2020.10.26 Monday
Theo Parrish率いるSound Signatureの2018年最後の作品は、ニュージランドのドラマー/パーカッショニストであるMyele Manzanzaによる本気ジャズ/ファンクなEP。レーベル性としてはハウスが軸になっているのは言うまでもないが、そこにはディスコやファンクにジャズなどTheoの黒人音楽のルーツが要素として溶け込んでおり、なればこそクラブ・ミュージックとしてではなくジャズそのものに焦点を当てた作品がリリースされるのも自然な流れだろう。さて、Manzanza自身の作品は決して多くはないものの他アーティストの制作には多く関わっており、過去にはRecloose Live Bandの一員として、近年ではTheoのライブバンドであるThe Unitにも参加していたりと、演奏者として経験を積んできているようだ。本作はManzanza自身と共にピアノやキーボードでMark De Clive-LoweとダブルベースでScott Maynardのトリオによって、2013年に行ったライブ音源をそのまま収録しており、"Love Is War For Miles"はTheoの初期作のカバー、そしてManzanza作の"7 Bar Thing"の2曲を聞く事が出来る。"Love Is War For Miles"の原曲はジャズのムードを持ちながらもローファイな音質とミニマルなグルーヴのサイケデリックな曲調だったが、このライブではドラムはけたたましく乱れるように暴れ、艶かしく生き物のように躍動するベースが主導しながら、フリーキーで大胆なピアノは美しいというよりはファンキーに染めていき、ジャズ以外の何物でもないギャラクティックなジャズを披露している。ライブ音源だからというのも影響しているだろうが、多少の荒さも粗雑ではなくエネルギーが迸る表現に繋がっており、原曲のサイケデリックなディープ・ハウスも当然良いが、この肉体性溢れるジャズはTheoが間違いなく自身のDJに組み込んでいるだろう。"7 Bar Thing"の方も当然ジャズだが、激しいリズムはしかしグルーヴ感が程好くコントロールされてしなやかなさを持ち、ピアノや鍵盤も流麗で綺羅びやかに装飾して優雅さを伴い、それらを温かみのあるベースで支えていく。途中では歓声も入ってきてそれによって臨場感を更に獲得しており、敢えてスタジオ収録でなくライブ音源を収録したのは熱量も演出したかったのかもしれないが、Theoのローファイ感覚にも似た音響に繋がっている。たった2曲だけというのがもったいない位だが、Sound Signatureのお墨付きなのでハウスリスナーもぜひとも聞いてみて欲しい。
Check Myele Manzanza