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2014/12/29 REMY:USIC feat. Theo Parrish @ Air
年内最後のクラブ活動は自らの音楽活動を音の彫刻と述べるデトロイトのTheo Parrishへ。昨年は2度程都内のフェスには出演したものの、クラブでのロングセットがなく落胆したものだが、今年は年の瀬が押し迫った時期にようやくAirでプレイする事になった。恐らくギャラや混み具合の問題でクラブでのプレイは難しくなっているなどの諸事情があるのだろうとは察するが、しかし彼のような余りに強い個性を発するDJはやはりクラブでのロングセットでのみ真価を体験出来るのであり、この機会を逃す訳にはいかない。
入場で待たされる事も懸念して24時過ぎには現地入り。するとフロアは既に混んでいる状態で、流石に期待の高さは随一だ。タイムテーブルには24時からTheo Parrishと記載があったがどうやら遅刻していたようで、プレイが始まったのは25時過ぎから。そこから突如として音量は大きく膨れ上がり、一気に湿度と温度と生臭さを増していく。メロウで爽やかなブラジリアン・ハウスで涼風を吹き込む意外なスタートだが、割れんばかりに膨張した低音と錆び付いたざらついたビートで直ぐに彼の個性でフロアが染まっていく。黒いファンキーな要素と共にマッドでドープな音がフロアを暴徒化させ、パーティーの序盤からフロアは激昂していた。更にオーガニックな生音全開のジャズ・ファンクもプレイすると、過激なアイソレーター使いで過剰な音の削り出しを行い、まるでライブを行うかのように曲に変化を加えて大胆なうねりを生み出していく。地響きのような重低音は振動となって肉体を直撃し、激しい脈動を誘発する。

古典的なソウルフルなハウスも鈍く響くアシッド・ハウスも、汗が吹き出るファンクに温かいディスコに華麗なるジャズ、様々なブラックミュージックの因子が入れ替わり立ち代りで現れるが、そこから突然噴火する火山のように熱き血潮が噴出し、蒸し返すような湿度と熱量を伴う衝動の塊がフロアを直撃する。鈍くざらついた生々しいリズム、極端に一部の音域が削ぎ落とされたトラック、そして突拍子もない感情の赴くままにミックスするスキルなど、それらが一体となって非常に人間臭く血の熱さが伝わってくるプレイへと昇華される。フロアは朝の満員電車状態で踊る事もままならない状態だが、その予測不可能で衝動的なプレイにフロアは大きな波となって揺れていた。そんな中投下されたクラシックなハウスである"Life Goes On"、しかし過剰にリズムを削ぎ落としたり手を加える事で単なるハウス・ミックスとは異なるTheoのタフなブラックネスの味付けを行うのだ。そこにディープ・ハウスらしい甘い陶酔感のある曲も繋げてくるも、リズムは暴力的に打ち鳴らされ疾走感を継続する。怒涛の4つ打ちが押し寄せる上げ目の展開から一転、R&B風の色っぽい艶めかしさがあるディスコやロウ・ハウスにも通じるの質感のねっとりしたビートダウンまで急降下し、"Como Como (Theo Parrish Remix)"で眠気を誘うような気怠く甘い一時も。そしてフリースタイルなジャズやR&Bにファンクをプレイし、どろどろとしたぬかるみに足を取られるような粘性の高い泥臭さが滲み出る。そんな混沌の漆黒から浮かび上がる枯れた味わいの麗しさは、古典を新たに彫刻し再生した結果なのだろう。

朝が近付くとロウ・ハウスのような厳つく錆び付いたハウスが、機械的に無機質にビートを刻む。しかし、感情の高ぶりを誘うピアノの渋いコード展開も入ってきて、Hirdによる感傷的なボーカルとジャジーなトラックによる"Keep Uour Kimi"やThe Bad Plusによる変則的にスウィングするリズムと華麗なピアノが踊る"Smells Like Teen Spirit"らがプレイされた瞬間は、パーティーの中でも特にフロアが沸き立った瞬間だっただろう。だが、そこから先の読めない展開でざらつき感の強いリズム主体のハードなテクノも飛び出し、フロアは更なる喧騒へと突入。凶悪なアシッドのベースが反復しながら混迷を極め、上からのしかかる圧力のあるテクノで無尽蔵のビートで叩き伏せるごり押しの時間帯。

6時頃、ようやく雰囲気が落ち着いてくるとRestless Soulによる"And I Know It (Vocal Mix)"をプレイするが、アンニュイなボーカルと小気味良いリズムが心地良いボーカル・ハウスも、ガリッと荒く削り出した質感へと手を加えられ、熱量の高いハウス中心にディスコな4つ打ちで安定感のあるグルーヴを刻んでいく。そして遂にやってきたディスコ・クラシックの時間帯、穏やかな包容力に癒やされる"Love Is The Message"やブギーなダンス・トラックの"By The Way You Dance (Larry Levan Mix)"にお祭り気分を誘う賑やかなディスコの"I'm Big Freak"など、キラキラとしたシンセとゴージャスなホーンが光に満ちたフロアを幸せに包まれる。更には「ベイベ〜ベイベ〜」と連呼される多幸感が降り注ぐ"Let No Man Put Asunder (Ron Hardy Edit)"までプレイと、かつてこれ程までにディスコ・クラシックと連続してプレイするTheoを体験した事はない。

しかし、そんなディスコな時間帯からまた予想外な展開を強引にでも作ってしまうのがTheo。増した勢いに乗ってトランシーな上物が浮遊する快楽的なテクノも回していたが、確かに過去にも同じような展開はあったしどんなジャンルの音楽でもTheoが手を加える事で垣根を壊す一つの世界に収まっていく。そんな流れからJoi Cardwellによるコーラスワークが美しいハウス・クラシックの"Be Yourself"と、この日は実にいつも以上にオーソドックスなハウスをプレイしていたと思う。そんなハウスもTheoによる彫刻が加えられると高い熱量と黒さを増した音楽へと生まれ変わり、それはもうライブと変わらない印象を植え付ける。その後もLuis Gascaによるフリーキーなトランペットがスピリチュアルな雰囲気を生み出すラテン・ジャムで"Street Dude"で瞑想へと誘い、ブラック・ミュージックの幅は朝になっても拡大を増していく。その上、煙いギターが咆哮するブルージーなロックから重厚で荘厳なオペラへ繋いだぶっ飛んだプレイを見せたかと思えば、そこに尖ったビートと色気のあるメロディーによるヒップ・ホップを繋いでしまうのだから、こんなプレイはTheo以外には出来はしないだろう。最後の曲はRodney Franklinによる軽快なリズムと麗しいピアノのコード展開が際立つフュージョンの"The Groove"だっただろうか、フロアを緊張から解放し心が浄化されていく癒しながらの感動のラストを迎えた。

その後アンコールで3曲プレイしてパーティーは終了したのが9時前。こんな時間帯でも多くの人が残っているパーティーはそう多くないだろうが、それもこれ程までに自由な選曲と独創的な展開とそれを一つの世界観に纏めてしまうアイソレーター使いによるプレイが魅力的だからだろう。もはやミックススキルが上手い下手で語るものではなく、音楽に対する深い造詣と愛情をどこまでの熱量を以てして人に伝えていくか、そう考えればあんなにも多くの人達がTheoに魅了されるのも至極当然である。予想通りに電車の始発位までの時間はフロアは踊るのも困難な程に激混みの状態で、決して楽なパーティーではなかったものの、やはりこれだけの多種多様な音楽を積み重ねるように作っていくプレイはクラブでのロングセットでしか成し得ないものであり、思い残す事はない素晴らしいパーティーとなった。

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