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Takkyu Ishino - Lunatique
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最後のアルバムが2010年にリリースされた『Cruise』(過去レビュー)である事を思い出すと、そんなに待たされた気持ちはないもののいつしか6年も経過していた事に驚くが、しかしその長い時間はアーティストをより熟成させる事に寄与していたのではないか。そう思うのも石野卓球によるこのニューアルバムが今までの作品の中でも、テクノという音楽性からはぶれずにしかし俗っぽい官能的な艶を洗練された今っぽさで表現し、勢いだけでもなく享楽だけでもない円熟の極みへと達しつつあるからだ。フランス語では「気まぐれな」を意味するタイトルの本作は、漫画エロトピアの1978年6月15日号の表紙となった横山明のイラストを宇川直宏がレタッチしたデザインをジャケットに起用しており、その見た目まんまに音楽性も快楽的で艶っぽさに溢れている。収録された曲は古いものでは2000年頃に制作された曲もあるそうで、100曲以上録り溜めたストックから性やエロスをコンセプトに10曲を選んだ事で、その結果として電気グルーヴとは真逆のダンス・トラックとしての統一感が卓球ソロの個性として表現されている。"Rapt In Fantasy"からして艶かしいシーケンスが蠢き、肩の力が抜けた柔らかいグルーヴの中から光沢感のあるシンセが現れると、ぐっと妖しい芳香が漂ってくるようだ。層になってふわふわと浮遊するシンセに惑わされる"Fetish"もあっさりとしたリズム感で、決して強迫的なグルーヴに飲み込むのではなく雰囲気で包み込む音楽性があり、大人びた落ち着きさえ漂っている。如何にも卓球らしい鈍く切り刻むようなエレクトロ・ビートの"Lunar Kick"、イタロ・ディスコ的な快楽的なシンセベースが滑らかに流れる"Fana-Tekk"なども、ルーツを掘り起こしつつも全体的にぬめっとした質感はやはりエロスを強く感じさせる点は本作の特徴だろう。序盤に透明感と清涼感を打ち出してアンビエントな空気が広がる"Die Boten Vom Mond"は、特に既存の卓球からは余り感じる事の出来なかった新しさが見受けられ、甘く誘うような女性の呟きによりすっと意識が天にも昇るようだ。勿論、テクノというダンス・ミュージックを前提にしながらも耳を惹き付けるキャッチーな響きはポップ・ミュージックとしての質の高さもあり、こういった音楽がメジャーとアンダーグラウンドの垣根を壊す事を期待させてくれるのだ。



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