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2017/10/6 Theo Parrish Liquidroom 13th Anniversar @ Liquidroom
恵比寿リキッドルームの13周年記念の一環のオールナイト・パーティー、その目出度い一日に招かれたのは過去にも何度か出演しているデトロイトの鬼才・Theo Parrish。デトロイト・ハウスという枠組みさえ超えて、音源を彫刻のように削り出しては自らの音に塗りつぶしていくそのプレイは、リキッドルームという重厚な音圧と馬鹿でかい音量を持った場所では尚更映える事もあり、その上ワンナイト・ワンDJというスタイルなのだから特別なパーティーになると想像に難くない。
開始時間である24時頃に現地に着くと、まだオープンはしていないものの既に多くの人が並んでおり、流石の期待値の高さの現れだ。程なくしてオープンしフロアへと足を踏み入れると、Theoは有機的でニューエイジ風な甘ったるい曲でプレイを開始している。調べてみるとAndreas Vollenweiderによる"The Stone (Close Up)"という曲のようで、イマジネーション広がる瞑想へと誘う出だしで、これからの壮大な音楽の旅を予感させる。しかし、既に膨れた低音が巨大な岩のように迫り、そしてロービートでどす黒い芳香を放つ曲へと流れていく。みぞおちに強く入ってくる強烈な重低音、そこから分離されたパーカッションの高音、アンバランスにも思える音のミキシングはしかしトラックを、DJを個性的なモノへと変える。暴力的なまでの粗削りな音質を鳴らしつつ、早くも低音は一気に削ぎ落とされビートが消失しながらもグルーヴは走り続け、そしてジャズ・グルーヴや艶めかしいフュージョンテイストなThe Blackbyrdsの"Enter In"、ポップで陽気なディスコなど迷いなく黒い音で空間を塗りつぶしていく。時にざらついて粗削りなリズムが、時に艶かしく美しいピアノやファンキーなホーンの旋律が、激しく昂ったかと思えばメロウにしっとりと情緒を滲ませ、ブラック・ミュージックとしての統一感はありながらもジャンルと展開を拡張し続ける。

開始から1時間が経過する頃にはいつの間にかフロアは人混みで溢れ、大きな波のようにうねっている。骨太で重低音の4つ打ちハウスも熱量の高いディスコもロック的な曲も、大きな大河の流れに飲み込まれ一つになるように紡がれる。ガラージ・クラシックの"Let's Get Together"も過激に大胆に低音が削り出され、最早オリジナルとは異なって激しく鳴っているが、合わせて熱量も更に増しているのがTheoの技のおかげか。そこから土臭く民族的な"Che Che Cole (Makossa)"へがらっと変わる転調に驚きつつも、Theoというフィルターを通す事で半ば強引ながらもムードは途切れずに持続される。時には全く異なるリズムやテンポの曲を繋げるものだから、ミックスが荒かったり強引にも感じる事が少ないわけではないが、それもTheoの世界観や味としてすっかり定着しているのも実力がある由縁だろう。Osunladeによる"Schavanna"のざらざらとハイハットと妖艶な歌による不気味なハウスもぶっこみ的に繋がれつつ、更に強烈なイコライジングで極端に低音は膨れ上がり、漆黒のハウス・グルーヴが出現する。そして名曲"Walking Through The Sky (Live Version)"ではけたたましくドラミングが強調され生々しさが爆発し、荒波に飲み込まれたようにフロアが大きく波打っていく。

ピークタイムの時間帯は無駄な音がどんどん削がれ骨だけになったような簡素なリズムが浮かび上がり、シカゴ・ハウス・スタイルなロウだけどファンキーで、地面を這いずり回る鈍いアシッド・サウンドも出てきたりと、怒濤の激しい流れでフロアは嵐に遭遇したかの如く揺さぶられる。人が密集し半ばカオス状態のフロア、そして攻めの姿勢を貫くTheoのプレイは互いが互いを触発しながら勢いを増し、猛々しいジャジー・グルーヴから熱量高いライブ感溢れるファンクやアフロ、サイケデリックなロック曲、中にはミニマルな曲ではない筈なのにミックスの妙技なのだろうかミニマル性を帯びる瞬間もあり、骨太なリズムが先導する。アルコールの力もあっていつしか意識とは別に怒濤の展開に体は勝手に反応し意識する事なく体は揺れているが、Theo自身による"Fallen Funk"のように錆び付いたロウ・ハウス的な荒ぶる展開の中にも官能的でソウルフルな流れもあり、甘いボーカルと爽やかなリズムが心地良い"Confession (Honeycomb Vocal Mix)"のメロウなハウスをプレイしながらも彫刻するように過激なイコライジングで展開を作り出し、平坦に全く落ち着く事はなく粗雑に過激に猛々しい。4つ打ちの展開が増えてきている流れの影響もあるのだろうが、全く緊張感は途切れずに刺激をフロアに与え続ける。事実、朝方になってもフロアの混雑は全く解消されずに、躍り続ける多くのパーティーピープルが溢れていたが、こんなにも熱狂的なフロアにいれば誰しも熱くならずにはいられないだろう。終盤にはJay Danielのアシッド・ミニマルな"I Have No Name"も飛び出したりと所謂Theoフォロワーの曲も用いて、フロアを強烈に叩きのめすように強靭なグルーヴを鳴らしていた。始発も始まった5時頃、全くフロアの盛り上がりが冷めてもいない状況でまだまだパーティーは続く事を予感させていたが、今回はその時点で5時間もTheoのプレイを堪能し満足したので撤収する事に。ジャンルの変遷を見せながらどの時間帯も安定してTheoらしい太く感情的で、熱量の高い真っ黒なグルーヴを発しており、マジックのような一瞬の煌めきを感じられる経験は無かったものの、やはりTheoはTheoという彼らしいプレイに満足させて頂いた。

■Theo Parrish - Extended Boundaries(過去レビュー)
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