2015.06.10 Wednesday
ベルリンにてオールド・スクールなハウスの復権も担うディープ・ハウスのMojubaに対し、その傘下のA.r.t.lessは最近はテクノへと傾倒しており、そのレーベル間の対比を強めながら両レーベルはベルリン最深部をひらすら突き進んでいる。そんなA.r.t.lessの新作はドイツはミュンヘンからJanis & Fabianによるユニット・Trap10のデビュー作だ。シカゴ・ハウスへの理解もあるMojubaに対しA.r.t.lessはデトロイト・テクノからの影響を滲ませるが、本作もやはり古き良き時代のデトロイト・テクノをルーツに持ちつつハードな音質で攻めの姿勢を持ったアグレッシヴなテクノだ。何といってもA面の"Radisc"が素晴らしく、切れ味のあるハイハットやみぞおちに重圧を加えるような重いキックによるハードグルーヴに、デトロイト・テクノ的な反復するドラマティックなメロディーが叙情性を加えるこの曲は、パーティーに於ける真夜中のピークタイムではっきりと印象に残るような鮮烈さがある。裏面の"N19"はファットなキックが入るもやや隙間が出来てリラックスしたビートを刻み、そこによりエモーショナルで望郷の念に駆り立てるような切ないメロディー使いがやはりデトロイト・テクノからの影響が現れている。擦り潰したような鈍い重低音がロウな質感を生むみながら、透明感かつ浮遊感のあるハイテックな上モノに酔いしれる"Wb"も、フロアでの機能性を含みながらも情感がたっぷりと込められたテクノだ。どれもが決して新鮮味や流行的なモノは全く感じられないが、A.r.t.lessがリリースするテクノだけあり質そのものの高さは疑うべくもなく、また流行り廃りとは無縁のクラシカルな作風に安心する。
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