Amp Fiddler - Amp Dog Knights (Mahogani Music:M.M 41 CD)
Amp Fiddler - Amp Dog Knights
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先日来日ライブを行ったばかりと近年精力的な活動を見せるデトロイトのベテランであるAmp Fiddler。2018年にはデトロイトのファンクバンドであるWill Sessionsとの共作である『The One』で、バンド演奏を中心としたライブ感溢れるソウルやファンクを披露していたが、元々はPファンク軍団でもキーボードを担当していただけありDJではなくプレイヤーとしての面からの音楽性で評価されるアーティストだ。しかしその前作でもある2017年にMoodymann率いるMahogani Musicからのリリースとなった本作は、当然クラブ・ミュージック寄りの内容とはなるがファンクだけでなくハウスにR&Bやヒップ・ホップなど、つまりはデトロイトの黒人音楽が息衝く内容で、そこには前述のWill Sessionsをはじめとしてデトロイトに根ざしたAndresや故James YanceyことJ Dillaに注目株のWaajeed、本作で多くの曲でボーカルを担当するNeco Redd、そして勿論Moodymann自身も制作に加わるなど多くのゲストを招いて、ソロ作品ながらも様々な表現を見せている。オープニングはラジオ番組を再現したようなサンプリングから始まるざっくりグルーヴィーなヒップ・ホップで、スモーキーな音像は正にデトロイトのビートダウン様式と言えよう。続く"Return Of The Ghetto Fly"は過去の作品のリメイクとなるが、ここではJ Dillaのトラックも用いてヒップ・ホップのリズムとPファンクの熱いゴージャス感があるコーラスが混じる熱量と粘性の高い曲となり、濃厚なブラック・ミュージックを展開する。"It's Alright (Waajeed Earl Flynn Mix)"は先行EPをWaajeedがリミックスした曲だが、かなりロービートでヒップ・ホップ寄りだった原曲よりも優しさに満ちたシルキーな響きのR&Bとなり、艷やかな官能に魅了される。勿論Mahogani直系な紫煙が揺らぐスモーキーで訝しくもソウルフルなハウスの"Good Vibes"もあれば、Will Sessionsも参加して舐め回すようなどぎつさがあるPファンク全開な"Put Me In Your Pocket"もありと、多くのアーティストを起用する事で多彩な音楽性に繋がっている。アルバムの後半も盛り上がり所は多く、メロウなコーラスを用いてしっとりと聞かせるざっくりと湿っぽいヒップ・ホップ"It's Alright"から、囁き声の色っぽい歌でMoodymannをフィーチャーしてアルバム中最もアダルトかつセクシーなR&Bとして聞かせる"I Get Moody Sometime"、そして何とNYハウスの大御所であるLouie Vegaが期待通りに力強くハウスの4つ打ちを刻みながらもエレピやシンセが華麗に彩るリミックスをした"So Sweet (Louie Vega Remix)"と、ダンス/リスニングといった区分けも関係なくこれぞMahoganiの熱くソウルフルなブラック・ミュージック節が全編貫いている。やはりキーボード奏者でジャズやファンクをルーツにするだけあって構成能力に長けたアーティストとしてどれも耳に残る魅力があり、ハウス・ミュージックという区分だけで聞くにはもったいない名作だ。



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D.K. - Mystic Warrior EP (Antinote:ATN046)
D.K. - Mystic Warrior EP
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Antinoteの主軸アーティストの一人、フランスはパリのDang-Khoa ChauことD.K.は同レーベルからニュー・エイジ/アンビエント/バレアリックという要素が一つになった作品をリリースしており、また近年はMelody As TruthからはSuzanne Kraftとの共作やMusic From Memory傘下のSecond Circleからも作品をリリースしていたりと、その流れを見れば基本的にはリスニング志向の強い音楽性である事は明白だ。(しかし45 ACP名義やSlack DJs名ではロウ・テクノやインダストリアルも披露しているが)。だからこそこのAntinoteからの新作がダンスへと向かった事にやや驚きは隠せないが、とは言っても単純にテクノやハウスという言葉で一括りにするのは難しいその音楽は、敢えて言うのであればニューエイジ・ハウスが適切だろうか。タイトル曲"Mystic Warrior"はロウでどたどたとした4つ打ちのリズムに金属的なパーカッションやジャングルを思わせるサンプリングを被せて、中盤以降になると鐘の幻惑的なフレーズやミステリアスなシンセによって更に異境の地を進んでいく訝しいハウスで、タイトル通りにミスティックな作風だ。"Elements"も同様に簡素でロウなドラムマシンの4つ打ちビートに不思議な打撃音のSEを合わせて随分とささくれだった響きだが、しかし尺八のような和テイストがある笛やエモーショナルなシンセのメロディーに引っ張られる中盤以降になると、途端にぐっと熱い感情性を増した瞑想感覚のあるハウスに成る。裏面の2曲はより奇抜な音楽性が発揮されており、詰まりのある変則的なリズムに深い森の中で鳴っているようなパーカッションが乱れ打ち、エキゾチックな笛や訝しいシンセが原始的な胎動を生み出す"Worries In The Dance"、奇妙なウォータードラムやベルに土着的なパーカッションが霊的な世界へと誘う何かの儀式のような"Earth People"と、D.K.のニュー・エイジ性が色濃く反映された作品と言えよう。フロアを意識しながらも単純なダンスでもない異形な世界観、これは非常に面白い変化だ。



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The Astral Walkers - Don't Fear The Sound (Needs Music:NE 020)
The Astral Walkers - Dont Fear The Sound

2017年末にリリースされた『Passage EP』(過去レビュー)で文句無しの相性を見せたAybeeとLars BartkuhnによるユニットであるThe Astral Walkers。テクノからハウスにダウンテンポに幅広くレフトフィールドな音楽性を持つAybee、そして元Needsとしてディープ・ハウスの素質は当然としてマルチプレイヤーでありフュージョン・テイストにまで才能を持つBartkuhn、その二人が組めばジャズやフュージョンにファンクといった要素を自然と融合させた壮大なハウスになるのは目に見えており、演奏家としての才能に裏打ちされたその音楽はクラブ・ミュージックが前提でありながらそれだけの枠で聞くのはもったいない位の魅力を放つ。さて、この新作はBartkuhn主宰のNeedsからのリリースという事もあり恐らく相当の自信作であろうが、本作でもギターやキーボードにパーカッションやドラム、そしてプログラミングまで彼等自身で全てをこなして、生演奏と電子音を用いながら豊潤な響きや壮大な世界観を持ったつまりはNeeds節全開のフュージョン・ハウスを展開している。15分にも及ぶ"Don't Fear The Sound (Full Expansion)"は正に全盛期のNeedsを思い起こさせる曲で、透明感のあるエモーショナルなパッドが舞い優美で繊細なピアノが滴るように被さるエレガントな幕開けから、ジャジー・ハウスなリズムが入ってきて走り出す瞬間に情熱爆発する泣くようなギター・ソロも加われば、それは壮大な宇宙空間が背景に広がっていくスケールの大きいフュージョン・ハウスと化す。自由で流麗なピアノ・ソロが気品を纏い爽やかなコーラスワークは情熱性を増し、生のパーカッションやリズムはざっくりとした響きで有機的なビートを刻み、長い曲構成ながらもそれを冗長と感じさせない豊かな展開が永遠と繰り広げられる。様々な響き、広がっていく展開を持ちながらもそれらがコテコテでやり過ぎに感じられる事はなく、寧ろ洗練されたアーバンな感覚へと昇華されているのはやはり二人の演奏家としての実力が本物である事を証明している。別バージョンとなる"Don't Fear The Sound (Astral Stroll)"はどちらかと言えばAybeeの音楽性がより強く出ているだろうか、弾けるパーカッションとハウスの4つ打ち感を強める事で大きく展開させるよりはミニマルな構成になり、Aybeeらしい奇妙な電子音の響きがギャラクティック感も秘めたよりクラブ・ミュージックらしい作風だ。"Full Expansion"が華やかさを纏い壮大な演出を繰り広げる一方、"Astral Stroll"はダンスへ視点を向けてディープに潜っていく作風で、表裏一体でそれぞれに各アーティストの個性が表現されている。これを聞けば二人の相性の良さはもう言う事無しなのだから、このままアルバム制作を期待したいものだ。



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| HOUSE14 | 15:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Crackazat - Magic Touch (Crackazat Reworks) (Local Talk:LTCD012)
Crackazat - Magic Touch (Crackazat Reworks)
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スウェーディッシュ・ハウス代表格のLocal Talkはハウスをベースにしながらジャズやフュージョンにテクノ等を交錯させ、ハイペースな量産体制ながらも質も保ち続ける稀有な存在だ。お薦めのアーティストを誰か一人というのは難しいが、しかしBenjamin JacobsことCrackazatもレーベルを代表する一人である事は間違いない。ブリストル出身で現在はスウェーデンで活動する元ジャズ・ミュージシャンであるCrackazatは、前述のレーベル性を兼ね備えて実にアーティストらしく優美なキーボードワークで魅了しクロスオーヴァーなグルーヴで踊らせもする間違いのない才能を持っている。さてこの新作はタイトル通りに全てCrackazatによるリミックス集で、これに先駆けてLocal Talk傘下のBeerからアナログでリリースされていたLocal Talk面子をリミックスした『Reworks』に加え、更にDJ SpinnaやTerrence ParkerにLay-FarらがLocal Talkからリリースした曲の未発表リミックスまでも加えた豪華な内容で、配信のみで8曲に纏められている。元はそれぞれ異なるアーティストの曲なれどCrackazatが手を加える事で輝かしいシンセのフレーズによる優美な世界観で統一されており、例えばDJ Spinnaによる原曲はジャジーながらも比較的落ち着いたしっとり目の作風だったものが、"Tie It Up (Crackazat Rework)"では跳ねるような弾性のあるリズムに凛としてウキウキとしたシンセが躍動するフュージョン・ハウスにへと生まれ変わり、動きの多いメロディーを活かしながら笑顔に満たしてくれるハッピーな世界観が堪らない。Terrence Parkerが手掛けたNY系のソウルフルなハウスも、"Unconditional (Crackazat Rework)"ではCrackazatらしい豊潤な響きのシンセを多層に被せてゴージャス感を打ち出しながらもフルートらしく切ない笛の音も胸を締め付けるようで、力強いハウスの4つ打ちでディープかつエモーショナルなハウスへと昇華している。Lay-farの"Submerging (Crackazat Rework)"は原曲の優美なストリングスはそのまま用いて大きくいじった訳ではないが、ヒプノティックなアシッドも用いたエレクトロニック調から、スモーキーな音響によってビートダウン風なブラック・ミュージック色を強めた作風へと転換し、じわじわと熱くなる展開に魅了される。他にも艶のあるシンセコードとパーカッションが効いたジャジー・グルーヴが絡んで弾むビート感を生む"Electric Piano On The Run (Crackazat Rework)"や、溜めのあるリズムでぐっと抑えられながらも光沢感のあるシンセが伸びて明るいヴァイブスに包まれるフュージョン・ハウスな"Tears (Crackazat Rework)"など、やはりどの曲にも共通するのはライブ感のある豊かなキーボードの響きで、リミックスとは言えどもCrackazatの個性でしっかりと上塗りされているのだ。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Waajeed - From The Dirt (Dirt Tech Reck:DTR015)
Waajeed - From The Dirt

ヒップ・ホップやR&Bなどの音楽性をルーツに持ち、過去にはかのSlum Villageの制作にも加わった事もあるデトロイトのプロデューサー&ビートメイカーであるRobert O'BryantことWaajeed。しかし近年の活動はSound SignatureやPlanet Eからブラック・ミュージックを踏襲しながらもそれはハウス・ミュージックへと向かっており、特に自身で主宰するDirt Tech ReckからリリースしたEPはファンクやジャズも咀嚼したデトロイト・ハウスそのものになり、Waajeedの新たなる音楽性が開花された瞬間でもあった。そんな流れから完成したハウス・ミュージックに焦点を絞ったアルバムは、しかし勿論そこに様々な要素が秘められておりクロスオーヴァーな音楽性によって、豊潤な響きを奏でている。初っ端"From The Dirt"から驚きを隠さずにはいられないGalaxy 2 Galaxyスタイルのハイテック路線と呼ぶべきか、輝かしい未来を感じさせるピアノのコード展開と跳ねるようなリズム感によって飛翔しつつ、中盤からはコズミックなアシッド・ベースも大胆に躍動して、希望いっぱいに満たされるコズミック・ジャズだ。続く"After You Left"はガヤ声サンプリングやダークなベースを用いて訝しさを演出しており、その中に妖艶に伸びるシンセストリングスや繊細なエレピが黒光りするように美しく映えるデトロイト様式なディープ・ハウスだが、そこから一転AsanteとZo!をボーカルに起用した"Things About You"はストリングスが空高く輝きながら舞うハイテックなディスコ/ファンクで、デトロイトの逆境に立ち向かうポジティブなソウルに満ちている。そしてジャジーで官能的なピアノで惑わせられる艶のあるジャジー・ハウスな"Make It Happen"、どぎついアシッド・サウンドがうねり悪っぽさが滲み出るアシッド・ハウス調のロウなでダークな"Power In Numbers"、疾走感のある爽やかなテック・ハウスなトラックにIdeeyahのソウルフルな歌を載せた"I Ain't Safe"など、ハウス・ミュージックを軸にしながらそこに曲毎に異なる味付けをしているが、しかしどれにも共通するのはやはりポジティブな感情性だ。最後は先行EPでもあった"Strength (Radio Edit)"で、乾いたタム等を用い軽快に疾走するリズムを刻みそこに優雅なピアノのコードやコズミックなフレーズを絡ませながら、Ideeyahの歌が高らかに希望を歌い上げるようなハウス・ミュージックでアルバムを象徴する1曲だろう。まさかデトロイトから久しぶりにこんな希望のアルバムが、しかも元々ヒップ・ホップ方面のアーティストから出てくるとは予想も出来なかったが、こんなアルバムを待っていたというデトロイトオタクは決して少なくない筈だ。筆者にとっても2018年の年間ベストにも入れたかった一押しのアルバムである。



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| HOUSE14 | 18:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Feater - Time Million Feat. Vilja Larjosto Remixes (Running Back:RBFEATERRMX1 / RBFEATERRMX2)

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鬼才集結。Running Back傘下に設立された非ダンスをコンセプトにしたRunning Back Incantationsからリリースされたアルバム『Socialo Blanco』、こちらはDaniel MeuzardことFeaterが手掛けるフォークやアフロにバレアリックなどが無造作に入り組んだ不思議な音楽だったが、それに先駆けてリリースされたシングルには、チリアン・ミニマルのトップであるRicardo Villalobosとフランスからの独創的なハウスを手掛けるPepe Bradockがリミックスを提供しているのだから(他にはPangaeaやKrystal Klearも名を連ねている)、Feater自体に興味は無くともそのリミキサー陣に食指が動かずにはいられないだろう。これだけの強烈な個性が揃ったのだから最早原曲がどうだったかという説明は不要で、当然リミックスは彼らの個性に塗り替えられている。全て同一曲である"Time Million"のリミックスなのだが、"Pepe's Hardclippig Remix"は鋭角的なリズムを隙間を目立たせながら浮かび上がらせ、線の細さを強調しながら軽く疾走する彼特有のハウスのグルーヴがあり、前半は随分と無味乾燥ながらも掴み所の無い彼らしい幻惑的なメロディーで酔わせられる。しかし中盤移行でビートレスになった瞬間、ようやく原曲にあったうっとり甘いボーカルが現れると途端に艶っぽく感情性を増すが、その時間を過ぎると再度鋭く繊細なビート重視な展開へと回帰したり、そこからまたうっとりした歌のみを浮かび上がらせたりと、長い曲調の中でがらっと世界観を切り替える展開があるからこそ盛り上がる曲構成になっている。対して"Villalobos Vocal Mix"は前述のドライな曲調に比べるとやはり湿り気を帯びた沼の感覚が続くじめじめしたミニマルで、土着的なパーカッションを用いながら朗らかな旋律と優しいボーカルを前面に出しながらも、しかしトリッピーな効果音やファンキーなギターをひっそりと鳴らしてオーガニック性も付与させ艶かしく演出。大きく変化する事なく永遠とも思われる時間を、ずぶずぶ酩酊しながら過ごす期待通りのミニマル・ファンクだ。




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アナログでは2枚目となるこちらは前のEPのダブ・バージョンという位置付けだ。"Villalobos Dub Mix"は基本となるトラック自体はボーカル・ミックスと差はないが、ボーカル自体を歪ませて酩酊感を増した加工を加えており、もはや歌が歌として存在せずに効果音的に用いられる事でVillalobosの妖艶なミニマル・グルーヴがより際立つ事になっている。"Pepe's Often Bachapella"はそのタイトル通りに歌や上モノだけを抜き出して他の曲とのミックスに用いる事が出来るツール仕様、そして"Pepe's Bonus Bit"は逆に歌を全て排除してそのトラックだけで聞かせる事でBradockの奇妙な音響を持ちながらも軽快で切れ味のあるハウス・グルーヴが強調されたこちらもツール性を増しており、VillalobosにしろBradockにしろ引き算の美学を匠に実践している。

残りの3枚目はPangaeaやKrystal Klearらがリミックスを提供しているが、アナログだと3枚に分かれているもののデータ配信では3枚がバンドルされた仕様でも販売されているので、楽に全て揃える事が可能だ。何はともあれ、ネームバリューだけ見ても話題性十分な3枚組、出来もそれぞれの個性が反映された素晴らしい内容なので聞いて損は無い。



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Tominori Hosoya - Halfway (TH Pressing:THPVLP01)
Tominori Hosoya - Halfway

DJというスタイルが基本的には中心にあるダンス・ミュージックの業界、その中で自身で曲を送り出す事はある程度はプロモーション的な意味合いがありそれが本業でない事は多々あるが、逆にDJをせずにプロデューサー/作曲家として自身の音を生み出す事に専念するアーティストも多くは無いが存在する。東京を拠点にTomi ChairとTominori Hosoyaの名義を並行させて活動するこのアーティストは間違いなく後者に属するアーティストで、ここ数年はdeepArtSoundsやSoul Print Recordingsを含む様々なレーベルからアナログの形態で作品がリリースされ、それらの曲が世界中の有名なDJからもサポートされてきた実績も鑑みれば、彼がそういった創作能力の高いアーティストである事に異論は無いだろう。人気レーベルから引く手数多なHosoyaはこれまでに多くのEPをリリースしてきたが、2018年9月遂に自身のTH Pressingから自身の半生をテーマにしたアルバムを送り出した。先ず内容に関して言えば過去の作品の延長線、それは透明感や清涼感のある美しいシンセの響きとパーカッシヴなリズムを武器とした感情的なディープ・ハウスであり、つまりはHosoyaというアーティストを実直に表現したアルバムという点に於いてファンが期待している内容そのものだ。オープニングには2016年にリリースされた『Love Stories EP』(過去レビュー)から異なるバージョンとなる"We Wish 2 Cherry Trees Bloom Forever (Full Length Version)"が抜擢され、からっと乾いた抜けの良いパーカッションのリズムから始まり、じわじわと湧いてくる叙情的なシンセと天井から降り注ぐような耽美なピアノの旋律が湿り気を帯びた情熱となって、冒頭から実に感動的なディープ・ハウスを展開する。こういった作風はHosoyaの特徴であり、シンセの厚みのあるレイヤーが荘厳な景色を描き出す"Love You Again"やより疾走感のあるビートを活かしつつ薄くも美しく伸びるパッドと動きのあるシンセのメロディーで躍動感を出した"Beautiful Lives"なども、安定感のあるハウスの4つ打ちと感情性豊かなメロディーとコードによるテック・ハウスの作風が見事にアーティスト性を表現している。アルバムという形態だからこそ一辺倒にならない展開の工夫もあり、"Cycling (Sunday Evening Version)"ではリズム抜きの荘厳なパッドが覆う中をエレガントなピアノが滴り落ちるアンビエントを聞かせ、"Weekend Othello"ではぐっとビートを落とした事で複数のシンセの響きもじっくりと耳に入りメロウネスを増したダウンテンポを披露し、そして"Interlude Of Life"における子供の呟きもフィーチャした何処か童心に返ったような懐かしさも感じさせるチルアウトもあるなど、ただ勢いに任せただけのアルバムではない。そして終盤以降は再度クラブでも映えるパーカッシヴかつ情緒豊かな旋律に引っ張られる壮大なテック・ハウス/ディープ・ハウスを通過し、最後は深い濃霧のような叙情的なシンセの層の中で清らかなピアノが感情を揺さぶるアンビエント性の強い"Scenery From Halfway"でしっとりしながら霧散する。アルバムという形態を念頭に置いたであろう起承転結な構成があり、そして過去を振り返りつつも未来へと突き進むべくポジティブな感情に満たされた音楽は、決して抑圧的なグルーヴは無くとも感情性の強さが芯にあり心に響くものだ。一旦はキャリアにおける総決算と呼んでも過言ではない充実したアルバムとなったが、その歩みは2019年となった今でも全く止まっていない。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Danilo & Pablo - 10 Years MCDE Recordings Limited Vinyl (MCDE:MCDE 1218)
Danilo & Pablo - 10 Years MCDE Recordings Limited Vinyl

人気アーティストかつレーベルであるにもかかわらず一切の配信を行う事なく、ヴァイナルという形態への偏執的な愛を貫き通すようにヴァイナルでのリリースにこだわる事で、リリース直後から瞬く間に市場から姿を消した本作。それこそレーベルとしてのMCDEから、Motor City Drum EnsembleことDanilo Plessowとレーベル主宰のPablo Valentinoによるレーベル10周年を記念した作品で、正にMCDEというレーベル性を如実に表した音楽だ。Plessowの活動の為に設立されたと呼んでも過言ではないMCDEは正にMotor City Drum Ensembleの音楽性そのもので、デトロイトのビートダウン・ハウスやディープ・ハウスを彼なりに咀嚼し、そしてファンクやジャズにソウル等からのサンプリングを用いてモダンなブラック・ミュージックへと昇華させて、ある意味ではクラシック性も兼ね備えたダンス・ミュージックだ。勿論知名度で言えば劣るとは言え、Valentinoが生み出す音楽もMotor City Drum Ensembleの共鳴する事は言うまでもなく、この二人が組んだ作品ならば問答無用で手にすべきであろう。本作もたった2曲のみではあるがどちらも彼ららしいブラック・ミュージックを基にした曲で、"Don't U Ever Change"ではAhmad Larnesによるブルージーで味わいのある歌をフィーチャーしつつ、ハンドクラップやもっさりしたドラムによるざっくり粘性の高いビートダウン調のグルーヴを刻み、そこにマイナーコード調のエレピと優雅に舞うストリングスを配して、彼らしいスモーキーかつソウルフルな黒きディープ・ハウスを聞かせる。"Loops For Eternity"はもう少々アッパーで勢いのあるジャジー・グルーヴが走っており、エレピやシンセの控えめにジャージャス感ある響きやファンキーなボイス・サンプルを絡めて、エレガンスを纏いながらもしっかりと地を固めて力強いうねりに巻き込んでいく。両曲とも新基軸や目新しさは皆無だが、それもレーベル10周年の作品のためにいかにレーベル性を示すかという理念もあるだろう事を考えると、これ以外にしっくり適切なディープ・ハウスは無いだろう。普段通りのファンキーかつエモーショナルなディープ・ハウス、だからこそ素晴らしい。



Check Motor City Drum Ensemble & Pablo Valentino
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Welcome To Paradise Vol. III (Italian Dream House 90-94) (Safe Trip:ST 003-3 LP)
Welcome To Paradise Vol. III (Italian Dream House 90-94)
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オランダの気鋭・Young Marcoは自身で主宰するSafe Tripからは様々なアーティストによるヴィンテージ感溢れるシンセが特徴なディスコやエレクトロを送り出す一方、Gigi MasinやJonny Nashと組んだスペシャル・プロジェクトのGaussian Curveにおいては遥かなる田園地帯を想起させるバレアリック性を発揮し、そしてMarcoの音楽性はそれだけではなくイタロ・ハウス/ディスコをこよなく愛する面もある。その意味では本作は彼が生み出した音楽ではないがセレクターとしての才能が発揮されてイタロを愛するパーソナル性が如実に発揮されたコンピレーションと断言出来る、それこそタイトルからしてこれ以上は無い位に適切な「楽園へようこそ(イタリアの夢のようなハウス)」という編集盤だ。2017年にはアナログで『Welcome To Paradise (Italian Dream House 89-93) 』(過去レビュー)がPart1とPart2で分けてリリースされており、このPart3でシリーズとしてはどうやら完結するようだが、80年代後半から90年代前半の短い期間に盛り上がったイタロ・ハウス名作を咀嚼するのにこの3枚の編集盤は間違いなく役に立つだろう。本作でも煌めくような美しい響き、ロマンティックで官能的な世界観、そして爽やかなバレアリック感が広がるイタロ・ハウスが満載で、例えばOptikによる"Illusion"は甘く清涼なシンセコードに大らかなベースラインと4つ打ちキックが安定したグルーヴを作るシンプルな作風だが、無駄な装飾をせずに明瞭なメロディーで楽園志向な世界観を生み出す作風はイタロ・ハウスのテンプレートでもある。Leo Anibaldiの"Universal"なんかは808 Statesの"Pacific"まんまだろというツッコミも入りそうだが、海辺の自然音らしきものを用いつつ透明感のあるシンセが伸びる爽快なハウスはこれぞバレアリックを体現している。4つ打ちだけでなくダウンテンポによって切なさが強調された"Deep Blue (The Inner Part Of Me)"は、イタロ・ハウスの特徴でもある情緒的なピアノのコードに色っぽい女性の声や鳥の囀りのサンプルも用いて、ぐっと感傷的な気分に浸らせる。アルバムのラストは名曲中の名曲、近年再発もされたDon Carlosによる"Ouverture"で、抜けの良いアフロなパーカッションが走りながら線が細くも優美なストリングスと煌めくピアノがクリスタルのような輝きを生み出す至福のバレアリック/ハウスで、ここが楽園でなければ一体何処なのかと思わせる程の多幸感だ。90年初頭の古き良き時代感満載な音楽は流石に時代感が強いもののどれもハッピーな雰囲気に満たされており素晴らしいが、また本作を纏めるにあたり未発表音源だった"Resounding Seashell"と"Dance To The House (Unreleased Edit)"が発掘されて収録されるなど、秘蔵音源的な意味合いでもこのコンピレーションの価値は高い。『Welcome To Paradise』というタイトルに嘘偽り無しの最高なコンピレーションだ。



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Ron Trent - Warm (Future Vision World:FVW-009)
Warm - Warm
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Ron Trent主宰のFuture Visionから初耳のWarmなるアーティストの新作、これがこのレーベルにしては随分と肩の力が抜けてバレアリック寄りな作品で素晴らしい。レコードのラベルにはWarmというアーティスト名しかないが、ドラムやキーボード、そしてプロデュースにはTrentの名前があり、各レコードショップもRon Trentの名義で販売しているので恐らくTrentの変名なのだろう。いつもの爽快でアフロなパーカッションが炸裂し大空を飛翔するような壮大なディープ・ハウスではなく、スパニッシュやフュージョンにバレアリックといった言葉が連想されるダンス・ミュージックは、これまでの作品の中でも正にタイトル通りに温かくオーガニックな響きをしており、サウダージを誘発する。軽やかなパーカッションとレトロなドラムマシンのリズムから始まる"Night Ride"、そこに優美なシンセのコードや生っぽくしっとりしたベースラインと色っぽい呟きが加わり、更には華麗に彩るピアノと様々な音色によって実にメロウな演出をするブギースタイルのディスコは、バンド演奏的な雰囲気もありその生っぽさがより肌に染みる。本作ではギターも大々的に用いており、しっとりとスローなビートの"On A Journey"では滴り落ちるような哀愁が滲むギターが感情を吐露するように爪弾きされ、透明感あるシンセのコードと溶け合いながら、夕暮れ時の海辺を望むようなバレアリック感に溢れたEPの中でも特に印象に残る曲だ。"Exhale"でも咆哮しつつも咽び泣くようなギターが主導する曲で、爽やかに軽やかに走りパーカッションも心地好く広がるビートが刻まつつギターソロが深い情緒を生む作風は、ソフトロックや元来持っているフュージョン・テイストの延長線上で、それでもやはり普段の作風より緩い雰囲気に開放感が感じられる。ああ、確かに『Warm』と付けられたタイトル通りの温もりに満ちた曲たち、どれも暗闇が支配するダンスフロアから抜け出して、青空の広がる下の屋外で聞きたくなるロマンティックな世界観だ。どうせならこの路線で一枚のアルバムを聞いてみたくなる。



Check Ron Trent
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