2016.07.09 Saturday
Amazonで詳しく見る(US盤)
デトロイトの音楽性も咀嚼し黒い芳香と粘性の高いディープ・ハウスやビートダウン・ハウスを完成させ、一躍時の人となったDanilo PlessowことMotor City Drum Ensembleは、作曲家としてでだけでなくDJとしての評価も一際抜きん出ている。5年前のMIXCDである『DJ Kicks』(過去レビュー)においてもテクノやシカゴ・ハウスのみならず、懐かしいディスコやコズミックなジャズに湿地帯を匂わせるダブもミックスし、ブラック・ミュージックを根底に置きながら単に踊る為だけ以上の豊かな音楽性を披露した。そこに当然必要となるのが各DJ毎のネタ、つまりはレコードとなる訳だが、デジタル配信が増えた現在に於いてもまだデジタル化されない貴重な音源は数多く、それらを如何に入手するかがDJにとっての一つの仕事である事に異論はないだろう。だがしかし、Plessowはそういった秘密兵器を隠す事なく、多くの人と共有する事を躊躇わない。そんな背景もあってDekmantelからリリースされた本作は、正に彼の秘密兵器を公開し、そして他の若いDJ達にも使って欲しいという思いも込められた正に「Selectors」としての内容だ。古くは1978年のファンクから最も新しいのでは1997年のディープ・ハウスまで、しかし一般的には恐らく知れ渡っていないであろうレアな曲が収録されている。アルバムの前半は主にハウスで、DJ Slym Fas(知らなかったのだが何とTony Ollivierraの変名だ)の"Luv Music"の耽美なエレピの旋律やコズミックなシンセの使い方が特徴の野暮ったいディープ・ハウスは、例えばMCDEの新曲だと言われても気付かない位に音楽性に類似点が見受けられる。House Of Jazzによる典型的な90年代のUSハウスである"Hold Your Head Up"の甘くもゴスペル的な歌、20 Belowの弾力性のあるファットなベースがうねりシンセが優雅な芳香を匂わせる"A Lil Tribute To The Moody Black Keys"など、これらもMCDEのDJセットに入るのもその音楽性を理解すれば極自然に思われる。アルバムの後半は更に時代を遡り、Lickyによるアフロな熱さもある陽気なファンクな"African Rock"、RAhzzのテンション沸騰で血が滾るゴージャスなディスコの"New York's Movin"など、ファンク/ソウル/ディスコといったよりルーツ的な選曲だ。ミックスではなく敢えてコンピレーションとしたのは当然DJとし使って欲しいという気持ちの表れだが、そのおかげでリスニングとしても各曲の魅力をそのままに体験出来るに事にも繋がっており、DJにもリスナーにもありがたい作品なのだ。MCDEのルーツを探る意味でも、面白さもある。
Check "Motor City Drum Ensemble"
Tracklistは続きで。
01. DJ Slym Fas - Luv Music
02. House Of Jazz - Hold Your Head Up
03. 20 Below - A Lil Tribute To The Moody Black Keys
04. Risque III - Essence Of A Dream
05. Licky - African Rock
06. Raphael Green - Don't Mess With The Devil
07. Ahzz - New York's Movin (Instrumental)
08. Bill Deal - Freak n Freeze
02. House Of Jazz - Hold Your Head Up
03. 20 Below - A Lil Tribute To The Moody Black Keys
04. Risque III - Essence Of A Dream
05. Licky - African Rock
06. Raphael Green - Don't Mess With The Devil
07. Ahzz - New York's Movin (Instrumental)
08. Bill Deal - Freak n Freeze