<< Lars Bartkuhn - Music For The Golden Age (Neroli:NERO 029) | main | ラーメン二郎 荻窪店 >>
2016/2/20 Mule Musiq presents CATS @ Arc
ドイツのアンダーグラウンドなハウス・レーベルであるWhiteの主宰者であるOskar Offermannが、昨年は遂にMule Musiqからアルバムをリリースするなど、その活動は浮上をして日本でも注目を浴びつつあるように感じられる昨今。今までに2回の来日経験があり、GrassrootsやLiquidroomなど場所の大小問わずしてその個性的なDJで評判を集めるが、今回はMuleからのリリースに合わせてレーベルのパーティーであるCATSへの出演が決まった。日本から迎え撃つは同レーベルの中心的存在であるKuniyuki TakahashiやMuleのボスであるToshiya Kawasaki、Rainbow Disco ClubのSisiと、リリパに対してしっかりを脇を固めた布陣となった。
場所はかつてOrigamiがあった同じ所を改装してリニューアルされたArcだ。今回初めて行ってみたが、入り口が分かりやすい所に移り、内部の構造自体も作り変えながら内装も多少シックに落ち着いた感じへと変化していた。DJブースも多少低くなり客との距離感が近くなったのは良い事だと思うし、座れる場所も十分に確保されているので、夜遊びの初心者でも安心して行ける感はあると思う。音響面についてはOrigamiの時はINFINITE SYSTEMというなかなかパワフルなサウンドがご自慢だったようだが、このArcではVoidが導入されいたものの、少々音圧は足りないかという印象だ。

さて、そんな中でまだ早い時間帯のSisiが、それ程客も多くはない中でスピード感を抑えながらドラッギーな質を打ち出した選曲で、ずぶずぶと沼にはめるような中毒的なプレイをしている。ミニマル、ディスコティック、またはロッキンなテクノ、プログレッシヴ・ハウス、エキゾチックなど様々な要素が現れては消えて、ゆっくりと融解しながらねっとりとした世界観を構築していく。夜の妖艶なムードたっぷりで惑わせるように酩酊感のあるプレイは、踊らせるというよりは酔わせるという表現が相応しいか。終盤からは切れのあるビートも強くなり少しずつ肉体への刺激も増して、騒がしさの中に高揚感を作り上げていた。

対してToshiya Kawasakiはフラットな4つ打ちのテクノ/ハウスを用い、グルーヴ感重視で攻める。思っていたよりもアッパーで叙情性の強いテック・ハウスから、ふらつくようなトリップ感のあるディープ・ハウス、またはMoominによるの幻想の中に溺れてしまうような甘めの"Morning Groove"など、それらはどれもエモーショナルでメロウだ。特に"Lora (Robag's Fandara QUALV NB)"における暗闇を切り裂いて現れる多幸感は、桃源郷へと招かれたように幸せ一杯の瞬間だ。そこから一転してダークな雰囲気のごっつい4つ打ちのテクノで、フロアに鉄槌を降り下ろすハードな展開へと振れるなど、こまめに緩急をつけながら大きくフロアを揺さぶっていく。アップとダウンが交互に来る大胆な展開と豊かな感情性によって賑やかなパーティーを演出していて、いつの間にかフロアにも人が集まり如何にもパーティーらしくなってきた時間だった。ラストは催眠的なフレーズがサイケデリックな怪しさもある"I Can't Believe I Loved Her (Moomin Version)"で、ディープな音響の中に惑わせて消え入るように終了。

Kuniyukiはいつも通りライブでの登場だが、この人はそのパーティー毎に全く異なるライブを披露するので、今夜は一体何で来るのかと楽しみにしていた。ライブが始まると乾いたパーカッションと地響きのような迫力あるキックが打ち鳴らされ、次第に入ってくる土着的な香りのするメロディーは、これぞKuniyukiらしい有機的で人間味溢れる音楽性だ。前半は思っていたよりもトライバルなリズム中心で、大地の芳香が立ち上がるディープ・ハウスらしい深みがあり、激しくもオーガニックで、そしてミニマルな流れが覚醒感を誘発する。どんどん刺激的なパーカッションやリズムが加わりながら荒波に揉まれるグルーヴとなり、更にはアシッド気味の不気味なシンセも登場すると、激しさはより強くなり濁流のような4つ打ちに飲み込まれる。人間の本能を刺激するように心身へと響く大地の胎動を思わせる躍動的なビートは、激しさの中にも繊細なリズムの妙があり、やはりこれがDJではなくライブなのだと思わずにはいられない。中盤からは地面から這い出たようにアシッド・ベースが芽を出して、シカゴ・ハウス風な危うさも見せれば、その後の歌も導入された感情大爆発なディープ・ハウスへと振れたり、ちょっとした意外な変化を加えながら終始躍動的なハウスのグルーヴを刻んでいた。ラストは執拗な反復により高揚感を積み重ねながら、壮大な音響を伴いつつ完全に振り切れた勢いで見事な1時間のライブを完遂した。

そして3時半になってようやくゲストのOskar Offermannが登場。正直比較的新しいクラブだからコアな客層が多い訳でもないだろうと思うし、ゲストはもう少し早い時間帯にプレイさせた方が良いのではと不安だったが、案の定客が帰り始めていたのは少々残念であった。それはそうとOffermannのプレイはざらついて金属的な響きのあるテクノやハウスを軸にしており、規則正しく整った4つ打ちではなく、やはり音数を削りながら変化球のような独特なリズム感や不思議な鳴りのトラックを用いており、その音楽センス自体が個性的に感じられる。ただスムースな流れで展開させるだけのDJとは異なる、癖のある曲を繋ぎ合わせながら、酔いどれ状態にも似たトリッピーな感覚に嵌めていく。ビートはざらざらと剥き出し感がありロウ・ハウスにも共通項を見い出せるが、情報量を削った如く隙間を活かした細いビートは、すっきりとしながらも硬い事で小刻みな振動を生むかのようだ。そこに繊細な上モノの音響が加わってくれば機能性だけではなく、個性的な響きを持った音楽性を付随させるものとなり、変幻自在なグルーヴの連なりが刺激的なものとなる。中には繊細で淡いメロディーが映えるディープ・ハウスで情緒的な流れも作るが、決してその展開が何処までも続くわけでもなく、奇抜さと佳麗の間をふらついている。鈍いアシッド・サウンドで気が抜ける骨抜きなテクノもあれば、ゴリゴリ硬めの端正な4つ打ちのテクノもあったり、つんのめる変則的なビートの曲など、分かり易く素直に受け止められる曲は多くはない。一般的な徐々に上げてアッパーな流れへと持っていくタイプではなく、音数やスピード感を抑制しながら音の間を活かして軽快なビートで体感させるそのプレイは、確かにWhiteを主宰するものとしての奇抜なテクノ/ハウスが存分に感じられるものだ。朝方には優しく癒される女性ボーカルが入ったディープ・ハウスから、Offermannが手掛けた夢と現実の狭間にいるような微睡み"Koleu"へと繋げた瞬間は、ふっと緊張から解放される素晴らしい時間帯だった。その最もエモーショナルな時間帯がもっと多ければと思ったのは、やはりGrassrootsに初来日した時のEdward & Oskar Offermannによる奇跡にも近い素晴らしいプレイを体験したからで、今回もそれを越える事は出来なかった点で満足したわけではない。勿論、初めての場所であるArcと言う場所に慣れずに浮足立ってしまった事もあるが、それでもToshiya KawasakiやKuniyukiのプレイを十分に楽しめたし、Oskar OffermannにはやはりEdwardとのB2Bを期待したいと思う。

■Oskar Offermann - Le Grand To Do(過去レビュー)
Oskar Offermann - Le Grand To Do
Amazonで詳しく見る(US盤)
 Amazonで詳しく見る(日本盤)

■Kuniyuki Takahashi - Feather World(過去レビュー)
Kuniyuki Takahashi - Feather World
Amazonで詳しく見る(US盤)
 Amazonで詳しく見る(日本盤)
| EVENT REPORT6 | 14:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
スポンサーサイト
| - | 14:30 | - | - | |

コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://matyu.jugem.jp/trackback/3843
トラックバック