Fools - Fools' Harp Vol.1 (Music From Memory:MFM047)
Fools - Fools Harp Vol.1
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ニューエイジやバレアリックの方面から絶大な信頼を得ているMusic From Memoryが当初は秘蔵音源の再発掘によって注目を集めていたものの、そこからレーベルの運営は過去の見直しだけでなく未来へと視点も据えるようになり、現在のアーティストの後押しも積極的に行っている。本日紹介するのは2020年の新作音源の一つであるFoolsによるデビューアルバムだが、この聞き慣れぬアーティストは実はWarp Records等でも活躍するUSのロックバンド・Grizzly BearのドラマーであるChris Bearのプロジェクトで、マルチ奏者でもある彼が一人でジャムセッションのように各楽器を演奏しながら録音を重ね、「ミックステープのようなもの」として完成したそうだ。Grizzly Bearについては全く知識が無いので比較する事は出来ないが、ロックバンドのメンバーである影響は本作にも現れていて、エレクトロニクスだけではなくギターやベース、カリンバやヴィブラフォンに鍵盤楽器、ドラムやパーカッション等様々な楽器を重ねながら、素朴で手作り感のある甘美なアンビエントのムードを作り上げている。ベルやヴィブラフォン等の牧歌的で微睡むようなアンビエントの響きから開始する"Rintocco"、重層的な音によって心地好い揺らぎを生み神秘性を伴いながらアルバムはスタートを切る。続く"Source"もコンガ等の土着的なパーカッションが印象的で、そこにギターや弦に電子音を織り交ぜながら生々しいというか素朴でもある音が穏やかに溢れ、秘境ニューエイジ的な曲調だ。辺境や秘境の性質がより強い"Deefyfe"は環境音を取り込みながらベルや笛風の電子音で大地や森林といったものをイメージさせる響きを展開し、ポップで可愛らしい音使いながらもアーシーなアンビエントを展開している。キラキラとした電子音が朝靄の時間帯を想起させるインタールードの"Versitide"等を通過し、特にアルバム中で最も高揚する"Metaqua"では重層的なシンセに拠る幻想的なアンビエントの序盤から次第にリズムやベースも入り土着的なシンセファンクへと変化し、終盤では煌めくようなシンセのメロディーが踊りながら嬉々とした高揚の高みへと達するユニークな展開で、一つの曲に多様なジャンルが存在している。"Nnuunn"は民族的な楽器を用いて和とかアジアの田舎感覚のエキゾ感があり、素朴ながらもバレアリックの長閑な開放感というか、青々しい爽やかさもあるダウンテンポに親しみを覚える。アンビエントを軸にエキゾチック性、秘境の雰囲気、オーガニックな土着感をDIY的に肉付けした音楽は、がっちり作り込まれたと言うよりは自由気ままなセッションから生まれたような緩さがあり、その感覚がアンビエントとしても快適性に繋がっている。ダンスフロアからのアンビエントではない事が、前述の音楽性を確立するに影響していると思うが、結果的に非常にMusic From Memoryらしい音楽としてレーベル性を表しているかのようだ。



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| ETC(MUSIC)5 | 18:00 | comments(0) | - | |

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