R_R_ - Train Of Thought (Growing Bin Records:GBR028)
R_R_ - Train Of Thought
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ここ数年のニューエイジ/アンビエント/バレアリックのシーンで孤高の存在感を放つBasso率いるGrowing Bin Recordsは、2020年だけでも4枚のアルバムと2枚のEPをリリースするなどその勢いは一向にとどまるところを知らず、その上前述のジャンルのみならずクラウト・ロックやディスコにハウスやファンクと多角的な音楽性のそれぞれで上質な作品をリリースしている。とは言えども恐らくファンがレーベルに最も期待するのがアンビエント周辺だろうと推測されるが、そこに待っていたと言わんばかりに届いた作品が本作。手掛けているのはラトビアでラジオのホストやDJを行い、サウンドトラック制作やプロデューサー業も行うReinis RamansことR_R_で、これがデビューアルバムなのだが淡い水彩画のような色彩感覚とその揺蕩うような揺らぎが続くアンビエントが素晴らしく、よくぞこんなアーティストを発見したものだとレーベルの審美眼に驚かずにはいられない。「水のリズミカルな動きとその波紋の反射が私たちの知覚をどのように曲げているか」という点にインスピレーションを受け制作されたとの事で、フィールド・レコーディングとエレクトロニクスを組み合わせたサウンドコラージュな音楽は、アルバムジャケットのように澄んで綺麗な水に満たされたような極楽浄土行きの心地好いアンビエントを奏でている。波らしき音の中からどんよりしたドローンが湧き出して、雑踏の環境音も交えながら生活感のある正に環境音楽的な"Entering"こそ暗めの響きだが、続く"Opposite"から澄んだ電子音が重層的に鳴りながら非常にゆっくりとした音の変化が生み出す景色は牧歌的なチルアウトで、体の隅々まで清涼な湧水が行き渡るようだ。ぼやけたようなシンセとリズムが生み出すのは波紋の揺らぎだろうか、"Luminosity"はミニマルな構成もあって深いアンビエンスに潜っていくのに最適で、内なる精神世界へと没入させられる。"Opening Up"では慎ましくも優美なピアノの旋律がリードし穏やかな昼寝のようなアンビエントだが、そこに続く"Deleting Doubts"は鳥の囀りやピアノを用いながらもビートを刻むような電子音によって特に躍動感を得た曲で、もしキック等が入っていれば高揚感のあるテクノになっていただろう。しかしアルバム全体を通して聞けば、基本的にはゆったりと水面が揺れながら波紋が静かに広がっていくような電子音と、そして生命の営みや自然から発せられる有機的なフィールド・レコーディングによって、鎮静作用の高い良い意味でのヒーリング・ミュージックとも呼べるだろう。なお、配信音源では全編が軽くシームレスにミックスされている事もあり、穏やかな快適性が40分に渡り持続しているのも良い。



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| ETC(MUSIC)5 | 12:00 | comments(0) | - | |

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