2020.05.09 Saturday
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2017年にMusic From Memory傘下のSecond Circleからデビューを果たしたCris KuhlenことDazion、無国籍な雰囲気と初期シカゴ・ハウスのローファイ感が一体化したユニークな音楽性が評価され、次のSafe TripからのEPはトライバルかつバレアリックな作風へと向かい、新星ながらも確かな評価を獲得しているアーティストの一人。再度Second Circleへと帰還してのこの2019年作では更に変化を見せて、バレアリックやブギーにフュージョンといった音楽が溶け合い、これまで以上にロマンティックかつメロウな世界観で聞く者を魅了する。何と言っても素晴らしいのは"Eu Nao Sei"で、土臭いパーカッションを用いつつ泣きのスパニッシュギターと美しいシンセのコードがドリーミーに鳴り、アシッドサウンドが効果音的にヒプノティックに用いられながらも気怠い呟き風の歌がメロウネスへ染めるバレアリック・フュージョン。鳥の囀りのサンプリングや木琴らしき音も聞こえ、温かくオーガニックな響きが全体を纏めていて、自然豊かな風景が浮かぶ感動的な一曲。一転してローファイなリズムマシンのドラムがいたない"Eberhardt Smurkface"はエレクトロ・ファンクと呼べばよいか、そこでは人の声を真似たようなシンセやトリッピーな電子音が印象的で、そこにインドネシアらしき土着的な楽器の響きが訝しさを生んで、よりファンクネスを強調する。"Sake Boogie City"もトライバルで生々しいドラムマシンが荒くリズムを刻み、そこに耽美なピアノや物憂げな笛の音色などが交互に現れくるが、ライブ感のある音質がバンドが一体となってファンクを演奏しているかのようである。"Bond Of Souls"はレーベル性の一つでもあるニューエイジ色が強く、前述のように深い森の中で鳴っているような土着的なパーカッションは用いつつも、朧気でミステリアスなシンセのレイヤーが霊的なニューエイジに染め上げている。アフリカンと中近東辺りの音楽が混ざったような"A Bridge Between Lovers"は弦の音色がスモーキーで謎めいた印象を作り、キックレスではあるものの爽快な響きのパーカッションが心地好いグルーヴとなって、軽快に体を揺らす。電子楽器がらアコースティック、スパニッシュや中近東にアフリカまで、色々なジャンや国籍が混ざって雑多ながらも、しかし音楽としてDazionという一つの世界観に纏まっておりDazionの個性となっている。こんな豊かな音楽性であればEPという小さい枠組みではなく、是非ともアルバムへと発展させてより豊かな世界観を見せて欲しいものだ。
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