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R_R_ - Train Of Thought (Growing Bin Records:GBR028)
R_R_ - Train Of Thought
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ここ数年のニューエイジ/アンビエント/バレアリックのシーンで孤高の存在感を放つBasso率いるGrowing Bin Recordsは、2020年だけでも4枚のアルバムと2枚のEPをリリースするなどその勢いは一向にとどまるところを知らず、その上前述のジャンルのみならずクラウト・ロックやディスコにハウスやファンクと多角的な音楽性のそれぞれで上質な作品をリリースしている。とは言えども恐らくファンがレーベルに最も期待するのがアンビエント周辺だろうと推測されるが、そこに待っていたと言わんばかりに届いた作品が本作。手掛けているのはラトビアでラジオのホストやDJを行い、サウンドトラック制作やプロデューサー業も行うReinis RamansことR_R_で、これがデビューアルバムなのだが淡い水彩画のような色彩感覚とその揺蕩うような揺らぎが続くアンビエントが素晴らしく、よくぞこんなアーティストを発見したものだとレーベルの審美眼に驚かずにはいられない。「水のリズミカルな動きとその波紋の反射が私たちの知覚をどのように曲げているか」という点にインスピレーションを受け制作されたとの事で、フィールド・レコーディングとエレクトロニクスを組み合わせたサウンドコラージュな音楽は、アルバムジャケットのように澄んで綺麗な水に満たされたような極楽浄土行きの心地好いアンビエントを奏でている。波らしき音の中からどんよりしたドローンが湧き出して、雑踏の環境音も交えながら生活感のある正に環境音楽的な"Entering"こそ暗めの響きだが、続く"Opposite"から澄んだ電子音が重層的に鳴りながら非常にゆっくりとした音の変化が生み出す景色は牧歌的なチルアウトで、体の隅々まで清涼な湧水が行き渡るようだ。ぼやけたようなシンセとリズムが生み出すのは波紋の揺らぎだろうか、"Luminosity"はミニマルな構成もあって深いアンビエンスに潜っていくのに最適で、内なる精神世界へと没入させられる。"Opening Up"では慎ましくも優美なピアノの旋律がリードし穏やかな昼寝のようなアンビエントだが、そこに続く"Deleting Doubts"は鳥の囀りやピアノを用いながらもビートを刻むような電子音によって特に躍動感を得た曲で、もしキック等が入っていれば高揚感のあるテクノになっていただろう。しかしアルバム全体を通して聞けば、基本的にはゆったりと水面が揺れながら波紋が静かに広がっていくような電子音と、そして生命の営みや自然から発せられる有機的なフィールド・レコーディングによって、鎮静作用の高い良い意味でのヒーリング・ミュージックとも呼べるだろう。なお、配信音源では全編が軽くシームレスにミックスされている事もあり、穏やかな快適性が40分に渡り持続しているのも良い。



Check Reinis Ramans
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Leo Takami - Felis Catus & Silence (Unseen Worlds:UW030CD)
Leo Takami - Felis Catus & Silence
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ニューエイジ/アンビエントの古典や秘蔵音源の発掘に拠る再評価は、現在のそれに対しても影響を与えているのだろうか、日本や世界から現在形のアーティストによっても名盤が生まれ今そのジャンルの豊かさは特段強く感じられる。そんな中、日本から届いた新作は貴水玲央による3枚目のアルバムで、ジャンルとしてはジャズやモダン・クラシカルになるのだろうがニューエイジ/アンビエントの要素もあり、その系譜の流れで興味を持つのも自然な作品だ。1970年東京生まれの貴水は14歳でギターを始めて、ジャズやクラシック、アンビエントや雅楽に影響を受けて音楽制作を行っており、過去には2012年と2017年にアルバムをリリースしている。リリース量は僅かなものの過去のアルバムも調べてみると、カルフォルニアのアンビエント系レーベルであるTime Released Soundからのリリースもあったりと、本人はギター奏者ながらもその方向性はどうやらアンビエント志向が強そうである。そしてこの新作、全編に渡り素朴な響きの繊細なアコースティックギターを用いながらもエレクトロニクスも合わせ、淡々とクールながらも甘美な瞑想空間を演出するようで、隙間を活かした静謐さがより美しさを際立てている。幕開けの"Felis Catus and Silence"から淡い色彩が滲むような素朴なアコギのメロディーが引っ張りつつ、バックからは控えめながらも優雅なオーケストラ風のシンセが支え、ギターの無いパートではもう完全に白昼夢のようなニューエイジ/アンビエント状態になったりと、8分の長い尺の中で自然な流れの起承転結を持っている。"Garden of Joy"はフルートだろうかほのぼのとした笛のメロディーがリードしつつ、そこにギターもユニゾンの様に加わりながらも数少ない楽器で安眠を誘うムードを作り、少しずつストリングス等も加わりながら厚みを増していくが、決して精神を刺激しないように終始静けさを保ちながら穏やかな牧歌性を生んでいる。"Awake"では神秘的なピアノと耽美なギターの音色が絡み合い、ドリーミーなドローンを配してニューエイジ風な雰囲気を纏いながらも、清涼で澄んだ景色を覗かせるコンテンポラリーな曲。アルバム全体のトーンとしては鎮静作用が貫いているのだが、中には"Unknown"のように心が浮き立つ曲もある。アコギの優しく包み込む旋律と湿り気のあるベース、そこに華やかなストリングスが装飾しながら代わりにピアノの優美なソロ展開も現れたり、終盤は福音をもたらすような祝福感に満たされながら感動的に盛り上がっていく。どの曲も先ずはギターの柔らかく優しい旋律に耳を奪われるが、音を詰め込み過ぎる事なく間を上手く作る事で、静けさの中に美しさを埋め込んだような作風は甘美ながらも静謐で何とも心落ち着くものだ。この静かな間を活かした作風は例えばECMが好きな人のアンテナにも引っかかるだろうし、ジャンルに囚われる事なく日常の生活に馴染むBGMとしてもお勧めしたい。



Check Leo Takami
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Ruins - Marea / Tide (Music From Memory:MFM043)
Ruins - Marea / Tide
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時代に適合せずに失われた音源や今では入手困難な秘蔵音源など、素晴らしくも世に知れ渡っていない音源の発掘に勤しむMusic From Memoryは、ジャンルの垣根を越えて良質な作品の発掘に成功し、その優れた審美眼は結果的には現在のニューエイジやアンビエントの再燃に貢献している。本作は元々は1984年にリリースされていたアルバムで、イタリアのPiergiuseppe CirannaとAlessandro Pizzinを中心としたニューウェイヴのバンドのRuinsに拠る物だ。当時は600枚がプレスされ300枚程度がイベントのみで放出され、残りはレーベルとの意見の相違により長き保管の後に破棄されて、最終的には本作は今までの間世から失われる事になっていたそうだ。そんな非常にレアな音源を一体MFMは何処から嗅ぎ付けたのかは定かではないが、2019年に復刻しているのだから驚かずにはいられない。さて、Ruinsはニューウェイヴ系のバンドであるとの事で実際にデビューアルバム等を聞いてみると確かにバンド体制のロックな内容なのだが、本作は画家のLuigi Violaとの映像作品のための音楽として制作されたようで、その為かロック的なノリは後退しエレクトロニクスを前面に出した事でMFMらしいニューエイジ/アンビエントの雰囲気を伴うようになっている。出だしの"Heavenly Tide"からして既にアンビエントの体を成しており、ビートレスな構成でぼんやりとした空気のような浮遊感のあるシンセが揺らぐドリーミーな曲は、曲名通りで正に天国的だ。続く"Tides"もエレクトロニクスを中心としながら煌めきのあるポップな世界観で、しかしそこに奇怪な電子音響も織り交ぜてエクスペリメンタルな面も垣間見せる。臨場感のあるリズムとメランコリーなメロディーに合わせ唸り声のようなものも聞こえる"Petit Portrait"はややニューウェイヴのポスト・パンク的な残影があるが、そこに続く"Dedicated To You..."はもはやテクノでいうチルアウトと呼べばよいのか、長閑な田園風景が何処までも広がる牧歌的なニューエイジにただただ癒やされる。そして荘厳なオルガンと祈りのような歌が荘厳な寺院の中で鳴っているレクイエム的な"The Love We've Shared"、パルスのようなシンセが不気味に響くプロトテクノ風な"Night Tide"などの前半に対し、中盤以降はニューウェイヴとしての側面が目立つ曲が多い。廃れたドラムのリズムも入りビリビリとした電子音やおどろおどろしい声が闇を感じさせる"Ground"、生ベースを前面に打ち出しながら魔術のような歌と奇怪な電子音がミステリアスに染める"Future Tides"、光沢感のあるシンセポップなメロディーの裏に雄叫びらしき声が入り乱れるエレクトロ風の"Tomorrow"など、一般的なロックを逸脱しながらローファイなエクスペリメンタルの要素を感じさせる。映像作品の為に制作された為だろうか各曲は1〜3分と短く、景色が早々と移り変わるように曲も進んでいき各曲をじっくり堪能する間も無く切り替わるが、その意味では非常にテンポ良く聞けるアルバムでもある。30年以上も前の音楽がしかし今の時代の中でも新鮮に輝くのには驚きだが、それもジャンルを限定する事なく良質な音楽を発掘するMFMの審美眼の賜物だろう。



Check Ruins
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Liquid Canoe - Liquid Canoe (Growing Bin Records:GBR025)
Liquid Canoe - Liquid Canoe
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Basso率いるGrowing Bin Recordsは近年のアンビエントやニューエイジに於いて先進的な存在であるが、前述の音楽性のみならずハウスやディスコ、クラウトロックやジャズ等垣根を越えて実に様々な要素が含まれている。それはジャンルではなくBassoの内に存在する深遠なる審美眼によって、選び抜かれた音楽がカタログに並んでいるのが実情だろう。流行や売れ行きといったものに全く左右されない音楽だからこそ信頼に足るのだが、この全く名前の聞いた事のない未知なるアーティストのデビューアルバムも、文句無しにこれぞGrowing Binらしい内容で素晴らしい。このプロジェクトはカナダ人のマルチ奏者であるWolfgang Matthesが中心となっているようだが、過去の経歴を調べても殆ど情報が出てこず、ほんの僅かに他アーティストの制作に参加しているのが見つかる位だ。本作はガリアーノ島の人里離れた改造された馬小屋にて、友人達とのセッションから生まれたとの事で、自身はシンセサイザーを弾きつつギターやベース、ドラムやパーカッションの奏者も加わってバンド的に録音されており、純然たるダンスミュージックではなくディスコやアンビエントも吸収した今風のクラウト・ロックやスペース・ロックと説明すればよいだろうか。"Mizionics"は弦をタップしながらぼんやりと艶めかしいベースに合わせ、カリンバのトロピカルな旋律やシロフォンのような素朴な響きが現れては消え、そこに恍惚感のある電子音のリフレインも加わり、サイケデリックなアシッド・フォークと呼べばいいのか、辺境の地の陽気なアンサンブルは自然志向のトリップ・ミュージックだ。"Down To The Feelgate Of Surrender"ではドラムによるリズムも入るが、奇妙に唸る電子音に共にギターやベースは何処か土着的な雰囲気を作り、アフロやトロピカルな感覚も覚えるが現在地の分からない謎めいた世界が続く。"Sum Sum"はダブやディスコの要素が打ち出ており、潰れたような4つ打ちのキックに拠るスローモーなビート、広がりのあるギターサウンド、残響が心地好いダブエフェクトが紫煙が揺らぐようなサイケデリックを生み出している。基本はサイケなロックなのだが"Aquariam Dragrace"もねっとりと絡み付くディスコビートが前面に出て、大空へと飛翔するエコーギターや快楽的なアシッド・サウンドも織り交ぜて、電子音楽の没入する前のManuel Gottsching的なジャーマン・プログレ×ディスコな曲だ。荘厳な寺院の中で繰り広げられるようなどんよりとした電子音響アンビエントの"Morning Trip To Colony One"を通過し、トロピカルなディスコビートながらも淡い色彩のサイケデリックなギターや覚醒的な電子音によって内なる精神世界へ没入させるプログレ・ディスコな"Go Leonard"や、最もテクノ風な電子音のシーケンスが活躍しながらも柔らかい打楽器等によって牧歌的な安らぎを得るバレアリックなスローモー・ディスコの"Ant Parade"と、全編に渡りなかなか形容のし難い奇抜なバンド・サウンドを展開している。一般的に想像するダンス・ミュージックの分かり易さからは離れているが、このねっとりしたサイケデリアが通底するディスコ/クラウト・ロックは間違いなく一部のDJにとっては即戦力なるような魔力を秘めており、勿論現在のニューエイジ/バレアリックなムーブメントの視点からも評価すべき内容だ。



Check Liquid Canoe
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Fools - Fools' Harp Vol.1 (Music From Memory:MFM047)
Fools - Fools Harp Vol.1
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ニューエイジやバレアリックの方面から絶大な信頼を得ているMusic From Memoryが当初は秘蔵音源の再発掘によって注目を集めていたものの、そこからレーベルの運営は過去の見直しだけでなく未来へと視点も据えるようになり、現在のアーティストの後押しも積極的に行っている。本日紹介するのは2020年の新作音源の一つであるFoolsによるデビューアルバムだが、この聞き慣れぬアーティストは実はWarp Records等でも活躍するUSのロックバンド・Grizzly BearのドラマーであるChris Bearのプロジェクトで、マルチ奏者でもある彼が一人でジャムセッションのように各楽器を演奏しながら録音を重ね、「ミックステープのようなもの」として完成したそうだ。Grizzly Bearについては全く知識が無いので比較する事は出来ないが、ロックバンドのメンバーである影響は本作にも現れていて、エレクトロニクスだけではなくギターやベース、カリンバやヴィブラフォンに鍵盤楽器、ドラムやパーカッション等様々な楽器を重ねながら、素朴で手作り感のある甘美なアンビエントのムードを作り上げている。ベルやヴィブラフォン等の牧歌的で微睡むようなアンビエントの響きから開始する"Rintocco"、重層的な音によって心地好い揺らぎを生み神秘性を伴いながらアルバムはスタートを切る。続く"Source"もコンガ等の土着的なパーカッションが印象的で、そこにギターや弦に電子音を織り交ぜながら生々しいというか素朴でもある音が穏やかに溢れ、秘境ニューエイジ的な曲調だ。辺境や秘境の性質がより強い"Deefyfe"は環境音を取り込みながらベルや笛風の電子音で大地や森林といったものをイメージさせる響きを展開し、ポップで可愛らしい音使いながらもアーシーなアンビエントを展開している。キラキラとした電子音が朝靄の時間帯を想起させるインタールードの"Versitide"等を通過し、特にアルバム中で最も高揚する"Metaqua"では重層的なシンセに拠る幻想的なアンビエントの序盤から次第にリズムやベースも入り土着的なシンセファンクへと変化し、終盤では煌めくようなシンセのメロディーが踊りながら嬉々とした高揚の高みへと達するユニークな展開で、一つの曲に多様なジャンルが存在している。"Nnuunn"は民族的な楽器を用いて和とかアジアの田舎感覚のエキゾ感があり、素朴ながらもバレアリックの長閑な開放感というか、青々しい爽やかさもあるダウンテンポに親しみを覚える。アンビエントを軸にエキゾチック性、秘境の雰囲気、オーガニックな土着感をDIY的に肉付けした音楽は、がっちり作り込まれたと言うよりは自由気ままなセッションから生まれたような緩さがあり、その感覚がアンビエントとしても快適性に繋がっている。ダンスフロアからのアンビエントではない事が、前述の音楽性を確立するに影響していると思うが、結果的に非常にMusic From Memoryらしい音楽としてレーベル性を表しているかのようだ。



Check Fools
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Various - Claremont Editions One (Claremont 56:C56CD022)
Various - Claremont Editions One
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ディスコ〜バレアリックを提唱するシリーズ『Originals』で定評を得たClaremont 56。長らくバレアリックを主導するPaul Murphyが主宰するこのレーベルはディスコを軸にしながらも、フォークやプログレにソフトロック等にも取り組む事で所謂一般的なダンスのフォーマットを越えて、多様な音楽性を内包しながらバレアリックを体現してきた。そして前述の『Originals』シリーズは著名なDJによってジャンルを限定せずにレアな音源が纏め上げられ、バレアリックという雰囲気に統一したレーベルの音楽性を象徴する一連の作品となったが、そのシリーズが2013年に終了した後にMurphyが考えたのは、レアな音源ではなくレーベルに於いて成長しているアーティストに対しての後押しだったようで、それを形としたのがこの『Claremont Editions』シリーズだ。基本的には過去にレーベルと関わりを持ったアーティストの新曲を収録しており、それに加えてレーベル外からもClaremont 56のイメージに沿う曲も加えて、ジャンルレスに長閑で開放感のあるドリーミーな世界観に纏め上げている。Hear & Nowは今レーベルが最も一押しするユニットではないだろうか、このイタリアの二人組はディスコをベースにギターも多めに用いた作風が特徴で、朗らかなギターフレーズと多幸感溢れるシンセのラインが温かい太陽光が降り注ぐような感覚を生む"Alba Sol"は有機的なバレアリックで、底無しの優しさに抱擁される。Statuesもまだ作品数は少ないもののレーベルが発掘したトリオのようで、"Heaven Fades"は切り裂くようなサイケデリック・ギターと哀愁のピアノが物哀しい雰囲気を作りつつ、そこに有機的な電子音と朧げでドリーミーな歌が加わりながら、白昼夢に浸るようなソフトロックを奏でている。本作の目玉の一つはHF Internationalの"I Can't Go For That (No Can Do) (KI's Extended Disco Dub)"である事は間違いなく、Hall & Oatesの名曲をユニットがレゲエ・ディスコとしてカバーしたものを更にKoaru Inoueが手を加えているのだが、歌を削ぎ落としダブ化した事でディスコのリズムが際立ち朗らかなギターカッティングも浮かび上がり、トリッピーな効果音を織り交ぜながら心地好いダンスグルーヴを刻むディスコ・ダブと化している。Fursattlの"Leerlauf"に至ってはリズムが跳ねて走り、揺らめくようなフォーキーなギターが爽やかなクラウト・ロックだが、満ち足りた至福感のバレアリックという観点から見ると本コンピレーションに馴染んでいる。アルバムの最後はCanのメンバーでもあったHolger Czukayとその妻であるU-Sheによる数年前に録音された未発表曲の"Longing"で、オーケストラのようなゴージャスなストリングス使いとは対象的に気怠い歌によって弛緩した雰囲気はクラウト・ロック版のチルアウトで、終盤にかけてリズムが暴れ出して盛り上がっていく感動的な流れは締め括りに相応しい。他にもAORやダウンテンポを含むこのコンピレーションは多彩なジャンルが故に必ずしもフロアに即した音楽だけではないが、そのようなダンスもありながらダンスの枠組みも越えていく音楽性がClaremont 56の特徴の一つであり、その意味では非常にレーベルの方向性を示唆していると言えよう。第二弾も楽しみにならずにはいられない素晴らしいシリーズだ。



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Pacific Breeze Japanese City Pop, AOR & Boogie 1976-1986 (Light In The Attic:LITA 163)
Pacific Breeze Japanese City Pop, AOR & Boogie 1976-1986
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近年日本のジャパニーズ・アンビエント/ニューエイジの掘り起こしの勢いには目を見張るものがあるが、その代表的なコンピレーションである『Kankyō Ongaku (Japanese Ambient, & New Age Music 1980 - 1990)』(過去レビュー)を手掛けたUSのLight In The Atticは、それ以前にも例えば細野晴臣の複数のアルバムを復刻しており日本の音楽に興味を持っていた事は間違いないだろう。そんなレーベルが続いて送り出したシリーズは、日本のシティ・ポップやAORとブギーに焦点を当てた「Pacific Breeze」シリーズ。その第一弾となる本作は1976〜1986年に制作された日本産の音楽で、細野晴臣、大貫妙子、吉田美奈子、高橋幸宏、鈴木茂、高中正義、井上鑑、佐藤博、松任谷正隆、F.O.E.、石川鷹彦、惣領智子、佐藤奈々子、小林泉美、阿川泰子、当山ひとみ、豊島たづみの曲がコンパイルされている。ジャケットを担当したのは大滝詠一の『A Long Vacation』のアルバムカバーも手掛けた永井博で、バックに澄んだ青々しい空が広がるリゾート地のような絵も完全にシティ・ポップの雰囲気そのもので、聞く前の雰囲気作りからして完璧だ。しかし何故、今更日本のシティ・ポップやAORなのか。暗くどんよりしたムードと閉塞感が続く世の中で、キラキラとしたクリスタルな感覚を持つポップな音楽がそういった暗雲を少しでも振り払ってくれるからだろうか。そんな仮定を抜きにしてもこの古き良き時代の日本の音楽は、海外の音楽を咀嚼しながら当時まだ新しかった電子楽器と生演奏を匠に融合させ、お洒落で日本独特のポップな感覚に昇華しており、実は時代が移り変わろうとも色褪せない普遍的な魅力を持っていたのだ。佐藤のヴォコーダーを用いた歌に爽やかなギターカッティング、そしてブレイクでのフュージョン的な鍵盤ソロなど都会的で洗練された音を聞かせる"Say Goodbye"、そして甘ったるくもきざな歌と煌めきを感じさせるシンセが魅力的な高橋の"Drip Dry Eyes"等は『Pacific Breeze』の雰囲気に最適でシティ・ポップの魅力を実直に伝えてくる。しかし本盤を聴き通してみるとシティ・ポップと一口で言っても多様な要素が存在しているのが分かり、スティール・パンの乾いた音が可愛らしく腰に来るリズム感がファンキーな高中の"Bamboo Vender"はラテン・ジャズ・ファンクだし、電子音とパーカッションも用いてエレクトロ的なリズムを叩き出すF.O.E.の"In My Jungle"は土着ファンクで、阿川の艷やかで夜のアダルトな空気が滲む"L.A. Night"はアーバン・ソウル、小林のトロピカルやファンクも咀嚼した"コーヒー・ルンバ"のエキゾチック感と、海外からの時流の音を貪欲に取り込みながら日本の都会的な音として表現している。またこのコンピレーションでは女性アーティストの曲が多い事も印象的で、情緒たっぷりで切ないディスコ・クラシックである吉田の"Midnight Driver"からゴージャスな音使いと魂が叫ぶような和製ソウルな豊島の"待ちぼうけ"、フルートの朗らかな音色に引かれてブラジリアン風なリズムが爽快でポップな大貫の"くすりをたくさん"等、特に女性の声がこのジャンルに合っているように感じられる。電子楽器やエキゾチカも取り込むなど先鋭的な感覚を持っていたこれらの音楽は、そしてネオンライトに溢れる都会的なキラキラした輝きもあり、非常に時代性の強い音楽であり懐古的な気分になる事は否めない。しかし、その魅力は普遍的なものだからこそ現在に於いて再度評価されるのだろう。ああ、何だか懐かしいクリスタルな日々が目の前に浮かび上がってくるようだ。



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Various - The First Circle (Neroli:NERO 050)
Various - The First Circle

かつてイタリアのブロークン・ビーツのシーンを引っ張ってきたのはArchiveというレーベルであるのは間違いなく、その主宰者であるVolcovはそこからよりハウスへと傾倒したレーベルとしてNeroliを立ち上げて、現在もソウルやファンクにフュージョンといった音楽性を咀嚼した先鋭的なハウスをリリースし、確実な評価を獲得している。そんなNeroliの発足20周年、そしてカタログ50枚目の記念として制作された本作は、レーベル名の元となったBrian Enoの『Neroli』にインスピレーションを得たそうで、ドラム等のビートが強調されたものではなくメロディーや雰囲気を尊重した内省的な音楽を参加アーティストに依頼したそうだ。そのアーティストとはUKからはデトロイトの魂を受け継ぐIan O'BrienやKirk Degiorgio、そしてブラック・ミュージック性を前面に出すDegoやLinkwood、更に新世代のK15、USからはデトロイトのPatrice ScottにGerald MitchellやPirahnahead、人気絶頂のFred P.、そして変則的なリズムを得意とするAybeeらであり、確かに皆ダンスミュージックを作りながらもDJ視点の単なるツールではなくメロディーやハーモニーを大切にするアーティストとしての面が強い人達が揃っている。だとしても本作ではリズムに頼る曲は少なくメロディーと雰囲気で繊細に聞かせる曲が大半で、ともすればアンビエント的な感覚さえも少なからずあり、そのリスニング志向なコンピレーションに驚かずにはいられない。K15の内省的で切ないエレピが主導するメランコリーなモダン・ジャズ風の"Disillusioned"で始まり、Kirk Degiorgioの宇宙の無重力空間を感じさせるスペーシーなエレクトロニック・アンビエントの"Leave Everything Behind"を通過し、Patrice Scottの"Untitled"もディープな空間の広がりを感じさせる音響を用いつつも途中からは切れ味鋭いブレイク・ビーツも入ってくるが、リズムよりも繊細なピアノが情緒的な雰囲気を作っている。叙情性のある曲調であればIan O'Brienは最適だろう、ピアノやストリングスを用いて切ない心象を吐露するような静謐なコンテンポラリー・ジャズの"Music Comes From Within"を提供している。一方Gerald Mitchell+ Volcov+Pirahnaheadによる"Snow"は、厳かなパッドと静かにビートを刻む上に咽び泣くように咆哮するギターが炸裂する激情溢れるセッション風の曲で、ダンスではないものの非常に熱量の高さが溢れている。またDegoは分厚いシンセメロディーが優雅なフュージョンを思わせる"31 Losses 31 Wins"を聞かせているが、Fred P.はビートが入っていれば普段のテクノと大きな違いは然程無い深遠な世界を覗かせる"Star Crossed"を披露しており、しかしアンビエントなムードによってアルバムの一片としてはまっている。普段はブロークン・ビーツやハウスを基調にしたダンス・ミュージックを手掛けるNeroliからこういったリスニング志向なコンピレーションがリリースされるのは意外だが、前述の音楽性からダンス成分を削ぎ落としつつ情緒豊かにメロディーとハーモニーを丁寧に聞かせる作風にアーティストの個性も見受けられ、結果的には各々の内なる深い精神世界が広がる素晴らしいコンピレーションになっている。



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Cass. & Gianni Brezzo - Masala Kiss (Growing Bin Records:GBR022)
Cass. & Gianni Brezzo - Masala Kiss
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特定のジャンルに依存しているわけではないが、特にニューエイジやアンビエントの方面では近年著しく高い評価を獲得しているドイツはハンブルクのGrowing Bin。2019年に送り出した複数のEPやアルバムはどれも名作といっても過言ではなかったが、今回紹介するアルバムは2019年度のベストアルバムとして上位に連ねていてもおかしくはない作品だ。手掛けているのはInternational FeelやInto The Lightからの作品でも高い評価を獲得している現代バレアリックのNiklas Rehme-SchluterことCass.と、そしてフュージョンに現代的なエレクトロニクスを取り込んだギタリストのGianni Brezzoで、両者まだ20代と新鋭ながらもこのコラボレーション作において非現実的な世界へ没入させるような、または空想に耽けさせるような豊かな表現力を発揮している。アコースティックとエレクトロニクスを匠に融合させて、スピリチュアルとまではいかないまでも如何にもニューエイジらしい作風で、例えばMelody As Truth辺りの音楽性とも共振すると言えば分かりやすいだろうか。洞窟の中で反響するようなパーカッションから始まる"Jaybo"は、そこにエスニックで哀愁を帯びたギターや管楽器風の牧歌的な旋律も加わり、民族的というか何処か異国の地に根を張ったような音楽は辺境エスノだ。続く"Imence Sense"は物哀しいギターの演奏に没頭しているようで、そこにしっとりと情緒的なピアノを被せて、ニューエイジというよりはギタリストとしての淡い水彩画の如く心象風景を描き出しているようだ。再びパーカッションを用いた"Autoscooter Lover"は土着的な響きがオーガニック性を生み、そこに物憂げでぼんやりとしたシンセやか細くも情緒的なシンセストリングスを合わせながら、心を癒やすように穏やかな響きとなり特にバレアリック性の強い一曲となっている。シンセの快楽的なシーケンスが古いジャーマン・プログレを思い起こさせる"Out Of Mind"はダンス・ミュージック的な感覚もあり、サイケデリックな効果音も交えながらエネルギーを増やしながら高揚していくエレクトロニック・メディテーション。B面に入ると更に切ない情緒性を増していくが曲調にも広がりを持ち始め、ざっくり有機的な生ドラムに咽び泣くようなギターや透明感のあるシンセでぐっと感情性を高めた"Koli"はポストロック風で、優美なエレピのコードとジャジーな雰囲気を漂わせるハイハットやベースによってセッション的でもある"Helge"はコンテンポラリー・ジャズ調、電子的なキックを用いたダウンテンポなリズムに爪で弾くような柔らかいアコギが先導しながら優雅に彩っていく"Der Dane"はトリップホップを思わせ、ニューエイジという文脈の中でもエキゾや土着にジャズやポストロック等多様な要素を利用して、自分達の崇高で神秘的な世界観を確立している。この深く慎み深い音楽はニューエイジのファンを越えて訴求するもので、ホームリスニング向けに心を穏やかにする音楽としても是非ともな一枚である。



Check Cass. & Gianni Brezzo
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Land Of Light - The World Lies Breathing (Melody As Truth:MAT14)
Land Of Light - The World Lies Breathing
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昨今のニューエイジ再燃に先駆けるように2012年にデビューアルバム『Land Of Light』(過去レビュー)をリリースしたものの、それから7年もの間活動を停止していたLand Of Lightが、ニューエイジ方面では注目を集めるMelody As Truthから2019年に2枚目となるアルバムをリリースしている。Land Of Lightは、元DiscossessionのメンバーでありGaussian CurveやMATstudioといったプロジェクトでも人気を博すアンビエント/ニューエイジの界隈では特別な存在感を放つJonny Nashと、ダーク・エレクトロなSpectral Empireといったユニット等でも活動するKyle Martinの二人から成るユニットで、まだ2012年当時はニューエイジの流行が始まっていない中で余りにもドリーミーで桃源郷的な安らぎの音楽を展開しちょっとした注目を集めていた。ただアルバムリリース以降目立った活動はなく、それ以降にニューエイジ/アンビエントのムーブメントが発生した状況においてLand Of Lightは忘れ去られた存在となっていたが、ここに帰還した彼等は前述のムーブメントに影響されたのだろうか変化も見せた上でより今という時代性を獲得している。前のアルバムがまだ開放的なバレアリック感もある大仰な作品ではあったが、この新作ではより静謐さを増した霊的なニューエイジへと向かい、現世でもない何処かで鳴っているような神妙な雰囲気が通底している。本作ではアコースティック楽器と共に自作のモジュラーシンセの"The World Lies Breathing"も用いて制作されたとの事で、奇妙というか不思議な響きが独特の世界観を作っており、抽象的で不安定さもある電子音の鳴りから始まる"Between Two Grains Of Water"はクリック音らしきものやシンギングボウルらしき揺らぐ音なども効果音的に用いられ、音と音の間を強調しながら静謐な空間を作り上げていく。"Hand Holding Mine"は朧気な電子音のメロディーのループに、微かなヒスノイズや打楽器らしき柔らかい響きなどを水滴が落ちるように加え、空間に静けさが満ちながら無駄を排した美しさを描き出す。長い長いドローンが薄っすらと何処までも続くアンビエント色の強い"Light Of The Milligram"は、奇妙な効果音と共にその上にぼんやりと残響を残す弦らしき音が広がり、和の幽玄な感覚を喚起させる。不気味さを煽るグリッチが前面に押し出された"Age Of Tin And Copper"はかつてのエレクトロニカを思い起こさせるが、対照的に有機的な弦らしき柔らかいエコーが心を落ち着かせる異質な組み合わせはユニークで、また"Possession Of Silence"では不協和音的なピアノと不安定なグリッチによる意味の無い空虚な曲は曲名通りに静けさが存在感を放っている。本作は現在のニューエイジという時代性のある音に、更に現代音楽としてのミニマリズムやエクスペリメンタル、また和の侘び寂びの感覚も持ち込んでムーブメントの中でも埋没しない個性を確立させた新生Land Of Lightとも呼べるアルバムで、特にここ数年のNashの躍進と成長性を感じさせる作品だ。Melody As Truthのファン、ひいてはアンビエント/ニューエイジに注目している人ならば是非ともチェックして欲しい。



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