Russ Gabriel - The Controller (FireScope:FS017)
Russ Gabriel - The Controller
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かつてWarp Recordsが90年代前半に提唱した「Artificial Intelligence」というベッドルームのアンビエントとSF的世界観を持ったテクノがあり、そのシリーズにも参戦しつつ自らはB12やRedcellといった複数の名義で秘密めいた活動を行っていたが、ある時を堺に姿を消し存在自体も忘れられつつあった。がそのB12の二人の内の一人、Steve Rutterは2016年頃に突如としてB12 Records傘下にFireScope Recordsを立ち上げ、Rutter一人でのB12名義、またはSteve Rutterソロとしても作品をリリースし今再度あの時のインテリジェンスなテクノを創造している。それだけでなくFireScopeというレーベル自体がJohn ShimaやDerek Carrといったデトロイト・フォロワー的な存在の作品もリリースしており、そんな活動を見ればレーベルがデトロイト・テクノと共鳴しているのは明白だ。となれば本作を手掛けた(やはりデトロイト・テクノから影響を受けている)Russ Gabrielが同レーベルからリリースされるのも至極納得であり、AIシリーズの延長線上にあるシリアスなテクノを披露している。微かに聞こえるミステリアスなパッドとコズミックなシンセのラインで始まる"Controller"、キックレスな構成も相まってアンビエント感覚もありつつ宇宙を浮遊する無重力感が心地好く、叙情的なシンセが壮大な風景を描き出す。"Drimmits"ではカチッとしたリズムも入り揺らめくようなベースラインとテッキーな上モノがロマンティックに響き、古典的なテック・ハウスに属すような如何にもデトロイト・フォロワー的な作風で、目新しは一切ないもののだからこそ逆に安心して聞ける印象だ。"The Way To Go"はシンセの使い方がファンキーでややFabrice Ligを思い起こさせ、すっきり切れのあるリズム感も相まって軽やかに跳ねるUKからデトロイトへの回答的な作風。そして安っぽいリズムマシンの響きがローファイなシカゴ・ハウスを匂わせる"Nova Deep"、ほぼ骨組みだけの構成にぼんやりとしたパッドやコズミックなシンセを重ねて内なる精神世界への旅へ誘うイマジネーションを膨らませる。現在のダンス・ミュージックの流れに乗る事もなく、またクラブで派手に映えるような作風でもなく、我が道を行くインテリジェンスでディープなテクノはいぶし銀的な味わいだ。



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| TECHNO14 | 09:00 | comments(0) | - | |

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