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2015/11/2 GRASSROOTS 18th Anniversary Day III 〜月光〜 @ Grassroots
高円寺を代表するクラブ…もとい音楽酒場も今年で18年目。今では有名となったDJもかつてはここGrassrootsで、小箱らしく自由なプレイでDJとしての経験を積み才能を磨いたという者も少なくはなく、また時にはこの小ささには似つかわしくないDJもひっそりとプレイする夜もあったりと、ジャンルに依らずに音楽ファンからは人気を博しているローカルな酒場だ。そんな18周年の記念として三日間に渡りアニバーサリー・パーティーが開催されたが、当方はその最終日に参加。Grassrootsでの月曜の夜…といえば、ご存知DJ Hikaruによって以前はレギュラー開催されていた「月光」があり、今回はその名を冠しての開催だ。出演はDJ HikaruにYA△MA、DJ KuriにDJ Yazi、そしてMasa aka Conomarkとこの場所にお馴染みの面子が集結した。
長いパーティーになる事を見越して当日は3時前に入店。丁度ピークタイムの時間帯だったために、フロアは既に動けない程の混み具合の中でYA△MAがDJブースに入っている。トライバルな曲をプレイしておりが熱狂的な空気の中で猥雑とした荒々しい選曲で、そこから"Beau Mot Plage"でふらふらとした酩酊感を生みつつ、ダビーな残業が心地良いテクノからNovio Dub Tribeによる"Taking It Back"のブレイク・ビーツ気味のディープ・ハウス、そして民族的なパーカションが怪しい曲から生っぽく芳醇なアフリカンなハウスまで、正にGrassrootsと言う異形の酒場らしい異国へと迷い込んだかのように様々な音が飛び出してくる。ジャンルなどお構いなし、YA△MAの自由で大らかなプレイは90年代NYハウスからトリッピーなアシッド・ハウスまで拡張され、進行方向は予測不可能の魔境への片道切符。更には硬質なミニマルから横揺れするプレイク・ビーツまで、その振れ幅をもって縦横無尽に揺さぶっていく。一見その節操の無さそうな掴み所のないプレイかと思うが、それを許容するのも小箱であるGrassrootsとそこにいる客層の特徴であり、飄々とした自由で軽快かつ愉快なプレイにフロアは熱くなっていた。

4時頃になりDJ Hikaruの登場だ。初っ端マシンガンのような降り注ぐラップ攻めは如何にも彼らしく、重低音が響きながらぐらぐらとフロアを悪っぽく揺らす。と思いきや怒涛のラップからの突如のThe Isley Brothersによる"Love The One You're With"で、優しくソウルフルな展開へと切り替わりDJ Hikaruワールドが始まる。クロスオーバーなんて言葉では表現出来ない程のカオス的な音の混在は、エバーグリーンな"I Am the Resurrection"から"Heavenly Overtone(Vakula Remix)"への意外過ぎる繋ぎでも発揮されていたが、その多幸感は白色光に満たされたトンネルを駆け抜けるようだ。そこからラテンを思わせる熱い歌が入るトライバルなハウスや、幸福感の強いピアノがしっとり響く黒くソウルフルなハウス、果てはブルージーなロックやサイケ・ロックと、亜空間へと迷い込んだような混沌とした世界観が爆発する。ジャンルの収束を拒否しあちらこちらに振れるプレイがDJ Hikaruの持ち味なのだから、これはもう期待通りのセットでアニバーサリーというお祭りを盛り上げるにはぴったりだろう。かと思えばセンチメンタルなヒップ・ホップで色っぽく誘惑したりと、DJ Hikaruのプレイは実に荒くれているものの人間味溢れて温かいのだ。

夜が明けて6時、DJ Kuriがブースへと入る。奇っ怪でノイジーかつアブストラクトな曲で開始。それまでのダンサンブルだったグルーヴを一旦破壊する衝撃的な展開で、ビートからは解放されて荒廃した世界を作り上げる。かと思えば熱い感情が噴き出しコテコテにねっとりとしたR&Bでフロアを湿らし、その粘性を保ちながら官能的なディスコとへ繋ぎつつ、気付いた時にはいつしかドープかつスローモーなテクノへと行き着いている。下からせり上がってくる重低音と機械的に反復する覚醒的な上物によって、踊るものの足を絡みとるグルーヴで束縛し、遅いテンポながらも的確にフロアにいる客を足をステップさせるのだ。更に低い重心からダブ残響が広がりながらふわふわとした浮かび上がり、無重力空間へと移行し幻惑的に飛翔するプレイは、かつて体験した事のある闇のミニマルが支配するDJ Kuriしか知らない当方にとっては驚きの内容だった。

7時時からはMASA aka Conomarkだ。序盤からけたたましい怒涛のビートが荒れ狂う黒いジャズからプレイク・ビーツ気味のねっとりファンキーなハウスまで、おおよそ多くの人がConomarkに期待している音だろう。闇の底で渦巻く熱き情熱が溢れ出し、ハウスとジャズが同じ流れの中に同居する。スキャットも混じりながらファンキーなベースラインと軽快に揺さぶる生々しいビートを軸に、Righteous(Yabe Tadashi & DJ Quietstorm)による粘土の高いサイケなファンクの"Bumpin'"も織り交ぜ、微かな残響を煙たく響かせながら自由に舞い踊る。中盤からはビートはハウスへと収束し規則的なダンスのグルーヴを紡ぐが、そこに鈍く擦り切れたような生々しい音質も伴い、黒い芳香を更に強く発し始める。芯のある4つ打ちを刻みつつ、エモーショナルなメロディーが伸び、どこまでも勢い良く飛翔するのだ。Pete Dafeetによる美しいパッドとベルが情緒豊かな"The Root, The Soul"のディープ・ハウスなどもプレイし、穏やかながらも心に火を灯す熱い感情に溢れた音楽はファンキーかつソウルフルで、眠気を催す朝方の体を叱咤するようだった。

続くDJ Yaziはパーティー前からハウス・セットと断言していた通りのプレイだ。DJ Kozeの"XTC"では快楽的でふんわりとした空気がフロアに充満し、朝方の夢に溺れた感覚のままで気持ち良く闊歩する。そんな微睡みのモードを継続しながらまさかのディープ・ハウスへも移ろい、滑らかに研磨された4つ打ちと幻想的な上物で陶酔感たっぷりに踊らせるが、決してグルーヴを荒げる事はなくスムースなビート感で穏やかに甘い陶酔へと溺れさせる。Conomarkが黒いハウスならDJ Yaziは白いハウスで、同じ4つ打ちのプレイでも激しさと穏やかさは真逆で、そんな対比が感じられるのも興味深い。勿論DJ Yaziのプレイが決して激しいものではないが、中音から低音にかけてしっかりと厚みがあり体に響く音圧で攻勢をかけつつ、醒める事のない夢を彷徨うように快楽的なシンセが主張し、終始快楽的なテック・ハウス〜ディープ・ハウスでうっとりと耽溺出来るものだった。

もう9時過ぎ、一般的なパーティーならば既に終わっていてもおかしくない時間帯だが、この時間から再度YA△MAが目の醒める激しいプレイを敢行する。 層になって伸びていくようなパッドにズンドコ硬質なキックが執拗に打ち込まれ、じわじわと長い時間をかけて嵌めていくMark Ambroseによる"Groove X"マークなど、朝になってもパーティーのテンションを落とす事なくより盛り上げていく気概が感じられる選曲だ。まだパーティーは終わらせないという気迫でもあるだろうが、その意志は硬くひんやりとしたテクノとして現れ、そこに地面を這いずり回るアシッドが炸裂するドープなテクノで覚醒感を煽り、軽快に跳ねるテック・ハウスで悦に入り、全く終わりの見えないパーティーが続く。椅子で横たわり寝ている者もいれば、酔いながらフロアで踊る者、酒を片手に会話を楽しむ者、全くフロアから音が止む事はなくGrassrootsらしい温かく面白い時間が過ぎて行く。当方は10時に現場を切り上げ帰路へと就いたが、後の情報では夕方になってもパーティーは続いていたようだ。流石のGrassroots、ロングパーティーを許容する場所にそれを楽しめる客層だからこそ、こんな酒場はそうそうあるものではない。
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