2017.06.03 Saturday
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AnomalyにBlack Jazz ConsortiumからFP-Onerまで複数の変名を用いて活発な活動を続けるFred PeterkinことFred P.は、ディープ・ハウスからアンビエントにジャジーヴァイブスまで取り込んで壮大な空間を感じさせながらエモーショナルな世界を展開するダンストラックで多くの人を魅了している。勿論DJやアーティストからの評価の高さは引く手数多の存在として証明されているが、今度はロンドンの人気レーベルであるSecretsundazeから新作をリリースするに至っている。どんなレーベルからでも基本的には一貫性のある音楽を示すアーティストではあるが、本作はかなりフロア寄りのダンストラックで普段よりも闇を強く感じさせる。鋭利でシャッフルするハイハットや骨太なキックに爽快なタム、そして奥底で雷鳴のような音響が鳴っている"6AM"は、普段のエモーショナル性よりも激しいトライバルなリズム感で闇の中を駆け抜けるダークなテクノで、タイトルが示す朝6時のフロアを落ち着かせるどころかより高揚へと導くようなエネルギーに溢れている。"Herb"も比較的刺激の強いパーカッションを用いつつシンコペートによってうねりを生み出す曲で、荒削りな音質が曲調に激しさや厳つさをもたらしているが、こちらは普段のFred P.らしい幻想的な上モノが入ってきて瞑想的な深みも存在している。しかし最も彼らしい曲はB面に収録された9分にも及ぶ"Mile High"で、ざっくり生感もありながら爽快感のあるハウスビートが疾走する中で、霧靄のような空気感のあるパッドが浮かびつつ神秘的なピアノが滴り落ちてくる幻想的な展開は、正にFred P.特有のスピリチュアルなアンビエンスが満ちている。9分という尺も冗長に感じる事はなく、逆にその微睡みのような心地良さが何時までも持続して陶酔の世界へと導くのだ。やはりどんなレーベルから作品を出そうともFred P.はFred P.である事に変わりはなく、ファンであれば納得の一枚だ。
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