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2013/3/29 Maktub @ Air
アンダーグラウンド街道を突き進むKeihinとFuture TerrorクルーのKurusuらが、従来の枠に当てはまらない個性的なダンス・ミュージックを推し進めるべく"Maktub"を始動させた。その初回パーティーにはオランダからのダブステッパー・2562と日本から世界へ進出したディープ・ハウスを手掛けるRyo Murakamiのライブがフィーチャーされ、DJとライブによりダンス・ミュージックの未来を披露する事となった。
フロアへ入るとミニマルな展開ながらもテッキーでどこかオリエンタルな音色も感じられるテクノがかかっていたが、多分Cogeeと言うDJがプレイしていたようだ。徐々にリズムが希薄になりアブストラクト化しつつも、再度リズムが浮かび上がりよりミニマルな展開になったかと思えば、ラストではブリブリとしたエレクトロハウス的な派手で明るい曲もプレイされ、幅がありながらもフロアの緊張を解きほぐしていた。

そして次は初体験となるRyo Murakamiのライブ。Murakamiの印象と言えば幽玄なディープ・ハウスを基調にしたアーティストだったのだが、しかし今回のライブはそんな印象を180度ひっくり返す衝撃を受けるものだった。ライブが開始されるとスピーカーから痺れる電子音が放出され、空気が振動し体は震えながら重厚な低音がフロアに落下していく。ドローンと言うべきかグリッチと言うべきか、無機質で硬質なノイズにも思える電子音が広がるが、ビートが浮き出る事もなく電子音により不鮮明な層が被せられていく。これはライブの序盤だけかなと思っていたら、5分、10分、15分と時間が経ってもビートが入る事はほぼなく、終始ゆったりとしたBPMを保ちながら異次元空間に吸い寄せられるSEが飛び交い、聴く者の足を停止させ音に魅入らせていた。強力な重力地場によって空間さえも歪められるような圧力がのしかかり、全てが凍りつくような超低温に包まれ、フロアはただただ圧倒的な電子音響に飲み込まれている。途中では明確な4つ打ちのグルーヴも刻んでいたがそれも直ぐに解体され、またアブストラクトでドープな音響へと再突入。まさか1時間にも及ぶライブで殆どビートを入れない -しかもダンスするメインフロアで- と言う衝撃的なライブだったが、新たにRyo Murakamiの個性を上書きした意味でも大成功だろう。

厳かに、しかし壮大に盛り上がったフロアを受け継いだのはKurusu。Future Terrorのイメージそのままに暗黒のドープなテクノセットは、暗い雰囲気のままフロアに胎動を与える。厳つくて刺々しいリズムは微妙にずれたリズムから徐々にスクエアな4つ打ちへの以降を行いながら機関銃のようにフロアへ打ち込まれ、リバーヴの効果で奥行き感を生み出しながらドープな世界へと引きずり込み、決して浮上しない闇のフロアにおいてもある種の覚醒感を漂わせていた。そんなプレイで盛り上がりつつもラウンジではBLOWMAN名義で岩城ケンタロウがプレイしていたので、休みも兼ねて聴きに行ってみると甘いR&Bやダウンテンポをプレイしており、ラウンジを意識した微睡みのセットを披露。その後メインフロアでは2562のライブになったので聴きに行ってみると、如何にもダブ・ステップらしい変則的に切り刻むキックが打ち鳴らされ猛威を振るっていた。強烈に痺れる低音や予測の出来ないリズム隊が刺激的でありつつもスペーシーなムードもあっただが、しかしあまりに変則的で自分的には踊り辛く興味を抱けなかった。代わりにBLOWMANを聴きに移動するといつの間にか心地良いムーディーなハウスセットへと移行しており、ラウンジで物静かに音に入り浸りながら休息を取らせて頂いた。

そしてパーティーの最後の締めはKeihin。人も減り始める時間帯ながらも凶暴さを更に増していくプレイで、フロアをヒステリックに攻め上げる。深海に潜りこむように徹底して冷たく無機質な音を保っているが、グルーヴは確実に脈打ちながら非常にマッチョで肉厚な音の層がボディーブローを繰り返すように肉体を叱咤する。テクノやミニマル、ブレイク・ビーツやダブ・ステップと言った硬派でありながらリズムには幅を持たせつつ徹底的にしばき上げるプレイは、ドイツと言うよりはハードさを極めたUKテクノの脈絡に感じられた。それはインダストリアルとまではいかないが、しかしフロアが荒野と化すように全てを薙ぎ倒す暴力性のある殺伐としたプレイで、揺ぎないハードさと躍動的なグルーヴ感を突き詰めてフロアへ鋭い鉈を振り下ろしていた。そんなこんなで披露と闘いながらもKeihinのプレイを最後まで堪能したおかげで、パーティー後にはハードな一夜から明けた充足感に包まれていたが、特にライブとDJを交互にプレイするパーティーだったのが一夜を飽きさせずに楽しめるものとして上手く作用していたのだと思う。

■Keihin - This Heat(過去レビュー)
Keihin - This Heat
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| - | 2013/03/31 9:12 PM |
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