Shinichiro Yokota - I Know You Like It (Far East Recording:FER-06916)
Shinichiro Yokota - I Know You Like It
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「こういう音が、いいんだろォ…?」こんなCD帯のあおりに笑わずにはいられない横田信一郎のニューアルバム。今となってはジャパニーズ・ハウスの創世記のレジェンドとなったSoichi Terada(寺田創一)と活動を共にしながら、しかしネームバリューでいえば寺田の大きな存在に隠れがちではあったものの、寺田と共に長く活動をしていただけありそのハウス・ミュージックのシンプルさが生み出す素晴らしさは寺田に負けず劣らずだ。90年初頭からリリースをしているだけありNYハウスに影響を受けてリズムマシンによるシンプルなビートとベース、そして綺羅びやかなピアノや流麗なシンセによるキーボード主体のサウンド、そして和的なポップ感覚を載せたハウス・ミュージックは、シンプルが故に時代が経とうとも色褪せない強度と普遍性がありだからこそ今再度注目を集めているのだろう。そしてこの新作である、冒頭のあおり文句まんまにファンが期待するクラシカルなハウス・サウンドは良い意味で変わらない。新曲である"I Know You Like It"から直球ハウス、ソウルフルな歌と凛としたピアノのコード、贅肉を落としながらも跳ねるハウスのビート感であっさりした響きだが、ポップさ弾けるメロディーや美しいシンセの伸びがぐっと心を熱くする。"Tokyo 018 (Watashi Wa Tokyo Suki)"はなんと寺田との15年ぶりの共同制作だそうだが、可愛らしいシンセの音色やエフェクトを掛けたボーカル等からは確かに寺田の影響も感じられ、そしてシンプルなビート感と鍵盤を用いた流麗な展開のシンセコードには二人の音楽的な相性の良さが現れている。ややブレイク・ビーツでズンドコと重厚感のあるリズムを強調した"Time Travelling"も内向的な鍵盤と哀愁奏でる歌がしんみり切なさを誘い、"Gypsy Woman (She's Homeless)"を思い起こさせるキャッチーなピアノ使いが印象的でざらついて安っぽいビートは跳ね感がある"Take Yours"は途中からふざけたようなアシッド・サウンドも加わりユーモラスで、どれもシンプルではあるが丁寧に個性が込められている。YMOカバーの"Simoon"含むラスト3曲は実は90年前半の曲ではあるが、それがら新曲と並んでいても全く違和感なく聞こえるのは、やはり横田の音楽性が当時から大きくは変わってないない事を示している。90年代のハウス・ミュージック黄金時代が蘇る横田の音楽、決して新しいとか革新性があるとかではないが、「これでいいんだよォ!」と太鼓判を押したいアルバムだ。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Jura Soundsystem - Monster Skies (Temples Of Jura Records:TEMPLE 002)
Jura Soundsystem - Monster Skies
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ディープ・ハウスのレーベルとして人気アーティストも多くカタログに名を連ねるTsuba Records、その主宰者であるKevin Griffithsがレフトフィールドなディスコ・クラシックの再発を目的としたIsle Of Jura Recordsを近年立ち上げているが、そこから更に発展して現在のディスコを展開するために派生したのがTemples Of Jura Recordsだ。そのレーベルからリリースされた本作はJura Soundsystemなるアーティストによるものだが、実はGriffiths自身によるユニットで、普段はファンキーなディープ・ハウスを制作する彼も当然この名義ではレーベル性を意識したディスコ寄りな作風で、そこにはブギーやバレアリックにトロピカルといった要素も混在している。"Carafe Denim"はプロト・ハウス的な垢抜けなさもある音によるトロピカルな豊かさがある曲で、しかし少ない音のすっきりした構成を活かして何処までも地平が広がっていくような開放感に溢れている。ドタドタと辿々しいリズム感の"Mamma Capes"は生音の強いディスコ風だが、咆哮するギターの爽快感とカラフルなシンセ音や効果音を被せて長閑なバレアリック性を演出している。"Monster Skies"はアンビエントやレフト・フィールドを打ち出した曲で、深い森の中を想起させる鳥の囀りらしきフィールド・レコーディングに原始的な打楽器の音色と民族的な歌を被せて、未開のジャングルへと迷い込んだようだ。一転"Boogie Tune"はタイトルそのままにシンセ・ブギーで、ぶいぶい呻く電子的なベース・サウンドと軽やかなパーカッションも効いた腰に来るリズム感で体を揺らし、"Parrot Rhythmic Space Jam"も同様にブギーかつエキゾチックな雰囲気だがこちらは透明感のあるシンセがふんわりと浮遊してドリーミーな微睡みに包み込む。曲毎に色々な要素を持っており広範囲な音楽ではあるが、全体的にどこか懐かしさを感じるレトロなマシン・ディスコをベースにした統一感があり、レーベル/アーティストの方向性を明確に示している。勿論現行バレアリック好きにもぴったりな内容だ。



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| HOUSE14 | 18:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
S&W - A Weekend Far Out (Dub Disco:DuDi005)
S&W - A Weekend Far Out

2016年末にDub Discoからデビューを果たしたものの、その後2年間作品のリリースがなく、2019年の初頭にようやく初のアルバムを完成させたS&W。ベルリンを拠点に活動するデュオのS&Wは自らの音楽をイタロ・ディスコと述べているが、熱帯の観葉植物の先に広がる海景色を投影したジャケットから感じられるのはトロピカルやバレアリックといった言葉だ。確かにデビューEPは比較的快楽的なシンセベースのラインと豊潤なシンセの高揚感を生かして4つ打ちが快活なイタロ・ディスコだったが、それから音沙汰もなく2年も経てば多少なりとも音楽の変化があってもおかしくはないが、このアルバムではディスコの要素は残しつつも肩の力は抜けてレイドバックしたバレアリック/ダウンテンポの要素が前面に出て、部屋に清涼な空気を持ち込むBGMとして優れている。引いては寄せる波の音の中から浮かび上がる、静けさを強調する長閑なフェンダー・ローズのコードから始まる"Arrival At The Shore"で既に大らかなアンビエント性を発揮し、続く"Ocean View Drive"ではポップな光沢感のあるシンセとまったりとしたディスコなビートによる夢心地なシンセ・ポップを披露し、"Cloud Place"では軽く弾けるシンセドラムのリズムに柔らかいヴィブラフォンや薄っすら情緒的なパッドを被せて実に清々しくも甘いドリーミー加減だ。"New Age Fantasy"はそのタイトルが示す通り序盤はビートレスでスラップベースとぼんやりとしたシンセが有機的で微睡んだニュー・エイジ風だが、途中からさらっとリズムも加わり捻られたようなシンセの響きが奇妙ながらもポップさに包んで、短いながらも牧歌的な癒やしとなる。比較的前作の路線に近い"Monte Pellegrino Part Part I & II"は9分にも及ぶニュー・ディスコ調だが、切れのあるファンキーなベースに乾いて爽快なパーカッション、そして透明感と伸びのあるパッドと丸みのある柔らかいマリンバらしきが生み出すトロピカルなリゾート感は、清涼な空気が溢れ出しつつドラマティックでアルバムの中で最も陶酔させられる曲だ。そして"After The Tempest"、正に嵐が過ぎ去った後の青空が何処までも広がり静けさが続くドリーミーなダウンテンポと、アルバム全体を通して曲名からもバレアリックな雰囲気が実直に伝わってくる。2年間という沈黙の間に熟成したかの如く清涼なバレアリック性を獲得し、真夜中のクラブとは対照的に日中の屋外は太陽の光の下で聞きたくなる開放感のあるアルバムを完成させたS&W、これは注目すべき存在が現れたものだ。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Marvin & Guy - Solar Warriors (Life And Death:LAD042)
Marvin & Guy - Solar Warriors
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2012年にリリースされた『Let's Get Lost Vol. 14』に収録されていた国産アーバン・ディスコの名作「Tonw」のリエディットは、その年のパーティーでは頻繁に耳にするなど世界的にヒットしたのも懐かしく、また現在に繋がる和モノのブームの流れの中にあった。それを手掛けていたのがイタリアのデュオであるMarvin & Guy、中身はMarcello GiordaniとAlessandro Parlatoreで、前述のヒット作以降もコンスタントにEPをリリースし、それ程の爆発的ヒットはなくてもギラギラしてスペーシーなニュー・ディスコによって人気を博している。2019年初頭にリリースされた新作も作風は既に完成している事から良くも悪くも金太郎飴的なニュー・ディスコで、だからこそ安心して聞く事の出来る内容になっている。Alloをボーカルに起用した"Notte"は特にギラついた曲で、初っ端から毒々しいシンセの伸びと麻薬的なシンセベースが効いていて、そこにスペーシーな呟きも加わりピアノの快楽的なシンセのフレーズも被せられ、徐々にビルドアップしていくニュー・ディスコなスタイルは恍惚へと導く。"Idra"ではPerelをボーカルに迎えているが、こちらはカラッとした爽快なパーカッションと潰れたようなドラムのビート感、そしてダークでブイブイとしたベースラインがよりディスコティックな雰囲気を作っており、そこに美しも妖艶に伸びるパッドやセクシーながらもどこか退廃的なスピーチが派手な世界観の中に何か影を落とすような狂おしくもドラマティックな曲。それらに比べると"Stige (9AM Mix)"はやや地味な作風だが、軽く疾走するビート感に浮遊感のある煌めくシンセを用いて、スペーシーな世界へと誘うムーディーなディスコだ。8ビット風のコミカルな宇宙旅行のジャケットも、収録された3曲の世界観に見事にマッチしている。



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| HOUSE14 | 17:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Tkumah Sadeek - I Will Be There / Till I See The Light (Future Vision World:FVW-008)
Tkumah Sadeek - I Will Be There Till I See The Light
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シカゴのディープ・ハウスの巨匠であるRon Trentが近年運営をしているFuture Vision Worldが2018年末にリリースしたEPは、Trentの作品にも過去に度々ボーカリストとして参加しているTkumah Sadeekによるもの。Trentの作品以外では名前が見られずどういったアーティストなのかは分からないが、本作でもTrentの全面プロデュースによってそのトラック自体は完全にTrentの新作と呼んでも差し支えないジャジーなディープ・ハウスになっており、ファンならば文句無しの出来だ。薄っすら耽美なシンセやジャジーなリズムから始まる"Till I See The Light"はその時点でもうTrent節が炸裂しているが、徐々に乾いたパーカッションが弾け優美なピアノが踊り情熱的なSadeekの歌によって微熱を帯びて盛り上がってくる。そしてラテンやジャジーな感覚にエレガントという表現が相応しい雰囲気を纏い、そして中盤かはらコズミックなシンセソロも入ってきてタイトルが示すように眩い光を望むようなポジティブな空気に包まれる音楽は、完全にTrent流のシカゴ・ディープ・ハウスに染まっている。そして注目なのは2014年に系列のFuture Vision Recordsよりリリースされていた曲をJoe Claussellがリミックスした"I Will Be There (Joaquin "Joe" Claussell's Cosmic Arts Version)"で、元々はアフロなパーカッションが効きながらも幻想的でアンビエントな浮遊感のあった甘いディープ・ハウスを一体Joeがどのように塗り替えたのか。このリミックスでは元の印象を大きく変える事はないが原曲以上に爽やかなラテン・パーカッションが空へと響き渡り、コズミックなSEもさらっと盛り込みつつフラットなビート感を活かして爽快に疾走るソウルフル・ハウスへと変化している。大胆な鍵盤ソロも持ち込んでぐっとエモーショナル性も増し、弾けるパーカッションが快活にリズムを刻み、近年は実験的な音楽性に偏りがちなJoeにしては随分と以前の作風を思い起こさせる宇宙感やスピリチュアル性もあるソウルフル・ハウスに一安心。古臭い意味だけでなく時代を越えていくという意味でクラシックと呼ばれるハウスにも含まれる、実にJoeらしいリミックスだ。



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| HOUSE14 | 09:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Rudy's Midnight Machine - La Cadenza (Faze Action:FAR038)
Rudys Midnight Machine - La Cadenza
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片隅に見える熱帯植物があるだけの単純な構図からバレアリックやチルな空気も漂ってくるジャケット、その感覚は恐らく間違っていない。手掛けているのはUKにおいてニュー・ディスコの隆盛に貢献してきたFaze Actionの一人であるRobin Leeで、Rudy's Midnight Machine名義としてはこれで4作目と活動的なプロジェクトではないものの、ジャケットからも想像出来るトロピカルかつアーバンな要素があるバレアリック・ディスコは総じて質が高い。本作は特にフュージョンやブギーの音楽性によるレトロ感も漂っており、キラキラしたシンセと情緒を醸すエレピから始まる"Camera Dans La Nuit"はのっけからフュージョン感爆発で、落ち着いたディスコ・ビートに合わせ豪華だったり優雅な複数のシンセが彩り、実に感情的に展開するドラマ性の強いディスコだ。"Une Vie Elegante"なんかはすっきりしながらも切れのあるリズム感、シンセやパーカッションもさらっと弾けるように聞かせながらファンクな躍動感を打ち出し、しっとりしたエレピで優美に染める作風はLevel 42辺りを思い起こさせるジャズ・ファンクだ。タイトル曲の"La Cadenza"は序盤はビートレスな状態をコズミックなシンセのアルペジオで引っ張っていき、そこからリズムが入るとスローモーでしみじみとしたディスコへと入っていくが、湿っぽく有機的なギターカッティングやベースがライブ感も持ち合わせている。"Secret Garden"は特にメランコリーに満たされた曲で、薄いパッドを配しながらもビートレスな構成で、爪弾の切ないギターや悲哀に満ちた繊細なピアノのメロディーで静かに聴かせるこの曲はサウダージだ。どれも味わいとしては素朴で懐かしみの強いディスコがベースになっているが、モダンなバレアリックにも共鳴する世界観やクリアな音響もあり、現在形のディスコとして素晴らしい。



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| HOUSE14 | 09:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Idjut Boys - By The Way.. You Idjut (OCTAVE-LAB:OTLCD5550)
Idjut Boys - By The Way.. You Idjut
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ディスコ・ダブの先駆者であり今も尚開拓を続けるDan Tyler & Conrad McDonnellによるIdjut Boysは、ディスコ・ミュージック等への深い愛情と造詣を元に、そこにハウスやサイケ・ロックにダブといった音楽の要素を持ち込み、更にダブ処理を加えた音楽によって新しいダンス・ミュージックを生み出したのが90年代前半の話。当然オリジナル作品のみならずディスコのリエディット作品やDJに対する評価も高いのは言うまでもないが、そんな彼等だからこそこのSalsoul Records音源縛りのMIXCDを制作したのも自然の流れと言うべきだろうか。1974年に設立されたニューヨークのSalsoulは文字通りサルサとソウルをかけ合わせたようなファンクやディスコを手掛け数々の名作を生み出し、その後はかのLarry LevanらのDJが積極的にプレイした事により、現在でもハウス系のパーティーではよくプレイされる定番レーベルの一つとなる程に強い影響力を持つ。そんなレーベルの音源の幾つかをIdjut Boysがエディットし、そして膨大な名作が存在するレーベルから音源を選び、更にリアルタイムでいじりながらミックスをするのだから興味が湧かないわけもないだろう。ライナーノーツに依れば「数多くのお気に入りの曲を敢えて入れなかった」と述べているが、"Let No Man Put Asunder"や"Ten Percent"に"My Love Is Free"といった人気曲は確かに用いられていない。であれば地味な作品なのかという疑問もあるが、やはりそこはIdjut Boysのセンスのなせる業で、幕開けから"You're Just The Right Size"と"Ooh I Love It (Love Break)"をマッシュアップしダブ処理を加えて、紫煙が揺らめくサイケデリックな演出を行いつつ、そこに奇妙な電子音が鳴りつつゴージャスなオーケストラやベースがファンキーにうねる熱量高いディスコの"Into The Milky Way"を繋ぎ、序盤からディスコのソウルフルな感情性や煌めくサウンドが発揮されている。"High"にしても強烈なダブ処理による快楽性にずっしりとした重い低音が力強いグルーヴを生み、また"(You've Got) That Something"ではエモーショナルなコーラスワークと凛としたピアノの響きに魅了されるソウルフルなディスコを聞かせ、"Be Mine Tonight"では光を放つようなシンセを前面に出したシンセ・ファンクで都会的な綺羅びやかさを体験させるなど、一言でディスコと言っても様々な表現があるのだ。ディスコの魅力を損なう事なくIdjut Boysが手を加える事でオリジナル以上の強いグルーヴを得て、そしてゴージャスな派手派手しい響きや美しいオーケストラ、汗が吹き出る熱いギターやベースのファンキーな鳴り、乱れ打つパーカッションやけたたましいドラミングといった要素を含むディスコが、感情性豊かに陽気でハッピーな世界観を作り出している。知名度のある名曲を集めただけのMIXCDとは一線を画しながらも、しかし例えばディスコに知識の無い人にとっても心躍らせるであろうディスコとディスコ・ダブの魅力がふんだんに詰まったDJプレイで、ディスコ好きな人にとっては勿論そうでない入門者にとってもお薦めな一枚だ。

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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Fouk - Truffles EP (Heist:HEIST037)
Fouk - Truffles EP
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Detroit Swindleが主宰するHeistはブラック・フィーリング溢れるディスコ〜ビートダウン系を得意とするディープ・ハウスのレーベルでは頭一つ抜けており、事実これからを担う強力な新世代を多く抱えて素晴らしいハウス作品を多くリリースしている。Foukもそんなレーベルにおいて台頭する期待のアーティストだが、個別にも活動するDaniel LesemanとHans Peeman a.k.a. Junktionがタッグを組んだこのユニットは、HeistだけではなくRazor N Tape ReserveやHouse Of Disco等からもディスコやファンクを咀嚼したライブ感溢れるハウスを手掛けて注目すべき存在だ。タイトル曲の"Truffles"からしてパワフルさとエレガンスが共存しており、序盤こそからっとしたパーカッションが爽やかに響き太い低音が効いたビート重視のハウスかと思いきや、中盤からはレイヴ風なピアノコードが派手に展開し煌めくシンセソロが鮮やかに彩りながら、ファンキーさ爆発の黒いハウスとなる。"I'll Be Down"はややテンションを落としてざっくりラフなビート感に、耽美な鍵盤のコードやエモーショナルなシンセのメロディーを合わせ、ソウルフルな歌も入ってくるとぐっと感情性を増して艶めく。ジャジー・グルーヴな"Need My Space"では色っぽく官能的なエレピやシンセがムードを作り、艶めかしいベースラインの動きもあってしっとりとアダルトな夜の帳が下りてきて、生っぽく温かみのあるディープ・ハウスはFoukの真骨頂だろう。またヒップ・ホップから始まりディスコやハウスにまで長けたHugo LXがリミックスを行った"I'll Be Down (Hugo LX Meteor Mix)"も秀逸で、ややビート感を滑らかに均してフラットな心地好さを作りつつ、原曲よりも更にしっとり情緒的なエレピや咽び泣くようなトランペット風のメロディーも追加して、色っぽく仕上げたリミックスは上品な官能性に溢れたディープ・ハウスだ。パーティーに於けるピークタイムにも合う曲もあれば、早い時間帯の落ち着いた雰囲気の中でも、または朝方の微睡みにはまる曲まで、それぞれにシチュエーションに適合しながらモダンなハウスとして流石の内容だ。



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Silvestre - Girar (Diskotopia:DSK045)
Silvestre - Girar
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A Taut Line (Matt Lyne)とBD1982 (Brian Durr)によって2011年に東京に設立されたDiskotopiaは、自身らの作品とまた世界各地のちょっと変わった音楽性を持つアーティストを、配信のみでリリースしてきたレーベルだ。テクノやハウスのフォーマットに何処か異邦の地の要素を盛り込んだようなちょっと奇抜な作風であるが、そんなレーベルが遂に物理メディアになるアナログでのリリースを開始。その第一弾が本作で、ポルトガルはリスボン出身で現在はロンドンで活動するJoao Silvestreによるもの。Silvestreは2015年にDiskotopiaからデビューしこのEPが同レーベルからは3枚目となるなど、レーベルの一押しのアーティストとも読み取れる。実際に初のヴァイナル作品に抜擢されたのも納得な充実作で、公式サイトの説明では「デジ・トロピカルの人工的なタペストリ」と述べられており、トロピカルなりエキゾチックなりの雰囲気があるハウス・ミュージックながらも完全オーガニックでもない作風は正にその説明通り。密林の中の響きを思わせるコンガのリズムに誘われる"Ir A Sagres"は、ミステリアスなアルペジオとドラッギーなベース・サウンドの効果もあって、土着的ながらもしかし色彩豊かな大自然の中のダンス・ミュージックで緩くもトリップ感がある。"Deptford Bus"はもう少しディープ・ハウス寄りなゆったりと落ち着いたグルーヴに朧気なパッドが叙情を演出するが、しかし刺激的なハンド・クラップや爽やかなタムも加わると途端に訝しいエキゾチック性が強くなる。"RC Surfer"はレゲトン×ダブ×ハウスみたいな跳ねたブレイク・ビーツと重い低音が特徴の曲で、ダビーな残響さえもが怪しくも官能的に広がり、このEPの中では異色ながらも雑食性を示している。そして最後の"Everybody Is Happy"は淡々としたブレイク・ビーツなハウスが下地になっているが、東洋の雰囲気がある笛らしきメロディーに引っ張られ、和のニュー・エイジ風な響きが今風っぽい。曲毎に異なるスタイルを披露しつつ国境を跨ぎながら融和する個性があり、その雑食性が面白いダンス・ミュージックとして成立している。



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Prins Thomas - Ambitions (Smalltown Supersound:STS344CD)
Prins Thomas - Ambitions
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2017年にタイトル通りに5枚目となるアルバム『5』(過去レビュー)をリリースした後も、Bjorn TorskeやBugge Wesseltoftとも共同制作を行い2枚のアルバムをリリースと、多忙な活動を続けているノルウェー産ニュー・ディスコの立役者の一人であるPrins Thomas。2016年の『Principe Del Norte』(過去レビュー)ではKLFやThe Black Dogにインスパイアされたアンビエントに挑戦したかと思うと、その次の『5』ではクラウト・ロックどころかアシッドへも手を出して、ニュー・ディスコという枠組みを越えてそのアーティスト性は探求の旅へと出ているようだ。そしてこの最新作は公式アナウンスではJaki Liebezeitや細野晴臣にDaniel Lanois、Shinichi AtobeにRicardo Villalobosらにインスピレーションを受けて制作されたとの事で、それだけ聞くとアンビエントの雰囲気をクラウト・ロック調にミニマルで展開したのか?と少々謎な印象を受けなくもないが、蓋を開けてみればニュー・ディスコを軸にしながらも更にジャンルの折衷主義な音楽性でアーティストとして深化を果たしている。アルバムの冒頭3曲はコンパクトな作風で、鳥の囀りも用いつつ牧歌的な風景が広がる自然主義的なノンビートの"Foreplay"で始まり、生っぽいビート感と湿り気を帯びて切なさを誘うシンセとファンキーなベースにぐっと胸が締め付けられるダウンテンポの"XSB"と、緩んでリラックスした楽天的なムードが先行する。Thomasにとっては初のボーカル曲となる"Feel The Love"は、これぞニュー・ディスコなブイブイとした快楽的なシンセベースともたもたとしたリズムが効いていて、そして甘ったるくも霞のような歌と相まってブギーながらも実にドリーミーな多幸感に包まれる。中盤の2曲は10分超えの大作でここでこそ前述のアーティストに触発されたのも何となく感じられるというか、土着的で乾いた乱れ撃つパーカッションに奇怪でスペーシーな電子音が飛び交い、快楽性を伴いながら酩酊するクラウト・ロック風なバンド・サウンド的でもある"Ambitions"は、Villalobosの時空さえも捻じ曲げてしまうようなミニマルのサイケデリアがあり、アルバムに於けるハイライトだろう。一方"Fra Miami Til Chicago"はクラウト・ロックとアンビエントの邂逅で、幻夢のサイケデリックなギターのフレーズに濃霧のようなドローンを被せジャーマン・プログレがもう少しダンス化したらを具現化しており、ぼんやりとした夢の中を彷徨い続ける甘美なバレアリックな雰囲気に身も心も融けてしまう。ダンス・ミュージックとしての体は残っているが、ハイエナジーな興奮に溢れたダンスフロア向けの音楽ではなくもっと精神へと作用する中毒的なサイケデリアが強くなり、ダンス/リスニングの境界を埋めながらニュー・ディスコの更にその先へ、Thomasの音楽性は深化と拡張を続けている。



Check Prins Thomas
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