MATstudio - MATstudio 1 (Melody As Truth:MAT-ss1)
MATstudio - MATstudio 1
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アンビエント/ニュー・エイジの再燃というムーブメントの中で台頭したMelody As Truthは、ギタリストであるJonny Nashが主宰するレーベルで、主にNashとそしてSuzanne Kraftによる作品をリリースする。音の間にある静寂やダンスの狂騒とは真逆の静謐を打ち出したその音楽は美しくも微睡みに落ちるように幻想的で、昨今のニュー・エイジ隆盛の中で現在形を提示している。そしてNashとKraftによるこの新しいプロジェクトである「MATstudio」は、彼等の説明ではMelody As Truthのスタジオにおける即興や実験に偶然の出来事のコラージュした作品との事で、Melody As Truthらしい穏やかな叙情性はあるが即興という事もあって今までの作品よりも随分とエクスペリメンタルな風合いが強い。2曲のみの収録ながらもそれぞれ17分越えの大作だからこそ、その長尺の中で明確な形を見せるのではなく即興セッション的な構成が定型の無い抽象的な音楽となり、静けさが持続しながらもある意味では刺激的な作品だ。ドローン的で不気味なギターの広がりから始まる"In Strange Company He Spoke Softly"はエレクトロニクスも加わるが断片的なパーツを切り貼りしたような展開で、意思が感じられる明確なメロディーではなく単なる音の連なりが気の赴くがままに刻まれる。暫くすると繊細なピアノが美しいメロディーを表現しウッドベースも動きを付けたりと、電子とアコースティックが一つとなりながら聞きやすいアンビエント展開を見せたりもするが、そのパートを過ぎると今度はドラムも入ってきて捻れたような電子音が躍動するエレクトロニカな構成もあったりと、一曲の中で様々な表情を見せるのはやはり即興による自由なプレイだからだろう。"The Land Through Which We Pass"はよりアンビエント的な始まりで、エレクトロニクスのドローンにディレイの効果を被せて音が放射しながら充満し、次第にミニマルな反復の展開からもやもやとしたアブストラクトな音像まで変化し、トリッピーなパーカッションを用いた異国情緒溢れるエキゾチックな終着点へと辿り着く、正にタイトルの如く複数の土地を通過してきたように様々なパートで成り立っている。確かに両曲ともアンビエント/ニュー・エイジという言葉で表現される音楽性ではあるが、単に心地好いだけのそれではなく、枠に当てはまらない偶発性やライブ感を重視した自由度の高さを目指した音楽は、単なるBGMにはならない刺激的な響きがある。こういった音楽のリバイバルが過去の名作掘り起こしに目が向けられる事が多いが、NashとKraftは未来へと視点が向いているアーティストとして好奇心を抱かせる。



Check Jonny Nash & Suzanne Kraft
| ETC(MUSIC)4 | 10:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |

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