2020.05.08 Friday
Amazonで詳しく見る(US盤) Amazonで詳しく見る(MP3)
デトロイトの反骨精神の塊であるUnderground Resistanceのオリジナルメンバーからキャリアが始まり、その後はミニマルテクノの始祖の一人にもなったRobert Hoodが、しかし近年特に人気を獲得しているプロジェクトがファンキーなディスコ・サンプリングのハウスを武器にしたFloorplanだ。元々骨太なグルーヴのテクノで硬派さを強調していた彼が、黒人音楽としてのディスコをハウスに落とし込み、芯の太いグルーヴはそのままに強靭なファンクネスを聞かせるこのプロジェクトは、本人名義のミニマルテクノよりも派手派手しい響きが分かりやすく盛り上がれる魅力となり人気を博す事になったのだろう。今では娘のLyric Hoodも加わり二人体制となったこのプロジェクトだが、今回以外にも自身のM-PlantではなくAus Musicからのリリースとなった3枚目のアルバムは、結果を言ってしまえばややマンネリから脱却出来ずに、以前程のアンセム級の曲は少なくなっているように感じられるが、しかしLyricとのタッグも馴染んできてテクノのパワーとハウスのソウルを巧みに混合して安定感のあるアルバムにはなっている。以前に比べるとややテクノ色が強くなっているかと思うのは、例えばピアノコードを用いながらもドスドスとした太いミニマルなキックや刺激的なハイハットを活かした4つ打ちの"There Was a Time"や、怒涛のキックや切れのあるハイハットにミニマルな電子音のループを重ねてツール性を強調した"Dance Floor"など、生々しいファンクネスよりは電子的な響きによるクールなテクノといった趣きがそう思わせるに違いない。先行EPの1曲でもある"Fiyaaaa!"も粗い質感を活かしたリズムはシカゴ・ハウス風にも聞こえるしミステリアスなオルガンがオールド・スクール感を滲ませるも、やはり単調な構成がミニマルなテクノの雰囲気と似通っており、Floorplanらしいファンキーさはやや影を潜めている。従来型と言うべきか特にファンが期待するディスコ・サンプリングなハウスも無いわけではなく、華麗なピアノコードと感情的で熱いシャウトを用いて血の通った汗臭いソウル性を聞かせる"Brothers + Sisters"や、ハードなトラックながらもオルガンの魅力的なコード展開と歌手を起用してゴスペル的に祈りを捧げるような"His Eye Is On The Sparrow"と、こういった曲にこそ本人名義のテクノとは異なるFloorplanの黒人音楽をルーツに持つ魅力が強く現れている。"Song Like This"はよりゴスペル・ハウスらしく賑やかなファンキーさが溢れており、騒がしく盛り上がるディスコフロアの真っ只中の状態だ。ややアルバムとしては纏まりに欠けるしかつてのアンセム級の曲もあるわけではないが、Lyricとのタッグによってアイデアや技術でのバリエーションを得た上で広がりを持ったとも考えると、このプロジェクトとして前進とも捉えられるだろうか。他のデトロイトの重鎮達が鳴りを潜める中で、今も尚前進を続けるアーティストとしての評価に陰りはない。
Check Robert Hood