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Inner City - We All Move Together (Armada Digital:ARDI4262)
Inner City - We All Move Together
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今や世界各地に細分化して広まったテクノの起源、それはデトロイトのベルヴィル・スリーと呼ばれる3人が発明した音楽であり、テクノという音楽を軸にそれぞれが異なるスタイルによってその礎を築いた。その3人の中で売上的な面で最も貢献したのがKevin Saundersonで、彼が中心となって活動していたユニットのInner Cityはどちらかというとボーカルとキャッチーなメロディーを武器にしたハウス・ミュージックによって、その派手で大仰ながらもソウルフルな音楽性はある意味では大衆的でヒットしないわけがなかった。しかし正直に言うと金太郎飴的な作風どころか自身のネタの使い回しもあったりと、発展的な面は少なく生産性の無かった点も事実で、ベルヴィル・スリーの他の2人に比べるとメジャー志向過ぎるきらいもあった。と、前置きは長くなってしまったが、そんなInner Cityの1992年のアルバムから28年ぶりとなるニューアルバムが発売されたのだが、本作では息子であるDantiez、そして新たなるボーカリストのSteffanie Christianがメンバーに加わり制作されのだが、これが過去のInner Cityの音楽性と大差はなく、ある意味ここまでポジティブでソウルフルなハウスは清々しい。ナレーションを交えながらサウンドトラック的な荘厳な始まり方の"We All Move Together"でアルバムは幕を開けるが、曲の途中からヒプノティックなテクノ的なリフと分厚い4つ打ちキックによるぶんぶんベースが唸るダンスへと突入し、初っ端からKevinらしいド派手な展開だ。そして続く"SoundwaveZ"ではぐっと熱い女性の歌とメランコリーなピアノ×綺麗なシンセを生かしたソウルフル・ハウスを聞かせ、これぞ現在に蘇ったInner Cityと言わんばかりの情熱的な曲だ。"Your Love On Me"は出だしが完全に"Good Life"のリサイクルネタで苦笑してしまうが、跳ねるように勢いのあるリズム感に官能的な歌とゴージャスなシンセのリフを合わせたキャッチーな作風は、有無を言わさぬポピュラー性を得ている。基本的にはどの曲もアッパーな4つ打ちハウスのリズムに派手な装飾の如くピアノやシンセを用いて、魂を揺さぶるソウルフルな歌も被せながら、聞く者をハッピーに鼓舞させるような曲調で金太郎飴的な内容だが、中には"I Can Feel My Heart Again"のように荘厳なストリングスで彩りながらしっとりとした情熱を帯びたR&B調の曲もあり、アルバムの中でアクセントも付けている。どの曲も3分前後と非常にコンパクトな作りで、それぞれがノリの良い事もあって勢いに乗ってサクサクと聞き通して、ぐっと感情が熱くなりながらも爽快感に満ちたアルバムは、良い意味でのコマーシャル性に長けている。本人もInner Cityをやり直したと説明している通り、往年のInner Cityそのものな音楽は新鮮味には欠けるものの、ファンがデトロイトに求める音楽としては適切であるのも事実。現在の世界を覆い尽くす不安やどんよりした空気を吹き飛ばすような、非常にポジティブなアルバムだ。



Check Kevin Saunderson
| HOUSE15 | 12:00 | comments(0) | - | |
Chromatic Filters - Lido Iride (Rebirth:REB121)
Chromatic Filters - Lido Iride
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イタリアのハウスレーベルであるRebirthで活動を続けるChromatic Filters。このユニットについては全く知らなかったものの、リミキサーにイタロ・ハウスの老舗であるIrmaを代表していたLTJ XperienceとDon Carlosの二人が名を連ねている点だけに興味を惹かれ購入を決めた次第だが、リミックスも勿論オリジナル音源もなかなかの質だ。Chromatic FiltersはLuca SannaとPierpaolo Sechiのロンドンを拠点に活動するイタリア人デュオで、自身の説明では「80年代初期のNYのディスコシーンからインスピレーションを得ている」そうだ。ディープ・ハウスを好むLuca、そしてベースやシンセを演奏するライブパフォーマンスに興味を持っているPierpaoloの二人の相乗効果によって、確かに本作でもそんな音楽性が結実しているのが確認出来る。"Eugene"は覚醒感のあるシンセベースのシーケンスとゴージャスで綺羅びやかなシンセの使い方が際立っており、そこにどっしり重厚感のあるキックのディスコ・ビートも合わせ、スローモーながらも粘りのあるグルーヴと鮮やかな音色によってぐいぐいと快楽的に引っ張っていく。それをジャズやラテンにも造詣のあるLTJ Xperienceがリミックスした"Eugene (LTJ Xperience Remix)"は、大きな手を加える事はないがラテン系の爽やかなパーカッションにギターのダビーな幻惑的エフェクトを加え、スローモーという点では同じ方向性なもののトリッピーでサイケデリックな雰囲気が強くなり、どちらかと言うとディープ・ハウスといったジャンルに当て嵌まるだろうか。もう一つのオリジナル曲である"First Impact"はディスコのリズムでは同じだがもう少し軽くブギーなノリが爽やかで、そこに綺麗めのピアノコードやパッドで優雅な情緒を演出し、そして陶酔感の強いエモーショナルなギターソロも加わってくると艷やかなフュージョンの味も出てきて、ファンキーなのにエレガントな世界観にうっとり。そして"First Impact (Don Carlos Remix)"、このリミックスも原曲の雰囲気を尊重しており、軽やかに大空へと広がっていくギターの爽快さ、透明感のある綺麗な音の用い方とアンビエンスな浮遊感を保ち非常に心地好い大らかな雰囲気で、そこにリズムはどっしりエレクトロニックな響きのキックによってディープ・ハウスへと塗り替えて、DJ使用性を高めた丁寧なお仕事をしている。ライブ感もあるディスコ寄りな原曲、エレクトロニックなディープ・ハウスのリミックス、どちらもアーティストの個性が反映されつつ古典的なイタロ・ハウスらしい忠実さに安心を覚える内容だ。



Check Chromatic Filters
| HOUSE15 | 12:00 | comments(0) | - | |
Mediterranean Key Collective - Fragranza (Cosmic Rhythm:CRM15)
Mediterranean Key Collective - Fragranza

2016年に発足したイタリアのCosmic Rhythmはまだ歴史は浅いものの、シカゴ・ハウス由来のロウな響きのリズムとイタロ・ハウスを継承した美しく鮮やかな音色を基にしたオールド・スクールかつディープ・ハウスな作風に焦点を絞り、良質なEPをこのご時世に配信もせずにヴァイナルオンリーでリリースし続けている。そんなレーベルから新たにデビューしたMediterranean Key Collective、実はイタロ・ハウスの大ベテランであるDon Carlosと、Cosmic Rhythmの主力として活動するRhythm Of ParadiseことMichele Lamacchia、そしてレーベル主宰者であるCosmic GardenことNicola Loporchioの3人による新たなるプロジェクトという事で、どうしたって注目してしまうのも当然だ(ちなみに同レーベルのカタログに並ぶB.U.M.、Rydm Sectors、Loss Of Gravityなど大半の名義も、実はLamacchiaとLoporchioに依るものである)。イタロ系の古典とも呼べるIrmaやCalypsoから多くの名作をリリースしてきたイタロ・ハウスの大御所と、そして新世代の二人が手を組むという世代を越えたプロジェクトは、確かに各々の魅力が取り込まれて単なる話題性だけではない納得の内容となっている。ローファイというか乾いてチージーな音質のリズムが跳ねる"Fragranza"は、しかし耽美でスムースなエレピコードにファンキーな効果音を織り交ぜて、中盤から入ってくる艶と色気のあるサックスソロが地中海の楽園的なムードを吹き込み、如何にもイタロ的なドリーミーなハウスで説得力を持っている。"Il Tramonto"は膨らみのあるキックを用いて穏やかな4つ打ちを刻んでおり、そこに流麗で透明感のある鍵盤コードを重ね、色彩豊かに煌めくようなシンセのメロディーを散らし、波打つ水面から太陽光が乱射するような美しさのあるバレアリックなハウスを展開。別バージョンとなる"Il Tramonto (Mediterranean Mix)"はより太いキックとざらついたハイハットが強調されて骨太感があるが、澄んだエレピとホーン系のメロディーが穏やかなアンビエンス性を生み出しており、そこに繊細で綺羅びやかな鍵盤ソロも入ってきて優雅で大人のディープ・ハウスといった趣きで実にリゾート感覚に溢れている。最後はリラックスしたビート感の"La Casa Del Sole"で、ドライなタム系と金属的なパーカッションの響きに合わせ幻想的で微睡んだシンセコードで夢現な状態が続く、甘美でドリーミーなイタロ・ハウス。やはりイタリアのアーティストが揃っただけあり如何にもイタロ的なピアノの使い方や、美しく清涼なシンセの響きを前面に打ち出して、作風としては古典というかオールド・スクールというか新しい事は何も無いものの、基本に忠実だからこそ逆に盤石な質の高さを示している。一回限りのプロジェクトとしてはもったいなさ過ぎるので、是非とも継続して欲しいものだ。



Check Mediterranean Key Collective
| HOUSE15 | 09:00 | comments(0) | - | |
Pacific Coliseum - How's Life (Let's Play House:LPH075)
Pacific Coliseum - Hows Life
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南国の木々の向こうに見えるビビッドな青々しい空と緑の海、このトロピカルな楽園系のジャケットからしてアルバムの中身を示唆するようで、当方はそれに惹かれて試聴したところ予想通りなドリーミーかつバレアリックな音楽がドンピシャ。Pacific Coliseumはカナダ人のJamison Isaakの変名の一つで、この名義では過去には新興レーベルでは勢いのあるCoastal Hazeから既に2枚のアルバムをリリースして注目を集めていたようだ。他にもドリーム・アンビエントを展開するTeen Dazeなど複数の名義で10年以上の活動歴がありベテランではあるようだが、その中では最近はハウス・ミュージックを中心にしながらチルアウトやアンビエントにダウンテンポといった肉付けもしながら緩く和んだ音楽性のPacific Coliseum名義が特に注目を集めているように思われる。最初に述べた通りに閉塞的な闇の空間とは全く真逆の、屋外で太陽光が降り注ぐ楽園のような雰囲気の音楽性がアルバムの軸にあり、現在のコロナ禍に於ける閉塞的な気分を少しでも和らげるには最適なBGMと成り得るヒーリングの効果さえもある。軽やかでパーカッシヴな4つ打ちのハウス・グルーヴ、そこに繊細なエレピやメロウな笛に生っぽいベースを合わせたジャズ・ファンク的な"An Evening In"で始まり、同じくエレピの透明感に満ちた綺麗なメロディーがリードするアシッド・ジャズ調の"Relief"、そしてねっとり絡みつくベースと煌めく上モノにうっとりなスローモー・ディスコの"Really Gone"と、冒頭3曲からして生っぽい温かい音質と気怠くもあるレイドバックした世界観は軽く踊れながらもチルアウトを誘発し、日中のティータイムの寛ぎにも最適だ。しかし瞑想的な電子音のループで牧歌的な田園風景を想起させる"Floating Petals"はアンビエントやニューエイジ寄りの作風で、一時の白昼夢による現実逃避か。そして何だか忘れ去った昔の思い出が蘇るようなセンチメンタルなAOR調の"Closer Feel"、ビートを落としながらもブギーな爽快さのある心地好いパーカッシヴなハウスの"Turquoise"とゆっくりと散歩を楽しむように進み、"Endless Journey"では物哀しい重層的なシンセから発せられる夕暮れ時のようなメランコリーにより、再度深い慈しみに満ちたニューエイジが訪れる。最後は豊潤なドローン音響を用いいつつそこに清らかな鍵盤を重ねたニューエイジ調の"Water Movements"で、桃源郷の真っ只中な気分のままアルバムは穏やかな終わりを迎える。穏やかながらもダンスとしてのグルーヴも適度にありリスニング向けに抑制されたアルバムで、全編に通底する忙しない日常から開放されたリゾート感覚は、パーティー後の踊り疲れた体にも最適なオーガニックなチルアウトにもなる。ハウスの枠を越えて多様な作風を盛り込みつつ、その世界観はバレアリックに統一されて穏やかな時間を提供してくれるだろう。



Check Pacific Coliseum
| HOUSE15 | 12:00 | comments(0) | - | |
Maat - Solar Mantra (Growing Bin Records:GBR023)
Maat - Solar Mantra
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時代の狭間に埋もれていたニューエイジ/アンビエントの発掘によって再評価が2020年も進んでいるが、そういったジャンルにて古典ではなく現在から未来への視点を持って、そしてバレアリック呼ばれるスタイルも内包しながらこのムーブメントを引率するGrowing Bin Recordsは、今レーベル買い出来る程に信頼に足るレーベルだ。前述のジャンルのみならずクラウトロックやジャズ&フュージョン、エレクトロニックにディスコ等も披露するなど、特定のジャンルに依存せずに自由な音楽性を持っているのがレーベルの特徴だが、その意味ではこのアルバムは特にレーベル性を象徴しているとも言えるかもしれない。Maatなる初耳のこのユニットはAdrien ColleとTim KarbonとMaxime Castanetから成るトリオのようで、それぞれが今までにもバンドやソロ活動を行っていたようで、そんな3人による音楽性が揃った事でここではハウスやダブ、ジャズやバレアリックにアフロといった多種多様な音楽のハイブリッドになっている。レーベルインフォに拠ればDon Cherryを含むワールド・フュージョンのバンドであるCodonaに捧げられたとの事で、国境やジャンルを越えたCodonaの音楽性という観点から共鳴する所もあったのかもしれない。残響広がる土着的なパーカッションと揺らぐような4つ打ちのグルーヴ感がある"The Walk"は微睡んだダブ・ハウスなのだが、甘く靄のような歌やセンチメンタルなシンセや鍵盤も加わり、何だかバンドで演奏しているようなライブ感のある曲だ。続く"Jaki & Bryn"も湿ったトライバルな打楽器が印象的だが、憂いに満ちた歌とフォーキーなベース等も入ってくると、エキゾなポスト・ロック的な感覚に染まっていく。しなやかにスウィングするジャズ・ドラム風な"Feuglace"ではメランコリーな鐘や陰鬱なギターが深い情緒を生み、そこに更に悲壮感にも似た感情の込められた歌も加わり、艷やかではあるが随分と内省的なジャズ・ハウスだ。"Solar Mantra"では繊細なアコースティックギターと軽いパーカッションがエキゾな旋律を奏で、幻想的な歌も加わり桃源郷へと誘うようなアンビエント・フォークとでも呼びたくなる。"Quetzal Pacino"はエキゾやアフロな空気を滲ませながらも特にフロアを意識したハウス・グルーヴを刻むダンスだが、ライブ感のある響きが古代や原始の胎動を思わせる。今風のニューエイジに当てはまるのは"Mount Beuvray"、チャカポコとしたパーカッションに長閑なホーンと澄んで綺麗ななシンセが波紋のように広がっていく甘美なノンビート曲で、ドリーミーなアンビエントでもある。そしてアコギの爽やかな音と乾いた残響が効いたダブ・パーカッションが響き、そこにカラフルな電子音も入り混じり、開放的なバレアリック性を開花させた"Llome Dub"によって、アルバムはほっと安堵に満ちながら締め括られる。実にGrowing Binらしい多彩なジャンルを含む折衷主義で、その上で現在のバレアリックやニューエイジの文脈に自然と存在する今っぽさもあり、デビューアルバムからして鮮烈な印象を残している。特にオーガニックなバレアリック好きな人には、是非ともお勧めである。



Check Maat
| HOUSE15 | 17:00 | comments(0) | - | |
Luca Lozano, Telephones - Double Vision EP (Klasse Wrecks:VVIISSIIOONN1)
Luca Lozano, Telephones - Double Vision EP

Luca LozanoとMr. Hoが主宰するKlasse Wrecksからの新シリーズは、「1 Record, 2 Artists, 4 Trax」をコンセプトにした「Double Vision」なるもので、二人のアーティストがそれぞれ新曲を1曲提供しつつ、それらをお互いがリミックスするというもの。その立ち上げに抜擢されたのはLuca本人と、Full PuppやSex Tags UFOにLove On The Rocks等からバレアリックなハウス名作を送り出している新世代のTelephonesで、個人的にはTelephonesに魅了されているのでそれを目的に購入。先ずはLucaによる"Ibiza Bullshit Necklace"だが、曲の雰囲気自体はレトロなオールド・スクール感が滲み出ているクラシカルなハウスで、安っぽく素朴な音質のキックによるブレイク・ビーツ気味なリズムが跳ねつつ、オルガン風のミニマルなコード展開を軸に時折アシッド・ベースを用いたレイヴ調な流れもあったりと、90年代の無邪気で享楽的な空気が溢れるハウスは懐かしくもある。それをTelephonesが味付けした"Ibiza Bullshit Necklace (Telephones Remix)"は完全に彼の清らかな湧水が溢れ出すようなエモーショナルなディープ・ハウスに染まっており、芯のある太いキックとパーカッションによるタフなグルーヴ感を刻み、そこに綺麗で透明感のあるシンセを被せながら多幸感の螺旋階段を上り詰めていく高揚感があり、フロアを感動に包み込むであろう情熱性と機能的なグルーヴを伴う完璧なりミックスだ。一方Telephonesによる新曲"Tonya Vs Nancy"は、躍動感のあるベースが主張しつつ上モノはややトロピカルな陽気さもあるシンセや清流が流れるような綺麗なシンセストリングスを合わせて、木々や生命の営みが感じられるような大自然の中の開放感のあるバレアリック・ハウスといった趣きで、非常に賑やかで陽気な世界観だ。それをLucaがどうのように手を加えるのかと思いきや、"Tonya Vs Nancy (Luca Lozano Remix)"はエレクトロ風なファンキーなリズムに毒気のあるアシッド的なベースを前面に出して地べたを這いずり回るような重心の低いハウスで、チージーで荒っぽい音質の効果もあってファンキーさを獲得した名リミックスだ。それぞれの新曲と手を加えたリミックス、互いの音楽性の違いが明確に現れているがどちらもフロア即戦力である事も間違いなく、シリーズ開始としては成功だろう。が2018年9月のリリース以降、このシリーズの続編は未だにリリースされていない。



Check Luca Lozano & Telephones
| HOUSE15 | 12:00 | comments(0) | - | |
Akufen - My Blue House (Quartet Series:QSB04)
Akufen - My Blue House
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2019年リリースなので今更ではあるものの、アーティストにとって第二の春を迎えている位に高品質なハウスなのでこれは紹介せねばならない。マイクロ・ハウスまたはマイクロ・サンプリングなるスタイルの個性確立により高い評価と人気を獲得したMarc LeclairことAkufen、決して多作とは言えないもののそれだけに一枚一枚の作品の品質は高く、近年はとりわけマイクロ・サンプリングの技術を前面に出すよりはそれを用いつつもオーガニックな音との調和によって、温かくもディープでファンキーな音楽性に傾倒している。そしてこの最新作、特にタイトル曲となる"My Blue House"を聞けば、まさかのGalaxy 2 Galaxyに触発されたようなハウスに驚かずにはいられない。シャッフルし跳ねるリズム、そこにオプティミスティックなピアノのリフと美しいストリングスが希望を謳い上げるように加わりつつ、細かく配置された電子音はファンキーなアクセントとなる。すっきりと身軽な構成を保ちながら爽快に飛翔するコズミック・ハウスはURよりは展開を抑えてもう少しツール性が強いが、やはりマイクロ・サンプリングに頼らないクラシカルな作風を意識しているように感じられる。"Forever In Love With You (To Camille)"も同様にマイクロ・サンプリング路線ではなくG2G的なジャジーで優美なエレピやオルガン、エモーショナルに艷やかに伸びていくストリングスを用いており、すっきりしたハイハットやハンドラクップを用いた揺蕩うビート感で気持ち良く揺れるファンキー・ハウスは、足の裏が地から離れる得も言われぬ浮遊感でドリーミーだ。昔のAkufen好きにとっては"You Look Delicious"がしっくりと来るだろうか、マイナー調のコードにジャジーな鍵盤ソロに呟きサンプルやぶつ切り風の音を合わせて、童心のような遊び心とフロアのダークな雰囲気を調和させている。そして「Play」というボーカル・サンプルに肉体的なベースと切れのあるエレクトロ風なリズム感、そこに高揚感を増していく鍵盤コードでポジティブな雰囲気を保ちファンキーさを奏でる"Play (Never Work Till Monday)"、何だかAkufenの音楽性が以前にも増して人間的な熱量を帯びてきているように思われる。フロアでの爆発力だけで評価するのであれば過去のド派手なサンプリング路線の方が求められるのは間違いないが、この新作のアーティストとしての円熟味を得た上での生々しいファンクネスも素晴らしく、自身が積み重ねた殻を破りながら更なる進化を遂げる点から今後も期待せずにはいられない。



Check Akufen
| HOUSE15 | 13:00 | comments(0) | - | |
Julio Victoria - Astrolabe EP (Church:CHURCH018)
Julio Victoria - Astrolabe EP
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近年のダンス・ミュージックの流れとして再びクロスオーバーな路線が再燃しているように感じるが、テクノやハウスにダウンテンポやジャズ、その他にも多様な要素を吸収したUKはロンドンのChurchは、間違いなくその先鋒だ。何でも咀嚼出来る柔軟性があるからこそ所属するアーティストも多様でこれからを担うであろう新鋭も多いが、それでも比較的ディープ・ハウスという音楽が真ん中にはあるように思われ、本作もその端的な一例だ。Julio Victoriaについては存在を知らなかったもののコロンビアの著名なDJだそうで、近年はコロンビアの伝統的な音楽と欧州の音楽を融合させたJulio Victoria Live Bandなるプロジェクトも行ったりしているそうだが、しかし他にリリースした作品が見つからないので本作がデビュー作なのだろうか。そして実際に音を聞いてみるがルーツをコロンビアとする要素は全く分からず、良い意味で現代的でクラブフレンドリーなディープ・ハウスを軸にしており、そこにビートダウンやトライバルな要素を合わせて曲毎に異なる魅力を聞かせている。"Astrolabe"はリラックスしてカラッとしたビート感が長閑さを生みつつ、掠れたように抽象的な上モノにふんわりとアトモスフェリックで可愛らしい上モノを合わせ、例えばSmallville辺りを思わせる牧歌的なディープ・ハウスだ。"Evasion"では膨らみのある太鼓がローリングしながら、奇妙な電子音くるくるしサイケデリックかつトライバルなハウスな雰囲気で飲み込むが、ヒプノティックな効果音的なシンセのループも加わってくると欧州的なダンス・ミュージックの感覚も現れる。そして"Tres"、図太く打ち付けるマッチョな4つ打ちにスモーキーで暗くサイケデリックなシンセのコードを聞けば、これは完全にデトロイト・ハウス影響下の曲と分かるであろうが、夜空に輝く星のように美しい音も散りばめてエモーショナル性も抜群である。有名DJであるのに本作がデビュー?等いまいち状況は掴めないが、Churchからの後押しを受けているだけに品質保証は間違いなく、クロスオーバー路線のハウス好きなら聞いて損はしないだろう。



Check Julio Victoria
| HOUSE15 | 12:01 | comments(0) | - | |
Matthieu Faubourg - Simplicity Is The Ultimate Sophistication (Jazzy Couscous:JC13)
Matthieu Faubourg - Simplicity Is The Ultimate Sophistication
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Matthieu Faubourgなるアーティストの存在は知らなかったものの、このアルバムがJazzy Couscousからのリリースという点において興味を惹かれるのも仕方ない事だ。普遍的なハウス・ミュージックをリリースする一方、特に日本のハウスを掘り下げた『ハウス Once Upon A Time In Japan...』(過去レビュー)やシンセ・ポップとアンビエントに焦点を当てた『雲の向こう : A Journey Into 80s Japan's Ambient and Synth-Pop Sound』(過去レビュー)等の素晴らしいコンピレーションで時代を引き寄せる類まれなるセンスを持つレーベルだからこそ、Jazzy Couscousに対しては絶対的なまでの信頼を寄せる事が出来るのだから。そんなレーベルが今後押しするFaubourgはフランス出身で現在はバルセロナで活動するアーティストで、2015年にデビュー以降複数のレーベルからオールド・スクールとモダンが共存するハウスをリリースしており、そしてこの初のアルバムによって決定的な評価を得るだろうと思われる。実際に聞いてみるとシンプルさを強調してクラシカルな佇まいを持ちならも、しかし洗練されたDJ向けな機能性と無駄を削ぎ落としたようなモダンなディープ・ハウス性もあり、良い意味で癖の無い作風は耳にすっと入ってきて何時の間にか体に馴染んでいる。跳ねるような4つ打ちながらも繊細なハイハットによってジャジー性が生まれる"Winter Will Be Long"では、綺麗で優美なシンセストリングスがしなやかに伸び、そこに多幸感ある鍵盤のループやメロウなエレピソロも重ねてややミニマルな構成でもあり、派手に着飾らない点が機能性へと繋がっている。ブルージーなオルガンらしき音色とブロークン・ビーツ調のリズムを合わせた"Intense"もそれ程展開を広げる事はなく、途中から4つ打ちに変化しエモーショナルな鍵盤のコードを加えながらひたすら反復性を重視したディープ・ハウスとなり、颯爽と駆け抜ける疾走感が心地好い。Meggyをフィーチャーした"If You Care"は、軽快なパーカッシヴな4つ打ちが走りつつ甘く誘ってくる歌と繊細に彩るエレピが優美な響きとなり、クールな温度感ながらも慎ましくエモーショナルだが、"I've Never Been To Tokyo"ではアシッド気味のベースラインと綺麗めの上モノを用いてエレクトロニックな響きを活かした簡素なテック・ハウスを披露するなど、ハウスに対する気取らない表現力の上手さが感じられる。爽やかに流れるようなジャジー・グルーヴにピアノの情緒あるコードループで反復性を重視した"Change"等、その他もゴテゴテに装飾をする事もなくすっきり身軽な作りが印象的だが、その中で"Kafka"はフュージョン風な光沢感あるシンセが大胆に舞い踊りながらオルガンがムーディさを演出しつつ、ずっしりしたキックが打ち付ける力強いファンキーなテック・ハウスで、特にダンスフロアが似合う一曲だ。また今人気が上昇中のキーボード奏者のByron The Aquariusがリミックスを提供もしており、"Winter Will Be Long (Byron The Aquarius Remix)"では原曲の優美な雰囲気を保持しつつロウなパーカッションと太いキックを加えながら野太く荒々しさも獲得したハウスへと生まれ変わり、より真夜中のフロアの喧騒が似合う曲となっている。アルバム全体を通して仄かに情緒的ながらも熱くなり過ぎずにクールな雰囲気と綺麗な音を用いてすっきりと洗練された構成となっており、時代性を意識する事よりも時代を超越するオーセンティックでありのままというようなハウスだからこそ、何度聞いても色褪せない魅力を持っている。



Check Matthieu Faubourg
| HOUSE15 | 09:00 | comments(0) | - | |
Terrence Parker - E-Motion-L (Blue Arts Music:BAMCD010)
Terrence Parker - E-Motion-L
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90年代に華々しい活躍を見せたデトロイトのシーンはしかし今現在かつての繁栄を失いつつあるが、その時代から活動し続けるTerrence Parkerは今も尚積極的な制作も行う現在形のDJ/アーティストで、特に2010年以降はかのPlanet Eから2枚もアルバムをリリースするなど今こそが彼のキャリアにおいてピークを迎えているといっても過言ではない。クリスチャンでもある彼が生み出す音楽はヒップ・ホップやディスコも咀嚼しながら特にピアノを用いたハウスはゴスペル・ハウスとも呼ばれ、流行り廃りとは一切無縁のソウルフルで人間臭い情熱的なハウスは非常にクラシカルな作風であり、最早Parkerのお家芸となっている位にスタイルにブレはない。そんな彼の最新作は近年デトロイトのシーンに積極的にコミットしている福岡のBlue Arts Musicからのリリースで、先ず日本人として日本のレーベルから世界へ紹介される事を嬉しく思う。さて、内容の方はと言うとやはりピアノを前面に打ち出したハウスという点では大きくは変わらないが、過去のコテコテにソウルフルで熱き感情を謳い上げるようなハウスと比べると、本作は幾分か勢いを抑制しながら流麗さを活かしたテック・ハウスな成分も増えていたりと、そういう意味ではややモダンも意識したのだろうか。出だしの"All Of My Life"はいきなりレトロで安っぽいアシッド・シンセのループが耳につくが、途中では優美に彩るストリングスと繊細なピアノによって華々しいブレイクも持ち込みつつ、最終的にはそれらが一体化してエモーション爆発なソウルフル・ハウスと化す。"E-Motion-L"はファンキーなオルガンが引っ張りつつしなやかなストリングスも配して、所謂従来のデトロイト・ハウスの系譜でこれぞParkerのゴスペル・ハウスだろう。そして囁くように甘い女性ボーカルが艷やかな"Some Sweet Day"は楽天的なピアノのコードがフロアを照らし出すように希望に溢れており、一方で"Another Night"はテッキーな上モノのリフと快楽的なファットなシンセベースが主導するテック・ハウスで、そしてヒップ・ホップのリズムの影響も見られるざっくりとしたビート感の"Snow Flake Dance"と、本アルバムはハウスというフォーマットの枠組みの中に色々と詰め込んだように前作から更に振れ幅が大きくなっている。アルバムを締め括る"Trippin"はオーケストラ風の豪華というかプリセットまんまみたいなシンセストリングスを大胆に踊らせて、ズンズンと重圧のあるグルーヴで盛り上げるド派手で大袈裟なソウルフル・ハウスで、もはや苦笑せずにはいられないがこういった大仰なスタイルも含めてParkerのハウス・ミュージックとして成立している。前作までに見られたゴスペル感は本作ではやや後退しているが、色々と詰め込みながらも手堅くソウルフルなハウスとして纏められており、流行なんぞ何のそのといったParkerのクラシカルな世界観は健在だ。



Check Terrence Parker
| HOUSE15 | 12:00 | comments(0) | - | |