Leo Takami - Felis Catus & Silence (Unseen Worlds:UW030CD)
Leo Takami - Felis Catus & Silence
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ニューエイジ/アンビエントの古典や秘蔵音源の発掘に拠る再評価は、現在のそれに対しても影響を与えているのだろうか、日本や世界から現在形のアーティストによっても名盤が生まれ今そのジャンルの豊かさは特段強く感じられる。そんな中、日本から届いた新作は貴水玲央による3枚目のアルバムで、ジャンルとしてはジャズやモダン・クラシカルになるのだろうがニューエイジ/アンビエントの要素もあり、その系譜の流れで興味を持つのも自然な作品だ。1970年東京生まれの貴水は14歳でギターを始めて、ジャズやクラシック、アンビエントや雅楽に影響を受けて音楽制作を行っており、過去には2012年と2017年にアルバムをリリースしている。リリース量は僅かなものの過去のアルバムも調べてみると、カルフォルニアのアンビエント系レーベルであるTime Released Soundからのリリースもあったりと、本人はギター奏者ながらもその方向性はどうやらアンビエント志向が強そうである。そしてこの新作、全編に渡り素朴な響きの繊細なアコースティックギターを用いながらもエレクトロニクスも合わせ、淡々とクールながらも甘美な瞑想空間を演出するようで、隙間を活かした静謐さがより美しさを際立てている。幕開けの"Felis Catus and Silence"から淡い色彩が滲むような素朴なアコギのメロディーが引っ張りつつ、バックからは控えめながらも優雅なオーケストラ風のシンセが支え、ギターの無いパートではもう完全に白昼夢のようなニューエイジ/アンビエント状態になったりと、8分の長い尺の中で自然な流れの起承転結を持っている。"Garden of Joy"はフルートだろうかほのぼのとした笛のメロディーがリードしつつ、そこにギターもユニゾンの様に加わりながらも数少ない楽器で安眠を誘うムードを作り、少しずつストリングス等も加わりながら厚みを増していくが、決して精神を刺激しないように終始静けさを保ちながら穏やかな牧歌性を生んでいる。"Awake"では神秘的なピアノと耽美なギターの音色が絡み合い、ドリーミーなドローンを配してニューエイジ風な雰囲気を纏いながらも、清涼で澄んだ景色を覗かせるコンテンポラリーな曲。アルバム全体のトーンとしては鎮静作用が貫いているのだが、中には"Unknown"のように心が浮き立つ曲もある。アコギの優しく包み込む旋律と湿り気のあるベース、そこに華やかなストリングスが装飾しながら代わりにピアノの優美なソロ展開も現れたり、終盤は福音をもたらすような祝福感に満たされながら感動的に盛り上がっていく。どの曲も先ずはギターの柔らかく優しい旋律に耳を奪われるが、音を詰め込み過ぎる事なく間を上手く作る事で、静けさの中に美しさを埋め込んだような作風は甘美ながらも静謐で何とも心落ち着くものだ。この静かな間を活かした作風は例えばECMが好きな人のアンテナにも引っかかるだろうし、ジャンルに囚われる事なく日常の生活に馴染むBGMとしてもお勧めしたい。



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| ETC(MUSIC)5 | 18:00 | comments(0) | - | |

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