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2014/7/19 Larry Levan Birthday Celebration and Victor Rosado Together with Tribute Tour 2014 @ Air
7月20日はガラージの祖となったLarry Levanの誕生日、そして今年は生誕60周年になるそうで、AirとLiquidroomで連日Larryのトリビュートパーティーが開催される事となった。Larryといえば伝説的なゲイクラブであるParadise Garageの初代レジデントであり、そこではディスコやソウルにファンク、ロックやヒップ・ホップにテクノも…とジャンルに固執する事なくスピリチュアルなプレイを披露し、それらは後にガラージ・サウンドと呼ばれるようになったそうだ。今回はそんなLarryの意志を受け継ぐVictor Rosadoが来日し、また日本からはParadise Garageの体験者でもあるDJ Nori、そしてガラージへの造詣も深いDazzle Drumsも出演し、Larry Levanの世界観を蘇らす。
オープニングはDazzle Drumsという事前情報だったので、日が変わる頃に現地入り。すると何となくだが音がいつもより綺麗というか音量はしっかり出ていても抑圧的ではなく、すっと音が耳に入ってくる。何でもこの日の為に故Yellowから受け継いだThorens TD521というターンテーブルとミキサーにはUREIを使用しているそうで、特にThorensについては扱いが難しいが音には定評があるらしい。特に機器への技術的な話は分かるわけではないが、しかしDJブースにごついターンテーブルが3台も並ぶ風景にはやはり気分も盛り上がるし、DJもアナログ中心でのプレイなのだから最高だなと思う。Dazzle Drumsは彼等自身でLarry Levanがプレイしていた曲のみをミックスすると公表していたが、やはりその通りで生音を中心としたディスコ・サウンドに、ポップな歌ものやローファイなシカゴ・ハウスをミックスしていく。普段のハウスセットとは異なり曲を大胆なミックスよりも丁寧に繋ぐ事に重点を置き、楽曲の良さを尊重しながらフロアをじっくりと温める。歌ものも多く使っていたが、フロアでは曲に合わせて歌を口ずさむ人もいたりと、Yellowではよく見られた光景である古き良き時代の空気が蘇る。昔のガラージ/ハウスのパーティーではみんなで一緒に歌う事で、その気持ちを共有するような光景は少なくなかったが、やはり周りで曲に合わせて歌っている人がいると何だかこちらも盛り上がってしまうものだ。またDJはストリングスの華麗さやポップかつ感情的な旋律が前面に出て、フロアには明るめのカラフルなライティングが施され、そんな音と照明の相乗効果でフロアの雰囲気もみんながハッピーで笑みが溢れるような実にラブリーな空気で満たされていた。ガラージではど定番のコズミック感もある"Weekend (Larry Levan Remix)"、ブギーなディスコの"Why Leave Us Alone"などもプレイされ、またはニューウェーブ調のディスコもあったり、激昂させる事のない穏やかで温かい音楽性でパーティー序盤からほっこり心温まる素敵なプレイだった。

DJ NoriはJimmy Bo Horneの熱気が吹き上げる"Spank"で開始しただろうか、時間帯に合わせてかビートにもメリハリが出だしてダンスモードでフロアを盛り上げていく。"I Wanna Rock You"も飛び出してマシンビートなディスコも炸裂、しかし享楽的にただアッパーな流れで強引に盛り上げるのではなく、血の通った人間味のあるソウルフルな音に導かれ自然と体が動いてしまうのだ。温かみのあるディスコティックなフロアは何だか懐かしい気持ちが溢れていて、夜のざわめく高揚を誘いながらも穏やかで包容力のあるダンスセットには、DJ Noriの円熟味が表れていた。最近ではテクノのネタにも使用されたDebbie Jacobsの激ファンキーなディスコの"Don't You Want My Love"、ガラージでは定番のサイケデリックな目眩を引き起こすような"Is It All Over My Face"、Gino Soccioのイタロ調なブギー・ディスコの"Dancer"、ブリブリしたシンセが愛らしい"You Can't Hide (Your Love From Me)"にKaren Youngの"Hot Shot"などなど、Larry Levanに造詣のない当方でも耳にした事がある曲も多数プレイされ、今は亡きLarryがこんなプレイをしていたのかと時を越えてLarryへと近づいたように思える選曲にしんみり。ディスコやアシッド・ハウスにソウルやハウスも、ある一定の時代感の枠の中でジャンルは多種多様な選曲は今でいうクロスオーバーを既に実践していたようにも思われる。

27時過ぎにはVictor Rosadoへと交代するが、パーティーのコンセプト上音楽性自体は然程変わらない。むしろ普通のパーティーのピークタイムの時間帯ではあっても、フロアの平和で穏やかなムードを尊重しつつ愛のある選曲は、耳が疲れる事もなくずっとそのDJプレイに耳を傾けて聴いていたくなる。ゴージャスなストリングスやホーン使いがうきうきするJames Wellsの"My Claim To Fame"、ファンキー4つ打ちのビートと光沢感のあるシンセで盛り上がるGary's Gangの"Let's Lovedance Tonight"など、Larry Levanのプレイを実際に体験した事がなくとも古き良き時代を思い起こさせる選曲は、正にダンス・クラシックスを体現している。そしてTen Cityの"That's The Way Love Is"やPositive Forceの"We Got The Funk"などでは、曲に合わせて歌いながら踊って楽しむ人もいて、ガラージやハウスのパーティーでは言葉によるメッセージというものがフロアにいる人達を繋ぎ合わせるのだろうと思ったり。今では少なくなったフロアで歌うと言う行為は確かにダンス・クラシックを知っていないと出来ない事だろうが、現場で昔の曲を聴いて新たに音楽を掘り下げていきながら、こうやって皆で歌って共感するのは本当に素晴らしい事だと思う。その後もChaka Khanの"I'm Every Woman"で切ない気持ちで満たされ、朝になる前だというのにSylvesterの"Over and Over"で早くも朝方のハッピーな空気が広がり、Earth, Wind & Fireの"Boogie Wonderland"ではフロアのミラーボールにキラキラと光が反射しウキウキと心と体が踊り出して、眠っていた郷愁が目を覚ます。更にはこのパーティーでは2回目となる"Weekend (Larry Levan Remix)"や"Spank"もプレイしたのは、まあLarry Levanトリビュートなのだからご愛嬌ではありつつ、しかし素晴らしい曲は何度聴いたって飽きる事はない。ディスコにソウル、R&Bにハウスにファンクなど古く懐かしい時代感がたっぷりと詰まった曲を中心にしたDJセットは、決して新鮮さはないかもしれないが、その辺をリアルタイムで体験しなかった当方の世代にとってはだからこそ新鮮に感じられるし、やはりただ単にDJ向けに作られた現代の機能的な曲とは異なる味わいは格別で、後世に語り継がれる音楽とはこういうものなのではと思う。人間の温かみと幸せな気持ちと皆の笑みで満たされたダンス・フロアで楽しく踊り、6時過ぎに当方はフロアから脱出。Larry Levanのプレイは生で聴いた事がないけれど、今は亡きLarryに思いを馳せる事は出来たのかなと思うパーティーだった。
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