2020.05.28 Thursday
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(コンピレーションEPには2016年頃から名があるものの)ソロ作品としては2018年にChurchからいきなりアルバムデビューを果たして注目を集めたYadava、UKはマンチェスターで活動するDJでありラジオのホストも務めるこのアーティストが、2019年にはOmenaからミニアルバムもリリースしている。ChurchとOmenaの両者は、クラブミュージックにアンテナを張っている人であれば現在のシーンで注視すべき存在である事は当然理解しているだろうが、共通するのはハウスミュージックを軸にしながらもジャズやダウンテンポにアンビエントなど境界を越えていく豊かなクロスオーヴァーなレーベル性があり、だからこそどちらのレーベルにもベテランよりは可能性を秘めた多様な若手アーティストが集まっている。Yadavaもそんなレーベルの音楽性を主張するように、ハウスが真ん中にはありながらもジャズやファンクといった生演奏の感覚を前面に打ち出した音楽性を持っており、この新作でもその才能を遺憾なく発揮している。繊細で優美な鍵盤と弾けるように爽快なパーカッションから始まる"Tides"、バックには波の音も混ぜつつざっくりとした生っぽいリズムを響かせブロークン・ビーツ調の曲だが、中盤以降ではブルージーなソロ演奏も加わると途端にファンクっぽさが強くなる。"Good Mourning"も耽美なエレピや艶のあるベースのオーガニックな展開で始まり、こちらは4つ打ちを基調としながらも、様々なオルガンや金管楽器等の生っぽい音も合わせて非常にライブ感溢れるハウスを聞かせる。自由な演奏でインプロビゼーション的に始まる"Ixelles '42"はジャズのモードと土着的な雰囲気があり、ホーンや鍵盤で情緒的なエモーショナル性を強く感じさせるメロディー、そして繊細で小刻みなリズム感が心地好く酔わせる。"Hiro's Cosmos"は朗らかな笛と可愛らしいピアノに先導されるジャジー・ハウスだが、ミニマルなエレクトロニクスの旋律が多幸感を生み、生音と電子音を巧みに用いてモダンなダンス・ミュージックへと昇華させている。そしてしなやかに躍動するリズムを刻み黒っぽく艶めかしいベースとファンキーな歌によるジャズ×ブロークン・ビーツ調の"Message From The Poets"、最後は乾いたパーカッションと生っぽい音を優しく用いて夜のしっとりした煌めきを演出する穏やかなディープ・ハウスの"Earth Tones"と、僅か6曲ではあるものの正にOmenaのレーベル性に沿ったジャズの要素たっぷりな新星らしくフレッシュながらも大人びた内容だ。クラブで映えるのは当然として、家でじっくりと耳を傾けてもそのエレガントな響きにうっとり陶酔してしまう。
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