Yu Su - Watermelon Woman (Technicolour:TCLR034)
Yu Su - Watermelon Woman
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男社会的な業界だったダンス・ミュージックの界隈においても、近年は女性DJ/アーティストが正当に評価されるようになってきたのだろうか、その存在感は日増しに強くなっている。そしてアジア圏のアーティストの台頭も珍しくはないが、その顕著な例を挙げるとしたら中国人女性アーティストのYu Suは適任だろう。カナダはバンクーバを拠点にしているその人はまだ2016年頃からリリースを始めたばかりの新星だが、2018年作のジャンルが混合したディープ・ハウス『Preparations For Departure』、そしてエクスペリメンタルからバレアリックまで網羅した『Roll With The Punches』(過去レビュー)といった、数少ない作品群はユニークな特徴をもってしてリスナーに強い印象を残している。そんな彼女の新作はHerbie Hancockの「Watermelon Man」に触発されて制作した曲のようで、過去の作風に比べてよりフロア向けのダンスに接近したハウスになっているが、それでも独特な世界観は変わらない。ミッドテンポの土着的なハウス・グルーヴを持つ"Watermelon Woman"は、中東的な訝しいシンセのメロディーと生々しいベースラインが先導しつつスペーシーなSEやダビーなエフェクトを利用して、アッパーな曲調でなくとも幻惑的かつトリッピーな効果でズブズブとはめていくタイプのフロア仕様な曲調になっており、モダンなダンス・ミュージックの中でもどこにも属さないような感覚が新鮮だ。別バージョンとなる"Watermelon Woman (Dub)"はダブとは言いながらもぐっとテンポを落としてヒップ・ホップ的な感覚もあり、上モノは削り落とした上でスカスカとなった構成の中で揺れるベースラインや微かに入るオリエンタルな響きによって、より変異体ダウンテンポな変化を見せている。そして注目勢力であるメルボルン勢の一人、Francis Inferno Orchestraがリミックスをした"Watermelon Woman (Francis Inferrno Orchestra's Augur Sacrifice Dub)"はざらついて土着パーカッションを活かした勢いのあるリズムと鳥の鳴き声らしき音も導入して、深い密林の奥地で儀式を行うかのような怪しい雰囲気が発せられ、その騒がしくも生命力が宿る響きは最もフロアを興奮させるであろう。新曲は1曲のみで他には別バージョンやリミックスだけだが、それでもYu Suの前途洋洋を予感させる魅惑的な音楽であり、これからも活躍が楽しみだ。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | - | |

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