John Beltran - Hallo Androiden (Blue Arts Music:BAMCD005)
John Beltran - Hallo Androiden
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20年以上にも及ぶ音楽活動において、今間違いなく第二の春を迎えているJohn Beltran。デトロイト第二世代の中でも特にアンビエント性が強く美しいハーモニーによる情緒的なテクノに長けたこのアーティストも、しかし2010年前後の作品は今思うとどこか吹っ切れずに迷いが感じられ、活動初期に於けるデトロイト・テクノ×アンビエントな音楽性に魅了されたファンにとっては物足りなさが残っていただろう。がここ2〜3年の復調は目を見張るものがあり、大らかなアンビエントを展開するシリーズの「The Season Series EP」や今年3月に発売されたPlacid Angles名義の22年ぶりのアルバム『First Blue Sky』(過去レビュー)等でも初期作風である叙情性豊かなアンビエンスや躍動するブレイク・ビーツやジャングルまでの多彩なリズム感が復活し、ファンにとっては待ち望んでいたBeltranらしさを感じていた者は多いだろう。そしてこのBeltran名義の新作だ、何と日本のインデペンデント・レーベルである福岡のBlue Arts Musicから世界に先駆けてリリースとなったが、その内容もこれこそBeltranと呼ぶべき夢のような素晴らしきアンビエントな世界が広がっている。前述の『First Blue Sky』はどちらかと言えばブレイク・ビーツを多用しダンス性を強調していたが、本作はメロディーやハーモニーの甘美なまでの美しさを強調しており、その分だけ陶然と酔いしれる魅力が溢れている。オープニングの"Alle Kinder"は牧歌的なシンセのリフレインと幻想的な呟きを反復させ、詰まったリズムのキックでじっくりとこれから待ち受けるドラマの幕開けを展開するようにじわじわと盛り上げ、アルバムの雰囲気をリスナーに知らせる。続く"A Different Dream"はキックレスの完全なアンビエントだが、躍動するシンセのシーケンスと壮大なパッドによる叙情性爆発な世界観はTangerine Dreamのコズミックな電子音響を思わせるところもあり、リズム無しでも脈動する感動を呼び覚ます。軽快に連打されるリズムが爽快な"Himmelszelt"はシンセの旋律も軽い躍動感を伴い揺れ動き、やや陽気なラテンフレーバーもあるダンス・トラックだ。ヒスノイズらしきチリチリとした音響の奥からぼんやりとしたドローンや素朴なアルペジオが浮かび上がる"One Of Those Mornings"はビートレスな夢幻のアンビエントで、続く"It's Because Of Her"も同様にビートレスで天上から光が降り注ぐようなシンセと荘厳なストリングスの掛け合いは祝祭感があり、この世とは思えない美しさは桃源郷か。勿論"Perfect In Every Way"のように複雑なブレイク・ビーツで踊らせるダンス性の強い曲にも魅力があり、豊潤なシンセの響きがあり底抜けにオプティミスティックな雰囲気としなやかに刻まれるリズムで、心身を快活にさせてくれる。完全にBeltranの初期の作風が復活した本作に対し否定的な意見など出て来る筈もなく、この夢に溺れてしまう麗しい甘美なアンビエント・テクノの前には称賛以外の言葉は見つからない。ただひたすら、この世界は美しい。



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| TECHNO14 | 08:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |

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