Outro Tempo : Electronic And Contemporary Music From Brazil 1978-1992 (Music From Memory:MFM016)
Outro Tempo Electronic And Contemporary Music From Brazil 1978-1992
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『1978〜1992年のブラジル産電子音楽と現代音楽』という分かり易い直球タイトルのコンピレーションを手掛けたのは、アムステルダムを拠点とし現代バレアリックや失われた遺産の発掘に勤しむMusic From Memoryだ。特定のジャンルで言及される活動ではなく、実験的精神とバレアリックな雰囲気の融和の方向に向かい歴史の狭間に埋もれてしまった良質な音楽の再発見を続ける重要かつ人気レーベルであり、まだ活動期間が長い訳ではないものの間違いない審美眼は信頼の置けるものだ。勿論本作もブラジルをコンセプトにしているからと言って素直なサンバやボサノヴァが収録されている筈もなく、タイトル通りに一般的なブラジルのイメージからは想像も付かない現代電子音楽がこれでもかと紹介されており、ブラジル音楽に対するイメージを一新させる事は間違いない。筆者には当然ながら収録されたアーティストについて全く知識を持ち合わせていないが、しかしだからこそイメージに左右される事なく素直に音そのものを聞き入れる事が出来て、ブラジル音楽の新たな魅力に触れる事が出来た。Piry Reisによる"O Sol Na Janela"は煌めく電子音と爽やかなアコギに色っぽさもある歌が絡むフォーキーな曲で、確かにブラジルの涼風が吹き抜けつつもラウンジ・ミュージック的だ。Nando Carneiroの"G.R.E.S. Luxo Artesanal"は軽快なリズム感や哀愁のアコギからはブラジリアンな要素が発見されるが、そこに入ってくる遊び心もあるような電子音が印象的だ。と思えばFernando Falcaoの"Amanhecer Tabajara (A Alceu Valenca)"は不思議な音色と打楽器を中心とした現代音楽×ミニマルのような作風でジャングルに迷い込んだようなスピリチュアルな雰囲気もあり、Anno Luzによる"Por Que"では無重力なシンセを用いたアンビエントな幕開けから悲哀のピアノやアコギによってぐっと切なさに染まっていく情緒的な響きもあり、電子音楽のユニークさとブラジルの空気が見事に一つとなっている。その他にもバンジョーを用いてエキゾチック感を含ませつつカリンバやハープ等の多くの生楽器を用いて瞑想へと誘うニューエイジ風の"Gestos De Equilibrio"、そして世界各地の民族楽器の人力演奏によって15分にも及ぶ大地との交信を図ったかのようなサイケデリックかつサウダージなワールド・ミュージックの"Corpo Do Vento"と、陽気な雰囲気の中にも霊的な世界観さえも持っているのはアマゾンという原始の森があるブラジルだからこそからか。面白いが決して難解ではなく、様々な民族・文化が溶け合ったようなブラジルの混合性があり、そして何よりも馴染みやすいロマンティックな響きがあり、またしてもMusic From Memoryのレーベルカラーを見せ付けた選曲が素晴らしい。



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| ETC(MUSIC)4 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |

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