Future Beat Alliance - Beginner's Mind (Reward System:RSTM002LP)
Future Beat Alliance - Beginners Mind
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「未来鼓動連合」というアーティスト名からしてテクノの近未来的な感覚を匂わせるFuture Beat Alliance。2000年代初頭のDelsinやArchiveにEmoticonといったレーベルからリリースされた作品は、確かにデトロイト・テクノの未来的な音とIDMのインテリジェンスな音が融合した音楽としてマニアから注目を集め、特にDelsin周辺の評価を高める事にも貢献していた。そんなFBAを遂行するMatthew Puffettはその手腕が評価されたのか、近年ではJames LavelleのUNKLEの一員となり曲作りやプログラミング、そしてプロデューサーとしても手腕を発揮したりもしており、FBAを知らない人にもその素質を何となくでも感じる事だろう。そんなFBAによる11年ぶりのニューアルバムがリリースされているが、その11年の間も決して全く活動をしていなかったわけではなく、ダンスフロアを意識したグルーヴ感強めのテクノを収録したEPも多数リリースしてはいた。しかしこの新作、アルバムという表現の場を活かしてどちらかというとリスニング性も強いリズム感の多様性とインテリジェンスかつSFな雰囲気を前面に打ち出して、ややもすれば最初期の音楽性を現在へとアップデートしたようにも感じられる点でファンとしては喜ばしく思う。電磁波のようなパルスから綺麗めのシンセのリフレインへと続き、宇宙へと昇っていくような浮遊感を得る"Window To The World"でアルバムは始まると、続く"Birth"は鞭打つような刺激的なリズムと分厚い銀河系のようなシンセが覆っていき、サイバー風な未来の雰囲気で壮大なアンビエンス空間を演出する。"Black Acid"はタイトルが示す通り鈍いアシッド・ベースが牙を剥く曲だが、激しいグルーヴではなく荘厳なパッドが広がりつつも弾力性のあるベースと粘着性のあるビート感で、じわじわと精神を侵食する中毒性の高いインテリジェンスなアシッド・テクノだ。ビートレスな構成で羽衣のような美しいシンセがゆっくりと揺らぎ、祈りのような女性の歌が微かに聞こえる"Tell Me About These Dreams"は壮大な宇宙を喚起させるドリーム・アンビエントで安らぎの時間帯。そこを通り過ぎれば初期作風に近い"Time Stamp"、軽やかでフュージョン的な綺麗なシンセとブロークン・ビーツの軽快なリズムが映えるデトロイト・テクノ調な曲は、アルバムの中でも最も懐かしさが込み上げるエモーショナル性が優れている。逆に刺々しく荒々しいキックが跳ねて、ダークかつ不気味さを煽るシンセとアシッド気味のベースが躍動する"Broken Wheels (In 7/8)"等、闇に染まったフロア向けの曲もあるが、それにしてもただ単にパワフルな4つ打ちではないリズムの自由度の高さがFBAの個性の一つだろう。色々な作風が混在しているのはFBAのアーティストとしての技量の高さを伺わせるが、それらがばらばらにならずに正に未来から来たようなテクノとして統一されており、アルバムは洗練されたエレクトロニック・ミュージックとして円熟味を増している。



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| TECHNO15 | 12:00 | comments(0) | - | |

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