2015.12.04 Friday
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シカゴ・ディープ・ハウスのRon Trentが主宰するFuture Visionからの新作は、珍しくA Band Called Flashなるバンド名義によるものだ。ネット上での説明では当初はTrent自身によるバンドのようだったが、実際に蓋を開けてみると作曲やプロデュースに演奏まではJared Hinesが行っており、エグゼクティブ・プロデューサーとしてTrentが名を連ねている。またUKのジャズ/ファンクバンドであるAtmosfearや、NYのディスコバンドであるDinosaur Lに影響を受けたと紹介されているが、例えばTrentがガラージやディスコにも造詣がありパーティーの朝方でもそんな曲をプレイする事は周知の事実なのだから、こういったプロジェクトを手掛けるのも自然な流れだったのだろう。そういった意味ではいわゆる今っぽいダンス・ミュージックと言うよりは、半ばクラシカルな風格を匂わせ哀愁漂う古風な作風ではあるが、古典への理解と愛が作品を曇らせる事なく素晴らしい輝きを放たせている。チージーなマシンビートと前面に出たベースで始まる"Mother Confessor"は、空間の奥行きを演出するダブ感のあるディスコで、垢抜けないビート感でありながらも物哀しいシンセの旋律や咽び泣くようなギターがぐっと心を温める。"Nicci"は全体的に生演奏を強調したファンクのモードで、艶かしいギターやベースのプレイと軽快なリズム感が実にバンド風なライブ感を生み出している。Dinosaur Lに影響を受けたという触れ込みが感じられるのは特に"People's Palace (Devotion)"で、このダブ処理された奇妙な雄叫びや何処がネジが外れたような音響によるサイケデリックな高揚感は、現在のディスコ・ダブにも通じる点も。そしてAndrew Zhangをキーボードに迎えた"Sliph"も、軽快なでファンキーなギターカッティングと共に一発録りしたような勢いのある鍵盤プレイが鮮やかに彩っていて、情熱が弾ける躍動的なディスコとなっている。決して新鮮味を発揮した音楽性というわけではないのだろうが、しかし先にも述べたようにTrentのDJプレイにおける至福の朝方の雰囲気を好きな人ならば、間違いなくこの音楽に対しても同様な愛情を抱くのではと信じている。
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