2013.01.30 Wednesday

昨年DJキャリア30年以上にして初のアルバム"An Odyssey"をリリースしたデトロイトのDelano Smith。アルバムは長い活動の果てに辿り着いた実直なハウスミュージックで満たされていたが、そこからのシングルカットなる本作はDelanoと故郷を同じくするデトロイトのCarl CraigとMike Huckabyがリミックスを提供する注目の一枚となっている。タイトル通りに真夜中の空気が漂うハウスである"Midnight Hours"のCarl Craigによるリミックスは、彼にしてはオリジナルを尊重したのか意識的に元からあるエレピのフレーズも借用しつつ元のムードを踏襲する作風に仕立てた上げ、最近のC2にしては珍しくディープ・ハウスを聞かせている。その意味ではリミックスとしての役割は少ないように思われてしまうかもしれないが、しかしそこはデトロイトの大天才、オリジナルよりもリズムやメロディーをくっきりと浮かび上がらせ、よりダンストラックとして芯のあるグルーヴを生み出している。その一方で自らの個性を尊重したのはMike Huckabyによる"What I Do"のリミックスで、オリジナルが湿っぽく内向的なハウスだったのに対し、Huckabyは完全にテクノとも思われるごっつくて硬い音質に染め上げている。しかし骨太で猛々しい表層でありながら、新しく湿っぽいボイスサンプルを追加したり情感のあるしっとりしたシンセのレイヤーで色気も醸し出し、結局はデトロイトらしいソウルを感じさせるトラックとなっている事に安心した。音楽の大先輩であるDelanoに敬意を示したのか両者ともデトロイト魂を打ち出したリミックスを提供していて少々手堅い印象が無くもないが、DJが使うにはもってこいの内容となっている。
試聴
Check "Delano Smith"