2019.06.04 Tuesday
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世界的な知名度を誇るBerghainが主宰するOstrut Tonというレーベルで、長年A&Rかつマネージャを務めていたNick Hoppnerがそんな名誉ある役職を捨ててまでやりたかった音楽とは一体何なのか、その答えこそが新たに立ち上げたTouch From A Distanceにあるだろう。レーベルとしては4作目となる本作を担当するのはイギリスのBrother Nebulaで、詳細については存じていないが2018年にLegworkから2枚EPを出している位の活動なので、比較的若手のアーティストなのだろうか。オープニングの"Double Helix"はスペーシーな電子音に語り口調のボイスサンプルが乗っかった壮大なサウンドトラック的なアンビエントで、短い序章ながらもEPの道標となる曲だ。そこに続く"Infinity 2"ではタイトな4つ打ちにディスコやエレクトロを思わせる電子ベースが躍動し、荘厳なパッドと透明感ある叙情的なメロディーの絡みによるデトロイト・テクノ的なスペーシーさも現れ、すっきり洗練されながらもエモーショナル性を発揮したグルーヴィーな一曲。情緒的で耳に残るメロディーの秀逸さは"Sky Walking"でも変わらないが、鋭く細かく刻まれるブレイク・ビーツと陽気なアシッド・サウンドは非常に刺激的で、レトロ・フューチャーなロボット・ボイスも加わると途端に未来的な景色を浮かび上がらせる。更に大きく揺れるレイヴ色もあるブレイク・ビーツが特徴の"Going Clear"でも幽玄な電子音響が活きており、そこに鈍いアシッド・ベースやスペーシーなボイスサンプルを細かく配置して、SFの近未来的世界観を描き出すその音はエレクトロだ。Ostrut Tonが比較的クラブでの機能性重視な音楽性に偏っているのに対し、やはりこのBrother Nebula、ひいてはTouch From A Distanceはダンスとしての機能性が無いわけではないが、それよりも魅力的なメロディーやムードにより重点を置きミックスされずとも魅了するような音楽性に向かっているのは明白だ。HoppnerがOstrut Tonを離れたのも納得であり、そしてTouch From A Distanceという場所でHoppnerの音楽観はより一層これからを担う若手の後押しをするに違いない。
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