個性を持っており、例えばオープニングの"Cycles"は遠くまで伸びていく軽やかなダブ音響を用いつつも籠もったような音響処理を加えた作風は、フローティング感覚のあるフレンチ・フィルター・ディスコそのもので、しかしファンキーに振り切れる事もなく包容力のある優しい世界観が9分にも渡って展開する。続くDmanとのコラボである"Init"ではぼやけたような浮遊感のある上モノは同様だが、リズムはミュートされ詰まったダウンテンポ調で、内向的で穏やかに落ち着かせる。リズムもメロディーも無駄を削ぎ落として隙間を活かした長閑なディープ・ハウスの"Dots"を通過し、Magic Mountain High名義の"Tiny Fluffy Spacepods"では序盤の透き通った音響のアンビエンスから、次第に浮遊感あるディープ・ハウスへと変遷するが、展開の幅の広さはこのプロジェクトのセッション性が活かされている。そしてまさかのrEAGENZ名義ではベルリンのダブ・テクノ御大であるThomas Fehlmannとコラボした"One Small Step..."、これはもう完全に予想通りなしっとり艶めかしいアンビエントなダブテクノで、サイケデリックに揺らめく微かなギターやもやもやとしたダブの音響が融解し、何か大きな衝撃が待ち受ける訳でもないのにズブズブと快楽の沼に沈んでいく。今をときめくUSのテック・ハウサーであるFred P.とのコラボである"Building Bridges (Move D's Inside Revolution Mix)"も想定通りで、ややオーガニックで温かい響きと共に微細なアンビエンス音響を交えて、彼らしいエモーショナルかつスピリチュアルな空気も纏う荘厳なテック・ハウスを10分にも渡って展開する。全体を通してクラブの喧騒とは乖離したしっとりと情緒的なディープ・ハウス寄りの作風で、例えばダンスとして捉えたとしてもクラブの密室内よりは屋外の開放的な場所に合うような、リラックスして揺蕩うようにして聴きたい大人びなアルバム。その意味では踊り疲れた後のチルアウト的な聴き方、または寝る前の安静の時間帯にもぴったりで、繊細な音にじっくりと耳を傾けて聞きたくなる。



Check Move D
| HOUSE14 | 19:00 | comments(1) | - | |
DASCO - African Power (Local Talk:LT102)
DASCO - African Power
Amazonで詳しく見る(MP3)

ここ数年のクロスオーヴァーなハウスに於いては特に人気を博しているスウェーデンのLocal Talk。ベテランから若手まで多くの強力なタレントを抱えるレーベルに、また新星がカタログに名を連ねる事となった。現在はベルリンを拠点とし活動するイスラエルのDJ/プロデューサーであるDascoは、2017年にHousewaxからデビューしたばかり。バイオグラフィーを参照するとシカゴやデトロイトのレジェンドに影響を受けて、ディスコやテクノ、アフロにトライバル、アシッドなどをハウス・ミュージックに取り込んだ音楽性との事で、特に血の通った感情性を強く意識しているようだ。そしてこのEPである、本人の新曲と共に注目すべきはTrinidadian DeepとAnthony Nicholsonのディープ・ハウスの実力派2人がリミックスを提供している事で、こういった事からも周りからの彼女への期待や評価は大きい事は伺える。勿論彼女のオリジナルが素晴らしい事は言うまでもなく、そのタイトル通りにアフリカンなパーカッションを強調した"African Power"では生々しいベースラインも躍動し、そこに祝祭感のあるホーンや煌めきのあるシンセのリフを合わせて、生っぽさとエレクトロニックが自然と融合した陽気なアフロ・ハウスを聞かせる。"Keep Movin'"はよりざっくりとしたパーカッションが土着的なグルーヴを刻むトライバルな性質があり、小刻みに入ってくる乾いた太鼓の音は何処までも爽快に広がりつつ、そこに伸びやかなパッドが加わってくれば、土臭い風を吹きながらも重力から開放されたように浮かんでいく心地好いディープ・ハウスとなる。どちらもダンスフロアを刺激するグルーヴ感、そして揚々としたポジティブなエネルギーに溢れており、新人ながらも間違いのない才能が光る曲だ。リミックスの方もそれぞれ音楽性が正しく反映されており、"African Power (Trinidadian Deep Remix)"の方は原曲よりも滑らかなグルーヴ感と優美な鍵盤ワークを活かしたディープ・ハウスへと塗り替えられ、ベテランらしい円熟味のある大らかな作風だ。"Keep Movin' (Anthony Nicholson Mediterranian Disco Remix)"の方は芯のあるキックで4つ打ち感を強調しているがこちらも綺羅びやで繊細なピアノ等の鍵盤を配置して、希望の光が溢れ出すフュージョン・ハウスで、力強さとエモーショナル性が一つになっている。



Check Dasco
| HOUSE14 | 18:00 | comments(0) | - | |
Pepe - Life Signs EP (Church:CHURCHM006)
Pepe - Life Signs EP
Amazonで詳しく見る(アナログ盤)
 Amazonで詳しく見る(MP3)
Pepeといっても鬼才Bradockではなく、スペインのプロデューサーJose Bernatのプロジェクトは、2016年頃から作品をリリースし始めた事からすると比較的若手のアーティストなのだろうか。過去の作品を聞いてみるとロウな質感のハウスやメロディアスで陽気なテックハウス、またはエレクトロ調やオールド・スクールなハウスと、EP毎にやや振れ幅を持っているようだが、基本的にはフロアフレンドリーながらもどれも明るくエモーショナルな性質が感じられる。そしてこの2019年作、今やジャズやダウンテンポも吸収しながらクロスオーヴァーな方向性では特に先陣を切っているSeb Wildblood率いるロンドンのChurchからとなり、レーベルのブランド性もあってより一層Pepeの注目度は高まる筈だ。本作の特徴は何を差し置いても躍動的なブレイク・ビーツを用いている事で、"Life Signs (Roll Mix)"からして90年代風レイヴを思わせるしなやかなブレイク・ビーツを刻みつつ、そこに8ビット風の電子音やファンキーなサンプリングの効果音などを織り交ぜ陽気に展開する。そして中盤にはビートを消し去りつつドラマティックに展開するブレイクも差し込み、そこから美しいパッドも広がりながらアンビエント・ハウスな感覚もあったりと、跳ねるようなリズムに乗りつつ実にエモーショナルな作風だ。別バージョンとなる"Life Signs (Bleep Mix)"も大幅には変化はないものの、更にコンピューターゲーム風なメロディーが打ち出され、ピコピコな響きにはレトロフューチャーな味わいがある。"You Must Not Be Me"は序盤エレクトロ風なビートと繊細でキラキラする電子音に引っ張られつつ、途中からやはりブレイク・ビーツへと変化するも細く軽いリズムが爽快感を纏っており、透明感のある薄いシンセに覆われて太陽光を全身で浴びているような輝かしい響きは、多幸感に溢れていて屋外向けの曲だろう。そして意外な一曲が"Recollection"で、全くのビート無し状態に陽炎が揺らめくような幻想的な電子音のドローンが伸びるアンビエントは、それまでの激しいブレイク・ビーツなハウスとは対照的に、内向的なベッドルームのリスニング志向。快活に弾ける陽気なダンスからドリーミーなアンビエントまで、レトロな空気感を含みながらもどれも現在のレイヴやブレイク・ビーツが再燃するシーンに適合した音楽性で、これからを期待させるには十分な内容だ。



Check Pepe
| HOUSE14 | 18:00 | comments(0) | - | |
Haedong Seoungguk - Daegeum Dosa with D.K. Remixes (Tonal Unity:TU10)
Haedong Seoungguk - Daegeum Dosa with D.K. Remixes
Amazonで詳しく見る(MP3)

欧州やアメリカの話題が多かったクラブミュージックに於いても、ここ数年は中国や韓国のクラブの話題やアーティストもメディアで紹介される機会も増え、そんな国の台頭も肌で感じる事も少なくはない。店舗ではアジア勢のレコードも目に付く機会は確実に増えているが、本作は韓国からのEP。韓国はソウルの新興レーベルであるTonal Unityはアジア圏のオーガニックな音楽がコンセプトのようで、韓国のパーカッショニストであるHaedongを中心としたプロジェクトであるHaedong Seounggukによるものだ。EPの前には人間の初期の音楽がどんなものだったのかという探求から始まり、トッケビ(朝鮮半島に伝わる精霊)がお香を吸いながらドラムや弦楽器を演奏しているというストーリーに合わせた『Dokkaebi Play』というアルバムをリリースしていたのだが、そこから2曲がシングルカットされたのが本作。"CMU118 (Daegeum Dosa)"はその曲名通りに朝鮮の管楽器であるテグムをフィーチャーしており、Haedongによるジャンベやベルを始めとした大量の民族的なパーカッションはミニマルリズムとメロディーを刻んで、そこに即興のジャズのようにテグムが訝しいメロディーを重ねて、弛緩して気の抜けた流れながらもアフリカや東南アジアといった音楽性を越境しながらオーガニックなニューエイジを鳴らしている。"BMU442 (Keyboard Dosa)"の特徴はコントラバスの響きだろうか、血の通った温かさのある生き生きとしたベースに支えられ、快活なパーカッションによるリズムといかにもニューエイジな艶のあるシンセのメロディーが引っ張っていくその様は、エキゾチック・フュージョンと呼びたくなる。オリジナルの2曲は完全にリスニング向けの曲になっているが、このニューエイジ調な世界観にダンスフロアから召喚されたのはフランスで活動するDang-Khoa ChauことD.K.だ。バレアリック/ニューエイジ方面から注目され最近はロウ・ハウスにも接近してダンス化を強める彼が、ここでは当然ニューエイジとダンスの自然な邂逅のリミックスを披露している。"Daegeum Dosa (D.K. Senza Mix)"は原曲の世界観を守りつつ4つ打ちのリズムを加えているが、カラッとした爽快なパーカッションもあって軽い疾走感があり、最近のD.K.のダンス×ニューエイジ性がよく現れている。印象的なのは"Daegeum Dosa (D.K. Huru Mix)"で、弾けたようなダビーな音響のパーカッションを加える事により、原曲以上に野蛮なトライバル性を増して脈打つグルーヴを奏でて、何かに取り憑かれたように祭事の魔術的な雰囲気に染め上げている。何かの宗教か信仰か、我を忘れて踊り狂うような魅惑的な土着グルーヴは、ダンスフロアでも違和感の無い出来栄えだ。尚、何故かAmazonではリミックスのみの販売で、原曲が販売されていないのはあしからず。



Check Haedong Seoungguk
| HOUSE14 | 19:00 | comments(0) | - | |
Wolf Muller Meets The Nile Project Featuring Kasiva Mutua, Adel Mekha, Rapasa Nyatrapasa Otieno (Nouvelle Ambiance:AMBIANCE003)
Wolf Muller Meets The Nile Project Featuring Kasiva Mutua, Adel Mekha, Rapasa Nyatrapasa Otieno
Amazonで詳しく見る(MP3)

バレアリックやニューエイジの方面ではInternational FeelやGrowing Binといったレーベルからの作品で評価され、Bufiman名義では奇妙ななハウス/ディスコを手掛けるJan SchulteことWolf Muller。彼の音楽性を何か特定のものに当て嵌めるのは難しく、変異体的な奇妙な音楽性が特徴となっている。この2019年リリースの本作ではナイル川周辺の国々で活動するアーティスト集団であるThe Nile Projectとのコラボレーションを果たしていて、パーカッショニストのKasiva Mutuaとニャティティという楽器とボーカルでRapasa Nyatrapasa Otieno、そしてまたボーカルでAdel Mekhaの3人との邂逅によって、民族音楽の要素も強いMullerの音楽性が更に拡張を遂げる事となった。冒頭の"Mabomba Dance (Long Version)"は15分にも及ぶ大作で、Mutuaによる原始的なパーカッションとエジプトのアーティストであるAhmed Omarのボーカルを加えた曲だが、やはり特徴は生々しく胎動するパーカッション。人間の根源にあるダンスの欲求を刺激するライブ感溢れるグルーヴを刻み、そこにSchulteによる快楽的なベースや奇妙な電子音を散りばめ、更にOmarの呪術のような呟きも加わって正に魔術的というか祭事というか、メロディーに頼る事なく覚醒感を誘うトリッピーなトライバル・ディスコを永遠かと思わせるように聞かせる。"Ruoth Radido (Nyangile)"ではOtienoによる打楽器と弦が一緒になったニャティティがフィーチャされており、乾いて響く抜けの良いパーカッションと朗らかな弦の響き、そこにSchulteによる奇妙な振動のジャウハープ(口琴)も加わって、完全に緑の木々が生い茂る深い森の中の原始な響きが生まれている。"Moso Radido Wuod Ndege (Nyatiti)"もエキゾチックなニャティティの旋律がフィーチャーされているが、こちらはアナログで素朴なドラムマシンもリズムや民族的な歌も加わり、何だか民謡を来ているような懐かしい感覚がある。"Southern Voice"ではハンドドラムと歌をMekhaが担当しているが、不思議な打撃音と祈りのような歌が魔術かのように催眠的な効果を発して、土着とディスコが奇妙にブレンドされたリズム重視のツール的な性質が。どれも普通の4つ打ち中心のテクノ/ハウスのダンスフロアでは使うのは難しいかもしれないが、トライバルな要素なりワールド・ミュージックもミックスするDJプレイの中では自然と存在するであろう大地と共鳴する音楽で、Mullerの民族志向が特に強く打ち出されたEPとして面白い。



Check Wolf Muller
| HOUSE14 | 19:00 | comments(0) | - | |
Kapote - What It Is (Toy Tonics:TOYT090)
Kapote - What It Is
Amazonで詳しく見る(アナログ盤)
 Amazonで詳しく見る(MP3)
2012年頃に設立されまだ10年も経っていないにもかかわらずリリースは100以上、ジャズやファンクにディスコやハウスといった音楽性を強烈なダンス・グルーヴに纏め上げるToy Tonicsは、現行のダンスシーンの中で確かな存在感を放ちつつも流行り廃りとは無縁と言わんばかりに実直にブラック・ミュージックに根ざした音楽を追求する。ある意味では非常に分かりやすいというか、革新性や斬新性よりも王道を突き進むその姿勢はだからこそ信頼に足るレーベルで、フロアを沸かせるヒット曲を量産するのも当然だろう。そんなレーベルを運営するのがMathias ModicaことKapoteで、かつてはMunkを含む複数の名義でも活躍しており、既に活動歴は20年以上に及ぶ大ベテランだ。当然このKapoteの音楽性こそがレーベルの方向性を指し示すと言っても過言ではなく、ダンスフロア即戦力を目指すEP中心とした長いレーベル運営の中で、初のアルバムを担当するのがKapoteとなった事も自然な流れだろう。さて、このアルバムはKapoteがデビューして以降のEPからの曲も多く収録されており、結論から言うとキラートラックがふんだんに並んでいる。アルバムの幕開けを飾る新録となった"Jaas Func Haus"からして非常にファンキーなハウスで、うねりにうねるベースラインが先導しつつフィルター・ディスコ的なサンプリングと、Modicaによるピアノ等の鍵盤の演奏も加わり、粘性の高いブラックネスを生み出して強烈なファンクネスを発している。続く"Delirio Italiano"はそのタイトル通りにイタロ・ディスコの系列だが、しかし快楽的なシーケンスを活かしたイタロではなく、もっと根源的で生の煮えたぎるような音を打ち出したディスコティックな作風が強烈なパワーを秘めている。先行EPの1曲である"Brasiliko"はブラジルのディスコを意識したのか非常にリズミカルだが、一方で流麗なフルートや耽美なエレピのソロ、そしてしなやかに美しくストリングスが舞い踊り、ダンスグルーヴに溢れながらも心もしっとり濡れるような情緒的な曲だ。これもまた過去のEPからとなる"Fuck Music (Short)"、フィルターの開閉で展開を付けているフィルター・ハウスを軸にした典型的な意味でパーティー・チューン、勢いと陽気な雰囲気もあってフロアも盛り上がらないわけがない。配信のみに収録された"Spacedrum"はダウンテンポというかヒップホップ調で、ゆったりとしながらも腰を横に揺さぶるグルーヴ感とメロウな鍵盤コードや麗しいシンセのメロディーで、落ち着いたファンクネスを演出。Toy Tonics自体はドイツのレーベルではあるが、そういったドイツのテクノ然とした音楽性よりはNYやロンドンのハウスに影響された音楽性がアルバムに現れており、流行とかは無縁でありながらしかしサンプリングと生演奏を巧みに活かしたダンス・トラックは非常に強烈だ。



Check Kapote
| HOUSE14 | 12:30 | comments(0) | - | |
Byron The Aquarius - Astral Traveling (Mutual Intentions:MI-016)
Byron The Aquarius - Astral Traveling
Amazonで詳しく見る(アナログ盤)
 Amazonで詳しく見る(MP3)
2016年にS3AのSampling As An Art Recordsからデビューするやいなや、Kyle HallのWild OatsやTheo ParrishのSound Signatureから立て続けにEPをリリースし、一躍注目を浴びる事となったアラバマ出身のByron The Aquarius。ファンクやジャズにヒップ・ホップまで吸収しながらハウスのフォーマットに纏めた音楽性は、DJが使えるクラブトラックのマナーに沿いながらもキーボーディストである手腕を活かして、豊かなメロディーの展開やライブ感溢れるグルーヴが存在し演奏家/作曲家としての面が強く打ち出されたものだった。新人なのにその完成度…というのも実は当然で、The Big Paybackというバンドでの活動を始めとして他アーティストの制作にも加わったりと、実は10年以上の音楽経験がある熟練者なのだからそれも納得の事だったのだ。そしてソロデビューを果たしてから3年、待ちに待っていたアルバムは当然の如くほぼ自身で楽器を演奏し、曲によっては歌まで披露するなどやはりプレイヤーである事に拘ったアルバムだ。過去の音楽性から全くぶれる事はなく、ジャズやソウルにヒップ・ホップからハウスまでが見事なまでに一つに溶け合った音楽は、全く外れがなく貫禄十分で実にベテランとしての横綱相撲的な内容だ。出だしのメロウな"Love Is 4 U"からして素晴らしく、切ないピアノのコードと美しく伸びるストリングス、そこにフェンダー・ローズが優しく情緒を付け加え、自身の霞んだような歌も相まってより郷愁が強く発せられるハウスから魅了される。"Sorry Kari (Lu$t)"でも優雅なストリングス使いとピアノ等の鍵盤ワークが印象的なハウスだが、そこにエレクトロニクスのループや咆哮するギターソロも加わってくると途端にファンキーさを増す。一方では完全にジャズに振り切れてインプロビーゼーション的に各楽器がのびのびとソロワークを披露する"Lost In Love (Intermission)"は燻し銀な渋さがあり、同じジャズ色が強めながらもビートが入り光沢を見せるような鍵盤が美しい"Deep In That *****"はコズミックなジャズと呼べばよいか、どちらも湿ったような情緒的な曲だ。気怠い呟きと優雅なコーラスから始まり、フュージョン的なシンセソロや透明感のある耽美なフェンダー・ローズとサックスを重ねてエモーショナルに展開するハウスの"Universal Love"は、アルバムの中でも特にうっとりさせられる。アルバム終盤はヒップ・ホップで纏めており、ビートレスながらも自身で軽快なラップを披露しヒップ・ホップの雰囲気を生む"Spazzing Out (4 U)"、ざっくりとスモーキーなダウンテンポに湿っぽいエレピコードを合わせて温かい感情に包んでいく"I Can't Help My$elf"と、最後は盛り上がった気分を徐々に落ち着かせるようにアルバムを締め括る。最初から最後まで見事なまでに捨て曲無しでByron The Aquariusらしいプレイヤーとして演奏力を発揮しつつ、勿論クラブでも違和感のないダンス性が込められた感情性豊かなアルバムは、デビュー作にしてほぼ彼の音楽性が完成されているように思える程だ。流行とか時代に関係なく、クラシック的なハウスとして魅力的である。



Check Byron The Aquarius
| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Stump Valley - Natural Race (Dekmantel:DKMNTL072)
Stump Valley - Natural Race
Amazonで詳しく見る(MP3)

イタリア人二人組のユニットであるStump Valleyは、Dekmantel Festival/Dekmantel Selectorsにも出演するなど着実に知名度を上げているにもかかわらず、メディアでは大きく紹介される事は少なく未だにミステリアスな存在感を保っている。過去にはジャズやアンビエントも咀嚼したディープ・ハウスの『Recorded At Summer Forest Camp』(過去レビュー)、「禅」の精神をコンセプトにしながらも長閑なバレアリックに接近した『森林』(過去レビュー)など幾つかのEPをリリースしているが、その作品毎にやや音楽性を変化させているのでまだ真価を掴めない所もあるが、アナログ的なロウな音質でしっとりと聞かせるようなリスニング向きな作風という点が特徴だろうか。そしてデビューから5年、首を長くして待っていたアルバムは今や一大レーベルとなったDekmantelからとなるが、ファンクやジャズにディスコが混在し今までの総決算的な内容となっていて素晴らしい。レーベル側の紹介では「バレアリックなアナログ感覚、シカゴ・ハウスの温かさに、最終的にはイタリア音楽」との事だが、その説明もしっくりくる。開始の"Natural Race"はボーカルも起用したスロウテンポなハウスだが、透明感のある美しいシンセのコードや控えめながらも多幸感のあるシンセベースもあって、けばけばしくはないもののイタロ・ハウス的な快楽性が静かに存在している。続く"Marimbamba Isle De Joie"ではアタック感の強いドラムがシンセ・ファンクを思わせ、鍵盤やマリンバの可愛らしい響きとシンセの光沢感ある響きが入り混じり、ローファイかつスローモーなディスコでじんわりと耳を魅了する。対して"Barrilete Cosmico"はアッパーなシンセ・ファンクで、こちらは強いキックがリズム刻みそこに爽快なシンセ・パーカッションが被さり、優雅な鍵盤のメロディーと相まってリズミカルに体を揺らす。生っぽく温かいベースとジャジーなグルーブが印象的な"Barrilete Cosmico"では美しく舞うようなエレピソロもあってジャジー・ハウス風だが、"Proletarians In Space"になると音は錆付いておりローファイな響きとジャジーな雰囲気はデトロイト・ハウスの流れを思い起こさせ、電子的な音響ながらも生々しいグルーヴを生んでいる。"Ritmo Atomico"辺りはスリージーなシカゴ・ハウスの影響も匂ってくるが、快楽的な上モノのループや妖艶なメロディーは今風でもあり、ドラッギーにフロアを染め上げる強烈なダンストラックになっている。アルバムを通して以前よりもフロアを意識した曲調が増えてディスコやファンクの成分が更に増えた感はあるが、しかし彼等らしいバレアリックやアンビエントといった雰囲気も無いわけではなく、そういった意味ではダンスとリスニングの均衡をとりながらアルバムとしての安定感が備わって聞き応えは文句無しだ。今後どういった方向性へ進むのか?という興味も尽きないが、一先ず初のアルバムはファンの期待に応えた充実作だ。



Check Stump Valley
| HOUSE14 | 18:30 | comments(0) | - | |
Dazion - A Bridge Between Lovers (Second Circle:SC013)
Dazion - A Bridge Between Lovers
Amazonで詳しく見る(MP3)

2017年にMusic From Memory傘下のSecond Circleからデビューを果たしたCris KuhlenことDazion、無国籍な雰囲気と初期シカゴ・ハウスのローファイ感が一体化したユニークな音楽性が評価され、次のSafe TripからのEPはトライバルかつバレアリックな作風へと向かい、新星ながらも確かな評価を獲得しているアーティストの一人。再度Second Circleへと帰還してのこの2019年作では更に変化を見せて、バレアリックやブギーにフュージョンといった音楽が溶け合い、これまで以上にロマンティックかつメロウな世界観で聞く者を魅了する。何と言っても素晴らしいのは"Eu Nao Sei"で、土臭いパーカッションを用いつつ泣きのスパニッシュギターと美しいシンセのコードがドリーミーに鳴り、アシッドサウンドが効果音的にヒプノティックに用いられながらも気怠い呟き風の歌がメロウネスへ染めるバレアリック・フュージョン。鳥の囀りのサンプリングや木琴らしき音も聞こえ、温かくオーガニックな響きが全体を纏めていて、自然豊かな風景が浮かぶ感動的な一曲。一転してローファイなリズムマシンのドラムがいたない"Eberhardt Smurkface"はエレクトロ・ファンクと呼べばよいか、そこでは人の声を真似たようなシンセやトリッピーな電子音が印象的で、そこにインドネシアらしき土着的な楽器の響きが訝しさを生んで、よりファンクネスを強調する。"Sake Boogie City"もトライバルで生々しいドラムマシンが荒くリズムを刻み、そこに耽美なピアノや物憂げな笛の音色などが交互に現れくるが、ライブ感のある音質がバンドが一体となってファンクを演奏しているかのようである。"Bond Of Souls"はレーベル性の一つでもあるニューエイジ色が強く、前述のように深い森の中で鳴っているような土着的なパーカッションは用いつつも、朧気でミステリアスなシンセのレイヤーが霊的なニューエイジに染め上げている。アフリカンと中近東辺りの音楽が混ざったような"A Bridge Between Lovers"は弦の音色がスモーキーで謎めいた印象を作り、キックレスではあるものの爽快な響きのパーカッションが心地好いグルーヴとなって、軽快に体を揺らす。電子楽器がらアコースティック、スパニッシュや中近東にアフリカまで、色々なジャンや国籍が混ざって雑多ながらも、しかし音楽としてDazionという一つの世界観に纏まっておりDazionの個性となっている。こんな豊かな音楽性であればEPという小さい枠組みではなく、是非ともアルバムへと発展させてより豊かな世界観を見せて欲しいものだ。



Check Dazion
| HOUSE14 | 17:00 | comments(0) | - | |
Floorplan - Supernatural (Aus Music:AUSCD012)
Floorplan - Supernatural
Amazonで詳しく見る(US盤)
 Amazonで詳しく見る(MP3)
デトロイトの反骨精神の塊であるUnderground Resistanceのオリジナルメンバーからキャリアが始まり、その後はミニマルテクノの始祖の一人にもなったRobert Hoodが、しかし近年特に人気を獲得しているプロジェクトがファンキーなディスコ・サンプリングのハウスを武器にしたFloorplanだ。元々骨太なグルーヴのテクノで硬派さを強調していた彼が、黒人音楽としてのディスコをハウスに落とし込み、芯の太いグルーヴはそのままに強靭なファンクネスを聞かせるこのプロジェクトは、本人名義のミニマルテクノよりも派手派手しい響きが分かりやすく盛り上がれる魅力となり人気を博す事になったのだろう。今では娘のLyric Hoodも加わり二人体制となったこのプロジェクトだが、今回以外にも自身のM-PlantではなくAus Musicからのリリースとなった3枚目のアルバムは、結果を言ってしまえばややマンネリから脱却出来ずに、以前程のアンセム級の曲は少なくなっているように感じられるが、しかしLyricとのタッグも馴染んできてテクノのパワーとハウスのソウルを巧みに混合して安定感のあるアルバムにはなっている。以前に比べるとややテクノ色が強くなっているかと思うのは、例えばピアノコードを用いながらもドスドスとした太いミニマルなキックや刺激的なハイハットを活かした4つ打ちの"There Was a Time"や、怒涛のキックや切れのあるハイハットにミニマルな電子音のループを重ねてツール性を強調した"Dance Floor"など、生々しいファンクネスよりは電子的な響きによるクールなテクノといった趣きがそう思わせるに違いない。先行EPの1曲でもある"Fiyaaaa!"も粗い質感を活かしたリズムはシカゴ・ハウス風にも聞こえるしミステリアスなオルガンがオールド・スクール感を滲ませるも、やはり単調な構成がミニマルなテクノの雰囲気と似通っており、Floorplanらしいファンキーさはやや影を潜めている。従来型と言うべきか特にファンが期待するディスコ・サンプリングなハウスも無いわけではなく、華麗なピアノコードと感情的で熱いシャウトを用いて血の通った汗臭いソウル性を聞かせる"Brothers + Sisters"や、ハードなトラックながらもオルガンの魅力的なコード展開と歌手を起用してゴスペル的に祈りを捧げるような"His Eye Is On The Sparrow"と、こういった曲にこそ本人名義のテクノとは異なるFloorplanの黒人音楽をルーツに持つ魅力が強く現れている。"Song Like This"はよりゴスペル・ハウスらしく賑やかなファンキーさが溢れており、騒がしく盛り上がるディスコフロアの真っ只中の状態だ。ややアルバムとしては纏まりに欠けるしかつてのアンセム級の曲もあるわけではないが、Lyricとのタッグによってアイデアや技術でのバリエーションを得た上で広がりを持ったとも考えると、このプロジェクトとして前進とも捉えられるだろうか。他のデトロイトの重鎮達が鳴りを潜める中で、今も尚前進を続けるアーティストとしての評価に陰りはない。



Check Robert Hood
| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | - | |