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2015/3/13 Lose Yourself @ Air
かつてアンダーグラウンドなジャーマン・アシッドからそのキャリアを開始し、徐々にラテン・ハウスも取り入れながらその豊かな音楽性を開花させた、ベルリンのベテランアーティスト/DJのIan Pooley。MIXのスタイルにおいてもデトロイト・テクノやハウス・クラシックまで用いながら、しなやかなグルーヴ感にうっとりとする小洒落た感覚も持ち込んで、その陶酔感の強い音に魅了されたものだ。近年は欧州ディープ・ハウスの代表格であるInnervisionsからもリリースするなど、よりディープで荘厳な性質を強めた音楽性へとシフトしており、再度注目を集めている。今回は何とAirには9年ぶりの出演となるが、日本からはGonno、Motoki a.k.a. Shame、Lambも出演と充実した布陣でのパーティーとなった。
まだ早い時間帯、空気的にもまだまだパーティーは落ち着いている中でMotoki a.k.a. Shameがプレイしている。パーカッシヴで弾力性のあるビートを刻みつつも、肩の力は自然と抜けておりリラックスしたムードだ。その代わりに柔らかくしっとりとした上物のメロディーがフロアに満たされており、元からそこにあったかのように自然と空気と馴染んだ鳴り方が心地良い。ディープ・ハウス〜テック・ハウスを中心に体を刺激するくっきりしたリズム感はあるが、やはり優美ささえもある陶酔感の強い上物のおかげか、闇に溶け込んでいくような酩酊感が打ち勝っている。圧力や重さで攻めるのではなく、ムードやメロディーを丁寧に打ち出しながら、深遠を保ちながら闇の中を徘徊するようだ。激昂させる事はなくゆっくりと叙情で染めるようにしっとりとした展開は随分と大人びてもおり、辛抱強く抑制を保ちつつパーティー序盤の空気を丁寧に作っていく。終盤でフロアにも人が増えてきてからはアシッドなテクノも投下されるが、やはりアシッド特有の凶悪さではなく、陶酔感を滲ませる性質が強く決してそれまでの展開を壊す事はない。

対してGonnoは初っ端、Pepe Bradockの"4"による耽美なジャジー・ハウスで、更にうっとりと心酔させる展開で引き継ぐ。そこに蒸し返すような熱さを伴うソウフルフなボーカル・ハウスを繋げ、一気にフロアには感情的な熱気が広がり興奮は高まっていく。Motoki a.k.a. Shameとは対照的にリズムはエッジが効いて刺々しくパワフルな粗雑さがあり、より肉体的で熱さを伴うグルーヴ感が強い。芯の図太い強固なテクノから魂を揺さぶるボーカル・ハウスなど外交的なエネルギーを発散させる曲を用い、パーティー仕様な爆発力を伴うプレイでがっつりと熱狂的な雰囲気を作り上げていく。時にはディスコ色の強い煌めく光に満ちたようなテクノまでプレイし、闇の中から浮上し多幸感も満たしていく。荒削りな音が多くビートにも変化を付けながら大きく揺さぶり、中盤以降は加速度を増しながらアシッド・テクノへと雪崩れ込む展開は圧巻だ。しかしそこからも歌モノトラックで一旦落として溜めを作りつつ、再度テクノやアシッド系で頂点まで上り詰めるような大胆な上げ下げを展開し、常にフロアを大きな波で飲み込むように揺らしていた。非常に感情的というか、内面を曝け出すようなテクノであってもソウルフルなプレイには、どうしたって胸も熱くなるものだ。

そしてパーティーのゲストでありトリを飾るIan Pooleyは、Ben Klockの夢の中を闊歩するような淡いテック・ハウスの"In A While"で開始。そこから早くもInnervisionsらしい大仰で荘厳なディープ・ハウスが登場し、フロアは勢いは抑制されたディープな方向性へと潜っていく。神秘的な佇まいもある美しさが特徴的で、艶やかな色気さえも放出する点ではある意味昔のPooleyと共通する点も。ビートは落ち着きを取り戻したように柔らかくスムースに刻まれ、ミックス自体はそれ程大きな展開を繰り広げる事はなく、一曲一曲の良さで魅了していくタイプのDJかなという印象だ。そのせいか時折はっと意識が覚めてしまうようなグルーヴが切れてしまう瞬間もあり、前半はややキックの抜き差しが多くて落ち着かなかったようにも感じられる。それでも表情も全く変えずにプレイするPooleyの音楽観は、暗闇に包まれた深海を潜行し浮上する事なく進むようにシリアスで、最近のPooleyのトラックから感じられるディープな性質が反映されていた。静謐なピアノの旋律や重厚なストリングスの響き、幻想的なシンセのリフなど暗闇に包まれたフロアを装飾するようなトラック群は、輝きのない闇の中でこそ映えるような美しさがある。そして、それまでじんわりディープに潜っていた展開も、中盤からはその荘厳な性質は保ちつつも勢いも増し、よりドラッギーである意味ではトランス感とも呼べる高揚感を誘う展開へと入っていく。プログレッシブ・ハウス的な仰々しさ、そして激しくビートを叩き出すテクノまで飛び出して、滑らかな緩急を付けて盛り上げる。そして待望のアシッド・テクノが凶暴な牙を剥き攻撃的な面も見せつけ、朝方はテクノもハウスもかっちりしたビート攻めの展開へと突入し、Pooleyらしさが現れてくる。そして完全に朝の時間帯になれば光の粒子が散乱するような煌めくディスコ・ハウスや多幸感いっぱいのポジティブなハウスなど、昔のPooleyを思わせる展開が増えだし、よりクラシカルな音楽性が強まっていた。当初は6時までの3時間DJセットの予定だったものの、本人も気分が良かったのだろうか大幅にプレイを延長して、結局7時半までのパーティーは続きすっきりと爽やかな朝の至福の時間を迎えたのだ。正直に言えばPooleyのプレイするトラックの音自体は好みにあっていた事、またプレイ自体はやや単調だったように感じられた事、良かった点と悪かった点もあったが今のPooleyらしさは十分に反映されており、パーティー自体もがつんと弾ける時間帯とディープに嵌る時間帯もあり楽しく過ごす事が出来た。

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