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2014/11/14 Red Bull Music Academy presents Senshyu-Raku @ Liquidroom
おおよそ一ヶ月に渡り開催されてきた「Red Bull Music Academy 2014 Tokyo」。様々な場所でパーティーやライブのみならずワークショップ、レクチャー、アートインスタレーションを開催してきたが、その最後は「Senshyu-Raku」と銘打ち、デトロイトからCarl Craig、UKからは奇才と称されるPepe Bradock、ドイツにてRunning Backを主宰するGerd Jansonが集結し、RBMAの最後を祝福すべくパーティーが催された。
期待に胸を膨らませ1時過ぎに現地へと着くと、入り口には長蛇の列が出来ておりなかなか入場が出来ない。半分位はRBMAの外国人生徒であるゲストのように見受けられたが、前売りを持っているにもかかわらず彼等や当日券と同じ列に並ばされ、その時点でテンションは激落ち。優遇して入場させろとまでは言わないが、もう少し捌き方に工夫があると良いのではと思った次第である。

ようやくフロアに着いた頃にはPepe Bradockのプレイも残り30分という状態、更にフロアも激混み状態で何だか気分的に余裕がなくなってしまった。Pepeのプレイはと言うとざくざくとしつつ跳ねるファンキーなビートに奇妙なメロディーが踊り、そしてほんのりと色気のあるムードがPepeが手掛ける曲と似た世界を感じさせる。決して上手いミックスではないし、何とか曲を繋ぐ程度の流れにはグルーヴの継続感はないものの、プレイするトラック自体は格好良く自身の世界観は確立させている。ジャジーヴァイブスも持ち込んで奇天烈さもありながら、小洒落て優美な音の向こうにはモダンな時代が透けて見え、勢いやグルーヴで楽しませるプレイではなくムードで魅せるプレイと考えれば納得は出来る。例えアシッドなトラックをプレイしようと、危うくヤバイ雰囲気を誘うのではくユーモアに満ちたリラックスした余裕があり、音と戯れているようなプレイはPepeの作風を知っていれば納得出来るだろう。最後にはピアノのメロディーが麗しいSteve Koteyによるディスコ・ダブな"Sooner Or Later"もプレイして、フロアを賑わせながら終了。

そしてこの日の目玉であろうCarl Craig、以前にも何度かDJを聴いた時はお世辞にも上手いプレイではなかったのでどうかと思っていたのだが、しかし"Detroit Love"なる新しいコンセプトに沿って4つのCDJを使いミックスとループとエディットにサンプリングを用いたセットを披露するという触れ込みに期待していた。DJが始まるとのっけからアッパーなマシンビートでがっつりと攻めるプレイ。平行感覚と共に太く機械的なビートを正確に刻みつつ、そこにサンプルを被せたりもしていたようで、序盤にはミニマルなトラックに"Good Life"のボーカルを乗せたりと確かに"Detroit Love"のコンセプトが見え隠れ。ベースとなるトラックはメロディーは控えめに強迫的な4つ打ちのリズムで引っ張っていくもので、特に温度感が冷たく無機質な要素が強い。カチッとした引き締まったビートの勢いで飲み込んでいくプレイだが、流石にこの展開が長く続くと正直単調なのは否めなかった。お手本通りに長いブレイクからドカンッとしたキックを入れる派手なプレイで盛り上げるが、それも繰り返し使えば飽きてしまう。中盤では"The Bells"から"4 My Peepz (Dubfire Rework)"を繋ぐデトロイト攻めも見せ、更にはディスコネタを用いた"Use Me Again (Carl Craig Rework)"でフロアを沸かし"Blackwater"で色っぽく染め上げるなどし、フロア後ろから眺めていた限りでは多くの客が非常に盛り上がっていた。良く言えば分かり易いプレイというか、悪く言えば盛り上げるだけの大味なプレイでストーリー性は皆無。終始ズンドコとしたリズムで押し攻め、下げが全くない状態にはやはり気分が冷めていってしまった。終盤にはリズムトラックにダブテクノのアトモスフェリックな上物だけ(ベーチャンのトラックだったと思う)を被せてきたり、"Acid Trax 2011 (Kris Menace Remix)"の凶悪なアシッド・ハウスで延髄を刺激したりとワクワクする瞬間もあり、最後には2001年宇宙の旅の"ツァラトゥストラはかく語りき"など意外な展開も楽しめたが、それでも俯瞰して考えると"Detroit Love"とは何だったのだろうかという疑問が残るプレイだった。色々サンプルを混ぜ込んだりエディットもしていたようだが、特に前半のミニマル中心のプレイは揺らぎを感じさせるものではなくただズンドコしてるだけの単調なミニマルだったので、やはりプロデューサーとしては超一流でもDJではそうではないのだろう。
※今回は"Detroit Love"セットではないとの情報もある。

と、ここまで不完全燃焼な気分にもやもやしてたが、最アッ後のGerd Jansonには期待通りのプレイで救われた。半年前に来日した際は低空飛行を続けるいぶし銀のプレイが素晴らしかったが、この日は初っ端"Shade Of Jae"を投下し上げの状態を引き継ぐかと思わせる。いきなりこれなのでパーなノリを保ってくるのかと思いきや、そこからはディスコベースなハウスを中心とした流麗かつ華やかな選曲で、前回よりは多少アッパーながらもジワジワ来るイーブンキックなグルーヴを紡いでフロアの多幸感をキープする。華々しいストリングスの旋律やゴージャスなシンセがフロアを豊かに彩りつつ、快楽的なシンセベースのシーケンスが肉体を鼓舞し、心身共に刺激するプレイはこれぞパーティーのDJという気分で楽しい。緩やかな上げと下げを繰り返す中でイコライジングも使いキックの抜き差しで溜めを上手く作り、焦らしてからビートをドスンッと入れる瞬間にはフロアも反応し、自然な盛り上がらせ方には円熟味が感じられた。また煌めくニュー・ディスコを中心とした選曲に時には多少派手派手しいフィルター・ハウスのようなファンキーな曲も織り交ぜ、後半にはピッチを落とした"Debbie's Groove (Robert Hood Remix)"で粘りのグルーヴを体感させるなど、一貫してその世界観にはディスコの和気あいあいとした至福のムードに満ちていた。朝が近付くに連れて生っぽさと温かみ、そしてリラックスした音が多くなり、フロアも緊張感が薄れて和やかな時間を迎える。そして流れてくる可愛らしいシンセのコード展開…そう、"Gypsy Woman (She's Homeless)"だ。切なくも甘い歌とキャッチーなシンセがフロアを優しく包み癒されるような時間帯、そしてラストにはCarly Simonによるメロウなレゲエ風ディスコの"Why"を用意し、熱狂的な夜のパーティーの終わりを告げるように湿っぽい終幕を演出した。

しかし「Senshyu-Raku」と銘打ったRBMAの最後のパーティーにしては、Gerd Jansonには救われたものの、Carl Craigの肩透かしなプレイには残念であったし(Pepe Bradockについては30分しか聴けなかったので何とも批評出来ず)、何だかモヤモヤとした気持ちが残るパーティーだった。特にRBMAの学生のゲストが非常に多くパーティー言うよりはイベント的な印象を受けてしまい、また客層も取り敢えずアッパーに盛り上げればそれで良いみたいな感じの人が多かったと思うと、何だかRBMAのパーティーとしてはどうなのかと疑問を持ってしまったのだ。どうしても有名なDJ/アーティストばかりを集めれば、ただ知名度に引かれてそういった人が集まるのは仕方ない事だが、折角RBMAの知名度やブランドがあるのだから単に有名な人だけを集めたパーティーを開催するよりは、まだマイナーでも実力のあるDJも招いてこういう場で紹介する方が意義があるのではないかと思う。勿論クラブ・ミュージック業界が縮小する中で、とにかく先ずは音を聞いて貰うという窓口的なイベントとしては成功なのだが、普段当方が慣れ親しんで遊んでいるパーティーの雰囲気とは異なっていたのも事実だ。必ずしも有名なDJ/アーティストだけを集めれば、パーティーの内容が充実する訳でもないというのを身をもって痛感した一夜だった。

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■Masterpiece Created By Carl Craig(過去レビュー)
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