2017.05.06 Saturday
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テクノ/ハウスという枠組みを、そしてダンス・ミュージックの枠も、更には日本を越えて世界的にも高い評価を得ていたSusumu Yokota。2015年にお亡くなりになった以降、彼の今では入手困難な初期作品が続々とリイシューされており、本作はその一環となる1997年作の再発だ。同じ名義による1995年作の『Metronome Melody』(過去レビュー)では甘美なハウスに大胆なブレイク・ビーツも持ち込んで傑作と呼ばれる程の内容であったが、更に本作はその路線を引き継ぎつつより金属的な響きや変則的なリズムを進化させ、よりバリエーションの豊かさを拡張している。始まりの"4°C"からして既に硬く金属的なパーカッションがキモとなるリズムを作っており、そこに透明感のある電子音がぼんやりと、そして揺蕩うように繊細に配置され、今思うとエレクトロニカとディープ・ハウスの掛け渡しを早くも行っていたようにも思われるアンニュイな曲だ。"Diamond Head"ではよりリズムが尖って鋭角的なグルーヴとなり、荒々しくもありつつ穏やかに感じられるのは繊細な電子音の使い方が故だろう。ディープ・ハウスが忘れ去られた訳でもなく"Flicker"では正にそれを実践しているが、その無駄な音が削ぎ落とされた先に辿り着く侘び寂びや寂静の世界はYokotaの十八番と呼びたくなる。後のリズムへの探求にも繋がるであろう試みはここではドラムン・ベースとして現れており、"81/2"や"Black Or Color"では変則的でしなやかなドラムン・ベースと甘美なディープ・ハウスの融和として成功させ、完全に自分の音として完成させている。音楽活動の後半に入ったYokotaはどんどん音楽性を拡張させていった事実があるが、その予兆はこの頃から既にあった事を再認識させるアルバムだ。そして再発にあたりEPからの曲や未発表曲を纏めたボーナスディスクも付いてくるが、アンビエント・ドラムン化した"4°C (Spacetime Continuum Remix)"や透明感や甘さを保ちつつ骨太なハウス化した"Key (Aubrey's Solid Groove Remix)"のリミックスの魅力、また『Fallen Angel』の自由度が更に拡張されユーモアも含んだ未発表曲など、これらもYokotaの豊かな創造力の結実であり掛け値なしに素晴らしい。『Metronome Melody』に負けず劣らずの傑作である。
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