2020.05.01 Friday
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UKはエジンバラのミステリーな存在であるFirecracker、そしてその傘下にあるUnthankはより幅が広く奇妙なエレクトロニック・ミュージックを手掛けるユニークなレーベルだが、そこからリリースされたDJ GuyのEPはそんなレーベルの面白さを象徴するようで興味深い。DJ GuyことGuy Evansについて大した知識は持っていないのだが、近年だとHVLらもカタログに名を連ねるOrganic Analogue Recordsから94〜99年に制作されたインテリジェンス・テクノや初期シカゴ・ハウスにデトロイト・テクノとも共鳴する曲群をコンパイルしたアルバムをリリースしていたり、また自身のBandcampでは90年代にリリースされた膨大なアーカイブを公開していたりと、近年まで全くリリースは無かったものの活動自体は25年以上に及ぶ大ベテランのようだ。本作も新作というわけでなく既にBandcampでは発表されていた膨大な作品群の中から選りすぐりの6曲を纏めたEPのようで、しかし例によってジャンルはばらばらながらもしかし比較的ダンスフロアに直結した曲が集められており、特に90年代のレトロフーチャーな感覚やオールド・スクールな懐かしさが好きな人にとっては、これは堪らない一枚だろう。"Basf Ferro Extra 1994 Side A Trk1"は特にユーフォリアが表現された曲で、優雅なストリングスが先導しながらも奇妙な効果音やロウなエレクトロ・ビートが古き良き時代を思い起こさせ、インテリジェンス・テクノに近いか。より未来志向でスペーシーな感覚がある"Metal Xr 993 Side B Trk2"は正に90年代AIテクノの一環で、ハンドクラップを多用したしなやかなブレイク・ビーツと幻想的なパッドが覆っていく叙情的な作風は、欧州からデトロイトへの回答か。対して"Bx90 1993 Side A Trk4"も粗雑な音質がオールド・スクールな雰囲気だが、こちらは暴力的で歪んだリズムがビッシバッシとビートを荒々しい刻み、叙情性を排除してひたすらツール的なテクノだ。そんな流れをより極めた"New Quad Stuff 1994 Side A Trk1"はPlastikmanの如くTRやTBなどのリズムマシンを執拗に用いた激しく衝動的、つまりはテクノの初期胎動が表現されたようなツールだ。"Asii100 1994 Side A Trk1"はPlastikmanではなくFuse名義のうねるアシッド・ベースも用いて、深い瞑想を誘発するメランコリーアシッドで、酔ったような酩酊感が心地好い。とまあここまで書いていてどの曲もオリジナリティーがあると言うよりは模倣的な感じがしなくもないが、そもそも90年代前半に作られていたという事が事実であれば当然模倣ではなく、先駆者の一人であったのかも?とも思う。今更…ではなく、今聞いても全く色褪せないレトロ・テクノだ。
Check DJ Guy