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2015/10/9 宇宙の海 〜Ascension @ Space Orbit
三軒茶屋はSpace Orbitで開催されているらしい『宇宙の海』は、どうやらアンビエント系のパーティーであるらしく、靴を脱いでラウンジスペースとしての空間で一夜を寛いで体験出来るような触れ込みだ。まだ行った事のないクラブという点でも気にはなっていた上に、しかも今回はDJ Yogurtによる年に1〜2回プレイするかのレアなアンビエントDJやKo Umeharaも出演する事があり、意を決して遊びに行く事にした。
丁度DJ Yogurtが開始する前に現地入りすると、目の前には友達の部屋に遊びにきたようなバー兼フロアが広がっている。横には本棚があり壁には絵画が飾られていて、奥には大きなベッドもあったりと、確かにクラブと言うよりは寛げるラウンジスペースだ。入り口で靴を脱いでフロアへとお邪魔すれば、後は踊っていようと寝転んでいようと過ごし方は自由なのが面白い。DJ Yogurtの貴重なアンビエント・セットは基本はビートレスな電子音楽によるもので、空気の揺らぎが静かに伝わってくる優しいものだ。清流が流れるような澄み切った綺麗な音に、音響の奥には小鳥のさえずりや環境音による優しいノイズが入り混じり、伸びやかなプティミスティックな音が何処までも広がっていく。ビートは無くとも動きのある音からは豊かなグルーヴが感じられ、フラットな波となって伝播しながらゆらゆらとしている。ジャンルは一体何だろうか、電子音に有機的な音、動物的な自然音もあり、テクノから民族へ、バレアリックからレフトフィールドまで様々に景色が変わっていく。重力から解放された浮遊空間は微睡みへ導かれながら、引いては寄せる波のように、柔らかく穏やかにドラマティックな展開が繰り返される。後半にはメローなジャジー系ヒップ・ホップなどビートが入った曲も少しだけ用いて、終始夢に溺れてしまう甘いアンビエントを漂わせていた。中々聴く事の出来ないレアなアンビエント・セットを堪能出来た事は喜ばしいが、その内容も素晴らしくもっとアンビエントな音を体験出来るパーティーが増える事を期待したくなるものだった。

アンビエントなムードは音だけでなく、ライティングやライブペイントによっても作られていた。OHPとインクを用いたライティングは淡い色がゆっくりと有機的に滲み、サイケデリックかつ幻想的な色彩を帯びる。その浸食するゆったりとした動きの光とアンビンエントな音が溶け合い、夢のような世界へと連れて行くのだ。まるで生物のような動きを見せるインクは時間感覚が延びていくのが感じられ、ゆっくりと溶けるような色彩の変化が心地良い。

続くTecはのっそりとした残響豊かなレゲエ/ダブで開始。艶めかしくしっとりとした音で、そこからアコースティック色強めなポスト・ロックなどもプレイするが、飛ばしのダブ音響を繰り出して軽い浮遊感を伴うプレイは躍動的だ。ベッドで横になってBGMとして音を楽しむ内に、いつしかウトウトする内に眠りに落ちてしまう。

Ko Umeharaの時間帯になり丁度目が覚めると、それまでよりもテクノ色が強くなっている。決して激しくはないが自然と体が揺れるビートも入り、立って踊っても楽しめる音楽だ。ミニマルなトラックにCarl Craig & Moritz von Oswaldによる"Movement 2"をミックスする序盤から、既に普通のパーティーでは体験する事が出来ない宇宙感覚が発せられ、次第に控えめな音量ながらも疾走するカチッとした完全にダンスモードなグルーヴが現れる。MFOによる"Anti Social Plan"などロウなビート感ながらも清涼感あるピュアな上物の音色から、どこか土着的な香りのするトライバルかつ原始的なテクノなどを用いて、内へ内へと深く潜っていくようなディープでイマジネイティブな展開を構築する。そして飛び跳ねるクリック・ハウスも飛び出したりと、緩んだ空気感でリラックスはしつつも、現実からは隔絶された狭い空間に小宇宙が広がるようなコズミック感が高まっていく。またRon Trentによるアンビエンス感たっぷりなディープ・ハウスの"I Feel The Rhythm"で霧の彼方にいるような夢の中へと突入し、そこから大地の土臭い香りと繊細なピアノが美しい"Once Again (Kuniyuki Version)"へ繋がった瞬間は最も宇宙を感じられる瞬間だったか。更にはGonnoによる"A Life With Clarinet"の切なく畳み込まれるメロディーのバレアリック感を通過し、後半はより柔らかいメロディーを強調するトラックを多めに、"One Two Three (No Gravity)"にように淡い景色が広がる牧歌的なハウスで朝が近付くのを予感させる。外向けに発散すると言うよりはやはり内に存在する宇宙を見つめる内省的な音楽性で、決して大袈裟に盛り上げるプレイや激昂させる展開はないが、その場の何処でもない何処かのムードを壊さずに落ち着いた音で居心地の良い空間を作り上げていたと思う。最後は徐々に現実へと戻るようにビートを落ち着かせながら、朝の到来を告げるアンビエントなハウスやパルスのような電子音を発するテクノで静かにグルーヴを収束させ、朝5時のクロージングへと向かっていた。
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