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2015/11/14 Nuit Noire -DJ NOBU MIX CD Release Party- @ Liquidroom
千葉というローカルな地での活動から始まり、いつしか日本各地のアンダーグラウンドなパーティーからフェスまで、そしてドイツはBerghainやポーランドのUNSOUND Festivalにまで出演し、更には海外は某箱でのレジデントも決定と、その活動の場を世界規模へと広げているDJ Nobuは今日本において最も期待を羨望の眼差しを集めるDJだろう。そして2015年6月には最新のテクノを表現すべく"Nuit Noire"というMIXCDをリリースし、今も尚DJ Nobuの音楽表現は進化している事を証明した。今回のパーティーはそんなMIXCDのリリースパーティーとしてDJ Nobuによる進化したテクノ・セットを体験出来ると同時に、日本からは同様に海外でも高い評価を得るGonno、そして近年湧いて出たミステリアスな存在であるテクノアーティストのRroseと、完全に100%テクノナイトなスリリングな一夜となるであろう。
パーティーの開始からフロアへと足を踏み入れると、静けさが広がるその眼前でPCとTR-8にPCDJのセットでGonnoがプレイを始めていた。最初の15分位はビートレスな展開にサイン波のような無機的な電子音が平たく流れる中に、発振音や痺れるような重低音が入ったりと、音響系やエレクトロニカと呼びたくなるような曲調の選曲だ。PCによるソフトウェアシンセでも味付けをしていたようだが、ビートレスだからといってアンビエントのような快楽性はなく、何か尖った刺激さえ感じられる。次第に耳に覚えのあるフレーズが浮かび上がってくると、そう普段はバレアリックにも聞こえる"Obscurant"だ。ここからビートを刻み始め快楽的なフレーズが芽を出してくるが、しかし元来はバレアリックな開放性がある曲も何かこの日のプレイではフロアにサイケデリックな惑わせ方を落とし込む。上げるのではなくテンポを落とし、Gonnoらしい多幸感を散りばめながら幻想的なボーカルや夢見心地な上物が入るテクノにしても、リズムは歪んでささくれ立ったロービートだったりと不思議な音響を見せる。そしてミックスにしても曲を層にするように長く繋げていたようにも聞こえ、レイヤーを意識した流れや加工させたような繋ぎ方が感じられ、体に迫る重圧のあるリズムと共に奇妙な音響の刺激が個性的だ。そして這いずり回る蛇の如くうねるアシッドなテクノまで飛び出すが、やはり上げるのではなく混沌に収束するという表現が相応しいサイケデリックな展開。そして無機的で冷たく黙々と感情を抑制したプレイは少しづつ加速し、遂には目眩さえも引き起こすサイケな"Shut It Horror Core Dub"も飛び出し、フロアは熱気を帯び始める。そこからもねっとりとしたグルーヴを保ちながら、常に何か音が鳴っている過密な状況を作りながら渦巻く混沌を積み続けるが、過多にも思われる音の攻勢はスローな流れの中でこそ隙間を埋める事で重圧を発し、意識が他に向かない蠱惑的なドープな展開となるのだ。後半には"Deepn' (Gonno Remix)"で渦を巻くように掻き混ぜられ、濃厚に練られたサイケデリックな空気が溢れるように放出し、フロアはトリップの真っ只中にいた。また、時折TR-8もいじりながら簡素なリズムも加えてロウな質感も打ち出したり、単なる踊らせるDJ以上の表現力があの場所にはあったと思う。強力な磁場を生むエグい電子音も網の目のように編み込まれ、完全にドープかつサイケデリアに支配されていた。そんな世界観から最後には突如出現する祝福の鐘、そう"The Island I've Never Been"で見事に一気に祝祭感溢れる幸せな流れでDJを完遂した。

続くRroseは自身で映像も用意したライブセットだ。フロアは完全に人でぎっしりと埋まり、期待している人も多かったのだろう。当方は全くRroseの事と知らなかったが、灰色の色に染まった電子音楽によるサイケデリックな音響テクノは、ハードテクノともミニマルともまた異なるテクノの方向性が感じられる。ヒスノイズのような薄い膜が暗闇の奥底で常に鳴っており、奥深い残響が空間の広がりを創出し、アシッドでヒプノティックなサウンドのループが覚醒的な響きを見せる。もはやトランスと呼んでもよい位の意識も融解する快楽的な音響、緻密に編み込まれレイヤーを成すような構造、そして正確無比で秩序だったビートが機械的に押し寄せる。そこに人間らしい温かみや豊かさは皆無で、それどころか感情を排して冷ややかな電子音の流れに否が応にも飲み込まれる。広がるのは荒廃した製鉄所か朽ち果てた廃虚か、荒んだ音が散弾のように飛び交いフロアを狂気の世界へと誘い込む。非常に統一感のある音楽性は、言い換えればやや単調な展開ではあるかと思うところもあったし、また用意された動画はイメージを膨らませるような効果は感じられなかったのが正直なところだ。それでも錆び付いた鉈を振り下ろすような鈍く残虐なビートや、トランス感に満ちた電子音の執拗な反復からは、荘厳にさえ思われる圧巻の廃退美を感じ取れる瞬間もあった。

だが、この日のパーティーで全てを持っていったのはやはりDJ Nobuだろう。Rroseのライブで盛り上がった後だったが、いきなり上げる事はせずに仕切り直して変速ビートで揺さぶりをかけながら、しっかりと組み立てる勢いで流れを作っていく。音は削ぎ落とされ隙間がはっきりと際立ち、しかし芯の詰まったタイトなキックで的確にビートを刻みながら横揺れを誘発する。クリッキーな電子音やレイヴ調のえぐい音、被膜のような微かなノイズなどを効果音的に盛り込み、鋭角的に揺れるリズムで引っ張りながらも奇妙な電子音をアクセントに精神に作用する音響面での効果が覿面だ。そこにカタカタとした平たくロウなマシン・ビートも加わるのも特徴の一つであったし、近年取り組んでいたインダストリアルからドローンの音響にダブ・ステップを意識したリズムをまでミックスしながら、4つ打ちテクノ一辺倒からの脱却が見事に完成形を成したと言っても過言ではない。時には光の届かない深海の底の暗さの中で淡々と潜航し、そして浮上すればゴリゴリと厳ついビートの波に揉まれ、常に変化を求める如くリズムや音の増減を変化させる。時に鈍く時に鋭利にとグルーヴをコントロールして、変則的なリズムを刻むその曲群らを難なく自然と繋げる展開は緊張感を切らす事は全くない。そして、水平並行に走る4つ打ちは少なく実験的とも呼べるテクノセットは、所謂大箱での経験よりはきっと小箱でこそ可能とするフリーフォームなプレイで培ったものではないか、そう思わせるだけのアンダーグラウンドな音楽性だ。誰でも成し得る4つ打ちではない、単に盛り上げるアッパーなだけのセットでもない、数々のパーティーで膨らんだ創造力と培った経験から生まれる変幻自在のテクノセットに、フロアは正に大きくうねる波のような揺らぎを見せていた。全く緊張感は途切れる事なく横揺れのグルーヴを保ち、そして時折現れるノイズにも似た音響の嵐がフロアへと降り注ぎ、心身共に痙攣するような体験は衝撃的だ。怒涛のキックは地響きとなり、震撼する電子音が飛び交い、無慈悲で暴力的な圧力が降り注ぐ。特に後半に入ってからは絶え間ないキックが暴風雨のように荒れ狂い、怒涛のボディーブローを喰らわせ、何時しか限界を越えて快楽へと変わっていた。長い長い闇のトンネルを疾走する終わりのない攻勢は徐々に意識を麻痺させ、ただ踊る事のみに集中させられたフロアでは、殆ど会話も無い程に音へ惹きつける魅惑が満ちていた。只ひたすら踊り音を浴びる3時間半、所謂クラシック的な曲や大袈裟な曲は殆どプレイされる事はなく、それどころか得体の知れない何処から掘ってきた分からないテクノばかりをかけていたが、それでも尚体を激しく揺さぶるマシン・グルーヴはこれぞテクノの醍醐味だった。DJ Nobuのプレイがテクノという地平を更に開拓する素晴らしいプレイだったのは当然として、また始発後も、それどころかパーティーの最後まで踊り尽くした多くの客がいた事も、心から喜ばしく素晴らしい。テクノに対し、日本人のDJに対し希望を持ち楽しむ人達がいる、そしてそれに応えるDJがいる、そんな現実を実感出来る一夜だった。

■DJ Nobu - Nuit Noire(過去レビュー)
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■Gonno - Remember the Life Is Beautiful(過去レビュー)
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