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2015/9/18 HOUSE OF LIQUID -15th ANNIVERSARY- @ Liquidroom
新宿の歌舞伎町時代から合わせると15年にもなるというLiquidroom名物のHouse of Liquid。その名通りにダンス・ミュージックに於けるハウスを根幹に様々なアーティストを招いて、その可能性を広げてきた信頼足りうるパーティーの一つだ。今回はその15周年記念に合わせてベルリンからミニマル・テクノ/ダブのパイオニアでもあるBasic ChannelからMoritz von Oswaldをゲストに、日本からは当パーティーのレジデントと呼んでも差し支えないMoodman、鰻登りで評価を高めるGonno、ユニークな電子音楽のライブを行うAOKI takamasaと贅沢過ぎる出演者での開催となった。
当日はクローズまでいる予定だったので仮眠してから終電で現地入り。フロアに入った頃にはMoodmanのプレイは半分位は過ぎていただろうか、いつものMoodmanの都会的で小洒落たムードは後退し、その代わりに灰色の無機質な世界が広がるテクノをプレイしている。硬く引き締まったなグルーヴ感はいつも通りだが色味は褪せて、徹底して正確なリズムと柔らかく伸びる残響が心地よいダブ・テクノで、盛り上げすぎずに場をコントロールし流れを作っている。安定感を伴い力強く押し進むグルーヴながらも、ひんやりと体温が下がる質感と無駄な音と展開の無いプレイは、黙々とフロアを突き動かす。次第に多少は上物も入ってくるが、それらもメロディーというよりは効果音的に反復する事で覚醒感を増長させるものであり、徹底してミニマル性を重視したテクノのMoodmanは意外性がありながらも流石の隙がないプレイで上手いなと思わせられる。

2時前には早くもMoritz von Oswaldが登場。足が悪い為に座ったままPCを操作するものの、全く微動だにしないその様相はストイックと言うか地味と言うか、しかし音は正しくべーチャン式アブストラクトなミニマル・ダブだ。闇の中に潜む淡いノイズや揺らぐ残響、そして硬質でドライなリズムが全く温度感の無い灰色の世界を浮かび上がらせる。そんな音楽性を中心とした序盤はかなり無味乾燥な展開ではあったが、次第にリズムは跳ね上がり厳ついキックが打ち付け、金属的なサウンドに満たされてながら激しさを増していく。さながらドイツの工業地帯をイメージしたようなインダストリアルな激しさを表すようで、パーティーのピークタイムを意識した盛り上げ方だ。ベースは反復した構成ではあるが、リズムにも多様性を含ませ展開を作り、激しく揺れる躍動を生む。そして、激しさの極みに達したのが彼等の初期作である"Ploy (Strategic Mix)"をプレイした瞬間で、頭をハンマーで殴られるようなハードな勢いで混沌の渦へと引き込まれていく。更には幾分かハウシーな"Domina (Maurizio Mix)"も飛び出すなど、ベーチャンファンには歓喜の選曲が続く。官能的に揺らぐ残響、図太い無骨なグルーヴからは彼等の音に対する美的感覚も感じられ、激しさの中からから音響の美しさも感じられた。そして再度荒れ狂うキックやパーカッションが炸裂する展開へと回帰し、フロアは鬼気迫る壮大な音響空間へと飲み込まれる。荒れ狂う音の中にもべーチャンらしいアブストラクトな音響が続き、期待していた音楽性はおおよそその通りだ。また初期Surgeonの曲と思われる原始的なハードミニマルなど、懐かしさが込み上げる瞬間もあり、Moritzがこれ程までに厳ついテクノをプレイしたのは嬉しい限り。そして終盤に入ってくるとMaurizioのハウス色が強くなり、深い残響のボイスサンプルも用いて官能的なダブ・ハウスまで用いて、暗闇から情緒が滲み出る流れにうっとりさせられた。ただしやはりMoritzはDJではなくアーティストであり、プレイ自体は拙さも残る点は否定は出来ず、度々ミックスが途切れて音が完全に切れる瞬間もあったりと、聴いていてかなり不安を覚えるミックスだった。ただそれでも、彼に期待する音楽性はおおよそ表現されていた。

AOKI takamasaはいきなり鋭く切り込んでくる刺激的でビビッドなシンセ、膨張する厚いベースと、その音だけでも個性的だが、何よりもそのプログラミングから生まれる生命を感じさせる躍動的なグルーヴに耳を奪われる。細かく複雑なリズムやメロディーは点描によって描かれる絵のようで、そこに更に色彩豊かな色味が加わって、振動するようなグルーヴ感はもはやテクノ/エレクトロニカによるファンクだ。4つ打ちではなく緻密に組まれたリズムは、一筋縄ではないものの肉体を激しく揺さぶり正にライブ感のあるもので、体感で強烈な刺激を受ける。勢いは全く衰える事なく突き抜けたライブは30分という短い時間ながらも、パーティーの中で鮮烈な印象を残した。

パーティーを締め括るのはGonnoだ。初っ端からフルスロットで勢い良く飛び出し、声ネタも用いてファンキーな雰囲気を出しつつも、いつもよりもハードな直球4つ打ちで攻め上げる。重く降り注ぐキックやぶっといグルーヴは、眼前にそびえ立つ物を薙ぎ倒すかのような勢いで、今夜のGonnoの神妙でハードなプレイからは鬼気迫る思いが感じられる。パーカッシヴな音楽性も加えながらリズムによってスピード感のある流れの中に引っ張っていく展開だが、やはり緊張を切らす事なく継続感のあるプレイはDJとしての力量を感じさせる。音の抜き差しもこれ以外にはないという流れで行い、上手く緩急を付けながら疾走し続けるプレイは、痛快で気持ち良い。更にはオールド・スクールなアシッド系の"R.E.S.P.E.C.T."なんかも飛び出し、アシッドと強烈にシャッフルするリズムの攻めに圧倒され、それ以降の空間を埋め尽くす怒涛の音数の展開は、限界まで溜まったエネルギーが堰を切ったように溢れ出したかのようだ。終盤は次第にテンポを落としながら、奇妙な電子音が支配するダウなー流れでフロアを落ち着かせて、最後は空間の広がりを生む残響が強いねっとりしたレゲエへと繋がる意外な選曲で、Gonnoらしいジャンルの広さを見せながら安らぎの朝を迎えてパーティーは終了した。拙い繋ぎをするMoritzのプレイは何度か現実に戻される内容で踊り足りない点に悶々していたが、そんな気持ちを払拭させたのがGonnoによる圧巻のプレイだ。こんなにハードでひりつくような雰囲気のGonnoは滅多に体験出来ないので、非常にレアなプレイを聴けた点で満足出来た夜だった。

■Basic Channel & Maurizio(過去レビュー)
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Maurizio
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